間違いを愛したかっただけ 〜年下の男の子達に挟まれて〜

西浦夕緋

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 偶然と言いましたが緋実くんの家はまだまだ遠くにあるはずです。何しに夜な夜なこの近くまで出てきたのか。コンビニもない閑静な住宅街であります。
「あ、すっぴん?」
 外灯だけが頼りの夜、緋実くんだけに陽がさんさんと降り注いでいる、そのような笑顔でありました。

 二十七歳、当然のように肌に若干の衰えが見え始めてきた頃であります。夜ですからそんな肌を無防備にも晒しているわけです。もはや反射、相手が緋実くんであるとは言え私は手にて顔を覆おうとするわけですが緋実くんの手が即座に私の手首を掴みました。思いがけない握力です、私は短く声を上げるのでした。
「ちゃんと見せて」
 緋実くんの声が降りてきます。確かに視線も上から降りてきていました。
「離して」
「離さない」
「なんでここにいるの?」
 そんな問いも無視、塗り物ひとつ塗られていない私の顔を緋実くんはまじまじと見下ろしています。
「可愛い」
 そうして笑うのでした。外灯の明かりの下でその顔には陰影ができ、歯だけがはっきりと見えました。

 可愛い。何でもないその一言が妙に耳元に停滞するのです。可愛い。数時間前、耳元で幾度も幾度も囁かれたのと同じ言葉でありました。

 掴まれた手首を引っ込めようとするのですが緋実くんの握力を前にうまくいきません。
「いい加減にして」
 見上げた先にある緋実くんの目に笑みがないことに気づきます。
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