イケメン目指して転生したら美少女になってました

かつしげ

文字の大きさ
3 / 51

Chapter 3 ジュノー・マグノリア

しおりを挟む
「いいぞ美人の姉ちゃん!!やっちまえ!!」

「そんなオッさんに負けんなよ!!」

店内は凄い盛り上がりを見せる。呑んだくれオヤジに絡まれている美少女を美少女が助けに入りあまつさえ剣を抜いているのだ。盛り上がらない訳が無い。
だが正直大ピンチだ。助けに入ったはいいが勝てる保証はどこにも無い。俺は元の世界で中学時代、剣道をやっていて初段の腕前ではある。だが決して強い訳では無い。剣道経験者ならわかると思うが初段ぐらいなら3年間やってれば普通は取れるぐらいの価値だ。現に大会では地区で二回戦負けが俺の現実だ。普通に考えればこのオヤジに俺が勝てる訳が無い。ワンチャンあるとすれば異世界最強で転生してるお決まりのパターンだ。大体の異世界物はチート、最強、即死が王道だ。それのどれかが俺に備わっていればこんなオヤジに負ける訳が無い。後はやって見るしか無い。

「オイ、姉ちゃん。分かってて剣を抜いてんだろうな?」

「…何がだよ?」

「この国では剣を抜くって事は決闘の合図だ。男も女も関係ねえ。剣を抜かれて逃げたら一生腰抜けのレッテルを貼られる事になる。それが分かっててやってんだろうなあ!!」

…いや、知らないっす。そんなの知ってたら剣なんか抜いて無いっす。だからこんだけ盛り上がってるわけか。それじゃあ剣を抜かないで止めに入るだけならこんな大事にならなかったのか?そういう設定は最初に言ってくれよ。

「…知ってるに決まってるだろ。女に暴力振るうような不届き者は成敗してくれる。」

ヤケクソだ。俺の大好きだった時代劇のような台詞は一度言ってみたかった。これで死んでも悔いはない。もう一回転生できたら今度こそイケメンに転生出来ますように。

オヤジが奇声を上げながら剣を引き抜く。俺の台詞に怒り心頭といった感じだ。怒りによって明らかに攻撃力が上がってるだろう。アレで斬られたら間違いなく死んじゃうな。痛いのは嫌だな。だから凍死を選んだのにな。

「ちょっと顔が良いからって調子に乗ってんじゃねえ!!!」

オヤジが剣を振り上げ俺に斬りかかって来る。ヤバい。どうしよう。とりあえず剣を受けようか?でも剣を受けた時に鍔迫り合いになって拳を切ったりしないだろうか。痛いのは嫌だ。なら躱して間合いを取る方がいいか?でも躱したつもりになって斬られたら痛いなんてもんじゃ済まないよな。どうしよう。どっちにすれば…

だがそんな事を考えている間にオヤジの剣が俺に迫る。躱して間合いを取る程の時間は残っていないので仕方なく俺はオヤジの剣を受ける事にする。

しかしここで予想外の事が起こる。俺はオヤジの剣を受けようとした。確かに受けようとしたが体が勝手に動き、そのまま剣を弾き飛ばしてオヤジの喉元に剣を突きつけていた。脳で考えるよりも速く体が動いたのだ。細胞が反応してこの一連の動作を行なった、そんな感じだった。
俺の動きに先程まで盛り上がりを見せていた店内が静寂に包まれる。それと同時に店のドアが開き、店内にお揃いのマントと制服を身につけた連中がなだれ込んで来る。その連中に俺とオヤジは囲まれてしまう。

「何を遊んでいる。さっさと帰るぞ。」

その中の1人の男が俺の背後からそう話しているが誰に言ってるんだ?このオヤジか?このオヤジの仲間なら結構マズイ。10人以上を1人で相手にしなくてはならない。囲まれてるから逃げる事も出来ない。さて、どうする。どうするの俺?

「良いじゃない。王国の風紀を乱す者を炙り出せたんだから。」

もう1人俺の背後で声を出す人間が増えた。だがこの声の主は誰だか分かる。俺は確認の為に背後を振り返るとオヤジに絡まれていた金髪美少女が何事も無かったかのように立ち上がっていた。

「王国内での婦女子に対する暴行は重罪よ。その男を連れて行きなさい。」

「はっ!」

金髪美少女が命じるとマントの男たちが元気良く返事をし、オヤジを連行して行く。オヤジは暴れるがマントの男たちが力ずくでそれを組み伏せて強制的に店外へと連れ出して行った。
それを見届けると金髪美少女が俺に近づきニコッと微笑む。

「助けてくれてありがとう。あなたそんな可愛い顔して強いのね。あ、自己紹介がまだだったわね。私はジュノー。ジュノー・マグノリア。」

「あ…俺、じゃなくて私は凛、渡辺凛。」

「ワタナベリン?名字が最初なんて珍しいわね。」

異世界でも欧米的な読み方なんだな。日本的な読み方は珍しいのか。ジュノーに見惚れちゃってテンパってしまった。

「ジュ、ジュノーってあのジュノーか…!?」

「マグノリアの家名を名乗ってんだ間違いねえよ!!」

ジュノーの名前を聞くと静寂に包まれていた店内がざわつき始める。ジュノーって有名人なのか。これだけの美少女なんだから王国のミスコンでグランプリとか取っててもおかしく無いもんな。

「驚かせちゃったみたいだけど、私は騎士団の一員なの。王国の風紀を乱す者を取り締まる為に潜入捜査をしていたって感じかな。だから怖がらないね。ねっ!あなたはーー」
「ジュノー、そろそろ王宮へと戻らねばならぬ時間だ。」

ジュノーが俺に何かを言いかけようとした時に男がそれを阻害する。

「ふぅ…せっかく同い年ぐらいの強い女の子に会えてワクワクしてるのにマティスは空気が読めないわね!」

「何とでも言え。」

「ごめんね、リン。本当はあなたともっとお話ししてたかったんだけど仕事に戻らなきゃいけないの。何か困った事があったら騎士団の詰所に来て。必ず力になるわ。」

「う、うん…!」

「じゃあまたね。バイバイ!」

女の子らしい可愛い手の振り方をしながらジュノーとマティスは店を出て行った。
凄い可愛かったな。やっぱり異世界はレベルが高かった。俺自身も超絶可愛かったがジュノーも超絶可愛かった。やっぱり転生して良かった。
そんな事を考えながら呆けていると美味屋のオッさんに背中をバシッと叩かれる。

「お嬢ちゃんやるじゃねえか!!ただの旅人じゃなかったんだな!!店の騒ぎを抑えてくれたんだ、今日は俺が奢ってやる!!すぐにリゾット作るから待ってな!!」

オッさんはニカッと笑いながら厨房へと戻って行った。それを皮切りに他の客たちも俺に賞賛の声を浴びせて来る。凄いとか只者じゃ無いとか言われて俺は正直嬉しかった。ここまで人に褒められた事なんて今までの俺の人生には無い事だ。これだけで俺は異世界に転生して良かったと本当に思ってしまった。



*************************




「マグノリア隊長、隊衣です。」

「ありがとう。」

ジュノーが隊士からマントと上着を受け取り身に付ける。隊服に着替えたジュノーからは先程凛と話した時のような女の子らしさは無く凛々しい顔つきに変わっていた。

「もう潜入捜査はやめる事だな。聖騎士としての威厳が感じられん。」

「はいはい。それにしてもさっきの娘、強かったなぁ。見ない顔だったけど旅人かしら?」

「あの動きは只者では無いな。帝国の間者の線もある。隊士に見張らせるか?」

「それは無いわよ。目を見ればわかるわ。リンは間者では無い。その必要は無いわ。」

「ジュノーがそう言うのなら構わないが…帝国の連中が何やら嗅ぎ回っているらしい。戦が始まる可能性は否定できんぞ。」

「わかってるわ。その時が来たら私が王国の為の剣になる。この身を捧げる覚悟は出来ている。」

そう話すジュノーの青い瞳には決意の炎が灯っている。国の為に命を捧げるという強い信念と愛情が彼女には有った。

この世界を取り巻く環境を渡辺凛はまだ知らない。そして凛自身、この世界の渦に巻き込まれて行くことになる事をまだ知らない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...