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感情の起伏が少なく表情も乏しいマッケンロー伯爵が今夜はひどく取り乱していた。
だがそれもやむを得ないことだった。
妻である伯爵夫人が行方不明になったのだ。
彼の妻はロゼという。
伯爵より十歳年下の二十五歳で、金髪の巻き毛に碧い目をした美女だった。
造作の整った小さな顔も、弾力に富んだ雪白の肌も、たおやかな身体も、全てが美しかった。
彼女は快活で、楽しいことが好きで、それでいてしっかり者でもあった。
大抵の人間は彼女に好感を持った。
夫の伯爵も、彼女の持つ多くの美点を認めていたはずだった。
はずだった。
結婚して一年。たったの一年。
伯爵はロゼの美しさに慣れ、優しさに慣れ、献身に慣れた。
いて当然の妻、されて当然の奉仕。
いつしか伯爵はロゼに愛を囁くことをしなくなった。
感謝の言葉すら紡がなくなった舌、優しく抱きしめることすら忘れた腕。
「有意義に使えないのなら、もう必要ないんじゃないかしら。取ってしまったらどうかしら」
ロゼは最後にそう言った。それはただの冗談ではなかった。
だがそれもやむを得ないことだった。
妻である伯爵夫人が行方不明になったのだ。
彼の妻はロゼという。
伯爵より十歳年下の二十五歳で、金髪の巻き毛に碧い目をした美女だった。
造作の整った小さな顔も、弾力に富んだ雪白の肌も、たおやかな身体も、全てが美しかった。
彼女は快活で、楽しいことが好きで、それでいてしっかり者でもあった。
大抵の人間は彼女に好感を持った。
夫の伯爵も、彼女の持つ多くの美点を認めていたはずだった。
はずだった。
結婚して一年。たったの一年。
伯爵はロゼの美しさに慣れ、優しさに慣れ、献身に慣れた。
いて当然の妻、されて当然の奉仕。
いつしか伯爵はロゼに愛を囁くことをしなくなった。
感謝の言葉すら紡がなくなった舌、優しく抱きしめることすら忘れた腕。
「有意義に使えないのなら、もう必要ないんじゃないかしら。取ってしまったらどうかしら」
ロゼは最後にそう言った。それはただの冗談ではなかった。
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