* 闇の白虎

慈雨

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10.とある闇の事端

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「…もし、聞いた事を後悔してるなら、手はある。
俺は慎也の“記憶”を奪う事が出来るから…」

「後悔なんてしてない。
俺の記憶が消えたとしても、瑞稀は覚えてるんだろ? そんな哀しいこと、俺はさせたくないな」


瑞稀はハッとして慎也の顔を見た。
慎也が自分を否定しないという事は予想出来たことだった。


それなのに予防線を張ってしまったのは、瑞稀に自信がなかったからだろう。

慎也にはそれが新鮮だった。
どれだけ完璧なように見えても、やはり瑞稀は自分と同じ人間なのだ。


「…ありがとう」

瑞稀も少し涙腺が緩んでしまいそうになるが、自分のために涙は流さないと決めている。

キッと強い眼差しで、気高く高潔に。


「でも正直、WGの白虎に襲名された事については、未だに疑問を抱いてる。
総帥様はいい人に見えるけど、まだ裏が無いとも言えないし、もし俺が総帥様の立場だったら…」

一瞬瑞稀は考える。
それはずっと疑問に思っていた事だった。


「闇なんて危険な対象、また研究所に放り込むか、さっさと処刑するね」

「…笑えねえよ」

冗談っぽく笑って言うけれど、慎也はそれを聞いて引き笑いするしかなかった。


「ま、冗談はさておき。ここからは現状についてだ」

「お前は冗談か本気か分かりにくいんだよ」

慎也は少し嫌みっぽく言い、そして切り替える。


「ーー瑞稀が闇属性ってことは…」

「そう。リュストルのヒカリは“光属性”だ。ふざけた名前だよ」

闇属性に、光属性。
対極にあるようで、2つの属性は常に近い位置にあるものだと瑞稀は説明した。

闇は光を欲し、光は闇を欲する。
遠くにいても、お互いの魔力を微弱に感じ取れるということだった。


「多分ヒカリは無意識的に俺の存在に気付いて、そして俺に興味を持っているらしい。
リュストルに誘われたし、この部屋も…恐らく、ヒカリが荒らしてったんだと思う」

「ここに来たっていうのか?」

「うん、何か弱味を探してたのか…それとも、ただ存在をアピールしたかっただけなのか、分からないけど」


(いつでも日常なんて壊してやるっていう、脅しの可能性もあるか)

口には出さないが、あまり縁起の良くないことを頭に浮かべる。

こういう悪い予感だけは、いつも外れてくれないのだ。
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