* 闇の白虎

慈雨

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09.疑心と信頼

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「んん~…警戒してるなあ」

あどけない声が呟いて、それは誰の耳に届くこともなく その場に落ちた。

少年は笑っていた。
暗い部屋で明かりもつけず、部屋にある熱帯魚の水槽が、青い光で怪しく存在を放っているだけである。

水槽の中には8匹程の赤い魚が泳いでいた。

少年は近付き、餌を与える。

ゆっくり水の中に落ちていく餌を赤い魚が食べる。
いくつかの餌は食べこぼされて、水槽の底へと落ちていった。

ゆらゆらと魚は揺れる。


「ただ、仲良くなりたいだけなのにねえ」

魚は徐々に力をなくして、やがて一匹残らず水面に上がってきた。


「…弱っちいな」

少年は冷たい目で、動かなくなった魚を見詰めて、くるりと踵を返した。


「君は強いのかなぁ?…瑞稀」

パチンと指を鳴らして、部屋を出ていく。

魚にはまた生気が宿り、泳ぎ方を思い出したかのようにまた遊泳し始めた。


少年が廊下に出ると、左へ進んだ。
通路は広くも狭くもなく、窓がなくて昼だというのに薄暗い。


「あっ! やっと見つけた」

背後から声がする。
少年が振り返ると、もっと背の低い女の子が追いかけてきていた。

黒髪のウエーブヘアを背中まで伸ばして、色白の肌と合わせると人形のように見える風貌だ。


「もう、ずっと探してたんだからね!」

ぷくっと頬を膨らませて怒る少女に視線を向けて、少年は目を細めて笑った。


「ごめん ごめん。…で、どうしたの?」

「九条さんが心配してたから…」

困ったように俯いて、長い黒髪の先を弄る。


「ああ、あの人。
僕を心配してるのか、それとも闇を心配してるのか」

「わっ、私はヒカリの味方だよ!!」

少し涙目になって、少女は少年ーーヒカリを必死に見詰める。
とても感情豊かで、コロコロと表情の変わる女の子だ。

驚いて目を見開くヒカリだったが、後にまた笑みを浮かべて、少女の髪を撫でた。


「…うん、ありがとう。アイ」

アイと呼ばれた少女は、また心配そうな眼差しをヒカリに向けた。
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