* 闇の白虎

jiu

文字の大きさ
上 下
35 / 132
05.待つ者、追う者

3

しおりを挟む
**


屋上には赤茶の髪をなびかせる少年、瑞稀の姿があった。
何とも思っていないような、その視線の先には二人の男子生徒ーー慎也と彰の姿が小さく見える。


ややあって、屋上の扉が開いた。
そこに現れたのは、風変わりな少女、椎名澪梨。

まだ鬼ごっこがスタートするまでに時間がある。瑞稀が開始前に集合場所としたのが、この誰も来ない屋上だった。


「クリアしちゃったね。さすが優等生」

「いろいろ指示出されてムカついたけど、最後のミッションは馬鹿馬鹿しくて笑っちゃった」

ヘラ、と笑って、澪梨は手をヒラヒラと振った。


「“彰の頭に葉っぱを乗せて来ること”。面白い方がやる気が出るだろう?」

瑞稀はまた視線を慎也と彰の方へ戻す。
一瞬だけ、慎也と目が合った気がした。


(多分慎也には気付かれてるだろうけど…)

「よし、在り来たりな作戦だけど、2人で“鬼ごっこ”クリア出来るよう頑張ろう」

「出来なかったら、僕の課題もヨロシクね」

予鈴が鳴る。2人は足早に、多目的ホールへと移動を開始した。



(多目的ホールにシャンデリア…)

瑞稀は思わず辺りを見渡した。

生徒が集まって騒めいている多目的ホール。ここに足を踏み入れるのは初めてだった。

中央に一段と大きなシャンデリアがぶら下がり、それを円で囲うように、小さなシャンデリアが並んでいる。

この世界の住人は、大掛かりな装飾など、派手なものを好むらしい。


「瑞稀! 遅かったな」

「椎名さんもね」

瑞稀、澪梨は声のした方へ向く。片手を挙げて近付くのは、慎也と彰。

瑞稀は手を挙げて応え、澪梨はそっぽを向いた。

鬼ごっこでの協力の件があって、瑞稀は澪梨と話せているが、その他の人にはまだ心を開いてはいない。
かといって、瑞稀に懐いているわけでもないが…。


「もう始まるぜ」


チーム対抗鬼ごっこの開会式では、学園長の短い話があり、ルール説明へと進められた。

学年200人強、約100チームのうち、上位に入って課題免除になるのは僅か3チームらしい。


皆が自信や不安に包まれる中ーー

競技はスタートした。
しおりを挟む

処理中です...