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幼少期~青年期
太閤薨去
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秀頼が元服して一年が過ぎようとした頃。秀吉は一人の男を呼んで茶を楽しんでいた。
「なぁ、又左よぉ。」
「何じゃ、藤吉。」
「儂ら、随分遠くに来たもんじゃのぉ。」
「そうじゃのぉ。」
それは加賀大納言・前田利家。秀吉にとっては織田家中にあって自身を『竹馬の友』としてともに戦場を駆けた。
「そろそろ迎えがきそうじゃ。」
「そうか…。」
「御館様はまた叱り飛ばすかのぉ。」
「そうじゃのぉ、『この戯けが!』言うて蹴り飛ばすじゃろうて。」
「ははは。 では、また儂は『草履取り』に逆戻りか。」
「で、あるな。」
「又左、一つ頼まれてくれんか?」
「今更…。」
「お主でなくは出来ぬことよ。」
「仕方がないのぉ、頼まれてやるか。」
利家はニヤリと笑って茶を一息に煽ったのだった。
*******************************************************
慶長三年八月 太閤薨去
天下に激震が走る。ようやく訪れた平穏が崩されようとしたからだ。
それは以前からあった対立が原因である。五大老筆頭、内府・家康と五奉行筆頭、治部少輔・三成の…。
家康は野心家であるが、卑しい野心家ではない。また、苦労人でもあった。その彼に従うものは多い。
だが、三成はそれを良しとしなかった。三成は『義』の人であり、融通の利かない男である。家康の考える『自由な世』を理解しがたかった。
そして、そのことが対立を生むことになる。
「『兵は神速を貴ぶ』…。」
「殿?」
「左近、速やかに秀頼様を大阪に御移りいただこう。」
「ですが…。」
「虎や市ことは気にせずともよい。」
「御意。」
島左近は主君・三成の鬼気迫る雰囲気にそれ以上は口を挟まず、その場を辞した。それを確認すると三成は静かに呟く。
「こちらには切り札がある。」
その瞳は射貫くが如く鋭く、虚空を見つめるものであった。
その後、秀頼は大阪城に移りわずか六歳にしてこの城の城主となる。
その日、秀頼はそわそわしながら上座に胡坐をかく。眼前には三成が大量の書物とともに平伏している。秀頼は嫌な予感がしてならなかった。
「秀頼様に献上したい品がございます。」
「そ、そうか…。」
「左近。」
「はっ。」
差し出されたのはやはり大量の書物だった。秀頼は心の中でため息をつく。
(これを読めということなのかなぁ…。)
「秀頼様!」
三成の呼びかけに秀頼は顔を上げ息を飲む。ぶつかった視線があまりにも鬼気迫っており、ゴクリと唾を飲み込んでしまうほどだった。
「治部、これは、どういうことか?」
「秀頼様は太閤殿下ただお一人のお子であります。」
「………。」
「ですが、いつまでも皆がお守りするとは限りません。」
「?」
「ご自身で身を守ることも身に着けていただきます。」
「治部?」
「知恵は時として身を守る盾となり、敵を退ける槍となりまする。」
「なるほど…。」
「古来、平相国(清盛)は安徳帝に日の本を動かすための書物を献上されたと申します。
今、秀頼様に必要なものもそれかと…。」
秀頼は三成の奏上に圧倒され、切れの悪い返事でそれらを受け取ったのだった。
*******************************************************
「で、これを全部読めって?」
「治部様が自ら書かれたものだそうですよ。」
「相変わらず真面目な奴だ。」
秀頼は自室でうんざりした表情で献上されたものの一つを手に取ってひらひらさせている。それを小姓の重成は困った表情で見やる。
「何もそんなに慌てなくてもいいのに…。」
「そうとも限りませんわよ。」
「生駒?」
いつの間に現れたのか湯呑と茶菓子が乗った盆を持った生駒が現れた。秀頼と重成は背筋を伸ばして座り直す。生駒は辺りに目配せをした後、静かに障子を閉める。
「あまり良い噂を聞きませぬ。」
「は?」
「加賀大納言様も床に伏せっておられるそうです。」
「え? 前田の爺様もお悪いのか?」
「北政所様が心配しておられました。」
「そう言えば、北政所様は松様と親しくなされておいででしたね。」
「へぇ、そうなんだ。」
「若様はご存じなかったのですか?」
「その辺はすべて母上が差配なさってるから。」
「若様。」
「な、なに?」
「若様に必要なのは『腹心』かと存じます。」
「でも、今の僕じゃあ…。」
「そこはこの生駒にお任せください!」
「「え?」」
秀頼と重成が声を揃えて驚く。生駒は二人に耳打ちして更に驚かせる。
「生駒って…。」
「治部様は私を切り札だと思っておいでなのです。」
「これは母上もご存じなのか?」
「はい。 元々お方様の御命令でしたそうですので…。」
「そう、だったのか…。」
「はじめのうちは不便でしたが、珠とも知り合えましたので御の字です。
ただ…。」
「?」
そこで生駒はどこか寂しげに顔を顰める。
「国元の父に会えぬのが少しばかり寂しいです。」
「御父上は優しかったのか?」
「はい、いつも真綿に包むが如く…。」
「帰りたい?」
「そうですね。 いつかは戻れれば良いと思っています。」
「すぐには無理なのか?」
「無理でしょうね。」
「そうなんだ…。」
秀頼と重成がしょんぼりと肩を落とす。それを生駒は励ますように明るく振る舞う。
「万事わたくしにお任せください。」
「わ、わかった。」
「若様は治部様からいただいたこれらの書物をしっかりお読みになって『知恵』をお付け為されると宜しいでしょう。」
「うん…。」
生駒の笑顔で少し元気を取り戻すが、如何せん大量に積み上げられた書物に心境は複雑なのであった。
*******************************************************
一方その頃、内府・家康は大納言利家の見舞いと称して前田の館を訪れていた。
【槍の又左】と渾名されその勇名をとどろかせていた若かりし頃の面影など一つもなく利家は床に伏せっている。それを家康は内心ほくそ笑む。家康にとって利家こそが天下を手中に収めるうえで最も邪魔な存在であったからだ。
「大納言殿ともあろう方が…。」
「いやはや、寄る年波には勝てぬは。」
伏せったまま、利家は力なく笑った。それに困惑するように眉を顰める家康。そんな家康を利家は手招きをする。
「内府殿、大事なお話が…。」
「?」
「もそっと近こう…。」
家康は利家に近づき耳を傾けようとした。すると、物凄い力で右腕を掴まれる。
「!!!!」
とっさに離れようとするが、利家の手を振りほどくことができない。更に利家は起き上がった。その左手には抜身の懐剣が握られている。
「家康!! 早々に天下がひっくり返ると思うなよ。」
「なっ…。」
「この【槍の又左】の目の黒いうちは秀頼様には指一本触れさせぬ。」
「ぐっ。」
「忘れぬな。 お前の野望を打ち砕く術などいくらでもある。」
家康は呆然となる。病人の戯言で済ませられぬほどの迫力がそこにはあったからだ。結局、家康はその場を逃げるかのごとく利家の前を辞したのだった。
「松、見たか?」
「ええ。」
「内府めが尻尾を巻いて逃げおったわ。」
「それでこそ【槍の又左】」
「はは、そうであろう。 惚れ直したか?」
利家が冗談めかして悪戯っぽく笑えば、松はふわりと笑みを零しそれに答える。
「ええ、惚れ直しました。」
「そうか、そうか。」
「松は日の本一の果報者にございます。」
その言葉に利家は熱いものがこみ上げ、しんみりとなる。
「松…。」
「又左?」
「後のことは頼んだぞ。」
「……………。」
「藤吉よぉ。 約束は果たしたぞ…。」
利家は床に就き天井を見つめながらそう呟くのだった。
*******************************************************
秀吉が世を去った翌年利家もまた世を去った。
だが、家康はすぐには動かなかった。外堀を埋めるが如く実権を握ろうと動いたのである。
そして、運命の時慶長五年九月はひたひたと近づくのであった。
************************************************
お読みいただきありがとうございます
「なぁ、又左よぉ。」
「何じゃ、藤吉。」
「儂ら、随分遠くに来たもんじゃのぉ。」
「そうじゃのぉ。」
それは加賀大納言・前田利家。秀吉にとっては織田家中にあって自身を『竹馬の友』としてともに戦場を駆けた。
「そろそろ迎えがきそうじゃ。」
「そうか…。」
「御館様はまた叱り飛ばすかのぉ。」
「そうじゃのぉ、『この戯けが!』言うて蹴り飛ばすじゃろうて。」
「ははは。 では、また儂は『草履取り』に逆戻りか。」
「で、あるな。」
「又左、一つ頼まれてくれんか?」
「今更…。」
「お主でなくは出来ぬことよ。」
「仕方がないのぉ、頼まれてやるか。」
利家はニヤリと笑って茶を一息に煽ったのだった。
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慶長三年八月 太閤薨去
天下に激震が走る。ようやく訪れた平穏が崩されようとしたからだ。
それは以前からあった対立が原因である。五大老筆頭、内府・家康と五奉行筆頭、治部少輔・三成の…。
家康は野心家であるが、卑しい野心家ではない。また、苦労人でもあった。その彼に従うものは多い。
だが、三成はそれを良しとしなかった。三成は『義』の人であり、融通の利かない男である。家康の考える『自由な世』を理解しがたかった。
そして、そのことが対立を生むことになる。
「『兵は神速を貴ぶ』…。」
「殿?」
「左近、速やかに秀頼様を大阪に御移りいただこう。」
「ですが…。」
「虎や市ことは気にせずともよい。」
「御意。」
島左近は主君・三成の鬼気迫る雰囲気にそれ以上は口を挟まず、その場を辞した。それを確認すると三成は静かに呟く。
「こちらには切り札がある。」
その瞳は射貫くが如く鋭く、虚空を見つめるものであった。
その後、秀頼は大阪城に移りわずか六歳にしてこの城の城主となる。
その日、秀頼はそわそわしながら上座に胡坐をかく。眼前には三成が大量の書物とともに平伏している。秀頼は嫌な予感がしてならなかった。
「秀頼様に献上したい品がございます。」
「そ、そうか…。」
「左近。」
「はっ。」
差し出されたのはやはり大量の書物だった。秀頼は心の中でため息をつく。
(これを読めということなのかなぁ…。)
「秀頼様!」
三成の呼びかけに秀頼は顔を上げ息を飲む。ぶつかった視線があまりにも鬼気迫っており、ゴクリと唾を飲み込んでしまうほどだった。
「治部、これは、どういうことか?」
「秀頼様は太閤殿下ただお一人のお子であります。」
「………。」
「ですが、いつまでも皆がお守りするとは限りません。」
「?」
「ご自身で身を守ることも身に着けていただきます。」
「治部?」
「知恵は時として身を守る盾となり、敵を退ける槍となりまする。」
「なるほど…。」
「古来、平相国(清盛)は安徳帝に日の本を動かすための書物を献上されたと申します。
今、秀頼様に必要なものもそれかと…。」
秀頼は三成の奏上に圧倒され、切れの悪い返事でそれらを受け取ったのだった。
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「で、これを全部読めって?」
「治部様が自ら書かれたものだそうですよ。」
「相変わらず真面目な奴だ。」
秀頼は自室でうんざりした表情で献上されたものの一つを手に取ってひらひらさせている。それを小姓の重成は困った表情で見やる。
「何もそんなに慌てなくてもいいのに…。」
「そうとも限りませんわよ。」
「生駒?」
いつの間に現れたのか湯呑と茶菓子が乗った盆を持った生駒が現れた。秀頼と重成は背筋を伸ばして座り直す。生駒は辺りに目配せをした後、静かに障子を閉める。
「あまり良い噂を聞きませぬ。」
「は?」
「加賀大納言様も床に伏せっておられるそうです。」
「え? 前田の爺様もお悪いのか?」
「北政所様が心配しておられました。」
「そう言えば、北政所様は松様と親しくなされておいででしたね。」
「へぇ、そうなんだ。」
「若様はご存じなかったのですか?」
「その辺はすべて母上が差配なさってるから。」
「若様。」
「な、なに?」
「若様に必要なのは『腹心』かと存じます。」
「でも、今の僕じゃあ…。」
「そこはこの生駒にお任せください!」
「「え?」」
秀頼と重成が声を揃えて驚く。生駒は二人に耳打ちして更に驚かせる。
「生駒って…。」
「治部様は私を切り札だと思っておいでなのです。」
「これは母上もご存じなのか?」
「はい。 元々お方様の御命令でしたそうですので…。」
「そう、だったのか…。」
「はじめのうちは不便でしたが、珠とも知り合えましたので御の字です。
ただ…。」
「?」
そこで生駒はどこか寂しげに顔を顰める。
「国元の父に会えぬのが少しばかり寂しいです。」
「御父上は優しかったのか?」
「はい、いつも真綿に包むが如く…。」
「帰りたい?」
「そうですね。 いつかは戻れれば良いと思っています。」
「すぐには無理なのか?」
「無理でしょうね。」
「そうなんだ…。」
秀頼と重成がしょんぼりと肩を落とす。それを生駒は励ますように明るく振る舞う。
「万事わたくしにお任せください。」
「わ、わかった。」
「若様は治部様からいただいたこれらの書物をしっかりお読みになって『知恵』をお付け為されると宜しいでしょう。」
「うん…。」
生駒の笑顔で少し元気を取り戻すが、如何せん大量に積み上げられた書物に心境は複雑なのであった。
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一方その頃、内府・家康は大納言利家の見舞いと称して前田の館を訪れていた。
【槍の又左】と渾名されその勇名をとどろかせていた若かりし頃の面影など一つもなく利家は床に伏せっている。それを家康は内心ほくそ笑む。家康にとって利家こそが天下を手中に収めるうえで最も邪魔な存在であったからだ。
「大納言殿ともあろう方が…。」
「いやはや、寄る年波には勝てぬは。」
伏せったまま、利家は力なく笑った。それに困惑するように眉を顰める家康。そんな家康を利家は手招きをする。
「内府殿、大事なお話が…。」
「?」
「もそっと近こう…。」
家康は利家に近づき耳を傾けようとした。すると、物凄い力で右腕を掴まれる。
「!!!!」
とっさに離れようとするが、利家の手を振りほどくことができない。更に利家は起き上がった。その左手には抜身の懐剣が握られている。
「家康!! 早々に天下がひっくり返ると思うなよ。」
「なっ…。」
「この【槍の又左】の目の黒いうちは秀頼様には指一本触れさせぬ。」
「ぐっ。」
「忘れぬな。 お前の野望を打ち砕く術などいくらでもある。」
家康は呆然となる。病人の戯言で済ませられぬほどの迫力がそこにはあったからだ。結局、家康はその場を逃げるかのごとく利家の前を辞したのだった。
「松、見たか?」
「ええ。」
「内府めが尻尾を巻いて逃げおったわ。」
「それでこそ【槍の又左】」
「はは、そうであろう。 惚れ直したか?」
利家が冗談めかして悪戯っぽく笑えば、松はふわりと笑みを零しそれに答える。
「ええ、惚れ直しました。」
「そうか、そうか。」
「松は日の本一の果報者にございます。」
その言葉に利家は熱いものがこみ上げ、しんみりとなる。
「松…。」
「又左?」
「後のことは頼んだぞ。」
「……………。」
「藤吉よぉ。 約束は果たしたぞ…。」
利家は床に就き天井を見つめながらそう呟くのだった。
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秀吉が世を去った翌年利家もまた世を去った。
だが、家康はすぐには動かなかった。外堀を埋めるが如く実権を握ろうと動いたのである。
そして、運命の時慶長五年九月はひたひたと近づくのであった。
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