魔導師ミアの憂鬱

砂月美乃

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71・目覚めれば 上

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 あれだけの目にあったのだ。その時の恐怖から、誰も離れないで欲しいと思うのは無理もない。

 本当はミアから話を聞きたかった。だが、さっきの取り乱し方を見ると無理だ。やはり明日、ルカの解毒剤を飲んでからが良いだろう。
 とにかく今夜は、ミアの望む通りにしてやろう。口に出さなくとも、3人とも同じ気持ちだった。

 だがそうは言っても、ミアにはまた、明らかに媚薬の影響が出始めている。以前、魔力切れ寸前になったときの様子を覚えている3人には分かる。このまま部屋にいていいのだろうか? 


 奇妙な沈黙が部屋を支配した。

 カインは身を起こしたミアの横に座っていた。エリスはベッドの反対側、グリフは足元に座りこんでミアを見守っている。

 ミアは視線を落として黙ったまま座っているが、次第に傍目にも分かるほど、息が弾んできた。俯く首筋に、一筋汗が伝う。
「ミア……、大丈夫なの?」
エリスの声にはっと顔を上げると、頬が紅潮している。上掛けを掴む指も震えていた。
「苦しいんだろう? 無理に我慢するな」
カインが髪を撫でると、目を閉じて肩を震わせる。
「ぁ……んっ」


「なあミア、本当に……オレ達出たほうがいいんじゃないのか?」
居たたまれなくなったグリフが立ち上がろうとし、エリスも頷いた。カインも口をそえる。
「俺も別にいいんだ、ミアの言うとおりにする」
「いや、みんな……いて」
「でもミア……」
「怖かったの……」

 サラの部屋を開けた瞬間に見てしまった、男2人に身体を広げて押さえつけられたミアの姿。
 それは、鋭い痛みとともに胸に焼き付けられている。だが無論、それをミアに言う気などない。
 カインはその代わりにそっと、ミアの手を握りしめた。エリスも反対の手を取る。するとミアはおもむろにその手を、自分の胸に導いた。

「ミア!?」
「ね……? みんななら、いやじゃないの……」
両脇の2人を潤んだ目で見つめ、その目をグリフにも向ける。想像もしなかったミアに、カインもエリスも狼狽え、グリフに至っては完全に固まっている。
「だから、いいの」
いったん2人の手を放したミアは、胸元のボタンを外し、するりと寝衣の肩を落とした。


「え!?」
「いや、待てミア!」
「ちょっ、駄目だ! え、なんでいきなり!?」 
「……どうするカイン? これって絶対薬の……」
慌てふためく3人に、ミアが首をかしげて蕩けるように笑った。
「ね……?」

 ミアが正気なら、こんなことはあり得ない。だが、あまりのことに、3人とも腰を上げかけた体勢で呆然としてしまった。
 これは本当にどうしたらいいのか。ルカは『ミアの望むだけ』抱いてやれとは言った。だがまさかこんなことになるとは思わなかった。
 どうする? 互いに目と目を交わすが、結局どうして良いか分からない。

 ついにエリスが、一つ大きく息を吐いて、覚悟を決めたふうに頷いた。
「……負けた。僕は腹をくくるよ。あとは任せるから好きにして」
「エリス!?」





 制服の上衣を脱いだエリスが、そっとかがみ込んでミアに口づける。
「あん、エリス……」
ミアの細い腕が首に回され、そのままベッドに倒れ込んだ。

 カインは上げかけた腰をベッドの端に落とした。グリフはさっきの中腰のまま、おそらくまだパニックから抜けていない。
 3人の中で最も性的にノーマルなグリフだから、まあ仕方ないだろう。逆にエリスは、既にこの状況を楽しむことに決めていた。

 再びミアを起こして、後ろから抱き抱えるように座った。ミアを振り返らせて口づけ、後ろから胸を揉みしだく。
「んんぅ、はぁん……、ああ!」
 唇を放して首筋に舌を這わせながら、エリスは、ちらりと上目でカインを伺う。少なくともカインはこのままではいないだろう、そう思っていたから。


 カインはミアから目を離すことが出来なかった。自分の目の前で、エリスの愛撫に喘ぐミアの上気した顔。エリスの手で形を変えられる乳房と、固く尖った乳首。
 おそらくエリスは、わざと自分の正面にむけてミアを座らせたのだろう、カインにもそれは分かっている。
「どう、ミア? 気持ちいい?」
「ああん、エリスぅ、気持ちいいの……、もっと……」

 エリスによって乱れていくミアを見ているうちに、カインはさっきまでの困惑を押しのけて、別の感情が湧いてくるのを感じていた。もともと負けず嫌いで、ミアに関しては一番嫉妬心も強いカインだ。このまま黙って見ていられる訳がない。

 エリスはその様子を見てとって、にやりと笑った。胸から手を放して腰を抱いて、ミアに囁く。
「ほらミア。カインが見てるよ? お願いしてごらん」
「ああ……、カイン、お願い……さわって……?」
 後ろから腰を抱かれたまましどけなく膝を崩し、濡れた瞳で両手をさしのべられては……逆らえる筈がなかった。


 カインは引き寄せられるように、ミアの手をとった。その手は胸に移動し、両の手で捏ねながら唇を奪い、口内をくまなく探る。
「ん、ふぁ……」
 唇の端から零れた唾液をたどって、細く白い喉から胸まで唇を這わせると、ミアが白い喉を晒し、エリスの肩にもたれた。
「ああぁ……っ! カイン、もっと……!」
ミアの嬌声に煽られるように、乳首を指先で転がし、口に含んで舌でねぶる。

「ああん、い……ああぁぁ!」
ミアが突然震えた。エリスが腰を抱いていた手で膝を抱え、ミアの秘所を開いて指でなぞり上げたのだ。
「はああぁん! ああぁっ!」
「すご……熱い……」
 ミアがエリスの指で感じている。そのエリスへの僅かな嫉妬と対抗心が、ミアが全身から醸し出している淫らさと混ざりあい、カインのためらいを押し流していった。


 エリスだけでなくカインまでがミアに触れ、2人の間でミアの肌が桃色に染まっていくのを、グリフは呆然と眺めていた。
 人一倍身体が大きく、一番歳上でもあるグリフにとって、ミアは(決して弱い訳ではないが)護るべき存在だ。以前、ミアを抱きたいと3人で迫ったことはあったが、あの時だって本当にここまでするつもりではなかった。

 だが、自分以外の手によって乱れていくミアは……あまりに綺麗で、目が離せなかった。
 カインが前立てを緩め、ミアの膝を割って抱えた。するとエリスがミアを横たわらせ、グリフを見る。
「グリフ、ミアの手を握ってやって」

 グリフは熱に浮かされたように立ち上がり、ミアの枕元に座った。
「ミア……」
譫言のように名を呼ぶと、とろんとしていた瞳がグリフを見て、幸せそうに微笑んだ。
 理性の箍(たが)が弾け飛ぶ音を、グリフは頭の中で聞いたように感じた……。


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