62 / 132
07.夜の帳が下りる町 2
5
しおりを挟む
「ヒカリ。4ヶ月ほど前、白虎と戦ったのはお前か?」
「どうだったかな。そんな前の事覚えてないよ」
千里が低い声で尋ねる。対して、ヒカリは肘をついたまま、髪の毛先をくるくる撫でながら、つまらなそうに答えた。
「ふざけるな! 今回の事だって、町の住民がどれだけ不安な思いをしたと思ってるんだ!」
「煩いなあ、喚かないでよ」
チラリと千里の方を横目で見て、態とらしくため息を吐くヒカリ。
子供のとる行動にはとても見えない。
「ここの住人って、この店のハーブティーのおかげで催眠術にかかりやすいんだね。
面白いくらいコロっとかかっちゃって」
クスクスと笑うヒカリは、まるで悪魔の子供のようだ。
「白虎、今の話は…」
「ああ、本当だよ。毎晩飲むハーブティーで、副交感神経が活発になり、住民は術にかかりやすい状態だった。しかも、ここの独特な香りを利用してたんだ」
「だから、ここに現れたって訳か」
千里は納得しながら眉を顰めた。
白虎がサラと錦を教会に置いてきた意味が、ようやく分かった。
「こんなこと、サラさんが知ったら…」
そして、ハーブティーを煎れながら、嬉しそうに解説するサラを思
「…今の話は本当…?」
その時、違う声がした。
白虎と千里は勢いよく振り返る。
「サラさん…」
両腕いっぱいにハーブを抱えて、俯くサラがいた。
対角線上では、ヒカリがニヤッと顔を歪めたのが、白虎にはわかった。
「拓真! サラさんを連れて逃げろっ!」
続いて現れた錦に大声を上げる。
次の瞬間、ヒカリの肩に乗っていた狐が、サラの方へ向かっていた。
「千里、狐の方を頼めるか? かなり魔力もデカイ。サラさんを庇いながらじゃ拓真は敵わない。それに、あいつに聞きたい事もある」
「ああ、でも…」
逃げていく二人を追う狐を確認する。
だが、千里はチラッとヒカリに目をやった。
「大丈夫だよ、絶対死なないから」
わざと明るく言って、白虎は千里を見た。
前代白虎は、リュストルの一員と戦って殉職している。それを千里は気にしているのだ。
「…わかった。絶対二人を助けるから、お前も死ぬな」
「勿論だ」
白虎と千里は同時に動く。
ヒカリの方へ向かって、走って行き、椿を構えたのは白虎。
ヒカリは、出口へ走っていく千里を気にも止めず、白虎を迎え撃つ。
白虎を受け止めたヒカリの武器は、柄まで純白な刀だった。
「どうだったかな。そんな前の事覚えてないよ」
千里が低い声で尋ねる。対して、ヒカリは肘をついたまま、髪の毛先をくるくる撫でながら、つまらなそうに答えた。
「ふざけるな! 今回の事だって、町の住民がどれだけ不安な思いをしたと思ってるんだ!」
「煩いなあ、喚かないでよ」
チラリと千里の方を横目で見て、態とらしくため息を吐くヒカリ。
子供のとる行動にはとても見えない。
「ここの住人って、この店のハーブティーのおかげで催眠術にかかりやすいんだね。
面白いくらいコロっとかかっちゃって」
クスクスと笑うヒカリは、まるで悪魔の子供のようだ。
「白虎、今の話は…」
「ああ、本当だよ。毎晩飲むハーブティーで、副交感神経が活発になり、住民は術にかかりやすい状態だった。しかも、ここの独特な香りを利用してたんだ」
「だから、ここに現れたって訳か」
千里は納得しながら眉を顰めた。
白虎がサラと錦を教会に置いてきた意味が、ようやく分かった。
「こんなこと、サラさんが知ったら…」
そして、ハーブティーを煎れながら、嬉しそうに解説するサラを思
「…今の話は本当…?」
その時、違う声がした。
白虎と千里は勢いよく振り返る。
「サラさん…」
両腕いっぱいにハーブを抱えて、俯くサラがいた。
対角線上では、ヒカリがニヤッと顔を歪めたのが、白虎にはわかった。
「拓真! サラさんを連れて逃げろっ!」
続いて現れた錦に大声を上げる。
次の瞬間、ヒカリの肩に乗っていた狐が、サラの方へ向かっていた。
「千里、狐の方を頼めるか? かなり魔力もデカイ。サラさんを庇いながらじゃ拓真は敵わない。それに、あいつに聞きたい事もある」
「ああ、でも…」
逃げていく二人を追う狐を確認する。
だが、千里はチラッとヒカリに目をやった。
「大丈夫だよ、絶対死なないから」
わざと明るく言って、白虎は千里を見た。
前代白虎は、リュストルの一員と戦って殉職している。それを千里は気にしているのだ。
「…わかった。絶対二人を助けるから、お前も死ぬな」
「勿論だ」
白虎と千里は同時に動く。
ヒカリの方へ向かって、走って行き、椿を構えたのは白虎。
ヒカリは、出口へ走っていく千里を気にも止めず、白虎を迎え撃つ。
白虎を受け止めたヒカリの武器は、柄まで純白な刀だった。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~
水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」
第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。
彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。
だが、彼女は知っていた。
その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。
追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。
「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」
「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」
戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。
効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。
〘完〙なぜかモブの私がイケメン王子に強引に迫られてます 〜転生したら推しのヒロインが不在でした〜
hanakuro
恋愛
転生してみたら、そこは大好きな漫画の世界だった・・・
OLの梨奈は、事故により突然その生涯閉じる。
しかし次に気付くと、彼女は伯爵令嬢に転生していた。しかも、大好きだった漫画の中のたったのワンシーンに出てくる名もないモブ。
モブならお気楽に推しのヒロインを観察して過ごせると思っていたら、まさかのヒロインがいない!?
そして、推し不在に落胆する彼女に王子からまさかの強引なアプローチが・・
王子!その愛情はヒロインに向けてっ!
私、モブですから!
果たしてヒロインは、どこに行ったのか!?
そしてリーナは、王子の強引なアプローチから逃れることはできるのか!?
イケメン王子に翻弄される伯爵令嬢の恋模様が始まる。
【完結】金の国 銀の国 蛙の国―ガマ王太子に嫁がされた三女は蓮の花に囲まれ愛する旦那様と幸せに暮らす。
remo
恋愛
かつて文明大国の異名をとったボッチャリ国は、今やすっかり衰退し、廃棄物の処理に困る極貧小国になり果てていた。
窮地に陥った王は3人の娘を嫁がせる代わりに援助してくれる国を募る。
それはそれは美しいと評判の皇女たちに各国王子たちから求婚が殺到し、
気高く美しい長女アマリリスは金の国へ、可憐でたおやかな次女アネモネは銀の国へ嫁ぐことになった。
しかし、働き者でたくましいが器量の悪い三女アヤメは貰い手がなく、唯一引き取りを承諾したのは、巨大なガマガエルの妖怪が統べるという辺境にある蛙国。
ばあや一人を付き人に、沼地ばかりのじめじめした蛙国を訪れたアヤメは、
おどろおどろしいガマ獣人たちと暮らすことになるが、肝心のガマ王太子は決してアヤメに真の姿を見せようとはしないのだった。
【完結】ありがとうございました。
【完結】 嘘と後悔、そして愛
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
伯爵令嬢ソニアは15歳。親に勝手に決められて、一度も会ったことのない10歳離れた侯爵リカルドに嫁ぐために辺境の地に一人でやってきた。新婚初夜、ソニアは夫に「夜のお務めが怖いのです」と言って涙をこぼす。その言葉を信じたリカルドは妻の気持ちを尊重し、寝室を別にすることを提案する。しかしソニアのその言葉には「嘘」が隠れていた……
死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。
藤原遊
恋愛
「死ぬはずだった運命なんて、冒険者たちが全力で覆してくれる!」
街を守るために「死ぬ役目」を覚悟した私。
だけど、未来をやり直す彼らに溺愛されて、手放してくれません――!?
街を守り「死ぬ役目」に転生したスフィア。
彼女が覚悟を決めたその時――冒険者たちが全力で守り抜くと誓った!
未来を変えるため、スフィアを何度でも守る彼らの執着は止まらない!?
「君が笑っているだけでいい。それが、俺たちのすべてだ。」
運命に抗う冒険者たちが織り成す、異世界溺愛ファンタジー!
捨てられた悪役はきっと幸せになる
ariya
恋愛
ヴィヴィア・ゴーヴァン公爵夫人は少女小説に登場する悪役だった。
強欲で傲慢で嫌われ者、夫に捨てられて惨めな最期を迎えた悪役。
その悪役に転生していたことに気づいたヴィヴィアは、夫がヒロインと結ばれたら潔く退場することを考えていた。
それまでお世話になった為、貴族夫人としての仕事の一部だけでもがんばろう。
「ヴィヴィア、あなたを愛してます」
ヒロインに惹かれつつあるはずの夫・クリスは愛をヴィヴィアに捧げると言ってきて。
そもそもクリスがヴィヴィアを娶ったのは、王位継承を狙っている疑惑から逃れる為の契約結婚だったはずでは?
愛などなかったと思っていた夫婦生活に変化が訪れる。
※本作は、一般的な爽快ざまぁ・即溺愛を主軸とした作品ではありません。
主人公は苦悩や葛藤を抱えながら選択を重ねていくタイプの物語です。
また、人によっては元鞘に見える展開や、ヒーローが執着・独占欲強め(ヤンデレ寄り)と感じられる描写があります。
残酷な描写、精神的トラウマ描写を含みますので、苦手な方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる