【R18】転生先は男女比1:30の貞操逆転世界~ビッチを夢見る三十路の魂~

尾和 ハボレ

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『*ただしイケメンに限る』

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『*ただしイケメンに限る』

オレが差し出したカードを、無言で見つめていた薫ちゃんだったが。

「……ッ」

息をのむ音とともに、その小さく細い指が伏せられたカードにかかった。

ゆっくりと開いたカード。

そこに書かれた言葉はを見て薫ちゃんが目を見開く。

「ッ!!」

まず驚き。

しかし予想していた内容でもあったのか、驚きの中にも喜びの色が見える。

「あ、あの、これ……」

それでもなお、戸惑いの色が大きい理由。

オレがカードに書いた言葉、それは。

『――オレの女になれ』

だ。

ボクではなく、オレ。

恋人ではなく、女。

物事には順序、そして緩急が大切。

”ボク”という優しくてエッチな先輩から、”オレ”という有無を言わせない、強引な先輩へシフトした事を薫ちゃんに分かりやすく伝えるための言葉。

だが、そんな強い言葉で迫っているのというに、目の前のオレは変わらず優しく(そう見えるように)笑って、薫ちゃんの目を見ている。

「どうしたの?」
「え、えっと……!」
「ダイスはそこにあるよ?」

薫ちゃんはカードを手にして、固まったままだ。

「う……」
「急な事だし、決められない? また改めてお返事を待った方がいいかな?」

オレはつとめて優しく問いかける。

うなずくことも、断る事もできず、このままではオレの機嫌を損ねると薫ちゃんは思っていたのだろう。

そんな時、オレが優しくそう言たったので、安心した顔になってこう言いかけた。

「は、はい、今すぐには、そのですね」

そんな薫ちゃんを前に、オレはまたしても。

「薫」
「え?」

呼び捨てにして、態度と口調を豹変させる。

さきほど『王様と従者』ゲームで最初、首筋にキスした時に確信した。

この子は強引に迫られる事に弱い。

そして首筋につけられたキスマークを嬉しそうに撫でるぐらい、そういう流れが嫌いじゃない。

それでも拒む態度を見せるのは、きっと言い訳が欲しいからだろう。

夏木さんに紹介された時、オレに大人しくお尻を叩かれたり、撫でまわされても逃げなかったのは、先輩を脅した罰という理由があった。

さっきの『王様と従者』ゲームの時にも、ダイスの目に従うという理由があった。

今ならさしずめ、年上の先輩に命令されたから仕方なく、とかね。

くわえて急に態度を変えた先輩に、半分脅されるようにして。

薫ちゃんが、それなら仕方ないと自分に言い訳する理由として、十分なはずだ。

だが。

「オレの女になれ」
「……ッ」

こんなセリフを、このオレが吐く日が来るとは。

例えイケメンに生まれ変わった今でも、本来自分のキャラではない言動は、オレ自身も非常に恥ずかしい。

しかしこういうのは、言っている本人が照れるとクソ寒い結果になる。

オレは耐える。

くっそキザなセリフを吐く己への羞恥に耐え、キリッとした顔を保って、薫ちゃんに迫るのだ。

イケイケ系の陽キャどもを尊敬する。

オレにはあまりにも難易度の高いアクションだ。

だがかわいい薫ちゃんをオトす為、顔面の表情筋が崩れないよう気合を入れる。

「薫。今ここで決めろ」
「う……うう……?」

薫ちゃんの顔におびえが見て取れる。

アクセルをふかし過ぎたか。

そろそろブレーキかな。

オレはそこでニコっと笑う。

「そうしたらボクは薫ちゃんを、大事に大事に可愛がってあげるよ?」

優しい先輩に戻ったオレを見て、薫ちゃんが息をのむ。

安心したように。

それでいて不安そうに。

まぁ、目の前で性格がコロコロ変わるように二重人格みたいなことをされてもね?

もしオレが美人な先輩にそう誘われたらお断りする……いや、するはず、すると思う。

薫ちゃんも同様に、カードに触れていた手をひっこめようとするが。

「薫ちゃん」

オレは眼鏡をはずし、薫ちゃんの瞳を覗き込むように見つめる。

お決まりの魔眼開放である。

ひゅっという呼気。

薫ちゃんはオレから視線を外せないようで、体を硬直させたまま見つめ返してくる。

「薫ちゃんはボクが嫌い?」
「い、いえ、そんな」
「じゃあボクの事、好き?」
「……」
「好きだよね?」
「……は、はいッス」
「好きな人の為には何でもできるよね?」

魔眼パワーによる、イケメン三段活用を展開する。

「じゃあ、はい。どうすればいいかな?」

オレはカードの横に02のままのダイスを置く。

「……うぅ」

それでも薫ちゃんの指は、ダイスに触れそうで触れない位置で止まる。

なかなか決断ができない薫ちゃん。

案外身持ちが固い、というのもこの世界ではおかしい表現か?

しかし前世だろうと今世だろうと、こういう時は。

「ふう。そっか、残念。薫ちゃんとは縁がなかったみたいだ」
「え?」
「じゃあ、帰ろうか」

”押してダメなら引いてみろ作戦”である。

立ち上がったオレはもはや興味を失ったとばかりに、薫ちゃんの顔を見ずにその横を通り過ぎようとする。

その時。

コロン。

と、小さな音がした。

オレがそちらに視線を向ければ、テーブルの上のダイスを01の目にした薫ちゃんがオレを見上げている。

「京、センパイ、その……ウチ、ウチは……」
「ふふ。薫ちゃんはやっぱりいい子だね?」

オレは座っている薫ちゃん頭を撫でた後、手を差し出す。

「じゃあ、少しだけ手を繋いでデートしようか」
「え、あっ……ッス」



***



会計を済ませて店を出ると、すでに空が暗くなり始めていた。

もとから人気(ひとけ)のない商店街、そこをなんとはなしに手をつないだまま歩く。

「薫ちゃん」
「は、はいッス!」

つないでいる手の震えから、緊張が伝わってくる。

急かされるようにして承諾したものの、何をされるのか不安なのだろう。

とはいえここまで来たら、オレもこの場で今まで通りいつものアレを交わしたい。

そう、ハッキリと言葉を交わしてのセフレ契約だ。
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