どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月

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15.新しい朝

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 わたしは毎晩ベッドの中でシャーリーに話しかける。

  あの嫌なメイドをやっつけたわよ。

  婚約解消したわよ。もう二度とあの男の顔を見なくていいわよ。

  お父様のお仕事を手伝うようになったのよ。
  ちゃんとシャーリーにもわかるよう教えてあげるね。

  
  だからいつでも戻ってきていいのよ。
 


 ある日、お父様が新しく執事見習いを連れてきた。
 執事というのはうちのような子爵家の場合、使用人を管理するなどの家政と財産管理を含む事務を主な仕事とする。
 お父様の秘書兼会計士みたいなものよね。
 
「シャーリー、紹介しよう。ルドヴィクだ」
「はじめまして。ルドとお呼びください」
 深い青の髪、涼し気な目元、クールな微笑。イケメンだわ。歳は25だって。ふーん。

「ルドヴィクは王都の学校の経営科を卒業していてね。今は知人の家でフットマンをしているが優秀で評判がいいらしい。将来シャーリーの代になった時にと次の執事候補を探していたら、彼を紹介されたんだ。今のうちから学んでもらおうと思ってね」
 お父様!
 お父様が真剣にわたしの将来のことを考えてくださる!嬉しい!
 
「気が合えば一緒になってもいいからな」
 お父様がこっそりわたしの耳元で囁く。
 ん?婿候補ですか?
 本当にわたしの将来のことを考えてくださっているのね……ありがとうございます。

 ルドはわたしに微笑みかけながら言った。
「お嬢様に何でも頼っていただけるよう頑張りますね」
 笑ってるけど目が冷たいのよ。
 これはあれね、領地経営もしますよ、どうせできないんでしょう?僕はこのお嬢さんと結婚すればいいんでしょうっていう目ね。……被害妄想がすぎるかしら?
 
 でもね、わたしのこと見くびってもらっては困るわ!
 わたしはあれから父の仕事を手伝っている。案の定、わたしはお父様もびっくりするほど有能だったわ。役所書類もスイスイ読めるし解るし書けるしで、もう既に簡単な事務仕事は任されるようになっている。わたしは今、お父様の右腕だと言っても過言ではないのよ!
 
「それじゃあ、ルドには我が家のワイン蔵の管理から学んでもらいましょうか?」
 ルドはわたしの言葉に少し目を見開いた。
 
 ふふん、あなたの前でモジモジしたりうっとりしたりする女の子と同じだと思ってもらっちゃ困るのよ。
 あなたの出る幕なんてあるかしら。わたし有能なの。
 売られた喧嘩は買うわよ。
 この座は渡さないんだからね!
 ルドはまず執事仕事をしっかり学んで頂戴ね。
 

 裏庭で花に水をやっていると、カルロがやってきた。
「なあお嬢様」
「何かしら」
「俺、騎士学校に戻ることにしたよ」
 ええ!どういうこと?騎士学校が合わなかったって言ってなかった?
 あ、じゃあ料理長はどうなるの?急いで次の人を探さなきゃ。
「そうなんだ」 
「知ってるか?騎士学校って貴族の子息しか入れないんだぜ」
 えっそうなの?じゃあカルロも貴族の息子なの?
 
「一年後。俺がここに戻ってきて、まだお嬢様が結婚してなかったら、俺のこと真面目に考えてくれる?」
 
 カルロの金髪が風に吹かれてサラサラと流れる。逆光で顔がよく見えない。え、どういう意味?

 ――なんて、なるはずないでしょーが!!!
 また疑問形!またそんな思わせぶりなこと言って!ちゃんと言葉にしなきゃダメじゃん!!
 あのねえ、わたしそんなにちょろくないんだって!!!
 
 
 わたしは少し考えて答えた。
「戻ってきたらね」
 
 戻ってきて、わたしにちゃんと告白したら、わたしもちゃんと返事するわ。
 それまでは忘れてるね。

 
 そうして、ルドと入れ替わりのようにしてカルロがうちから出て行った。

 
 あれれ、なんだかわたしの周り、にぎやかになってきてる?
 これっていわゆる恋愛フラグじゃない?ちがう?
 あっなんか今わたしって恋愛フラグ叩き折りまくってる?そうなの?
 
 ねえ、なんだかこれって乙女ゲームみたいじゃない???







***
お読みいただきありがとうございます。
次回が最終話となります。


 
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