18 / 22
本編
Gin and Tonic~強い意志~
Gin and Tonic~強い意志~
朝食の後、潤はリビングにラップトップを持ち込み、それを立ち上げた。ネットに繋げ経済ニュースを確認する。そこには『イスタンブールの黒獅子、日本進出!』との見出しが躍っている。
(噂には聞いていたが、遂に動いたか……)
それは日本の企業を買収したトルコ企業のCEOが来日したことを報じたものだった。潤はその記事を食い入るように読み進める。
「随分熱心に読み込んでるのね」
「ああ、ウチと関わりある記事だったからな」
真央が差し出したマグカップを受け取りながら潤は視線を上げる。その真央の顔はどこか不安げだった。
「どうした?」
「え?」
「不安そうにしてるから」
真央はどう答えるべきか悩み、言葉を探して視線を彷徨わせる。潤はそんな不安な心を見透かしたかのように抱き寄せる。
「潤……」
「俺はどこにも行かないよ」
「うん……」
真央はその胸に顔を埋める。潤には真央の不安がなんなのかわかっていた。それは今の自分がルクセンブルグを拠点にしているためにすぐに日本を離れるのではないかということだ。今回の帰国は雫の婚約を祝うためのいわば一時的なもので、いずれ向こうに戻ることになる。真央はそう感じたのだろう。
「俺は年内中に日本支社勤務になることが決まっているんだ」
「え?」
「今回の帰国はその前準備も兼ねてるから一ヶ月くらいはこっちにいる」
「そう……」
「ただ、今の状況だとこのままこっちに残ることになると思うんだ」
潤はラップトップに表示された記事に目をやりながら語る。そこに書かれているのは今夏トルコ系企業に買収されたある日本企業に関するもので、買収先のCEOの来日を報道したものだった。『イスタンブールの黒獅子』とあだ名されるそのCEOはI.N.ファンドの取引相手でもある。恐らくは彼が明日香の言っていた『トルコから来た大事な客』なのだろう。
「昨日の明日香の電話で佳織さんがうちのボスから何か預かっていると言っていた」
「関係あるって事?」
「恐らくね」
「そう」
真央に安堵の表情が浮かぶ。そんな真央を更に安心させるように抱き寄せる。そして、その額にキスを落とした。
「真央はそろそろ事務所を開けないと」
「うん」
「夕方には佳織さんのとこに行くことになってるからそのつもりでいてくれ」
「わかったわ」
真央は少し顔を強ばらせたが、努めて笑顔を作るのだった。
その夜、二人で訪れたのはベイエリアにあるセキュリティもしっかりしている高層マンションだった。
「ここは?」
「ここは佳織さんがオーナーを務めるマンション」
「そうなんだ」
「実はここにここに雫と明日香も住んでいるんだ」
「え?!」
「雫の両親もだけど、うちの両親も心配性らしい。佳織さんは俺たちより大分年上だから、任せても安心だと思っているみたいで……」
潤は昼間佳織から『外で会うのは難しいので自宅マンションに来るように』と連絡を受けていたのだ。エントランスに入ると、そこには初老のコンシェルジュが立っており二人を出迎えた。
「いらっしゃいませ」
「オーナーにお会いしたいのですが、取り次いでいただけますか?」
「失礼ですが、どちら様でしょう?」
「従弟の一之瀬潤です。こちらは恋人の望月真央」
「少々お待ちください」
コンシェルジュは内線で連絡を取っている。すぐに内線を切ったコンシェルジュは二人に笑顔を向け他。
「オーナーがあちらのサロンでお待ちくださいとのことです」
「そうですか」
「ご案内します」
二人は彼にエントランス横のサロンに案内される。そこは少し照明を落とし、ムーディーなジャズの流れる心地良い空間だった。
「お飲み物はコーヒーでよろしいですか?」
「ええ、お願いします。真央は?」
「私も同じものを」
コンシェルジュは一礼して去っていく。暫くすると、一人の女性が現れ、それに気付いた潤が少し身を固くする。つられて真央も背筋を伸ばした。
「潤、久しぶり!」
「ご無沙汰してます」
「5年振りだっけ?」
「そうですね。佳織さんが帰国されて以来ですから」
「そっか。そちらのお嬢さんが……」
「初めまして、望月真央と申します」
少し緊張した面持ちで挨拶をする真央に佳織は優しくほほ笑みかける。そこへコンシェルジュがティーセットの乗ったカートを押して現れた。
「後藤さん、私のもある?」
「勿論でございます」
「ありがとう」
後藤と呼ばれたコンシェルジュはカップにコーヒーを注ぎ終わると会釈をして去っていった。
「智叔父さん、慶事続きで小躍りしてたわよ」
「は?」
「聞いてないの?」
「何のことですか?」
佳織の話に潤は何の事かわからず首をかしげる。それに対して佳織は明日香について語るのだった。
佳織の話はこうだ。二週間ほど前のこと。珍しく朝帰りをした明日香を問い詰めると酔っ払って上司にお持ち帰りされたと白状した。そして、その上司の男が追いかけてこのマンションまで現れる。紆余曲折あったらしいがそのまま二人は婚約することになったのだった。
「そういうわけで明日香もつい先日婚約したの」
「アイツ、そんなこと一言も……」
「今、本家はそれどころじゃないからね」
「みたいですね」
佳織の言葉に潤も同調するように苦笑した。
「何にしても、一番の懸案事項がなくなって良かったわ」
佳織は心底嬉しそうに微笑む。それに対して潤は照れくさいやら申し訳ないやらと色々な感情がわき上がり複雑な顔をしてしまう。
「そろそろ本題に入りましょうか」
「お願いします」
「雅紀や雫から真央さんのことは聞いたわ。勿論、結婚を前提にしてるって事で良いのよね?」
「勿論です」
「そう。ならこれが役に立ちそうね」
佳織は一通の封書を取り出し、潤に手に渡す。それを開けると、中に入っていたのは辞令だった。
『一之瀬 潤 殿
20××年11月1日を以て日本支社勤務を命じる
I.N.ファンド代表取締役兼CEO 一之瀬 和也』
「これって……」
「実は8月に中川物産の経営が行き詰まって、あるトルコ系企業に買収されたのは知ってるわよね。そこのCEOが中川の筆頭株主であるI.N.ファンドに協力を求めてきたそうよ」
「ケマル=アスランが?」
「さすが、向こうが長いとちゃんと覚えてるんだ」
「ルクセンブルグでも有名だよ。『イスタンブールの黒獅子』ってね」
「本人は親日家だけど、日本にコネクションがあるわけじゃない」
「だからか」
「そういうこと。新規事業も立ち上げるつもりらしくてね。雅紀だけでは手が足りないから潤にも手伝って欲しいそうよ。それに、真央さんにプロポーズしたんでしょ?」
「はい?」
「あれ? 違うの? 雅紀はそんなこと言ってたけど」
(雅紀さん、何をどう伝えたんだよ!!)
潤は頭を抱えそうになった。確かに自分の気持ちを分かってくれているのは心強いが、いくらなんでも飛躍し過ぎである。
「叔父さんたち喜んでたよ。『来年は孫が一気に増える』って」
「どういうことですか?」
「私も年内には籍を入れるし、来春には明日香も籍を入れるって言ってたわ」
「重なりすぎだろ」
「いいんじゃないの。好きな相手と一緒になってるんだし。これ、手続きに必要だと思われる書類。雅紀から言付かったから渡しておくわね」
佳織は分厚い茶封筒を潤に差し出す。中身は住居を移すに必要な書類が一式入っていた。
「新居はこっちで手配する?それとも……」
「それはいい。俺は真央と一緒に住むよ」
「真央さんところに?」
「いいよな?」
「私は構わないわ」
真央は少し顔を赤らめながらも嬉しそうに返事をする。そんな様子を見て佳織が一つ咳払いをして少しだけ悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「叔父さんたちには邪魔しないように釘を刺しておいた方が良いかな?」
「父さんたち、なんか変なこと言ってた?」
「う~~ん。『潤が彼女に無理強いしてないか確かめてきてくれ』ってことぐらいかな?」
「俺のことなんだと思ってるんだよ?!」
「『初恋拗らせた絶倫細マッチョ』だったかしら?」
その言葉にげんなりする潤と苦笑するしかない真央。佳織が大真面目な分、居たたまれない。
「潤の決意はちゃんと伝えておくから心配しないの」
「だと、いいけど」
両親の評価を受けて潤は項垂れる。そんな潤を横目に佳織は真央に向き直った。
「真央さん、この通り少しばかり頼りないところもあるけどよろしくね」
「はい」
真央の返事に佳織も安心したようだった。
「それじゃ、俺たちはこの辺で……」
「雅紀に連絡を忘れないように」
「わかってるよ」
エントランスで挨拶を交わす。すると、佳織は何かに気がついたようで潤の手を引いて少し離れた場所で耳打ちする。
「潤、もしかしてちゃんとした指輪を贈ってないの?」
「仕方ないだろ。帰国したの金曜日でその夜に真央と再会したんだから」
「なら、ここへ行ってきなさい」
そう言って渡されたのは銀座にあるジュエリーショップ店長の名刺だ。
「佳織さん?」
「ちゃんと『想い』を『形』にしてあげなさいよ」
佳織は軽くウインクし、肩をたたいた。苦笑いを浮かべる潤。そのまま真央とともにマンションをあとにしたのだった。
「真央、明日の予定はどうなってる?」
「鎌倉で打ち合わせがあるからそれが終われば……」
「そうか。なら、それが終わったら付き合ってくれ」
「どこに?」
「行けばわかるよ」
潤は佳織から貰った名刺をポケットにしまいながら笑みを浮かべる。その顔は優しく自信に満ちあふれている。真央は手を握り微笑み返したのだった。
朝食の後、潤はリビングにラップトップを持ち込み、それを立ち上げた。ネットに繋げ経済ニュースを確認する。そこには『イスタンブールの黒獅子、日本進出!』との見出しが躍っている。
(噂には聞いていたが、遂に動いたか……)
それは日本の企業を買収したトルコ企業のCEOが来日したことを報じたものだった。潤はその記事を食い入るように読み進める。
「随分熱心に読み込んでるのね」
「ああ、ウチと関わりある記事だったからな」
真央が差し出したマグカップを受け取りながら潤は視線を上げる。その真央の顔はどこか不安げだった。
「どうした?」
「え?」
「不安そうにしてるから」
真央はどう答えるべきか悩み、言葉を探して視線を彷徨わせる。潤はそんな不安な心を見透かしたかのように抱き寄せる。
「潤……」
「俺はどこにも行かないよ」
「うん……」
真央はその胸に顔を埋める。潤には真央の不安がなんなのかわかっていた。それは今の自分がルクセンブルグを拠点にしているためにすぐに日本を離れるのではないかということだ。今回の帰国は雫の婚約を祝うためのいわば一時的なもので、いずれ向こうに戻ることになる。真央はそう感じたのだろう。
「俺は年内中に日本支社勤務になることが決まっているんだ」
「え?」
「今回の帰国はその前準備も兼ねてるから一ヶ月くらいはこっちにいる」
「そう……」
「ただ、今の状況だとこのままこっちに残ることになると思うんだ」
潤はラップトップに表示された記事に目をやりながら語る。そこに書かれているのは今夏トルコ系企業に買収されたある日本企業に関するもので、買収先のCEOの来日を報道したものだった。『イスタンブールの黒獅子』とあだ名されるそのCEOはI.N.ファンドの取引相手でもある。恐らくは彼が明日香の言っていた『トルコから来た大事な客』なのだろう。
「昨日の明日香の電話で佳織さんがうちのボスから何か預かっていると言っていた」
「関係あるって事?」
「恐らくね」
「そう」
真央に安堵の表情が浮かぶ。そんな真央を更に安心させるように抱き寄せる。そして、その額にキスを落とした。
「真央はそろそろ事務所を開けないと」
「うん」
「夕方には佳織さんのとこに行くことになってるからそのつもりでいてくれ」
「わかったわ」
真央は少し顔を強ばらせたが、努めて笑顔を作るのだった。
その夜、二人で訪れたのはベイエリアにあるセキュリティもしっかりしている高層マンションだった。
「ここは?」
「ここは佳織さんがオーナーを務めるマンション」
「そうなんだ」
「実はここにここに雫と明日香も住んでいるんだ」
「え?!」
「雫の両親もだけど、うちの両親も心配性らしい。佳織さんは俺たちより大分年上だから、任せても安心だと思っているみたいで……」
潤は昼間佳織から『外で会うのは難しいので自宅マンションに来るように』と連絡を受けていたのだ。エントランスに入ると、そこには初老のコンシェルジュが立っており二人を出迎えた。
「いらっしゃいませ」
「オーナーにお会いしたいのですが、取り次いでいただけますか?」
「失礼ですが、どちら様でしょう?」
「従弟の一之瀬潤です。こちらは恋人の望月真央」
「少々お待ちください」
コンシェルジュは内線で連絡を取っている。すぐに内線を切ったコンシェルジュは二人に笑顔を向け他。
「オーナーがあちらのサロンでお待ちくださいとのことです」
「そうですか」
「ご案内します」
二人は彼にエントランス横のサロンに案内される。そこは少し照明を落とし、ムーディーなジャズの流れる心地良い空間だった。
「お飲み物はコーヒーでよろしいですか?」
「ええ、お願いします。真央は?」
「私も同じものを」
コンシェルジュは一礼して去っていく。暫くすると、一人の女性が現れ、それに気付いた潤が少し身を固くする。つられて真央も背筋を伸ばした。
「潤、久しぶり!」
「ご無沙汰してます」
「5年振りだっけ?」
「そうですね。佳織さんが帰国されて以来ですから」
「そっか。そちらのお嬢さんが……」
「初めまして、望月真央と申します」
少し緊張した面持ちで挨拶をする真央に佳織は優しくほほ笑みかける。そこへコンシェルジュがティーセットの乗ったカートを押して現れた。
「後藤さん、私のもある?」
「勿論でございます」
「ありがとう」
後藤と呼ばれたコンシェルジュはカップにコーヒーを注ぎ終わると会釈をして去っていった。
「智叔父さん、慶事続きで小躍りしてたわよ」
「は?」
「聞いてないの?」
「何のことですか?」
佳織の話に潤は何の事かわからず首をかしげる。それに対して佳織は明日香について語るのだった。
佳織の話はこうだ。二週間ほど前のこと。珍しく朝帰りをした明日香を問い詰めると酔っ払って上司にお持ち帰りされたと白状した。そして、その上司の男が追いかけてこのマンションまで現れる。紆余曲折あったらしいがそのまま二人は婚約することになったのだった。
「そういうわけで明日香もつい先日婚約したの」
「アイツ、そんなこと一言も……」
「今、本家はそれどころじゃないからね」
「みたいですね」
佳織の言葉に潤も同調するように苦笑した。
「何にしても、一番の懸案事項がなくなって良かったわ」
佳織は心底嬉しそうに微笑む。それに対して潤は照れくさいやら申し訳ないやらと色々な感情がわき上がり複雑な顔をしてしまう。
「そろそろ本題に入りましょうか」
「お願いします」
「雅紀や雫から真央さんのことは聞いたわ。勿論、結婚を前提にしてるって事で良いのよね?」
「勿論です」
「そう。ならこれが役に立ちそうね」
佳織は一通の封書を取り出し、潤に手に渡す。それを開けると、中に入っていたのは辞令だった。
『一之瀬 潤 殿
20××年11月1日を以て日本支社勤務を命じる
I.N.ファンド代表取締役兼CEO 一之瀬 和也』
「これって……」
「実は8月に中川物産の経営が行き詰まって、あるトルコ系企業に買収されたのは知ってるわよね。そこのCEOが中川の筆頭株主であるI.N.ファンドに協力を求めてきたそうよ」
「ケマル=アスランが?」
「さすが、向こうが長いとちゃんと覚えてるんだ」
「ルクセンブルグでも有名だよ。『イスタンブールの黒獅子』ってね」
「本人は親日家だけど、日本にコネクションがあるわけじゃない」
「だからか」
「そういうこと。新規事業も立ち上げるつもりらしくてね。雅紀だけでは手が足りないから潤にも手伝って欲しいそうよ。それに、真央さんにプロポーズしたんでしょ?」
「はい?」
「あれ? 違うの? 雅紀はそんなこと言ってたけど」
(雅紀さん、何をどう伝えたんだよ!!)
潤は頭を抱えそうになった。確かに自分の気持ちを分かってくれているのは心強いが、いくらなんでも飛躍し過ぎである。
「叔父さんたち喜んでたよ。『来年は孫が一気に増える』って」
「どういうことですか?」
「私も年内には籍を入れるし、来春には明日香も籍を入れるって言ってたわ」
「重なりすぎだろ」
「いいんじゃないの。好きな相手と一緒になってるんだし。これ、手続きに必要だと思われる書類。雅紀から言付かったから渡しておくわね」
佳織は分厚い茶封筒を潤に差し出す。中身は住居を移すに必要な書類が一式入っていた。
「新居はこっちで手配する?それとも……」
「それはいい。俺は真央と一緒に住むよ」
「真央さんところに?」
「いいよな?」
「私は構わないわ」
真央は少し顔を赤らめながらも嬉しそうに返事をする。そんな様子を見て佳織が一つ咳払いをして少しだけ悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「叔父さんたちには邪魔しないように釘を刺しておいた方が良いかな?」
「父さんたち、なんか変なこと言ってた?」
「う~~ん。『潤が彼女に無理強いしてないか確かめてきてくれ』ってことぐらいかな?」
「俺のことなんだと思ってるんだよ?!」
「『初恋拗らせた絶倫細マッチョ』だったかしら?」
その言葉にげんなりする潤と苦笑するしかない真央。佳織が大真面目な分、居たたまれない。
「潤の決意はちゃんと伝えておくから心配しないの」
「だと、いいけど」
両親の評価を受けて潤は項垂れる。そんな潤を横目に佳織は真央に向き直った。
「真央さん、この通り少しばかり頼りないところもあるけどよろしくね」
「はい」
真央の返事に佳織も安心したようだった。
「それじゃ、俺たちはこの辺で……」
「雅紀に連絡を忘れないように」
「わかってるよ」
エントランスで挨拶を交わす。すると、佳織は何かに気がついたようで潤の手を引いて少し離れた場所で耳打ちする。
「潤、もしかしてちゃんとした指輪を贈ってないの?」
「仕方ないだろ。帰国したの金曜日でその夜に真央と再会したんだから」
「なら、ここへ行ってきなさい」
そう言って渡されたのは銀座にあるジュエリーショップ店長の名刺だ。
「佳織さん?」
「ちゃんと『想い』を『形』にしてあげなさいよ」
佳織は軽くウインクし、肩をたたいた。苦笑いを浮かべる潤。そのまま真央とともにマンションをあとにしたのだった。
「真央、明日の予定はどうなってる?」
「鎌倉で打ち合わせがあるからそれが終われば……」
「そうか。なら、それが終わったら付き合ってくれ」
「どこに?」
「行けばわかるよ」
潤は佳織から貰った名刺をポケットにしまいながら笑みを浮かべる。その顔は優しく自信に満ちあふれている。真央は手を握り微笑み返したのだった。
あなたにおすすめの小説
ホウセンカ
えむら若奈
恋愛
☆面倒な女×クセ強男の不器用で真っ直ぐな純愛ラブストーリー!
誰もが振り返る美しい容姿を持つ姫野 愛茉(ひめの えま)は、常に“本当の自分”を隠して生きていた。
そして“理想の自分”を“本当の自分”にするため地元を離れた大学に進学し、初めて参加した合コンで浅尾 桔平(あさお きっぺい)と出会う。
目つきが鋭くぶっきらぼうではあるものの、不思議な魅力を持つ桔平に惹かれていく愛茉。桔平も愛茉を気に入り2人は急接近するが、愛茉は常に「嫌われるのでは」と不安を抱えていた。
「明確な理由がないと、不安?」
桔平の言葉のひとつひとつに揺さぶられる愛茉が、不安を払拭するために取った行動とは――
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※イラストは自作です。転載禁止。
砂上の楼閣
上板橋喜十郎
恋愛
三年前、友人との不貞を理由に離婚した奥田和弘。
慰謝料五百万円を支払い、娘の親権を守るためにすべてを受け入れた。
それから三年。
元妻・由利奈から突然の連絡が届く。
「娘に会いたい」
再会した彼女は復縁をほのめかしてくるが、その行動には不自然な点が多すぎた。
違和感を覚えた和弘は、探偵事務所に調査を依頼する。
やがて明らかになる衝撃の真実。
それは三年前の離婚そのものが仕組まれた罠だったという事実――。
絡み合う嘘と裏切りの果てに、すべてが崩壊する。
上手に騙してくださらなかった伯爵様へ
しきど
恋愛
アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。
文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。
彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。
貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。
メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。