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第七話 俺tueeできない勇者
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「これから、俺と模擬戦をしてもらう」
武器屋のおじさんは、そう言って剣を渡してきた。
カウンター奥のドアを抜けると、柵で囲まれた修練場があった。真ん中に無造作に立てられた案山子は、幾度剣で切りつけられたのか、ボロボロの状態である。はあ、俺もあんな風になるのかな……。
「自分にあった剣っていうのは、実戦の中で見つけるのが一番だ。……真逆、剣を握ったことがない、なんて言わねえよなあ……?」
なんて、挑発するような笑みを浮かべるおじさん。
言う。超言います。剣どころか、刃物ですら調理実習以外で握ったことねえよ。ていうか、この人分かって言ってんだろ。
試しに、手元にある剣を軽く振ってみる。……なるほど、結構重い。俺が持っているのは、まあ普通のサイズの普通の剣だ。ゲームだったらブロンズソードとか言えるレベル。最も、比べる対象がジャックの大剣だけなのだが。
「構えも振り方も、まるで素人だ。それじゃあ、俺どころか訓練兵にも勝てやしないぜ」
「……うーん……。」
くそ、こんなことなら剣の素振りの練習でもしとけばよかった。中2の時に色々こじらせて買った剣のレプリカも、3日で飽きてお蔵入りになっちまったし……。
「……ボルグさん。さっきも言いましたが、彼は転生者です。幼い頃から剣の鍛錬をする我々とは違い、剣を握ったことなどないのですから、どうかご容赦を……。」
そう言って、ジャックが頭を下げた。……ジャックには、俺が剣を握ったことがないなんて伝えたことはないんだが。勝てない戦いをしないよう、俺を気遣ってくれたのだろうか。まあ俺、レベル1だもんな。
「……いいですよ。」
「なっ、コウジお前……!」
ジャックが、俺の方を見て戦慄いた。
お前が俺の事を気遣ってくれているのは分かる。だが、心配無用だ。なんせ俺には、とっておきの武器があるからな。
「ふっ、勝負を受けるのか?」
「はい。ところで、剣以外の使用はありですか?」
「勿論だ。お前程度が相手では、余興にもならんからな。それと、俺はこの訓練用の木刀でやってやる。お前はその剣を使え」
そう言って、おじさんは案山子を店内に持っていった。その間に、スキルの発動確認をする。……よし、ちゃんと発動するな。
……フッフッフ。見ていろよ? 俺の本気マジをなあ…!
「両者、構えろ」
ドスの利いた鋭い声が、広い裏庭に響く。俺は剣を鞘から抜き、構えた。頭には、勝利への道筋が浮かんでいる。ただ前を、目の前の敵を見据える目は、黒炎が宿っているかのように静かに燃えていた。
ジャックが俺を見、そして好敵手を見る。そして、紅色の軍旗を空高く掲げた。
「始め!」
刹那、体が風を切った。抵抗を物ともせず、ただ敵を屠るための弾丸となったのだ。勢い良く懐に入り込み、一突き。突かれた男はなんとか体勢を立て直そうと試みるが、失敗。思った以上に、みぞおちを突かれたダメージは大きかったようだ。
体が傾いた。ドサッと倒れ込んだ男の姿を目視した審判は、その男のもとに駆け寄ると、白旗を上げた。
勝者であるおじさんは、無様に倒れた俺を一瞥すると店の中へと去っていった。
早すぎる終わりであった。
……俺の……無双イベントが……。
武器屋のおじさんは、そう言って剣を渡してきた。
カウンター奥のドアを抜けると、柵で囲まれた修練場があった。真ん中に無造作に立てられた案山子は、幾度剣で切りつけられたのか、ボロボロの状態である。はあ、俺もあんな風になるのかな……。
「自分にあった剣っていうのは、実戦の中で見つけるのが一番だ。……真逆、剣を握ったことがない、なんて言わねえよなあ……?」
なんて、挑発するような笑みを浮かべるおじさん。
言う。超言います。剣どころか、刃物ですら調理実習以外で握ったことねえよ。ていうか、この人分かって言ってんだろ。
試しに、手元にある剣を軽く振ってみる。……なるほど、結構重い。俺が持っているのは、まあ普通のサイズの普通の剣だ。ゲームだったらブロンズソードとか言えるレベル。最も、比べる対象がジャックの大剣だけなのだが。
「構えも振り方も、まるで素人だ。それじゃあ、俺どころか訓練兵にも勝てやしないぜ」
「……うーん……。」
くそ、こんなことなら剣の素振りの練習でもしとけばよかった。中2の時に色々こじらせて買った剣のレプリカも、3日で飽きてお蔵入りになっちまったし……。
「……ボルグさん。さっきも言いましたが、彼は転生者です。幼い頃から剣の鍛錬をする我々とは違い、剣を握ったことなどないのですから、どうかご容赦を……。」
そう言って、ジャックが頭を下げた。……ジャックには、俺が剣を握ったことがないなんて伝えたことはないんだが。勝てない戦いをしないよう、俺を気遣ってくれたのだろうか。まあ俺、レベル1だもんな。
「……いいですよ。」
「なっ、コウジお前……!」
ジャックが、俺の方を見て戦慄いた。
お前が俺の事を気遣ってくれているのは分かる。だが、心配無用だ。なんせ俺には、とっておきの武器があるからな。
「ふっ、勝負を受けるのか?」
「はい。ところで、剣以外の使用はありですか?」
「勿論だ。お前程度が相手では、余興にもならんからな。それと、俺はこの訓練用の木刀でやってやる。お前はその剣を使え」
そう言って、おじさんは案山子を店内に持っていった。その間に、スキルの発動確認をする。……よし、ちゃんと発動するな。
……フッフッフ。見ていろよ? 俺の本気マジをなあ…!
「両者、構えろ」
ドスの利いた鋭い声が、広い裏庭に響く。俺は剣を鞘から抜き、構えた。頭には、勝利への道筋が浮かんでいる。ただ前を、目の前の敵を見据える目は、黒炎が宿っているかのように静かに燃えていた。
ジャックが俺を見、そして好敵手を見る。そして、紅色の軍旗を空高く掲げた。
「始め!」
刹那、体が風を切った。抵抗を物ともせず、ただ敵を屠るための弾丸となったのだ。勢い良く懐に入り込み、一突き。突かれた男はなんとか体勢を立て直そうと試みるが、失敗。思った以上に、みぞおちを突かれたダメージは大きかったようだ。
体が傾いた。ドサッと倒れ込んだ男の姿を目視した審判は、その男のもとに駆け寄ると、白旗を上げた。
勝者であるおじさんは、無様に倒れた俺を一瞥すると店の中へと去っていった。
早すぎる終わりであった。
……俺の……無双イベントが……。
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