77 / 135
act.76
しおりを挟む
「事件の糸口は、やはり三番目の事件だと思うんです」
会議室の中の視線が、一斉にセス・ピーターズに集まった。
ここのところ、爆弾処理班と殺人課の捜査陣の見解に、微妙なズレが生じ始めていた。
それには様々な原因があったが、一番の要因は確たる証拠についての見方の違いなどではなく、もっと『私的』な感情からによる対立だった。
それは、ピーターズが連れてきた男が原因だ。
爆弾処理班 ── つまりは、セス・ピーターズの強い主張により、『部外者』・・・ジョイス・テイラーが捜査班に加えられたのだった。
殺人課の刑事達は、目に見えて難色を示した。
なぜ国も身分も違う人間に、痛い腹を探られなければならないのか。FBIならまだしも、テイラーは英国大使館員なのだ。まったくどうかしている・・・。
だが、珍しくセス・ピーターズは、感情的になって譲らなかった。あの温厚で怒鳴っているところなど見せたことのない男が、「己のメンツにこだわっている場合か」と融通の利かない捜査陣を一喝したのだ。
殺人課の誰もが、そんなピーターズの陰口をたたいた。「あいつは、変わった」と。「四つめの事件のお陰で、頭に血が上っちまってんだ」と。
だから、今ピーターズが言ったことをまともに聞いているのは、爆弾処理班の班長デビット・オリバーとピーターズの同僚ホッブズぐらいだった。その他の連中の目は、冷たくピーターズを眺めているだけに止まった。
そんな空気を感じて、ホッブスが頼りなさげな視線をピーターズに送った。そのピーターズの身体の先には、苦い表情をして腕組みをしている黒スーツ姿のテイラーが座っている。
── まずいなぁ・・・。
ホッブズは思った。
いつもは世渡り上手な同僚が、今回ばかりは真っ向から逆風を受けようとしている。
確かに、四番目の事件で、セスは熱くなりすぎている感がある。
だが、セス・ピーターズという男は、そのことを差し引いても、警察官としての鋭い観察力や状況認識力は優秀なのである。
だが、セスが署長を半ば脅すような勢いでテイラーを引きずり込んだのは、まずかった。
残念ながらセスは、そこのところで間違いを犯したのだ。彼にとっては唯一の、そして最も致命的な間違いを。
殺人課の連中は目の敵にしてテイラーのことを睨んでいるし、それを連れてきたセスももはや敵扱いだ。
捜査陣のトップ・ハドソン刑事は、ベテランでなおかつ優秀な男だったが、如何せん堅物で有名だ。人一倍縄張り意識が強いし、ここのところ続いている警察バッシングで酷く苛立っている。おまけに、今回の重要参考人マックス・ローズにまで小馬鹿にされる有様で ── といっても向こうは精神的な病にかかっているそうなので、小馬鹿にしている訳でもないのだろうが、ハドソンはそう信じている・・・セス・ピーターズよりも感情的になっていた。
現に今も、ピーターズの言ったことに喧嘩腰の返事をした。
「そんなこと、お前に言われる筋合いじゃない!」
ハドソンが、会議机を勢いよく叩いた。
「ピーターズ、お前の仕事はなんだ? お前は爆弾処理班だろう。なんだ、この報告書は」
ハドソンは、自分の目の前に広げられたピーターズの報告書を掴み、ちらりとそれを見て、放り投げた。
「ケヴィン・ドーソンの動向についての報告だと? いつから刑事捜査ができる身分になったんだ? 爆弾処理が仕事のお前が、我々刑事の真似事をして喜んでいるのか?」
苛立っているハドソンは、いつにもまして毒舌にセスを責め立てた。
「一番重要なのは、一番新しい事件だ。いつだって、どんな事件だって、連続性のある事件はみんなそうだ。最新の事件に最大限の証拠が隠されている。そういうものだ。それぐらい、お前だってわかっているだろう」
「しかし、唯一手口が違っているのは、ケヴィン・ドースンの事件だけなんです!」
セスは、ハドソンの攻撃にも怯まなかった。
「ドースンは新聞記者だった。彼の同僚も彼が秘密裏に何かを探っていたことを認めています。彼は何かを掴み、そして消された。そう考えるのが自然なんだ」
「ほう」
ハドソンが目を細める。
「手口が違う? 手口が違うって? どこが違うと言うんだ。誰がそんなことを言ったんだ?」
ハドソンが大げさに肩を竦めた。そのあまりにも芝居がかった仕草に、殺人課の連中も顔を顰めて、溜息をつく。
しかしハドソンは、まったく気にしない。
「お前の上司のオリバーから聞いている報告では、爆弾の材料も同じ、爆弾の作りのタイプも同じ。規模は少々大きいが、四番目の事件を考えると不自然ではない。手口は、まったく変わっていないんだよ、ミスター・ピーターズ。その報告書作りには、お前の見解も入っているのではないのか?」
それは事実だった。
分析の結果、同じ材料に同じ配線図。確かにその答えを出したのは、セスだった。
だが、セスが言っているのはそんな事ではない。
「手並みですよ、ハドソン刑事。俺が言っているのは、爆弾の仕掛け方のことを言っているんです。あの事件では、どこに爆弾を仕掛けたら一番効果的か、犯人は知っていた。けれど、他の事件では違います。橋にしても車にしても、アパートメントにしたって、壊滅的な場所へ爆弾が仕掛けられた訳ではなかった。仕掛けることに精一杯で、仕掛けた後にそれを楽しむかのような余裕が見られない」
「余裕がない? 何を言う?! 四番目の事件を見て見ろ! 爆弾は、わざわざ起爆用のワイヤーを新聞に仕掛けやがったんだぞ! ヤツは、犠牲者が新聞を手にするのを楽しんでいたんだ。そうだろう?!」
「 ── でも、目的は達成できなかった」
セスの一言に、さすがのハドソンも一瞬言葉を失った。
セスは、続ける。
「犯人が殺そうと思っていた人物は、死ななかったんです。この犯人はドジを踏んだ。確実に殺さねばならなかったのに、彼は自分が仕掛けた爆弾をターゲット以外の人間が触ることにまったく気がつかなかった。俺からしてみれば、およそプロじゃない」
セスは少し息を吐いて、椅子に座る。
それを見てハドソンも同じように椅子に座ったが、その目つきは依然として敵意に満ちたものだった。
セスはその視線を受け止め、少しだけ苦い表情を浮かべた。
「でも三番目のケースは違います。粉々に吹き飛んだドーソンの脚には、ガムテープの燃えかすが付着していた。起爆装置の欠片も食い込んでいた。犯人は、彼の脚にスイッチを縛り付けていたんです。犯人は的確に、そして残忍に、余裕の笑みを浮かべてドースンを死に追いやった。犯人は実に強かで抜け目がなく、鮮やかだ。『知性がある』んです」
ハドソンは、うんざりしたように溜息をついた。
「またそれか」
ハドソンは再び立ち上がって、セスとその隣に座っているテイラーを見比べた。
「お前のその偉大な『勘』によって、この街の連続爆弾事件と遠い海の向こうのゾンビ騒ぎがドッキングした訳だ」
ハドソンのその発言に、会議室の中から小さな笑い声が、そこかしこから沸き上がった。
セスの同僚のホッブズや上司のオリバーでさえ怪しんでいる話だったので、まるで説得力のない話に聞こえた。
「ゾンビなんかではない。ジェイク・ニールソンは現実に生きていて、この街を訪れている」
突如強いイギリス訛の声が会議室に響いた。
テイラーは静かに、だが力強くそう言った。
だがハドソンは冷笑をやめなかった。
「元IRAの古参テロリストか。まったく馬鹿げた話だ。年齢的に言えば、犯罪者としてもう定年退職といったところだろう。そんな老いぼれが、まんまとイギリスの刑務所を脱獄して旅行者を襲い、空港警察の目をだまくらかしてこの街にきただなんて・・・。ミスター・テイラーのお国もつくづく魔法がかったお話が好きらしい。あなたに言わせてみれば、現代は指輪物語かハリー・ポッターか、そんな世界なんでしょうな」
その発言に、今度はテイラーが熱くなる。
「何を・・・!! 私は現にこの目で確認をしたのだ! あれは・・・、あの男は確かにニールソンだった。私が見た映像に映っていたのは・・・」
「それは空港の監視カメラの映像でしょう!!」
ハドソンが再びテーブルを叩く。
灰が山積みになった灰皿がガラガラと音を立て、周辺にタバコの灰が溢れ落ちた。
「その映像とやらは、私も拝見させてもらいましたよ。あんな画質の悪いほんの数十秒の映像で、どうしてそういう風に断言できるのかが理解できない。・・・ま、あなたは大使館員だから・・・」
「何・・・?!」
薄笑いを浮かべるハドソンに掴みかかりそうな勢いのテイラーを、セスの腕が押さえた。
「ピーターズ・・・?!」
自分を振り返るテイラーに、セスは緩く首を振った。
テイラーがジャケットの乱れを正しながら、椅子に腰掛ける。
セスは静かな目でハドソンを見つめ、穏やかに言った。
「もし、本当にニールソンという人物がこの街にいるのだとしたら、そしてこの事件に関わっているのだとしたら、今後どういうことになるのか。あなたはわかっているのか」
穏やかなだけに、逆に凄みのある瞳だった。
ハドソンも息を呑む。
セスは続けた。
「ニールソンは『プロ』です。我々なんかとても手が及ばないほど、知識と技術を積んでいる。もし今回の事件を裏で手引きしているのがニールソンだとしたら、彼に辿り着くまで我々は困難な道を辿ることになるでしょう。現に今、我々は濃い霧の中にいる。手がかりがあまりにも多く、容疑者もまた、あまりにも多い。翻弄されているのは目に見えています。マスコミも敏感にそのことを察知し、我々を能なし扱いしている。我々はその事実を、素直に認めなくてはなりません。そうしなければ、この事件は解決しない。だからこそ、俺はテイラー氏に協力を仰ぎました。彼の力が必要だと思ったからだ。凝り固まった縄張り意識など、ドブに捨てるべきだ」
会議室が静まり返った。
小さな息さえも聞こえなかった。
それは、誰もが目に見えない老いたテロリストの陰に怯えているように見えた。
しかしその静寂は、すぐに破られた。
ハドソンが高笑いする。耳障りな声で。
「縄張り意識か。こりゃいいや。お前には縄張り意識が全くない。そうさ。警察はおろか、マスコミに対してもな」
セスは怪訝そうに顔を顰める。
「まったく、ミスター・ピーターズは寛大な男だ」
ハドソンが、セスの真ん前の席に腰掛け、身を乗り出す。
「お前の“女”は、我らが憎みべき新聞社のカメラマンらしいな。しかも、よりにもよってC・トリビューンときている。あのケヴィン・ドースンが勤めていた新聞社だ」
ハドソンがニヤニヤと笑った。
「俺もつい先頃会ったよ。調書を取るためにな。なかなかの美人じゃないか。小生意気で、抜け目がない。あの分じゃお前さんのことだ。尻にひかれてるんだろう。で、何をしゃべった。俺が調書を取りに行く日取りか? それとも、三番目の事件は随分と鮮やかな手口だったとピロートークでもしたのか? どうなんだ?」
ハドソンの下品な表現に、ハドソン側の人間の幾人かも、顔を歪めた。
「あんた、本気でそんなことを言っているのか・・・?」
セスは呆れた顔をして、ハドソンを見つめ返した。
確かにセスの恋人であるレイチェルは、新聞社に勤めている。しかし、事件についての情報をセスは漏らしたことはない。
お互い大人だし、互いの仕事の内容も尊重してきた。それに、事件が起きてからというもの、ろくに逢える時間さえなかったのだ。最近ようやく逢えたのは、マックスが搬送された病院でのことだ。それもほんの数分で終わり、ろくな会話も交わせなかったというのに。
事件以来、セスが警察署内にほぼ缶詰の状態でいることは、ハドソンだって周知している。
それにマスコミが三番目の事件を騒ぎ立てているのは、マスコミだってバカではないということだ。逆を返して言えば、誰が見ても三番目の事件は特別だということである。
だが現時点で、ハドソンが出した切り札は十分な効果を発揮した。
ハドソンはあくまで『余所者』を排除したいと思っていたし、彼に協力を仰ごうとした人間・・・ピーターズさえも邪魔者であると排除したかった。そのためなら、どんなことも利用する。だからこそハドソンは優秀な刑事としてやってこれた。
例えそこに何もなかったとしても。
セスは非常に微妙な立場に立たされてしまったのである。
「荷物をまとめて、捜査本部からお引っ越しした方がいい。さぁさぁ・・・さぁさぁさぁ・・・」
そう呟きながら身体を引くハドソンの目の色は、これは『勧め』ではなく『命令』であることを物語っていた。
セスは思わず、自分の上司オリバーを見る。
オリバーは何とも苦々しい表情を浮かべ、声もなしに「sorry」と呟いた。優秀な彼の上司にしても、ピーターズにまつわるこの事実は、曲げようがない。
ハドソンは、狙っていたのだ。そしてまんまと成功させた。
そしてセスは、一連の事件の捜査から外された。
“ベン・スミス” ── いや、ジェイク・ニールソンは、ジェイコブの前から姿を眩ました訳では決してなかった。
それはジェイコブの勝手な思いこみであり、ジェイクは活発になってきた警察の手を逃れるための布石を踏んでいる最中であった。
今やジェイクは、老いた身体でありながらも、その目つきは第一線のテロリストとして活躍していた頃の輝きを取り戻しつつあった。
実のところ、警察の手は着実に近づきつつあるようだった。
報道では、警察のマヌケぶりばかりが取りざたされていたが、倉庫街の事務所まで警察の関係者が聞き込みに来ていたらしい。そいつは、随分背の高い男だったそうだ。その警官は、ここを訪ねてきたはずの新聞記者 ── 三番目の事件の被害者であるケヴィン・ドースンだ ── のことを訊ねてきたという。
しかし幸いにも、管理人はドースンがジェイコブの借りている倉庫のことを聞きに来たことを知らなかった。
ドースンはアルバイトの若い男に金を掴ませており、そのことが幸いして、警察当局にはその情報が流れなかった。
今では、その若いアルバイトは高架道路下の砂利の中に埋まっており、ジェイクはその後かたづけを済ませるのに少し手間取ってしまった。だが、お陰で倉庫の情報が今すぐ警察に流れることはなくなった。
しかし、このまま倉庫に居座り続けるのも、得策とはいえないだろう。
ジェイクは倉庫の中にある自分の形跡を跡形もなく消し去り、新聞社も辞めた。
勝手に動き回るジェイコブから少し距離を置く必要があると思ったからだ。
だが今度は、ジェイコブが荒れ始めた。
予想はしていたが、こんなに急激に暴力性が増していくとは、予想外だった。
全てにおいて猜疑心が強くなり、行動の端々に凶暴さを垣間見せた。
遠くから観察していたジェイクにさえ、はっきりとわかるほど、ジェイコブの変化は劇的だった。
原因を作ったのは自分とはいえ、ジェイコブの変わり様は、もはや『暴走』だ。
── まずい状況になってきた・・・。
ジェイクがジェイコブの家に戻ったのは、うまくジェイコブを宥めすかすためだった。
ジェイコブは自分の妄想にだけ忠実な、夢見る青年だった。
これまでジェイク・ニールソンは、そんなタイプの青年達をその話術で幾人も自分の虜にしてきた。
自分の言葉に夢中になる青年の姿は、ジェイクにとって見慣れた光景だった。
おそらく、自分の話術なら再びジェイコブをコントロールすることは可能だ。 ── アレクシスをコントロールしたのと同じように。
ジェイクは、古ぼけたマローン家のドアをノックした。
応答はない。
ジェイコブは出かけているらしい。おそらく、家の中には彼の母親が、ベッドで悪態をついているだけだろう。
まぁいい。鍵はある。待っていれば、ジェイコブも帰ってくる。
ジェイクは懐から鍵を出して、ドアを開けた。
いつもなら、「誰だい?」という不躾な大声が、奥の部屋から聞こえてきた。
ジェイコブの母親は、足が不自由で寝たきりの生活をしていたが、その声は驚くほど大きく、話す言葉は、胸焼けがするほど饒舌だった。
ジェイクもあの大きな声に何度閉口しただろう。許されるものなら、絞め殺してやりたいと思ったほどだ。
眠っているのだろうか。
ジェイクは奥の部屋のドアを開けた。
そして一瞬、鼻を鳴らした。
── ああ。あいつは絞め殺さず、殴り殺したのか。
頭部に多量のどす黒い液体を纏い付かせたジェイコブの母親の死体を見つめつつ、ジェイクはそう思って、少し笑った。
突如電話のベルが鳴った。
まるでセスが事件を外されて、爆弾処理班の自分の席に帰ることがわかっていたのように、セスのデスクの電話が。
セスは事もなげに鳴り響く電話を見つめ、そして背後に立つ黒づくめのテイラーと顔を見合わせた。
今この部屋にはセスとテイラーしかおらず、電話のベルは大げさに広い室内に響き渡った。
セスは今一度電話と向き直ると、少し汗ばんだ手で受話器を取った。
「もしもし?」
セスが受話器に向かって囁くと、少し間があいて、聞き覚えのあるしっかりとした声が答えた。
『セス・・・? 俺だ。力を・・・、力を貸して欲しい』
その声は、精神的な病を抱えてしゃべることができないはずの、マックス・ローズのものだった。
会議室の中の視線が、一斉にセス・ピーターズに集まった。
ここのところ、爆弾処理班と殺人課の捜査陣の見解に、微妙なズレが生じ始めていた。
それには様々な原因があったが、一番の要因は確たる証拠についての見方の違いなどではなく、もっと『私的』な感情からによる対立だった。
それは、ピーターズが連れてきた男が原因だ。
爆弾処理班 ── つまりは、セス・ピーターズの強い主張により、『部外者』・・・ジョイス・テイラーが捜査班に加えられたのだった。
殺人課の刑事達は、目に見えて難色を示した。
なぜ国も身分も違う人間に、痛い腹を探られなければならないのか。FBIならまだしも、テイラーは英国大使館員なのだ。まったくどうかしている・・・。
だが、珍しくセス・ピーターズは、感情的になって譲らなかった。あの温厚で怒鳴っているところなど見せたことのない男が、「己のメンツにこだわっている場合か」と融通の利かない捜査陣を一喝したのだ。
殺人課の誰もが、そんなピーターズの陰口をたたいた。「あいつは、変わった」と。「四つめの事件のお陰で、頭に血が上っちまってんだ」と。
だから、今ピーターズが言ったことをまともに聞いているのは、爆弾処理班の班長デビット・オリバーとピーターズの同僚ホッブズぐらいだった。その他の連中の目は、冷たくピーターズを眺めているだけに止まった。
そんな空気を感じて、ホッブスが頼りなさげな視線をピーターズに送った。そのピーターズの身体の先には、苦い表情をして腕組みをしている黒スーツ姿のテイラーが座っている。
── まずいなぁ・・・。
ホッブズは思った。
いつもは世渡り上手な同僚が、今回ばかりは真っ向から逆風を受けようとしている。
確かに、四番目の事件で、セスは熱くなりすぎている感がある。
だが、セス・ピーターズという男は、そのことを差し引いても、警察官としての鋭い観察力や状況認識力は優秀なのである。
だが、セスが署長を半ば脅すような勢いでテイラーを引きずり込んだのは、まずかった。
残念ながらセスは、そこのところで間違いを犯したのだ。彼にとっては唯一の、そして最も致命的な間違いを。
殺人課の連中は目の敵にしてテイラーのことを睨んでいるし、それを連れてきたセスももはや敵扱いだ。
捜査陣のトップ・ハドソン刑事は、ベテランでなおかつ優秀な男だったが、如何せん堅物で有名だ。人一倍縄張り意識が強いし、ここのところ続いている警察バッシングで酷く苛立っている。おまけに、今回の重要参考人マックス・ローズにまで小馬鹿にされる有様で ── といっても向こうは精神的な病にかかっているそうなので、小馬鹿にしている訳でもないのだろうが、ハドソンはそう信じている・・・セス・ピーターズよりも感情的になっていた。
現に今も、ピーターズの言ったことに喧嘩腰の返事をした。
「そんなこと、お前に言われる筋合いじゃない!」
ハドソンが、会議机を勢いよく叩いた。
「ピーターズ、お前の仕事はなんだ? お前は爆弾処理班だろう。なんだ、この報告書は」
ハドソンは、自分の目の前に広げられたピーターズの報告書を掴み、ちらりとそれを見て、放り投げた。
「ケヴィン・ドーソンの動向についての報告だと? いつから刑事捜査ができる身分になったんだ? 爆弾処理が仕事のお前が、我々刑事の真似事をして喜んでいるのか?」
苛立っているハドソンは、いつにもまして毒舌にセスを責め立てた。
「一番重要なのは、一番新しい事件だ。いつだって、どんな事件だって、連続性のある事件はみんなそうだ。最新の事件に最大限の証拠が隠されている。そういうものだ。それぐらい、お前だってわかっているだろう」
「しかし、唯一手口が違っているのは、ケヴィン・ドースンの事件だけなんです!」
セスは、ハドソンの攻撃にも怯まなかった。
「ドースンは新聞記者だった。彼の同僚も彼が秘密裏に何かを探っていたことを認めています。彼は何かを掴み、そして消された。そう考えるのが自然なんだ」
「ほう」
ハドソンが目を細める。
「手口が違う? 手口が違うって? どこが違うと言うんだ。誰がそんなことを言ったんだ?」
ハドソンが大げさに肩を竦めた。そのあまりにも芝居がかった仕草に、殺人課の連中も顔を顰めて、溜息をつく。
しかしハドソンは、まったく気にしない。
「お前の上司のオリバーから聞いている報告では、爆弾の材料も同じ、爆弾の作りのタイプも同じ。規模は少々大きいが、四番目の事件を考えると不自然ではない。手口は、まったく変わっていないんだよ、ミスター・ピーターズ。その報告書作りには、お前の見解も入っているのではないのか?」
それは事実だった。
分析の結果、同じ材料に同じ配線図。確かにその答えを出したのは、セスだった。
だが、セスが言っているのはそんな事ではない。
「手並みですよ、ハドソン刑事。俺が言っているのは、爆弾の仕掛け方のことを言っているんです。あの事件では、どこに爆弾を仕掛けたら一番効果的か、犯人は知っていた。けれど、他の事件では違います。橋にしても車にしても、アパートメントにしたって、壊滅的な場所へ爆弾が仕掛けられた訳ではなかった。仕掛けることに精一杯で、仕掛けた後にそれを楽しむかのような余裕が見られない」
「余裕がない? 何を言う?! 四番目の事件を見て見ろ! 爆弾は、わざわざ起爆用のワイヤーを新聞に仕掛けやがったんだぞ! ヤツは、犠牲者が新聞を手にするのを楽しんでいたんだ。そうだろう?!」
「 ── でも、目的は達成できなかった」
セスの一言に、さすがのハドソンも一瞬言葉を失った。
セスは、続ける。
「犯人が殺そうと思っていた人物は、死ななかったんです。この犯人はドジを踏んだ。確実に殺さねばならなかったのに、彼は自分が仕掛けた爆弾をターゲット以外の人間が触ることにまったく気がつかなかった。俺からしてみれば、およそプロじゃない」
セスは少し息を吐いて、椅子に座る。
それを見てハドソンも同じように椅子に座ったが、その目つきは依然として敵意に満ちたものだった。
セスはその視線を受け止め、少しだけ苦い表情を浮かべた。
「でも三番目のケースは違います。粉々に吹き飛んだドーソンの脚には、ガムテープの燃えかすが付着していた。起爆装置の欠片も食い込んでいた。犯人は、彼の脚にスイッチを縛り付けていたんです。犯人は的確に、そして残忍に、余裕の笑みを浮かべてドースンを死に追いやった。犯人は実に強かで抜け目がなく、鮮やかだ。『知性がある』んです」
ハドソンは、うんざりしたように溜息をついた。
「またそれか」
ハドソンは再び立ち上がって、セスとその隣に座っているテイラーを見比べた。
「お前のその偉大な『勘』によって、この街の連続爆弾事件と遠い海の向こうのゾンビ騒ぎがドッキングした訳だ」
ハドソンのその発言に、会議室の中から小さな笑い声が、そこかしこから沸き上がった。
セスの同僚のホッブズや上司のオリバーでさえ怪しんでいる話だったので、まるで説得力のない話に聞こえた。
「ゾンビなんかではない。ジェイク・ニールソンは現実に生きていて、この街を訪れている」
突如強いイギリス訛の声が会議室に響いた。
テイラーは静かに、だが力強くそう言った。
だがハドソンは冷笑をやめなかった。
「元IRAの古参テロリストか。まったく馬鹿げた話だ。年齢的に言えば、犯罪者としてもう定年退職といったところだろう。そんな老いぼれが、まんまとイギリスの刑務所を脱獄して旅行者を襲い、空港警察の目をだまくらかしてこの街にきただなんて・・・。ミスター・テイラーのお国もつくづく魔法がかったお話が好きらしい。あなたに言わせてみれば、現代は指輪物語かハリー・ポッターか、そんな世界なんでしょうな」
その発言に、今度はテイラーが熱くなる。
「何を・・・!! 私は現にこの目で確認をしたのだ! あれは・・・、あの男は確かにニールソンだった。私が見た映像に映っていたのは・・・」
「それは空港の監視カメラの映像でしょう!!」
ハドソンが再びテーブルを叩く。
灰が山積みになった灰皿がガラガラと音を立て、周辺にタバコの灰が溢れ落ちた。
「その映像とやらは、私も拝見させてもらいましたよ。あんな画質の悪いほんの数十秒の映像で、どうしてそういう風に断言できるのかが理解できない。・・・ま、あなたは大使館員だから・・・」
「何・・・?!」
薄笑いを浮かべるハドソンに掴みかかりそうな勢いのテイラーを、セスの腕が押さえた。
「ピーターズ・・・?!」
自分を振り返るテイラーに、セスは緩く首を振った。
テイラーがジャケットの乱れを正しながら、椅子に腰掛ける。
セスは静かな目でハドソンを見つめ、穏やかに言った。
「もし、本当にニールソンという人物がこの街にいるのだとしたら、そしてこの事件に関わっているのだとしたら、今後どういうことになるのか。あなたはわかっているのか」
穏やかなだけに、逆に凄みのある瞳だった。
ハドソンも息を呑む。
セスは続けた。
「ニールソンは『プロ』です。我々なんかとても手が及ばないほど、知識と技術を積んでいる。もし今回の事件を裏で手引きしているのがニールソンだとしたら、彼に辿り着くまで我々は困難な道を辿ることになるでしょう。現に今、我々は濃い霧の中にいる。手がかりがあまりにも多く、容疑者もまた、あまりにも多い。翻弄されているのは目に見えています。マスコミも敏感にそのことを察知し、我々を能なし扱いしている。我々はその事実を、素直に認めなくてはなりません。そうしなければ、この事件は解決しない。だからこそ、俺はテイラー氏に協力を仰ぎました。彼の力が必要だと思ったからだ。凝り固まった縄張り意識など、ドブに捨てるべきだ」
会議室が静まり返った。
小さな息さえも聞こえなかった。
それは、誰もが目に見えない老いたテロリストの陰に怯えているように見えた。
しかしその静寂は、すぐに破られた。
ハドソンが高笑いする。耳障りな声で。
「縄張り意識か。こりゃいいや。お前には縄張り意識が全くない。そうさ。警察はおろか、マスコミに対してもな」
セスは怪訝そうに顔を顰める。
「まったく、ミスター・ピーターズは寛大な男だ」
ハドソンが、セスの真ん前の席に腰掛け、身を乗り出す。
「お前の“女”は、我らが憎みべき新聞社のカメラマンらしいな。しかも、よりにもよってC・トリビューンときている。あのケヴィン・ドースンが勤めていた新聞社だ」
ハドソンがニヤニヤと笑った。
「俺もつい先頃会ったよ。調書を取るためにな。なかなかの美人じゃないか。小生意気で、抜け目がない。あの分じゃお前さんのことだ。尻にひかれてるんだろう。で、何をしゃべった。俺が調書を取りに行く日取りか? それとも、三番目の事件は随分と鮮やかな手口だったとピロートークでもしたのか? どうなんだ?」
ハドソンの下品な表現に、ハドソン側の人間の幾人かも、顔を歪めた。
「あんた、本気でそんなことを言っているのか・・・?」
セスは呆れた顔をして、ハドソンを見つめ返した。
確かにセスの恋人であるレイチェルは、新聞社に勤めている。しかし、事件についての情報をセスは漏らしたことはない。
お互い大人だし、互いの仕事の内容も尊重してきた。それに、事件が起きてからというもの、ろくに逢える時間さえなかったのだ。最近ようやく逢えたのは、マックスが搬送された病院でのことだ。それもほんの数分で終わり、ろくな会話も交わせなかったというのに。
事件以来、セスが警察署内にほぼ缶詰の状態でいることは、ハドソンだって周知している。
それにマスコミが三番目の事件を騒ぎ立てているのは、マスコミだってバカではないということだ。逆を返して言えば、誰が見ても三番目の事件は特別だということである。
だが現時点で、ハドソンが出した切り札は十分な効果を発揮した。
ハドソンはあくまで『余所者』を排除したいと思っていたし、彼に協力を仰ごうとした人間・・・ピーターズさえも邪魔者であると排除したかった。そのためなら、どんなことも利用する。だからこそハドソンは優秀な刑事としてやってこれた。
例えそこに何もなかったとしても。
セスは非常に微妙な立場に立たされてしまったのである。
「荷物をまとめて、捜査本部からお引っ越しした方がいい。さぁさぁ・・・さぁさぁさぁ・・・」
そう呟きながら身体を引くハドソンの目の色は、これは『勧め』ではなく『命令』であることを物語っていた。
セスは思わず、自分の上司オリバーを見る。
オリバーは何とも苦々しい表情を浮かべ、声もなしに「sorry」と呟いた。優秀な彼の上司にしても、ピーターズにまつわるこの事実は、曲げようがない。
ハドソンは、狙っていたのだ。そしてまんまと成功させた。
そしてセスは、一連の事件の捜査から外された。
“ベン・スミス” ── いや、ジェイク・ニールソンは、ジェイコブの前から姿を眩ました訳では決してなかった。
それはジェイコブの勝手な思いこみであり、ジェイクは活発になってきた警察の手を逃れるための布石を踏んでいる最中であった。
今やジェイクは、老いた身体でありながらも、その目つきは第一線のテロリストとして活躍していた頃の輝きを取り戻しつつあった。
実のところ、警察の手は着実に近づきつつあるようだった。
報道では、警察のマヌケぶりばかりが取りざたされていたが、倉庫街の事務所まで警察の関係者が聞き込みに来ていたらしい。そいつは、随分背の高い男だったそうだ。その警官は、ここを訪ねてきたはずの新聞記者 ── 三番目の事件の被害者であるケヴィン・ドースンだ ── のことを訊ねてきたという。
しかし幸いにも、管理人はドースンがジェイコブの借りている倉庫のことを聞きに来たことを知らなかった。
ドースンはアルバイトの若い男に金を掴ませており、そのことが幸いして、警察当局にはその情報が流れなかった。
今では、その若いアルバイトは高架道路下の砂利の中に埋まっており、ジェイクはその後かたづけを済ませるのに少し手間取ってしまった。だが、お陰で倉庫の情報が今すぐ警察に流れることはなくなった。
しかし、このまま倉庫に居座り続けるのも、得策とはいえないだろう。
ジェイクは倉庫の中にある自分の形跡を跡形もなく消し去り、新聞社も辞めた。
勝手に動き回るジェイコブから少し距離を置く必要があると思ったからだ。
だが今度は、ジェイコブが荒れ始めた。
予想はしていたが、こんなに急激に暴力性が増していくとは、予想外だった。
全てにおいて猜疑心が強くなり、行動の端々に凶暴さを垣間見せた。
遠くから観察していたジェイクにさえ、はっきりとわかるほど、ジェイコブの変化は劇的だった。
原因を作ったのは自分とはいえ、ジェイコブの変わり様は、もはや『暴走』だ。
── まずい状況になってきた・・・。
ジェイクがジェイコブの家に戻ったのは、うまくジェイコブを宥めすかすためだった。
ジェイコブは自分の妄想にだけ忠実な、夢見る青年だった。
これまでジェイク・ニールソンは、そんなタイプの青年達をその話術で幾人も自分の虜にしてきた。
自分の言葉に夢中になる青年の姿は、ジェイクにとって見慣れた光景だった。
おそらく、自分の話術なら再びジェイコブをコントロールすることは可能だ。 ── アレクシスをコントロールしたのと同じように。
ジェイクは、古ぼけたマローン家のドアをノックした。
応答はない。
ジェイコブは出かけているらしい。おそらく、家の中には彼の母親が、ベッドで悪態をついているだけだろう。
まぁいい。鍵はある。待っていれば、ジェイコブも帰ってくる。
ジェイクは懐から鍵を出して、ドアを開けた。
いつもなら、「誰だい?」という不躾な大声が、奥の部屋から聞こえてきた。
ジェイコブの母親は、足が不自由で寝たきりの生活をしていたが、その声は驚くほど大きく、話す言葉は、胸焼けがするほど饒舌だった。
ジェイクもあの大きな声に何度閉口しただろう。許されるものなら、絞め殺してやりたいと思ったほどだ。
眠っているのだろうか。
ジェイクは奥の部屋のドアを開けた。
そして一瞬、鼻を鳴らした。
── ああ。あいつは絞め殺さず、殴り殺したのか。
頭部に多量のどす黒い液体を纏い付かせたジェイコブの母親の死体を見つめつつ、ジェイクはそう思って、少し笑った。
突如電話のベルが鳴った。
まるでセスが事件を外されて、爆弾処理班の自分の席に帰ることがわかっていたのように、セスのデスクの電話が。
セスは事もなげに鳴り響く電話を見つめ、そして背後に立つ黒づくめのテイラーと顔を見合わせた。
今この部屋にはセスとテイラーしかおらず、電話のベルは大げさに広い室内に響き渡った。
セスは今一度電話と向き直ると、少し汗ばんだ手で受話器を取った。
「もしもし?」
セスが受話器に向かって囁くと、少し間があいて、聞き覚えのあるしっかりとした声が答えた。
『セス・・・? 俺だ。力を・・・、力を貸して欲しい』
その声は、精神的な病を抱えてしゃべることができないはずの、マックス・ローズのものだった。
0
あなたにおすすめの小説
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる