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3話 『ネコは北の国の住人を助ける』
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俺が助けた彼は「オルディオ」といい、十年前からこの集落で暮らしている二十歳の青年だった。
ここは国中の住民が集まって出来た集落で、数年前は今よりも人がいたとオルディオは教えてくれた。
「……ここ以外に人が集まって暮らしている所はあるのか?」
「ないと思います。魔物の被害や干ばつから逃れて生き延びた人が集まって出来た集落なので、他に同じ生活をしている場所があるとは……」
「北の国は、最初からこの状態じゃなかったのか……」
「僕が子供の頃は、少なくとも作物も良く育ち、動物もいて自然も各地に存在していました。子供達が伸び伸びと暮らせるような豊かな環境で、大きな町も王都だってあったんです」
「その町や王都は……」
俺の問いに、オルディオは首を振って答えた。
「小さな町や村が先に魔物や干ばつの被害にあって、それから徐々に国の中枢部に広がって行きました。今は、瓦礫の山になっているかもしれません」
「……国は動かなかったのか?」
経験上、環境被害や魔物被害、人的被害が起きた場合はどんな小さな村であっても国全体の被害を防ぐ為に直ぐに国が対処し、必要なら騎士団や治療団を派遣することも当たり前だった。これは東の国の対処法で他の国は違うやり方や考え方があるのかも知れない。ただ、被害が拡大する中で、国王が何の対処もせずに過ごしていたなんて考えられない。
「被害が広がり始めた頃、王が病にかかって伏せていたんです。王には後継者がいなかったので、国民が不安になっていたのを覚えています。被害が王都周辺の町にまで及ぶ頃には、王は亡くなっていました」
国の主体となるのは、国を束ねる「国王」だ。これはどの国にも言えることで「国王がいるから国は安泰だ」と言われているほど王という存在は大きい。そんな国王が病に伏せ、尚且つ次期国王となる存在がいないとなれば国民は不安になるだろう。「王を失った国は荒れる」とは言われているけど、話を聞くとあながちそれは間違っていないのかもしれない。それに、この集落には貧しい村や町で暮らしていた人達ばかりで貴族や王族関係だった人は一人もいない。それは貴族が貧しい生活に耐性がなく、貧しい食事に口に付けなかったり、家の財産を気にして逃げ遅れたりして生き延びれなかったのが原因ではないかとオルディオは言った。
「そうか……」
「あ! あの家です!」
この国で起きたことを聞きながら向かっていた場所は、周囲の家と同じく傾いている家。
「……君があの場所にいたのは、あの魔物からこの家を遠ざける為だったのか?」
何となくそう聞くと、オルディオは何も言わず苦笑いを浮かべた。
「は、早くアザルドさんを連れて行きましょう!」
オルディオは、足早に家の中に入っていく。
(自分が囮になれば、他の人が助かる……か)
魔物に襲われている時は弱い人だと思っていたけど、他人を思い自分の身を危険に晒すのは勇気がいる事だし、それを行動に移せるのは簡単に出来ることじゃない。それが出来たオルディオは守られだけの弱い人ではない。
「アザルドさん、教会に行きましよう! 今なら魔物もいないし、大丈夫だから」
オルディオの後を追って家の中に入り、奥の部屋に行くとベットの上で横になっている中年の男がいた。
男は「アザルド」といい、オルディオの幼馴染の父親でオルディオとは昔からの知り合いらしく、教会に避難する際、家族に「先に避難いろ」と言って家に残っているとその家族から聞いたオルディオは、「自分が連れてくる」と約束をしていた。
「オルディオか……必要ない。わしの事は良い……魔物がいないのなら早く教会に行きなさい」
「そんなこと出来ないです! ルネア達と約束たんです。連れて来るって!」
「すまんな……だが、こんな死に目が近い病人を生かした所でかえって迷惑になる。これ以上、あいつ等の負担になりたくないんだ……」
「そんなこと……」
頑なに「行かない」と答えるアザルドに、オルディオは困っていた。それに見兼ねた俺は、声をかける。
「……その人も病に侵されているのか?」
「だ、誰だ? ネコ?」
横になっているアザルドからは俺は見えていないらしく、俺はベットに飛び乗り姿を見せる。
「アザルドさんも俺と同じ病で、体を動かせなくなってしまって……ギルさん、お願いします。アザルドさんの病を治してください」
「ギル……ネコに名まで与えて、何を言っているんだ。オルディオも知っているだろ? どんな薬草を試しても治らなかったんだ。それなのに、ただのネコがどうこの病を治すんだ。夢でも見たんじゃないのか」
アザルドはオルディオが妄想で話していると思ったらしく、話を信じようとしなかった。
「夢なんかじゃないよ! 俺もこの人に治してもらったんだ! 信じてよ、アザルドさん!」
「……いや、わしもお前も夢を見ているんだ。お前はわしと違って若いから、自然に病が治ることもあるさ。気を遣わせてすまんな」
アザルドはこのままだと先は永くないと自分でも分かっているのかもしれない。その証拠に、アザルドの目には光がなく生気も感じられない。
「オルディオ、教会に行こう」
「なっ! アザルドさんを置いてなんて! 何で、俺の時みたいに治してくれないんですか!?」
「……この人からは、生きたいという生気が感じない。人によって、助かることを望まない人もいるんだ」
俺の治癒の力は、他人よりも優れていて、騎士団に所属していても、現場によっては治癒団に加わることもあったから、傷ついた人の気持ちに触れる機会が他の騎士団員よりも多かったと思う。お礼を言われる事もあったけど、逆に「何故、助けた!」と治した後に恨まれる事もあった。救えるから救っても、助けられる事を望んでない人からしたら、嬉しくない行為になると俺はその時に学んだ。
「……出来るなら治したいさ。娘の花嫁姿もみたい、愛する妻と一緒にいたい。できるだけ長く……だが、そんな望み……」
「……それが本音なら俺が治してやる。けど、後から治したくなかったとか文句は言うなよ?」
「そんな文句は言わん。少しでも永く生きれるなら、それだけで十分だ」
アザルドの言葉に嘘はない。
生きたいと思っていることは本当なんだろうと思った俺はアザルドの病も治すことにし、オルディオの時と同様に意識を精力に集中させる。
「この光は……体の重みが消えていく」
「もう少し待って、左足の骨も治すから」
「何故、左足のことを……」
使い手によるけど、治癒の力を使うと相手が患っている病の部位や何処に怪我をしているかを感じ取る事ができる。俺はそれでアザルドの左足の足首の骨が折れ変形しているのが分かり、歩きやすくする為に骨の形を元に戻した。
「体の不調は治ったか? 足に違和感はないか?」
「あ、ああ。体は軽し、足にも違和感はない。お前は一体……」
ちゃんと治っているか聞くと、アザルドは目を丸くして聞いてくる。
「何者って言われても……俺は東の国で騎士をしていた人間だ。こんな姿だけど……」
「東の国……確か治癒の力とか言う特殊な力が使える者がいると聞いたことがある。さっきのはその力なのか?」
「え? う、うん。力のこと知ってたんだな」
てっきりこの姿の事を言われると思っていたけど、アザルドは特に聞いてこなかった。
「実際に見た訳じゃないから半信半疑だったが、こうして力の世話になると存在するんだと実感するな。本当にありがとう」
「お、俺はただ出来ることをしただけだし……」
「いや、お前さんがいなかったらわしは、生きる事を諦めていた。家族に会える体にしてくれてありがとう」
「僕も、ありがとうございます。アザルドさんを助けてくれて」
アザルドは涙ぐみながら言ってきた。
そんな二人の言葉に照れながら、俺は「教会に行かないのか?」と聞き、笑みを浮かべる二人と教会に向かった。
(やっぱり、何かおかしいよな……)
オルディオを治癒した時も思ったけど、やっぱり治癒の時間が短く感じる。どんな病や怪我を治すことが出来ると言っても、症状や怪我の具合で治癒にかかる時間や消費する精力は変わってくるし、重症な病になればなるほど数日かけて治癒することだってある。アザルドはオルディオよりも重症に見えたのに、まるで軽い風邪の治癒をした時みたいに精力の消費は少なく時間をかけることなく直ぐに治せた。そんな事を考えていると、オルディオが声をかけてきた。
「あの。ギルさん、どうかしたんですか?」
「いや、何でもないよ。それより、この空気の悪さは異常だよな。二人は良く耐えられるね」
「そうですか? 俺は気にしてませんでしたけど……そんなに酷いですか?」
「え? こんなに鼻が曲がりそうな異臭がしているのに、何も感じないの?」
「あ、ああ。こんなものじゃないのか?」
嗅覚を失うんじゃないかと思うくらいの異臭なのに、二人は平然としている。ここで長年暮らしてきたから慣れてしまっているのか、それとも俺がネコになったせいで鼻が利きすぎているだけなのか。
「じゃ、じゃあさ、臭いがあるとしたら何が原因だと思う?」
「原因……あ……」
明らかに思い当たる何かがある様な反応をしたのに、オルディオは目を逸らし口を閉じた。
「何か、心当たりがあるのか?」
「い、いえ、そんな事は……」
「きっと、あれだ。私も、思い浮かべたからな」
口籠るオルディオに代わり、アザルドが足を止め答える。
アザルドの視線の先に目を向けると、そこには想像を超えた光景が広がっていた。
「あ、あれって……死体?」
そこには、病で亡くなったとみられる人が山積みで放置されていた。。
死体は腐敗しているのか、感じていた異臭とはまた違う臭いがしていて、微かに小さい羽虫の音も聞こえてくる。
「ここには墓地もないから、死体は燃やして灰にしている。だが、それが出来る奴がいなくて一箇所に集めるだけになっているんだ」
「いないって……」
「病で倒れたり体を上手く動かせなくなった人が増えて、死体処理の作業が出来なくなったんだ。それまでは、男が中心になって皆でちゃんとやっていたんだがな……」
ここで流行っている病は、体の自由を奪い気持ちを蝕んでいくもので、重症化するタイプの病。
「……もしかして、これって……」
オルディオの話で病の特徴を整理すると、ある症状に似ていることに気付いた。だけど、確証となる証拠がないから、これが原因だとは口に出来ない。
「どうかしたか?」
「いや……この近くに魔物の死骸はなかったか?」
「魔物の死骸……そういえば、ここに住むと決めた時に魔物の死骸がゴロゴロあって、邪魔だったから土に埋めた事はあるが……」
「そうか……急いで教会に行こう!」
俺の予想が正しければ、これは病なんかじゃない。あるものが原因で起きた中毒症状だ。
「ここが、教会だ」
「……これが」
早足でついた場所には、教会とは呼べない不格好な建物がある。
外壁は形も太さもバラバラな板を繋ぎ合わせられ、板同士の隙間があちこちにある。屋根は少量の藁が使われていて、雨風を防ぐには頼りない。
「一応、守り神は祭っている。まぁ、ただの気休めとしか思っていないけどな」
「国が荒れ始めた時も、神様は何もしてくれなかったし、神様はいないって思っている人が殆なんですよ」
そう言いながらオルディオとアザルドは、まるで家畜小屋の様な教会に入って行く。
それぞれの国には信仰する「神」がいて、人々はその存在を信じ崇拝している。
北の国が信仰する神は「フィーレス」といい、「神秘の神」とも呼ばれている。魔法という神秘の力を操る「魔導士」ともされ、神話の話には神々の中心になってこの世を作った神とされている。だけど、今となってはそんな偉大な神ですら人は信じられなくなっている。
(まぁ、こんな状況で神を信じられるわけないよな)
実際、俺も母国の神をそこまで崇拝していた訳じゃない。どんなに国の神が偉大だとしても、神に祈りを捧げるだけで生活が豊かになるわけでも、仕事が上手くいくわけでも、病が治るわけでもない。実際に、自分が動き出さなければ何も始まらないし、解決もしない。だから俺は、神がいなくても人は生きていけるとさえ思っていたりする。
「あなた?」
教会の中に入ると、中には明かりはなく暗闇に包まれていた。その奥から女の声が小さく聞こえ、アザルドがその声に答える。
「リザーナ……」
「あなた! 良かった……無事で、良かった……」
「すまない。不安にさせてしまって……」
アザルドと抱き合う様子から、この人はアザルドの妻だと直ぐに分かった。そして、オルディオに話しかけているのがアザルドの娘で、オルディオの幼馴染なのだろう。
「ありがとう、オルディオ。お父さんを、連れてきてくれて……あなたも無事で良かった……」
「遅くなってごめん。魔物に見つかって逃げていたんだ」
「魔物! け、怪我はないの! 大丈夫なの!」
「落ち着いてルネア。怪我はしていないし、魔物もいなくなったんだ」
心配する幼馴染に、オルディオはそう言って俺に視線を向けた。
「この人が魔物を倒して、俺やアザルドさんの病を治してくれたんだ」
「この人って……ネコ、よね?」
「言われてみれば、二人の顔色が良くなっているけど、このネコがどうやって魔物を倒したり、病を治したの?」
アザルドの妻もオルディオの話を聞いていたらしく、疑う様な目で俺を見ながらアザルドに聞いている。
このまま二人に任せても、きっと二人が疑われるだけで誰も信じようとしないだろうと思った俺は、暫く閉じていた口を動かす。
「えーと。驚くと思うし疑うのは無理もないけど、全部本当の事なんだ。二人は嘘は話していないよ」
「ネコが……しゃ、べった………」
「言葉を話すネコなんて……ま、ものではないの?」
「信じるのは難しいと思うけど、俺は人なんだ。理由あってこの姿にされているだけなんだ」
これで信じてもらえるなんて思っていないけど、出来るだけ皆を安心させるに話した方が良いと思って、簡単だけど自分の事を話した。
「そんなこともあるんだな……」
「姿を変えられた上に、こんな見知らぬ土地に放り出されて大変だったろうに……」
だけど、予想外に皆は俺の話を受け入れて慰めの言葉を返してきた。
「ギルさん。病で倒れている人はあっちにいます」
「あ、ああ。分かった」
オルディオの後をついて行くと、薄い布団に横になる人が数人いた。
「どうですか? 治せますか?」
「アザルドより深刻な状態な人もいるけど、皆治せると思う」
俺は、一番深刻な状態になっている人から治癒を始めた。
(やっぱり治癒の時間もかからないし、精力の消費も少ない……)
一番重症だと思う人の治癒もすんなり終わってしまう。やっぱりこれは「瘴気」の中毒症状だ。
瘴気は、魔物が放つ毒気で人だけじゃなく生き物すべてを害してしまう。動物が瘴気に当たれば、命を落とす個体もいれば、魔物に変異する個体もある。植物なら根から腐り新たな芽を生やせにくくなる。そして、人なら目眩や吐き気、頭痛といった症状や食欲不振や体の不自由さを感じるようになる。それが悪化すると栄養失調で最悪死に至る。中には、人格が変わるという事例もある。この瘴気による中毒症状は、普通の薬では治らない。治すには二つの方法がある。一つは「浄化」も促す「コクルの実」を煎じて作る薬を飲む。コクルの実は、一般的に果物として売り出されているが、実は薬としても処方されている。もう一つは、治癒の力を使って体内に蔓延している瘴気を浄化する。だけど、どちらの治癒方法には共通した欠点がある。それは、一時的な効果だということ。
「し、信じられん……あんなに息も出来ずにいたのに……」
「体が軽いわ……ありがとう」
体が楽になった本人やその遺族は、治ったことに喜んでいるが、その原因を知らない彼らはこの治癒が一時的な凌ぎにしかならない事を知らない。
俺は中毒症状の人を治した後、怪我人も診て回り一段落したのを確認してから、アザルドに話しかける。
「アザルド、少し良いか?」
「何だ?」
「魔物の死骸を、埋めた場所を教えて欲しいんだ」
この集落を覆う異臭と、息苦しい空気。これこそが瘴気がある証拠だったのに、俺はそれに感じながら疑うこともしなかった。
魔物の皮や骨、爪や牙などは日用品や薬、工具や武具等に使われ捨てる部位がない。瘴気は、魔物の死骸をそのまま放置することで発生するのが一般的で、この集落に充満している瘴気の元は、死骸を埋めた場所にあると俺は考えた。
「確か、集落の中心部あたりに埋めたと思うが……」
俺はアザルドに詳しい位置を教えてもらい、その場所に向う。
アザルドはそこまで案内すると言ってくれたけど、瘴気の元となると瘴気も必然的に濃くなる。それが分かっているのに、耐性がない一般人を連れてはいけないから、それを断り、俺は一人で向かった。
ここは国中の住民が集まって出来た集落で、数年前は今よりも人がいたとオルディオは教えてくれた。
「……ここ以外に人が集まって暮らしている所はあるのか?」
「ないと思います。魔物の被害や干ばつから逃れて生き延びた人が集まって出来た集落なので、他に同じ生活をしている場所があるとは……」
「北の国は、最初からこの状態じゃなかったのか……」
「僕が子供の頃は、少なくとも作物も良く育ち、動物もいて自然も各地に存在していました。子供達が伸び伸びと暮らせるような豊かな環境で、大きな町も王都だってあったんです」
「その町や王都は……」
俺の問いに、オルディオは首を振って答えた。
「小さな町や村が先に魔物や干ばつの被害にあって、それから徐々に国の中枢部に広がって行きました。今は、瓦礫の山になっているかもしれません」
「……国は動かなかったのか?」
経験上、環境被害や魔物被害、人的被害が起きた場合はどんな小さな村であっても国全体の被害を防ぐ為に直ぐに国が対処し、必要なら騎士団や治療団を派遣することも当たり前だった。これは東の国の対処法で他の国は違うやり方や考え方があるのかも知れない。ただ、被害が拡大する中で、国王が何の対処もせずに過ごしていたなんて考えられない。
「被害が広がり始めた頃、王が病にかかって伏せていたんです。王には後継者がいなかったので、国民が不安になっていたのを覚えています。被害が王都周辺の町にまで及ぶ頃には、王は亡くなっていました」
国の主体となるのは、国を束ねる「国王」だ。これはどの国にも言えることで「国王がいるから国は安泰だ」と言われているほど王という存在は大きい。そんな国王が病に伏せ、尚且つ次期国王となる存在がいないとなれば国民は不安になるだろう。「王を失った国は荒れる」とは言われているけど、話を聞くとあながちそれは間違っていないのかもしれない。それに、この集落には貧しい村や町で暮らしていた人達ばかりで貴族や王族関係だった人は一人もいない。それは貴族が貧しい生活に耐性がなく、貧しい食事に口に付けなかったり、家の財産を気にして逃げ遅れたりして生き延びれなかったのが原因ではないかとオルディオは言った。
「そうか……」
「あ! あの家です!」
この国で起きたことを聞きながら向かっていた場所は、周囲の家と同じく傾いている家。
「……君があの場所にいたのは、あの魔物からこの家を遠ざける為だったのか?」
何となくそう聞くと、オルディオは何も言わず苦笑いを浮かべた。
「は、早くアザルドさんを連れて行きましょう!」
オルディオは、足早に家の中に入っていく。
(自分が囮になれば、他の人が助かる……か)
魔物に襲われている時は弱い人だと思っていたけど、他人を思い自分の身を危険に晒すのは勇気がいる事だし、それを行動に移せるのは簡単に出来ることじゃない。それが出来たオルディオは守られだけの弱い人ではない。
「アザルドさん、教会に行きましよう! 今なら魔物もいないし、大丈夫だから」
オルディオの後を追って家の中に入り、奥の部屋に行くとベットの上で横になっている中年の男がいた。
男は「アザルド」といい、オルディオの幼馴染の父親でオルディオとは昔からの知り合いらしく、教会に避難する際、家族に「先に避難いろ」と言って家に残っているとその家族から聞いたオルディオは、「自分が連れてくる」と約束をしていた。
「オルディオか……必要ない。わしの事は良い……魔物がいないのなら早く教会に行きなさい」
「そんなこと出来ないです! ルネア達と約束たんです。連れて来るって!」
「すまんな……だが、こんな死に目が近い病人を生かした所でかえって迷惑になる。これ以上、あいつ等の負担になりたくないんだ……」
「そんなこと……」
頑なに「行かない」と答えるアザルドに、オルディオは困っていた。それに見兼ねた俺は、声をかける。
「……その人も病に侵されているのか?」
「だ、誰だ? ネコ?」
横になっているアザルドからは俺は見えていないらしく、俺はベットに飛び乗り姿を見せる。
「アザルドさんも俺と同じ病で、体を動かせなくなってしまって……ギルさん、お願いします。アザルドさんの病を治してください」
「ギル……ネコに名まで与えて、何を言っているんだ。オルディオも知っているだろ? どんな薬草を試しても治らなかったんだ。それなのに、ただのネコがどうこの病を治すんだ。夢でも見たんじゃないのか」
アザルドはオルディオが妄想で話していると思ったらしく、話を信じようとしなかった。
「夢なんかじゃないよ! 俺もこの人に治してもらったんだ! 信じてよ、アザルドさん!」
「……いや、わしもお前も夢を見ているんだ。お前はわしと違って若いから、自然に病が治ることもあるさ。気を遣わせてすまんな」
アザルドはこのままだと先は永くないと自分でも分かっているのかもしれない。その証拠に、アザルドの目には光がなく生気も感じられない。
「オルディオ、教会に行こう」
「なっ! アザルドさんを置いてなんて! 何で、俺の時みたいに治してくれないんですか!?」
「……この人からは、生きたいという生気が感じない。人によって、助かることを望まない人もいるんだ」
俺の治癒の力は、他人よりも優れていて、騎士団に所属していても、現場によっては治癒団に加わることもあったから、傷ついた人の気持ちに触れる機会が他の騎士団員よりも多かったと思う。お礼を言われる事もあったけど、逆に「何故、助けた!」と治した後に恨まれる事もあった。救えるから救っても、助けられる事を望んでない人からしたら、嬉しくない行為になると俺はその時に学んだ。
「……出来るなら治したいさ。娘の花嫁姿もみたい、愛する妻と一緒にいたい。できるだけ長く……だが、そんな望み……」
「……それが本音なら俺が治してやる。けど、後から治したくなかったとか文句は言うなよ?」
「そんな文句は言わん。少しでも永く生きれるなら、それだけで十分だ」
アザルドの言葉に嘘はない。
生きたいと思っていることは本当なんだろうと思った俺はアザルドの病も治すことにし、オルディオの時と同様に意識を精力に集中させる。
「この光は……体の重みが消えていく」
「もう少し待って、左足の骨も治すから」
「何故、左足のことを……」
使い手によるけど、治癒の力を使うと相手が患っている病の部位や何処に怪我をしているかを感じ取る事ができる。俺はそれでアザルドの左足の足首の骨が折れ変形しているのが分かり、歩きやすくする為に骨の形を元に戻した。
「体の不調は治ったか? 足に違和感はないか?」
「あ、ああ。体は軽し、足にも違和感はない。お前は一体……」
ちゃんと治っているか聞くと、アザルドは目を丸くして聞いてくる。
「何者って言われても……俺は東の国で騎士をしていた人間だ。こんな姿だけど……」
「東の国……確か治癒の力とか言う特殊な力が使える者がいると聞いたことがある。さっきのはその力なのか?」
「え? う、うん。力のこと知ってたんだな」
てっきりこの姿の事を言われると思っていたけど、アザルドは特に聞いてこなかった。
「実際に見た訳じゃないから半信半疑だったが、こうして力の世話になると存在するんだと実感するな。本当にありがとう」
「お、俺はただ出来ることをしただけだし……」
「いや、お前さんがいなかったらわしは、生きる事を諦めていた。家族に会える体にしてくれてありがとう」
「僕も、ありがとうございます。アザルドさんを助けてくれて」
アザルドは涙ぐみながら言ってきた。
そんな二人の言葉に照れながら、俺は「教会に行かないのか?」と聞き、笑みを浮かべる二人と教会に向かった。
(やっぱり、何かおかしいよな……)
オルディオを治癒した時も思ったけど、やっぱり治癒の時間が短く感じる。どんな病や怪我を治すことが出来ると言っても、症状や怪我の具合で治癒にかかる時間や消費する精力は変わってくるし、重症な病になればなるほど数日かけて治癒することだってある。アザルドはオルディオよりも重症に見えたのに、まるで軽い風邪の治癒をした時みたいに精力の消費は少なく時間をかけることなく直ぐに治せた。そんな事を考えていると、オルディオが声をかけてきた。
「あの。ギルさん、どうかしたんですか?」
「いや、何でもないよ。それより、この空気の悪さは異常だよな。二人は良く耐えられるね」
「そうですか? 俺は気にしてませんでしたけど……そんなに酷いですか?」
「え? こんなに鼻が曲がりそうな異臭がしているのに、何も感じないの?」
「あ、ああ。こんなものじゃないのか?」
嗅覚を失うんじゃないかと思うくらいの異臭なのに、二人は平然としている。ここで長年暮らしてきたから慣れてしまっているのか、それとも俺がネコになったせいで鼻が利きすぎているだけなのか。
「じゃ、じゃあさ、臭いがあるとしたら何が原因だと思う?」
「原因……あ……」
明らかに思い当たる何かがある様な反応をしたのに、オルディオは目を逸らし口を閉じた。
「何か、心当たりがあるのか?」
「い、いえ、そんな事は……」
「きっと、あれだ。私も、思い浮かべたからな」
口籠るオルディオに代わり、アザルドが足を止め答える。
アザルドの視線の先に目を向けると、そこには想像を超えた光景が広がっていた。
「あ、あれって……死体?」
そこには、病で亡くなったとみられる人が山積みで放置されていた。。
死体は腐敗しているのか、感じていた異臭とはまた違う臭いがしていて、微かに小さい羽虫の音も聞こえてくる。
「ここには墓地もないから、死体は燃やして灰にしている。だが、それが出来る奴がいなくて一箇所に集めるだけになっているんだ」
「いないって……」
「病で倒れたり体を上手く動かせなくなった人が増えて、死体処理の作業が出来なくなったんだ。それまでは、男が中心になって皆でちゃんとやっていたんだがな……」
ここで流行っている病は、体の自由を奪い気持ちを蝕んでいくもので、重症化するタイプの病。
「……もしかして、これって……」
オルディオの話で病の特徴を整理すると、ある症状に似ていることに気付いた。だけど、確証となる証拠がないから、これが原因だとは口に出来ない。
「どうかしたか?」
「いや……この近くに魔物の死骸はなかったか?」
「魔物の死骸……そういえば、ここに住むと決めた時に魔物の死骸がゴロゴロあって、邪魔だったから土に埋めた事はあるが……」
「そうか……急いで教会に行こう!」
俺の予想が正しければ、これは病なんかじゃない。あるものが原因で起きた中毒症状だ。
「ここが、教会だ」
「……これが」
早足でついた場所には、教会とは呼べない不格好な建物がある。
外壁は形も太さもバラバラな板を繋ぎ合わせられ、板同士の隙間があちこちにある。屋根は少量の藁が使われていて、雨風を防ぐには頼りない。
「一応、守り神は祭っている。まぁ、ただの気休めとしか思っていないけどな」
「国が荒れ始めた時も、神様は何もしてくれなかったし、神様はいないって思っている人が殆なんですよ」
そう言いながらオルディオとアザルドは、まるで家畜小屋の様な教会に入って行く。
それぞれの国には信仰する「神」がいて、人々はその存在を信じ崇拝している。
北の国が信仰する神は「フィーレス」といい、「神秘の神」とも呼ばれている。魔法という神秘の力を操る「魔導士」ともされ、神話の話には神々の中心になってこの世を作った神とされている。だけど、今となってはそんな偉大な神ですら人は信じられなくなっている。
(まぁ、こんな状況で神を信じられるわけないよな)
実際、俺も母国の神をそこまで崇拝していた訳じゃない。どんなに国の神が偉大だとしても、神に祈りを捧げるだけで生活が豊かになるわけでも、仕事が上手くいくわけでも、病が治るわけでもない。実際に、自分が動き出さなければ何も始まらないし、解決もしない。だから俺は、神がいなくても人は生きていけるとさえ思っていたりする。
「あなた?」
教会の中に入ると、中には明かりはなく暗闇に包まれていた。その奥から女の声が小さく聞こえ、アザルドがその声に答える。
「リザーナ……」
「あなた! 良かった……無事で、良かった……」
「すまない。不安にさせてしまって……」
アザルドと抱き合う様子から、この人はアザルドの妻だと直ぐに分かった。そして、オルディオに話しかけているのがアザルドの娘で、オルディオの幼馴染なのだろう。
「ありがとう、オルディオ。お父さんを、連れてきてくれて……あなたも無事で良かった……」
「遅くなってごめん。魔物に見つかって逃げていたんだ」
「魔物! け、怪我はないの! 大丈夫なの!」
「落ち着いてルネア。怪我はしていないし、魔物もいなくなったんだ」
心配する幼馴染に、オルディオはそう言って俺に視線を向けた。
「この人が魔物を倒して、俺やアザルドさんの病を治してくれたんだ」
「この人って……ネコ、よね?」
「言われてみれば、二人の顔色が良くなっているけど、このネコがどうやって魔物を倒したり、病を治したの?」
アザルドの妻もオルディオの話を聞いていたらしく、疑う様な目で俺を見ながらアザルドに聞いている。
このまま二人に任せても、きっと二人が疑われるだけで誰も信じようとしないだろうと思った俺は、暫く閉じていた口を動かす。
「えーと。驚くと思うし疑うのは無理もないけど、全部本当の事なんだ。二人は嘘は話していないよ」
「ネコが……しゃ、べった………」
「言葉を話すネコなんて……ま、ものではないの?」
「信じるのは難しいと思うけど、俺は人なんだ。理由あってこの姿にされているだけなんだ」
これで信じてもらえるなんて思っていないけど、出来るだけ皆を安心させるに話した方が良いと思って、簡単だけど自分の事を話した。
「そんなこともあるんだな……」
「姿を変えられた上に、こんな見知らぬ土地に放り出されて大変だったろうに……」
だけど、予想外に皆は俺の話を受け入れて慰めの言葉を返してきた。
「ギルさん。病で倒れている人はあっちにいます」
「あ、ああ。分かった」
オルディオの後をついて行くと、薄い布団に横になる人が数人いた。
「どうですか? 治せますか?」
「アザルドより深刻な状態な人もいるけど、皆治せると思う」
俺は、一番深刻な状態になっている人から治癒を始めた。
(やっぱり治癒の時間もかからないし、精力の消費も少ない……)
一番重症だと思う人の治癒もすんなり終わってしまう。やっぱりこれは「瘴気」の中毒症状だ。
瘴気は、魔物が放つ毒気で人だけじゃなく生き物すべてを害してしまう。動物が瘴気に当たれば、命を落とす個体もいれば、魔物に変異する個体もある。植物なら根から腐り新たな芽を生やせにくくなる。そして、人なら目眩や吐き気、頭痛といった症状や食欲不振や体の不自由さを感じるようになる。それが悪化すると栄養失調で最悪死に至る。中には、人格が変わるという事例もある。この瘴気による中毒症状は、普通の薬では治らない。治すには二つの方法がある。一つは「浄化」も促す「コクルの実」を煎じて作る薬を飲む。コクルの実は、一般的に果物として売り出されているが、実は薬としても処方されている。もう一つは、治癒の力を使って体内に蔓延している瘴気を浄化する。だけど、どちらの治癒方法には共通した欠点がある。それは、一時的な効果だということ。
「し、信じられん……あんなに息も出来ずにいたのに……」
「体が軽いわ……ありがとう」
体が楽になった本人やその遺族は、治ったことに喜んでいるが、その原因を知らない彼らはこの治癒が一時的な凌ぎにしかならない事を知らない。
俺は中毒症状の人を治した後、怪我人も診て回り一段落したのを確認してから、アザルドに話しかける。
「アザルド、少し良いか?」
「何だ?」
「魔物の死骸を、埋めた場所を教えて欲しいんだ」
この集落を覆う異臭と、息苦しい空気。これこそが瘴気がある証拠だったのに、俺はそれに感じながら疑うこともしなかった。
魔物の皮や骨、爪や牙などは日用品や薬、工具や武具等に使われ捨てる部位がない。瘴気は、魔物の死骸をそのまま放置することで発生するのが一般的で、この集落に充満している瘴気の元は、死骸を埋めた場所にあると俺は考えた。
「確か、集落の中心部あたりに埋めたと思うが……」
俺はアザルドに詳しい位置を教えてもらい、その場所に向う。
アザルドはそこまで案内すると言ってくれたけど、瘴気の元となると瘴気も必然的に濃くなる。それが分かっているのに、耐性がない一般人を連れてはいけないから、それを断り、俺は一人で向かった。
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