* 闇の白虎

慈雨

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01.ノスタルジアから

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絢音の手によって瑞稀の目の前に突き出された、一枚の紙。

そこにはでかでかと「解雇命令」と書かれてあり、それは紙にしては随分重量があるように瑞稀には思えた。


「…え? これ冗談だよな…?」

冗談にしては、絢音は書類を作ったり、わざわざ瑞稀を呼び出したり面倒な事はしない。

なので状況的に、冗談ではないという事は解るのだが。
聞かずにはいられない。


――予想通り、絢音が首を縦に振る事はなかった。


「じゃあどうして…」

瑞稀は口を噤む。
理由がどうしても分からなかった。

今まで任務に失敗した事はないし、速さだってギルド内でトップだ。


「話は最後まで聞きなさい。――これ、一昨日届いた書類よ」

頭に“?”を浮かべて絢音を見ると、いつ持って来たのか、大きな茶封筒を瑞稀に差し出していた。


A4サイズの書類なら折らずに入りそうな、極一般的な紙封筒。

差出人しか書かれていないのが何とも怪しい。


瑞稀はそれを受け取り、差出人を確認する。


「World Government…え。
世界政府から、俺に…?」

瑞稀は思わず言葉をなくし、確認するように絢音を見る。

絢音は固まって動かなくなった瑞稀に、顎を使って無言で中を見るよう促した。

中に入っていたのは、またしても一枚の紙と、一枚の丈夫そうなカード。


「…は、嘘だろ…は?」

暫く紙を黙読していた瑞稀は、軽いパニックを引き起こしたのか、何も言わず瞬きもしない。


――貴台を次代“白虎”としてWGに招き入れる事が、正式に決定致しました――


薄っぺらい紙に書かれていたのは、何度確認してもその文章であった。

えらく無機的な機械の字で、だけどそれには確かな重みが感じられる。


カードはプラスチック製の白いカードで、金の文字でWorld Governmentと印字されてある。

それを裏表、何度も繰り返し見た。


「ーーどうするつもりかしらね」

絢音は表情を元に戻し、脚を組んで静かに煙草に火を着けた。
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