* 闇の白虎

慈雨

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10.とある闇の事端

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心臓がドクンと大きく跳ねた。
この魔力には身に覚えがあった。

真柴の魔力だ。

“実験”の時のように、魔力量や密度など計算されている訳ではない。
出鱈目でたらめで、きっと咄嗟に出て来ただけの大きな魔力。

それが、瑞稀の身体に入って来た。


制御出来る筈がなかった。
瑞稀は気が遠くなる中で、明日美と正親を見付ける。

哀しんだ顔を見るのは辛くて嫌なのに、目が逸らせなかったーー。



**


慎也は最初から何も言わず、ただ瑞稀の話を聞いていた。
時折 眉を寄せて、目を閉じる。
瑞稀も始めに言ったように、聞いてて気分の良い話ではない。

瑞稀は続けた。


「俺のこの“闇属性”は、万物を奪う能力だ。
ーーきっと命すら奪ってしまうくらいの強力な能力」

慎也は青ざめる。
そして、得た情報で思考するが、最悪の結果しか頭に浮かばない。


「そして、目が覚めた時にはみんな動かなかった。多分、ーー「待て」

初めて慎也が口を出した。
その先は聞きたくなかったし、瑞稀の口から言わせたくもなかった。

だが、瑞稀は哀しそうなのに無理やり笑っていた。


「多分、俺が奪ったんだ」

慎也は、改めて瑞稀を見た。

瑞稀は何でもさらりとこなして、沢山の事を知っていて、 気丈に振る舞っていた。

弱さとは正反対の所にいるようで、だけどたまに、消え入りそうな程 繊細に映ることもあったと慎也はふと思った。


「何で慎也が泣きそうなんだよ」

瑞稀はそれでも笑みを作る。


「研究室から逃げ出して、それから絢音さんと出会ったんだ。WGから逃げるために、俺は“佐倉”になった。
絢音さんは魔力の制御が出来ない俺に、命を懸けて魔力コントロールを教えてくれた。
これ以上何かを奪ってしまうのは嫌だったし、制御出来ないと自分自身の命だって、魔力に喰われそうだった」

瑞稀はさらりと言うが、魔力を制御するということは、生半可な努力では成し得ないことだと思う。


「俺は生きていて良いのか、何度も考えた。
でも両親が命を落としてまで、与えてくれた“自由”を…無駄にする事も出来なかった」

「瑞稀…」

「いずれ、何らかの形で罰は受けるつもりだよ」

慎也はうかつに言葉を発する事も出来なかった。慰めも、励ましも、瑞稀には意味のない言葉だ。


「…話してくれて、ありがとう」

結局、その一言しか言えなかった。
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