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07.夜の帳が下りる町 2
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音色に聴き入りながら、徐々に開けてくる視界に、白虎と千里は目を細める。
「人の感覚には優先順位があるんだ。視覚より、聴覚の方が優位にあるから、音で注意を引きつけるってわけ」
「それにしても、あんなに買い占めて、コハルド中のロウソクの在庫はスッカラカンになってたよ」
白虎は馬車に乗れないからとコハルドには戻らなかったが、千里はロウソクを買い漁った時の、店主達の慌て様を思い出して、声を出して笑った。
「なあ、ところで、ここで待機するのは何故だ?
ここに敵が現れると?」
「ああ、それは…」
白虎が言いかけると、空気の流れが少し変化して、別の気配が現れた。
「…え」
突然、二人以外の声がする。
そちらに注目するが、まだハッキリとは見えない。
「ええ? 白虎さんと千里さんって、もしかして危ない関係?」
まだ幼さの残る声。高くも低くもなく、中性的。
千里は掴んでいた手をバッと勢いよく離した。
「…千里、痛いんだけど」
白虎は文句を言いながら、声のする方へ顔を向けた。声の主は、短髪の、推測10歳前後の男の子に見えた。
肩に小さい狐を乗せている。
「あんたが主犯か」
突き刺さるような声で白虎は問う。
ロウソクの光で照らされた部屋は、サラさんのカフェ ハーバルの店内である。
「こんな子供が!?」
千里が眉を寄せてその子供の方を見る。あどけなさとはかけ離れた、ふてぶてしい顔の少年が目に入った。
「…不老不死、だな」
「まさか…“リュストル”!?」
少年は“リュストル”という単語が聞こえて、少し表情を変えた。
“リュストル”。世間には公表されておらず、水面下で何十年も活動を続けている反政府の少数団体であり、千里によると、前代白虎はリュストルのリーダーと相討ちで殉職したというのだ。
「千里さん、せーいかい。僕はリュストルの一員。
白虎さんは不正解だな。禁忌には違いないけど、僕は不老不死ではない」
肩に乗せた狐をあやしながら、近くの席に座って、足を組んだ。
「僕は“ヒカリ”。どうぞ、お見知り置きを」
そう言って、ヒカリはテーブルに肘をついてニコリと笑った。
音色に聴き入りながら、徐々に開けてくる視界に、白虎と千里は目を細める。
「人の感覚には優先順位があるんだ。視覚より、聴覚の方が優位にあるから、音で注意を引きつけるってわけ」
「それにしても、あんなに買い占めて、コハルド中のロウソクの在庫はスッカラカンになってたよ」
白虎は馬車に乗れないからとコハルドには戻らなかったが、千里はロウソクを買い漁った時の、店主達の慌て様を思い出して、声を出して笑った。
「なあ、ところで、ここで待機するのは何故だ?
ここに敵が現れると?」
「ああ、それは…」
白虎が言いかけると、空気の流れが少し変化して、別の気配が現れた。
「…え」
突然、二人以外の声がする。
そちらに注目するが、まだハッキリとは見えない。
「ええ? 白虎さんと千里さんって、もしかして危ない関係?」
まだ幼さの残る声。高くも低くもなく、中性的。
千里は掴んでいた手をバッと勢いよく離した。
「…千里、痛いんだけど」
白虎は文句を言いながら、声のする方へ顔を向けた。声の主は、短髪の、推測10歳前後の男の子に見えた。
肩に小さい狐を乗せている。
「あんたが主犯か」
突き刺さるような声で白虎は問う。
ロウソクの光で照らされた部屋は、サラさんのカフェ ハーバルの店内である。
「こんな子供が!?」
千里が眉を寄せてその子供の方を見る。あどけなさとはかけ離れた、ふてぶてしい顔の少年が目に入った。
「…不老不死、だな」
「まさか…“リュストル”!?」
少年は“リュストル”という単語が聞こえて、少し表情を変えた。
“リュストル”。世間には公表されておらず、水面下で何十年も活動を続けている反政府の少数団体であり、千里によると、前代白虎はリュストルのリーダーと相討ちで殉職したというのだ。
「千里さん、せーいかい。僕はリュストルの一員。
白虎さんは不正解だな。禁忌には違いないけど、僕は不老不死ではない」
肩に乗せた狐をあやしながら、近くの席に座って、足を組んだ。
「僕は“ヒカリ”。どうぞ、お見知り置きを」
そう言って、ヒカリはテーブルに肘をついてニコリと笑った。
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