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18・三人の騎士 下
しおりを挟むああ、長い1日だった……。さすがに疲れたな……。
あんなに沢山の、初めての方にお会いすることなど今までなかったから、緊張の連続だった。
でも、魔導師になれたんだ。陛下のお食事に呼ばれた後、喜ぶ余裕もなかった私は、今頃実感が湧いてきた。
そこへルカ様の声がかかる。
「ミア?」
「はい、ルカ様?」
私は自分の寝室を出る。ここ、王都モルシェーンは高級な宿が多く、今いる部屋も、居間と2つの寝室の3室からなっていて、それぞれに鍵がかかる造りだった。
ルカ様は居間の長椅子にいて、私が行くと隣へ座るよう合図した。そして懐から箱を取り出して私に差し出す。
「何ですか、これ?」
「いいから開けてみろ」
開けてみるとそこには、銀の鎖とさまざまな石で作られた首飾りが入っていた。一番大きな石はエメラルドで、私の髪と瞳からとった色だということがわかる。
「魔導師の師弟の間では、弟子への祝いに魔力を高めるアクセサリーを贈るのが習わしだ。つけてみろ」
「ルカ様……!」
早速首からかけてみる。すると石が一瞬ふわっと光り、まるで生まれたときからつけていたかのようにしっくりおさまった。
「おまえを持ち主と認めたようだな」
「ルカ様、嬉しいです……。ありがとうございます」
「ミア、おめでとう。魔導師としてのこれからに幸いを」
ルカ様は私の額に口づけて、幸せの呪(まじな)いをしてくれる。
だけど、
「え、あ……ルカ様!?」
そのままでは終わらずに、ルカ様は私を長椅子に押し倒した。そして口づけを繰り返す。
「ん……はぁ……」
私の魔力はまだ半分以上は残っていた。今まで全くなかった訳ではないけど、ルカ様がただ私を求めるのは珍しい。
試しを受けたのは私には違いないけど、ルカ様も安心したのかもしれない。なにしろ私の魔力を顕現させてくれたのはルカ様だから。
「あ……ルカ様……」
ルカ様が私の胸元を開いた。着けたままだった首飾りが、裸の胸の半分に絡まるように残っていた。
「似合うぞ」
「ルカ様……、嬉しい、です。でも、壊すといけないから外して……」
ルカ様はくつくつと笑いながら、私の乳首を口に含んだ。
「私の魔力を込めた首飾りが、そう簡単に壊れるものか」
そして本格的に私の胸を愛撫しだした。
「あぁ、やぁん……、ルカ様、ここじゃいや、です」
ルカ様は軽々と私を抱き上げ、自分の寝室の方へ入っていく。扉に鍵を掛ける音が聞こえ、あとはもう、私には何も分からなくなった。
◆◇◆
同じ頃。
ミアとルカを城門まで送った3人の騎士は、そのままエリスの部屋へ集まって酒を飲んでいた。
騎士、というのは、この国ではある意味で魔導師の対極にあると言ってもいい存在だ。
大抵の子供が魔力を持って生まれてくるその中で、ほんのひとにぎり、逆に全く魔力を持たない子供が存在する。
その彼らは年頃になると、魔導師の元ではなく王宮へ集められ、英才教育を受ける。魔力を持たない子供は剣や武術に驚異的な才能を発揮し、ほとんどが王宮の騎士として華々しい活躍をするのだ。
カイン、エリス、グリフの3人は中でもトップクラスの実力を誇り、王の信頼も篤かった。
「……で、どう思う?」
飲みながら、しばらく黙って何か考えていたカインが聞いた。エリスが聞き返す。
「ルカ師のことかい?」
カインはにやりと笑って、エリスの足を蹴る。
「おまえが男を相手にするとは、今まで聞いたことがないな」
エリスも肩を小突き返して笑う。そこへグリフの声が被さった。
「あれはいい女だよな……」
カインは破顔した。
「おまえもそう思うか、グリフ」
「ああ。あのデカい胸がたまらないね」
グリフもさっきまでの無口が嘘のような饒舌ぶりだ。
「ローブで分かりにくいが、腰は相当細いとみた」
「まあ、いい女と言うには少し青いけど。……あの身体は極上だよね」
さっきまでの雰囲気とがらりと変わってミアを評するのはエリスだ。
「身体もそうだが、俺はあのいかにも無垢な雰囲気がそそられる……」
カインは真っ赤になっていたミアを思い浮かべ、ふっと笑った。
要するにこの3人、女は全く嫌いではない。騎士という職業上、王宮内でも町でも寄ってくる女には事欠かないし、さらに見た目も外面も良いのだから、好き放題も言えるのだ。
ひとしきりミアを肴に飲んだところで、エリスがふと、鋭い目になった。
「で、何故陛下は僕たちに彼女を近づけたんだ?」
カインもグリフも表情を引き締める。
「それだよな……」
「しかもルカ師も分かって認めている様子だし」
「そうなんだ。普通なら愛弟子に近づくなというんじゃないのか?」
もう一度グラスに酒を注いで、カインが呟く。
「彼女はあまりにも無防備だ。……4属性持ちで、最強の魔導師と言われるルカ師をもはるかに超える高魔力なのに。」
引き取ってエリスが続ける。
「なろうと思えば、彼女は長官や陛下の命令にすら縛られない立場にもなれる筈だ。だが、彼女は自分にそれだけの値打ちがあるなんて、考えたこともないんだよ」
「あっぶねえなぁ、そんなんで王宮の魔導師の中なんか入ったら……」
グリフが大声を出した。カインはグリフに頷いてみせる。
「そう、獣の群の中にウサギを放つようなものだ。あっという間に利用されて喰らい尽くされる……、そうか!」
エリスも頷いた。
「そういうことだね。……陛下とルカ師は僕たちに、ウサギの番犬になって欲しいのさ」
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