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『後輩は見た! 硬派の先輩が男と歩いているその現場を!(9)』
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『後輩は見た! 硬派の先輩が男と歩いているその現場を!(9)』
良かった!
京センパイは笑ってウチの謝罪を受け入れてくれた!
「は、はい、あざス……ありがとうございます……」
もう絶対に、ウチはこの人に無茶な事を言わないでおこう。
……けど顔見知りにはなれたし、同じガッコなんだから、顔を合わせてた時くらい挨拶はしてもいッスよね?
「あ、あの、京センパイ……これからは、顔合わせた時とか、その、よろしくお願いします……」
遠まわしに、知り合いでいてい欲しい、センパイと後輩の仲でいたいという頼み方をしてみた。
「おや? ボクは薫ちゃんをこんなに泣かしちゃったのに、お友達でいてくれるんだ?」
「ダ、ダチとかそんな。その何でも言うコト、ききますんで……駄賃で、たまに、手とか繋いでほしいなって……」
今、シメられた? ばかりというのに、ちょっとチョーシに乗ったかも。
そう思って京センパイを見上げると、その後ろで青葉センパイが、あきれたように天を仰いでいた。
まるで取返しのつかないヘマをウチがしたような顔だった。
「ばか……お前」
ぼそっと青葉センパイがつぶいやいたのが聞こえた時にはもう遅かった、そう知るのはこのあとすぐの事だ。
「聞いた、夏木さん? お駄賃にまたおてて握ってほしいって」
にっこりと笑った京センパイが、あんまり似合ってない黒縁メガネをはずして、胸ポケットにしまった。
「いいよ。かわいい後輩の頼みだもの。パシリなんてさせないけど、もしかしたらお願い事をするかもね?」
「は、はい! あざッス! いつでも呼んでください!」
やった!
青葉センパイの前で京センパイ公認の後輩、そんなポジションになれた!
これならあとで、こっそり青葉センパイにシメられたりしないッスね。
まあ、そんなこと、する人じゃないんスけど。
「さて。それじゃあ、かわいい後輩ちゃんを叩いてしまったお詫びをしないとね」
「あ、いえ、そんな」
ワビをいれるのはウチの方だし、あんなの叩かれたうちに入らない。
少なくとも痛みなんてまったくない。
頭と体はまだしびれてるけど。
「まぁまぁ。それじゃボクの気が済まないからね。さ、もう組んだ手は放していいよ」
「あ、はいッス」
さっきのポーズのままだったウチは、ようやく手を放した。
握っていた手首に自分の指の跡が残るほど力をこめていた。
「じゃあ、今度は手を前で組んでおいてね?」
「え?」
前で組む? こうッスかね?
ウチは言われるままに、スカートの前を両手で抑えるようなかっこうになって手を前で組む。
ウチはこの恰好が嫌いだ。
どうしたってデカくてジャマな胸を両サイドからつぶすような形になって、余計に大きく見えてしまう。
せめて少しでもそれを隠そうと、背を丸めると。
後ろから声がかかった。
「お、薫ちゃん、今から自分が何をされるかわかってるカンジだね?」
「え?」
ウチは京センパイの意図がつかめず、首だけを後ろにまわして振り返ると。
「ひゃん!」
今まで出した事のないような声をあげてしまい、同時に丸めていた背がピンと伸びた。
「京、京センパイ!? な、なにを!?」
「え? だからお詫びに、叩いたところをさすってあげようかなって」
「そ、そんな、そんなとこに、そんなこと、ひゃあああ!」
ふたたびウチの尻がさすられる。
わずかに残っていた、叩かれた感触なんて吹き飛んだ。
大きな手がウチの尻の上をいったりきたりしている。
人生で初めて味わう感触に、頭の中から茹で上がるよう。
「や、やめてくださッ、カンベンしてください!」
ウチはつい、組んでいた手を外して京センパイの手をとった。
「あーあ。薫ちゃん、手、放しちゃったね。これは痛い方のおしおきだよ?」
「え? あ……」
その話、終わったんじゃ? と思った瞬間。
「いっ!」
ペシッとまた尻を叩かれた。
手を離したペナルティなのか、さきほどより少しだけ強く。
けれど、そんな強弱なんてどうでもいいレベルの刺激がウチの背骨を伝って脳を痺れさせる。
「はい、じゃあ、また手を前で組んでね?」
「……う、うッス」
「痛かったねー。さすってあげるからねー」
そう言って京センパイは今、自分が叩いたばかりのところを優しくさすってくれる。
気持ちいい。
「ふ、ふぁ、ふぁぁ」
「痛いの痛いの、とんでいけー」
意識が飛んでいきそうッスよぉ!
控えめに言って今まで生きてきた中で、一番気持ちいい。
けど、これ、いいンスか? 本当にいいんスか!?
ウチはすぐそばで、腕組みして立っている青葉センパイを見る。
他人にこれほど助けてほしいと思ったことは無かった。
しかし青葉センパイは、そんなウチをチラリと見るなり、ため息をついて。
「はぁ……宮城。飽きたらいくぞ」
「もうちょっと。夏木さんも一緒に撫でる?」
「アホか」
青葉センパイは近くの壁にもたれかかって、あろうことかケータイなんてイジり始めた!
え!? これを見て放置!?
ホントに彼氏じゃないんスか!?
「あー、薫ちゃんのお尻は小さくてかわいいねぇ」
「あ、あざス……」
なん答えればいいんスかね、これ。
「悪かったな、アタシの尻はデカくて」
と、不機嫌そうな顔で、明らかに不機嫌な声が青葉センパイから飛んでくる。
しかし京センパイはそれに対してしかめっ面になって、こう言った。
「また尻って言う。お尻、お尻だよ? 言葉遣いが悪い子は嫌いだな」
「悪かったよ! アタシのお尻は大きくて!」
言い直した! 言い直させた!?
え、京センパイが上ってことっッスか!?
もうホント、この二人の関係がわからないんスけど!!
結局、硬直したままのウチはそのまま五分ほど尻を撫でられ続けた。
「ふぅ、今日は満足。薫ちゃん、また遊ぼうね?」
「う、うッス」
ウチは快感でガクガクと震える足腰に気合をいれて、なんとか立ったまま返事をした。
「お待たせ、夏木さん。じゃ、お茶しに行こうか。涼香さん、帰ってくるの明日の何時?」
「だから人の母親を名前で呼ぶな! じゃーな、薫」
「お、お疲れさまッス……」
ウチに軽く手を振って去っていくセンパイたち。
少し離れたところで、京センパイが青葉センパイの尻を撫で始めたものの、足を踏まれた京センパイが悲鳴をあげていた。
それでも懲りずに撫でる京センパイの手を振り払う事なく、青葉センパイはたちはウチの視界から消えていった。
「……青葉センパイ、マジ大人ッス……」
ウチはそれを、ビショビショに濡れた下着の感触とともに見送った。
そして、帰宅後。
十九時時ころには店の手伝いを終えたウチは、母さんが閉店まで店を回している間、家事をする。
たくさんいる妹の夕食は、母さんが店で作った夕飯を持って帰り(自宅の一階が店で二階が自宅だ)、それを喰わせた後は風呂に入れてやって、最後は一番チビの妹と同じ布団に入って寝付かせる。
「……ん」
どうしても、昼間の京センパイの感触が体の芯に残っていて自然とパンツの中に手が伸びてしまう。
布団の中でこっそりオナるものの。
「ねーちゃん、ゴソゴソしないでぇ」
「ご、ごめんな」
と、幼い声でとがめられる。
青葉センパイがベッドの上で反省しろって言った意味、よーやく理解した。
(ご、ごうもんッスよ)
ウチは火照る体をただもてあまして一晩を過ごす事になり、翌日、寝不足の顔を見た青葉センパイに笑われた。
ちなみに先輩の目にもクマがあったが、ウチとはずいぶん違った意味での寝不足なのは聞くまでもない。
青葉センパイ、マジ、大人ッス。
だが、この時はウチはまだ思いもしていなかった。
***
――その日からわずか、一か月後。
「夏木センパイ」
「なんだよ」
「ウチら、本当にコレ着るんスか?」
「しゃーねぇーだろ。そういう約束と引き換えに海に来てるんだから」
ウチは手にしている水着……というか、細いヒモに小さな三角の布切れがついた水着らしき物体を持ったまま、夏木センパイにたずねかける。
夏木センパイの手にも色違いだが同じものがある。
ウチが黒、夏木センパイは白だ。
「けど、いくらなんでもこれは……ウチらがこんなの着けたら、スイカの紐みたいじゃないすか」
「あのバカに何でも言う事きくっつったのお前だろ」
それはそーなんスけどね。
ウチみたいな乳をした女がこんなのを着て海に出るって、もはや周囲への嫌がらせレベルなんスよね。
しかもウチより胸のデカい夏木センパイも一緒。
けれど、それを望んだというか、この水着を用意したのが。
「宮城と腕組んで海辺を歩きたいんだろ? ならアイツが出した条件、飲むしかねーだろうが」
そうなスけど、まさかこんなことをさせられるとは……。
「そろそろ行くぞ。アイツ、着替えるの早いからな」
「う、うッス」
海の家の更衣室から出て海辺に出ると、人だかりがあった。
十人以上の女に囲まれた中心には。
「ああ、二人とも。こっちだよ。皆さんごめんなさい、友人が来ましたので」
一斉に人だかりの視線がウチらに突き刺さった。
嫉妬。
そんな生易しいものじゃない。
殺気。
ガキのケンカなんかじゃ感じたことのない、ドロドロした殺意が向けられた。
けれど、それは仕方ない。
手を振ってウチらを迎えたの京センパイの水着姿は超ヤバかった。
上半身は素肌で上に開けっ放しの白いパーカー。
下着は……ビキニ。
まさかのビキニパンツ。
こんなもの見せられたら、集団で襲われても仕方ないぐらいなのに、京センパイは満面の笑顔だった。
そんな超セクシーなイケメンが待っていた女がウチらとくれば、殺意が向けられて当然。
ウチが逆の立場なら嫉妬に狂って暴れまわるレベルだ。
それだけで終わらない。
「じゃ、少し散歩しよう。二人とも腕、出して」
言われてウチらが腕を出すと、京センパイが真ん中に入って、それぞれと腕を組む。
「両手に花。男の夢だよね。人生で一度ははやってみたかったんだよね」
あいかわらず京センパイは変わっている。
そうして歩き出した浜辺で、ウチはこれからの事を考える。
京センパイがバイト代が入ったという事で、お泊りで来ている海。
色々と期待してしまう。
だって今も当たっている。
当たっているのに、京センパイはまったく気にも留めない。
気づいていない、なんて事はないはず。
ウチはつい、不安になって聞いてしまう。
「あの京センパイ、腕が、その……」
組んだ腕、ヒジの先がどうしてもウチの胸に埋まってしまうのだ。
だが京センパイは、クスリと笑ってウチの耳元に口を近づけてこう言った。
「当ててるんだよ」
ウチの期待はますます盛り上がっていく。
今夜、ウチは大人になれる……かも! と。
良かった!
京センパイは笑ってウチの謝罪を受け入れてくれた!
「は、はい、あざス……ありがとうございます……」
もう絶対に、ウチはこの人に無茶な事を言わないでおこう。
……けど顔見知りにはなれたし、同じガッコなんだから、顔を合わせてた時くらい挨拶はしてもいッスよね?
「あ、あの、京センパイ……これからは、顔合わせた時とか、その、よろしくお願いします……」
遠まわしに、知り合いでいてい欲しい、センパイと後輩の仲でいたいという頼み方をしてみた。
「おや? ボクは薫ちゃんをこんなに泣かしちゃったのに、お友達でいてくれるんだ?」
「ダ、ダチとかそんな。その何でも言うコト、ききますんで……駄賃で、たまに、手とか繋いでほしいなって……」
今、シメられた? ばかりというのに、ちょっとチョーシに乗ったかも。
そう思って京センパイを見上げると、その後ろで青葉センパイが、あきれたように天を仰いでいた。
まるで取返しのつかないヘマをウチがしたような顔だった。
「ばか……お前」
ぼそっと青葉センパイがつぶいやいたのが聞こえた時にはもう遅かった、そう知るのはこのあとすぐの事だ。
「聞いた、夏木さん? お駄賃にまたおてて握ってほしいって」
にっこりと笑った京センパイが、あんまり似合ってない黒縁メガネをはずして、胸ポケットにしまった。
「いいよ。かわいい後輩の頼みだもの。パシリなんてさせないけど、もしかしたらお願い事をするかもね?」
「は、はい! あざッス! いつでも呼んでください!」
やった!
青葉センパイの前で京センパイ公認の後輩、そんなポジションになれた!
これならあとで、こっそり青葉センパイにシメられたりしないッスね。
まあ、そんなこと、する人じゃないんスけど。
「さて。それじゃあ、かわいい後輩ちゃんを叩いてしまったお詫びをしないとね」
「あ、いえ、そんな」
ワビをいれるのはウチの方だし、あんなの叩かれたうちに入らない。
少なくとも痛みなんてまったくない。
頭と体はまだしびれてるけど。
「まぁまぁ。それじゃボクの気が済まないからね。さ、もう組んだ手は放していいよ」
「あ、はいッス」
さっきのポーズのままだったウチは、ようやく手を放した。
握っていた手首に自分の指の跡が残るほど力をこめていた。
「じゃあ、今度は手を前で組んでおいてね?」
「え?」
前で組む? こうッスかね?
ウチは言われるままに、スカートの前を両手で抑えるようなかっこうになって手を前で組む。
ウチはこの恰好が嫌いだ。
どうしたってデカくてジャマな胸を両サイドからつぶすような形になって、余計に大きく見えてしまう。
せめて少しでもそれを隠そうと、背を丸めると。
後ろから声がかかった。
「お、薫ちゃん、今から自分が何をされるかわかってるカンジだね?」
「え?」
ウチは京センパイの意図がつかめず、首だけを後ろにまわして振り返ると。
「ひゃん!」
今まで出した事のないような声をあげてしまい、同時に丸めていた背がピンと伸びた。
「京、京センパイ!? な、なにを!?」
「え? だからお詫びに、叩いたところをさすってあげようかなって」
「そ、そんな、そんなとこに、そんなこと、ひゃあああ!」
ふたたびウチの尻がさすられる。
わずかに残っていた、叩かれた感触なんて吹き飛んだ。
大きな手がウチの尻の上をいったりきたりしている。
人生で初めて味わう感触に、頭の中から茹で上がるよう。
「や、やめてくださッ、カンベンしてください!」
ウチはつい、組んでいた手を外して京センパイの手をとった。
「あーあ。薫ちゃん、手、放しちゃったね。これは痛い方のおしおきだよ?」
「え? あ……」
その話、終わったんじゃ? と思った瞬間。
「いっ!」
ペシッとまた尻を叩かれた。
手を離したペナルティなのか、さきほどより少しだけ強く。
けれど、そんな強弱なんてどうでもいいレベルの刺激がウチの背骨を伝って脳を痺れさせる。
「はい、じゃあ、また手を前で組んでね?」
「……う、うッス」
「痛かったねー。さすってあげるからねー」
そう言って京センパイは今、自分が叩いたばかりのところを優しくさすってくれる。
気持ちいい。
「ふ、ふぁ、ふぁぁ」
「痛いの痛いの、とんでいけー」
意識が飛んでいきそうッスよぉ!
控えめに言って今まで生きてきた中で、一番気持ちいい。
けど、これ、いいンスか? 本当にいいんスか!?
ウチはすぐそばで、腕組みして立っている青葉センパイを見る。
他人にこれほど助けてほしいと思ったことは無かった。
しかし青葉センパイは、そんなウチをチラリと見るなり、ため息をついて。
「はぁ……宮城。飽きたらいくぞ」
「もうちょっと。夏木さんも一緒に撫でる?」
「アホか」
青葉センパイは近くの壁にもたれかかって、あろうことかケータイなんてイジり始めた!
え!? これを見て放置!?
ホントに彼氏じゃないんスか!?
「あー、薫ちゃんのお尻は小さくてかわいいねぇ」
「あ、あざス……」
なん答えればいいんスかね、これ。
「悪かったな、アタシの尻はデカくて」
と、不機嫌そうな顔で、明らかに不機嫌な声が青葉センパイから飛んでくる。
しかし京センパイはそれに対してしかめっ面になって、こう言った。
「また尻って言う。お尻、お尻だよ? 言葉遣いが悪い子は嫌いだな」
「悪かったよ! アタシのお尻は大きくて!」
言い直した! 言い直させた!?
え、京センパイが上ってことっッスか!?
もうホント、この二人の関係がわからないんスけど!!
結局、硬直したままのウチはそのまま五分ほど尻を撫でられ続けた。
「ふぅ、今日は満足。薫ちゃん、また遊ぼうね?」
「う、うッス」
ウチは快感でガクガクと震える足腰に気合をいれて、なんとか立ったまま返事をした。
「お待たせ、夏木さん。じゃ、お茶しに行こうか。涼香さん、帰ってくるの明日の何時?」
「だから人の母親を名前で呼ぶな! じゃーな、薫」
「お、お疲れさまッス……」
ウチに軽く手を振って去っていくセンパイたち。
少し離れたところで、京センパイが青葉センパイの尻を撫で始めたものの、足を踏まれた京センパイが悲鳴をあげていた。
それでも懲りずに撫でる京センパイの手を振り払う事なく、青葉センパイはたちはウチの視界から消えていった。
「……青葉センパイ、マジ大人ッス……」
ウチはそれを、ビショビショに濡れた下着の感触とともに見送った。
そして、帰宅後。
十九時時ころには店の手伝いを終えたウチは、母さんが閉店まで店を回している間、家事をする。
たくさんいる妹の夕食は、母さんが店で作った夕飯を持って帰り(自宅の一階が店で二階が自宅だ)、それを喰わせた後は風呂に入れてやって、最後は一番チビの妹と同じ布団に入って寝付かせる。
「……ん」
どうしても、昼間の京センパイの感触が体の芯に残っていて自然とパンツの中に手が伸びてしまう。
布団の中でこっそりオナるものの。
「ねーちゃん、ゴソゴソしないでぇ」
「ご、ごめんな」
と、幼い声でとがめられる。
青葉センパイがベッドの上で反省しろって言った意味、よーやく理解した。
(ご、ごうもんッスよ)
ウチは火照る体をただもてあまして一晩を過ごす事になり、翌日、寝不足の顔を見た青葉センパイに笑われた。
ちなみに先輩の目にもクマがあったが、ウチとはずいぶん違った意味での寝不足なのは聞くまでもない。
青葉センパイ、マジ、大人ッス。
だが、この時はウチはまだ思いもしていなかった。
***
――その日からわずか、一か月後。
「夏木センパイ」
「なんだよ」
「ウチら、本当にコレ着るんスか?」
「しゃーねぇーだろ。そういう約束と引き換えに海に来てるんだから」
ウチは手にしている水着……というか、細いヒモに小さな三角の布切れがついた水着らしき物体を持ったまま、夏木センパイにたずねかける。
夏木センパイの手にも色違いだが同じものがある。
ウチが黒、夏木センパイは白だ。
「けど、いくらなんでもこれは……ウチらがこんなの着けたら、スイカの紐みたいじゃないすか」
「あのバカに何でも言う事きくっつったのお前だろ」
それはそーなんスけどね。
ウチみたいな乳をした女がこんなのを着て海に出るって、もはや周囲への嫌がらせレベルなんスよね。
しかもウチより胸のデカい夏木センパイも一緒。
けれど、それを望んだというか、この水着を用意したのが。
「宮城と腕組んで海辺を歩きたいんだろ? ならアイツが出した条件、飲むしかねーだろうが」
そうなスけど、まさかこんなことをさせられるとは……。
「そろそろ行くぞ。アイツ、着替えるの早いからな」
「う、うッス」
海の家の更衣室から出て海辺に出ると、人だかりがあった。
十人以上の女に囲まれた中心には。
「ああ、二人とも。こっちだよ。皆さんごめんなさい、友人が来ましたので」
一斉に人だかりの視線がウチらに突き刺さった。
嫉妬。
そんな生易しいものじゃない。
殺気。
ガキのケンカなんかじゃ感じたことのない、ドロドロした殺意が向けられた。
けれど、それは仕方ない。
手を振ってウチらを迎えたの京センパイの水着姿は超ヤバかった。
上半身は素肌で上に開けっ放しの白いパーカー。
下着は……ビキニ。
まさかのビキニパンツ。
こんなもの見せられたら、集団で襲われても仕方ないぐらいなのに、京センパイは満面の笑顔だった。
そんな超セクシーなイケメンが待っていた女がウチらとくれば、殺意が向けられて当然。
ウチが逆の立場なら嫉妬に狂って暴れまわるレベルだ。
それだけで終わらない。
「じゃ、少し散歩しよう。二人とも腕、出して」
言われてウチらが腕を出すと、京センパイが真ん中に入って、それぞれと腕を組む。
「両手に花。男の夢だよね。人生で一度ははやってみたかったんだよね」
あいかわらず京センパイは変わっている。
そうして歩き出した浜辺で、ウチはこれからの事を考える。
京センパイがバイト代が入ったという事で、お泊りで来ている海。
色々と期待してしまう。
だって今も当たっている。
当たっているのに、京センパイはまったく気にも留めない。
気づいていない、なんて事はないはず。
ウチはつい、不安になって聞いてしまう。
「あの京センパイ、腕が、その……」
組んだ腕、ヒジの先がどうしてもウチの胸に埋まってしまうのだ。
だが京センパイは、クスリと笑ってウチの耳元に口を近づけてこう言った。
「当ててるんだよ」
ウチの期待はますます盛り上がっていく。
今夜、ウチは大人になれる……かも! と。
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