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第二章 異世界に飛ばされて
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私は肥満ネズミの入った小型犬用のキャリーを愛車のベルランゴに乗せ、沈んだ気持ちで帰路についた。ちなみにキャリーは以前ケンさんのお母さんがマルチーズを飼っていたときに使用していたものだ。ケンさんの両親はどちらもすでに鬼籍で、お父さんは一昨年脳卒中で、お母さんは昨年脳梗塞で亡くなっている。
田舎のお年寄りあるあるだと思うが、二人とも偏食の上に味の濃い食べ物ばかり毎日食べていたせいか血圧がとんでもなく高かった。薬は飲んでいたが食生活を改善する気は全くなかったせいか、二人とも古希を迎える前にコロリと逝ってしまった。当然のことだが、やはり食事は健康に直結する。このままでは偏食ネズミも確実に早死にするだろう。飼い主はネズミが大事じゃなかったのだろうか。それとも生まれつきの偏食家なのだろうか。
ネズミは車移動が嫌いなようで、発進した途端に悲鳴とも嗚咽ともつかない声を発し始めた。来るときもうるさかったので、私はまたかとしか思わなかった。土曜日の午前中にしては車通りが少なく、窓を開けると春の温かい空気が心地よかった。私は気分転換にコーヒーショップに寄ってソイラテをテイクアウトし、のんびり国道を走って帰った。沈んでいた気持ちもいくぶん良くなっていた。
ネコが車道を横断しているのを見て慌てて急ブレーキを掛けた以外は平和なドライブだった。急停車の反動で後部座席のキャリーがゴロンと転がってフロアマットにボスンと落ちた。ネズミはパニックを起こしたようにギャーッと叫んだ後にヒンヒン鳴いていたが、鳴いていると言うことは生きていると言うことなので私は安心して車を走らせ、しばらく行った公園の駐車場に一旦停めてキャリーを戻してやった。
「ごめんごめん」
ネズミは恨みがましくヴーヴー鳴いた。
「ネコが無事だったんだからいいじゃない。ついでにあなたも無傷みたいだし良かった良かった。そんなに騒ぐことではないよ、落ち着いて」
私は独り言のようにそう言うと運転席に戻り、家に向かってまた車を走らせた。
田舎のお年寄りあるあるだと思うが、二人とも偏食の上に味の濃い食べ物ばかり毎日食べていたせいか血圧がとんでもなく高かった。薬は飲んでいたが食生活を改善する気は全くなかったせいか、二人とも古希を迎える前にコロリと逝ってしまった。当然のことだが、やはり食事は健康に直結する。このままでは偏食ネズミも確実に早死にするだろう。飼い主はネズミが大事じゃなかったのだろうか。それとも生まれつきの偏食家なのだろうか。
ネズミは車移動が嫌いなようで、発進した途端に悲鳴とも嗚咽ともつかない声を発し始めた。来るときもうるさかったので、私はまたかとしか思わなかった。土曜日の午前中にしては車通りが少なく、窓を開けると春の温かい空気が心地よかった。私は気分転換にコーヒーショップに寄ってソイラテをテイクアウトし、のんびり国道を走って帰った。沈んでいた気持ちもいくぶん良くなっていた。
ネコが車道を横断しているのを見て慌てて急ブレーキを掛けた以外は平和なドライブだった。急停車の反動で後部座席のキャリーがゴロンと転がってフロアマットにボスンと落ちた。ネズミはパニックを起こしたようにギャーッと叫んだ後にヒンヒン鳴いていたが、鳴いていると言うことは生きていると言うことなので私は安心して車を走らせ、しばらく行った公園の駐車場に一旦停めてキャリーを戻してやった。
「ごめんごめん」
ネズミは恨みがましくヴーヴー鳴いた。
「ネコが無事だったんだからいいじゃない。ついでにあなたも無傷みたいだし良かった良かった。そんなに騒ぐことではないよ、落ち着いて」
私は独り言のようにそう言うと運転席に戻り、家に向かってまた車を走らせた。
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