* 闇の白虎

慈雨

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10.とある闇の事端

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とても理解し難い内容だった。
だが、話を聞くたびにパズルのピースが合うような、やっと知識が一本の線になるような感覚がする。

今の話が本当なら、身体の中に渦巻く魔力も、身に覚えのない知識の波も、他人のものだという事だ。


「まだまだ実験させてもらうよ。
僕の名前は真柴 蓮。よろしくね、瑞稀ちゃん」


真柴は言葉通り、瑞稀の身体を使って何度も実験を繰り返した。

その後聞いた話によると、あの高熱が続いた日に、闇属性は覚醒した。
あのままでは力に押し潰されて、命を落とすところだったそうだ。

セントラルの医者は、魔力を抑制する薬を処方し、WGの研究室にそれを報告した。


そこから真柴に伝わり、研究対象として瑞稀を研究所に連れ込んだという事だ。


勿論、人体実験など許される筈がない。真柴は少数の研究員を連れて、WGにすら秘密裏に実験を行っていたのだ。


幾度となく魔力を入れ込まれ、瑞稀は心身ともに疲弊していた。

だが裏腹に、繰り返すごとに瑞稀の闇のうつわは大きくなっているように思えた。


その時から、瑞稀は本を読む時間を 積極的に取るようになった。

バラバラに散らばった知識を、ひとつひとつ正しい位置に収めていく。

有り余った時間の中で、気を紛らわせるのにも、読書は有効だった。


「お母さん…お父さん…会いたいな」

だが押し寄せてくる孤独や寂しさは、どうしたって埋まることはない。

この小さい身体で何が出来るだろう。
大人になるまで我慢すれば、父や母に会え日は来るのだろうか。


やがて、願望の大半を諦めかけた時、瑞稀にとっての転機は訪れた。


「ーー異常発生! 北ゲートが解放された!」

館内放送が響き、照明は赤く染まった。
サイレンの音が鳴り響いて、非日常的な空気が研究所を覆う。

直ぐに瑞稀の元には真柴が駆け付けた。


「大丈夫だ、お前は私が守る」

その頃、瑞稀にとって真柴は、世界の中の一つになってしまっていた。


不穏な雰囲気に包まれて、側に歩み寄った真柴の白衣の裾を、瑞稀は掴んだ。


「…胸騒ぎがする」

瑞稀は小さく呟いた。
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