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05.待つ者、追う者
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とある行事が近付くと、その準備で学園はソワソワと落ち着かない様子の生徒が増えた。
“チーム対抗鬼ごっこ”が2週間後に迫っていた。
慎也や彰の説明によると、鬼から逃げるのではなく、鬼を捕まえる行事らしい。
鬼、すなわちゴブリンはすばしこく、悪戯好きだ。
チームの連携を取ってこその成功が試される。
「ーーということで、作戦会議をしようという訳なんだけど」
「嫌だよ、面倒臭い」
気怠げに澪梨は言い放つ。
返事に対して思わず身悶えしそうになりながらも、瑞稀はどうにか平静を装う。
自分が腹を立ててもラチがあかない。
瑞稀だって本気で行事に参加したい訳ではないが、報酬が夏休みの課題免除とあっては、捨て置けない。
何しろ柳緑学園は魔術師を育てる学校ゆえ、育成のために補習や課題も他より多いようだ。
だが、説得は難航していた。
チーム戦なので、慎也や彰に協力してもらうわけにもいかないだろう。
それ以上に、瑞稀は向き合いたいと思っていた。
他人を拒否する澪梨と自分を重ねたのかも知れない。
瑞稀は、澪梨に気付かれないよう溜め息を吐いた。
誰にでも闇はある。こうもあからさまに、他人を拒否する人は少ないが。
「澪梨は寮だっけ? ルームメイトはいるの?」
興味がなさそうに本を読んでいる、澪梨に対して、瑞稀は作戦を変えた。
「派手なルームメイトがいるよ。毎晩恋人の家に行ってて、ほとんど帰ってこないけど」
「そう。…ルームメイトがいないと、ここの寮って静かだよね。俺も一人だから、カーテンを開けて部屋を真っ暗にして、たまにリビングのソファで寝てる」
「…」
「柔らかい月の明かりが好きなんだ」
澪梨の、本をめくる手がしばらく動いていない事を、瑞稀は気付いていた。
「あんた、強いんでしょ」
「なぜ?」
「そういう人が身近にいるから、何となくわかる。強い人って嫌いだ」
そこで本日初めて、澪梨は顔を上げた。まっすぐに瑞稀を見る澪梨の目は、青いような紫色のような、不思議な色をしている。
澪梨は栞も挿さずに本を閉じた。
ページを覚えているのか、あるいは、本の内容など初めから頭に入っていなかったのかも知れない。
“チーム対抗鬼ごっこ”が2週間後に迫っていた。
慎也や彰の説明によると、鬼から逃げるのではなく、鬼を捕まえる行事らしい。
鬼、すなわちゴブリンはすばしこく、悪戯好きだ。
チームの連携を取ってこその成功が試される。
「ーーということで、作戦会議をしようという訳なんだけど」
「嫌だよ、面倒臭い」
気怠げに澪梨は言い放つ。
返事に対して思わず身悶えしそうになりながらも、瑞稀はどうにか平静を装う。
自分が腹を立ててもラチがあかない。
瑞稀だって本気で行事に参加したい訳ではないが、報酬が夏休みの課題免除とあっては、捨て置けない。
何しろ柳緑学園は魔術師を育てる学校ゆえ、育成のために補習や課題も他より多いようだ。
だが、説得は難航していた。
チーム戦なので、慎也や彰に協力してもらうわけにもいかないだろう。
それ以上に、瑞稀は向き合いたいと思っていた。
他人を拒否する澪梨と自分を重ねたのかも知れない。
瑞稀は、澪梨に気付かれないよう溜め息を吐いた。
誰にでも闇はある。こうもあからさまに、他人を拒否する人は少ないが。
「澪梨は寮だっけ? ルームメイトはいるの?」
興味がなさそうに本を読んでいる、澪梨に対して、瑞稀は作戦を変えた。
「派手なルームメイトがいるよ。毎晩恋人の家に行ってて、ほとんど帰ってこないけど」
「そう。…ルームメイトがいないと、ここの寮って静かだよね。俺も一人だから、カーテンを開けて部屋を真っ暗にして、たまにリビングのソファで寝てる」
「…」
「柔らかい月の明かりが好きなんだ」
澪梨の、本をめくる手がしばらく動いていない事を、瑞稀は気付いていた。
「あんた、強いんでしょ」
「なぜ?」
「そういう人が身近にいるから、何となくわかる。強い人って嫌いだ」
そこで本日初めて、澪梨は顔を上げた。まっすぐに瑞稀を見る澪梨の目は、青いような紫色のような、不思議な色をしている。
澪梨は栞も挿さずに本を閉じた。
ページを覚えているのか、あるいは、本の内容など初めから頭に入っていなかったのかも知れない。
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