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Chapter 2 ど真ん中どストライク
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「美少女転生って…ありえないだろ…」
服屋から出た俺は水路近くのベンチに座り項垂れていた。念願の異世界転生は出来た。だけど美少女ってなんだよ。イケメンになってハーレムライフを送るのが俺の夢だったのに。美少女でどうやってハーレムライフを送るんだよ。イケメンと過ごすハーレムライフを送るってのかよ。それは嫌だ。俺は男は嫌いだ。男に迫られるなんて地獄以外他ならない。
「どうしよう…てか良く考えたら住む所も無いぞ。金だって無いし。」
そうだよ。異世界転生してんだから帰る家は無い。それなら宿に泊まるしかないんだから金が必要だ。金が無ければメシも食えない。
「異世界転生したって元の世界と仕組み変わらねーじゃん。転生した奴らってどうやって異世界で暮らしてんだよ。剣以外に何かねーかな…」
俺はポケットを漁って見るとチャリチャリと音がする。小銭でもあるのかと思い見て見ると金貨が10枚入っていた。
「金貨か…異世界での価値ってどれぐらいなんだろう。他にはポケットに何も無いし。初期装備は剣と金貨10枚か。日も暮れて来たしとりあえず宿に泊まろう。腹も減ったし。」
今日の宿を確保する為商店の方へと戻る。すれ違う男たちが俺を見ているのが何とも気持ち悪い。本当なら美女たちに熱い視線を向けられ片っ端から俺の女にしてハーレムを形成するつもりだったのに。何とも言えない気持ちで俺は宿屋へと辿り着いた。
「いらっしゃい。」
宿屋に入ると受付の男が咥えタバコで雑誌を読みながら接客をする。クソ店員じゃん。元の世界なら動画に撮って炎上させられてんぞ。
「一泊泊まりたいんですけどいくらですか?」
「一泊銅貨10枚だよ。」
「あ、銅貨何枚で金貨になりますか?レートわかんなくて。」
「はあ!?おい、ねーちゃん!!通貨のレート知らねえわけねーだろ!!冷やかしなら帰っーー」
店員のオッさんが俺を見て時が止まっている。咥えていたタバコも口から床に落ちてしまった。
「あの…?」
「えっ!?あ、レート!!レートですね!!銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚ですよ!!」
先程まで態度の悪かった店員が急に立ち上がりハキハキとレートについて教えてくれた。流石は超絶美少女。この見た目なら男なんかコロッと落ちるよな。中身男だけど。てか金貨の価値高いな。金貨1枚で3年ぐらい泊まれるじゃん。これなら生きる分には困らないかもしれないな。いや、それは早計か。物価が高い可能性もある。服屋ではあまりのショックに値段なんか見なかったからな。メシ屋で確認してみるか。
「教えて下さってありがとうございます。あの…金貨しか無いのですがお釣りって出ますでしょうか?」
「お釣り?お釣りね!出ますよ!」
テーブルに置いた金貨を店員が受け取り、お釣りの銀貨99枚と銅貨90枚、それに絹の袋を俺に返してきた。
「お客さん道具袋をお持ちで無いみたいなので良かったらこれに入れて下さい。それとこちらが部屋の鍵になります。部屋番号は2017号室です。」
親切な店員だな。いや、このルックスのお陰か。超絶美少女だからこそ出来る芸当だ。これだけコインが有ったらポケットに入れておくと邪魔だから有り難く貰っておこう。腰にでもぶら下げとけばいいだろ。
「ご親切にありがとうございます。」
俺は店員に礼を言って部屋へと向かう。部屋に入ると典型的なビジネスホテルの部屋って感じの部屋だった。ユニットバスに冷蔵庫も有る。これだけ見ると異世界感は全く無い。
「でも風呂があるだけマシか。風呂は貴族だけとかって異世界も有るもんな。風呂無しだったらもうワンチャン転生チャレンジしてたかもしれないな。」
ベッドにダイブする。思ったよりもフカフカだ。このベッドなら問題無い。異世界でもやって行けそうだ。
「でも女かー…いくら超絶美少女とはいえ自分が女なのはなー…何を希望に生きて行けばいいんだか。」
せっかく自殺をしてまで異世界に来たのに女じゃ何を楽しみに生きればいいか検討もつかない。そもそも異世界でどうやって生きて行けばいいんだろう。この世界のシステムやら何やら全然わからない。新聞でも買って情報仕入れるしか無いか。
「あ…字読めるのかな。でも宿屋って書いてあるの理解出来たよな。なら大丈夫なのか。」
でも先ずはメシだ。腹が減っては戦はできぬって言うしメシを食ってから考えよう。こっちのメシが口に合うかも問題だし。
俺は宿屋の店員にメシ屋の情報を聞いてみる事にした。地元民に美味いメシ屋を聞くのは全世界共通なはずだ。特に宿屋なんてポジションなら客に聞かれる事も多いはず。きっと美味いメシ屋を知っているに違いない。
「すみません。食事に行こうと思ってるんですが美味しい所をご存知でしょうか?」
さっきとは打って変わって床のモップ掛けをしている店員に聞くと待ってましたと言わんばかりの満面の笑みで俺の問いに答える。
「お食事なら隣の店がいいですよ!私のお勧めです!きっと満足できると思いますよ!」
「隣ですね。わかりました。ありがとうございます。」
宿屋の隣のメシ屋がお勧めだと聞いたのでそこに行ってみる事にした。オッさんがそこまで言うなら信頼度は高いだろう。これで美味くなかったらきっと俺の舌は異世界に順応出来ないという事だ。
宿屋を出て隣の建物に行く。歴史的建造物が立ち並ぶ夜の町並みは幻想的な光景だった。電気の供給が何から行われているか分からないが明らかに電球からでは無い。火の玉のような光の玉から街灯に明かりが供給されている。もしかしたらこれが魔法なのかもしれない。
その光景に見惚れながら隣のメシ屋へと歩みを進めて行く。宿屋と同じ様な建物だが看板には『美味屋』と書いてある。途端に胡散臭さが出て来た。大抵こういうのは大した味じゃないって相場が決まっている。それでも今は宿屋のオッさんを信じるしかない。俺は期待半分不安半分で美味屋のドアを開けた。
店内に入ると思った以上に活気が有った。席は殆ど埋まっており楽しそうな笑い声が店内に響き渡っている。肉の匂いが店内に充満し、空腹で怒りを上げている俺の腹をより一層刺激する。
空いてる席を探して店内を徘徊する。その際に俺はフードを被り顔を隠す。この超絶美少女の顔をこんな所で晒したら変な男が寄って来る。女ならウェルカムだが男なんかに近づかれたく無い。
徘徊して見るがカウンター以外に空きは無かった。本当ならカウンターには座りたく無い。カウンターというものは大概常連客の指定席みたいなもんだ。そこに座るだけで目立ってしまうし文句を言われるかもしれない。だが腹が減ってどうしようもない俺は構わず座る事にした。
「メニューってありますか?初めてなので分からなくて…」
「旅人かい?女の1人旅は危険だから気をつけなね。はい、これメニューね。」
店主らしき髭を生やしたダンディなオッさんからメニューを貰い見てみると大半が良く分からない料理ばかりだったが俺でも馴染みのある料理がいくつかあった。ピザやパスタ、リゾットだ。
「ここイタリアじゃないよな…?転生したらイタリア人でしたってオチなら笑えるんだけど。」
「イタリア…?お嬢ちゃんここが良く分からずに流れ着いたのかい?」
「まあ…そんな感じです。」
「ハッハッハ!それは困っただろうな!ここはヴィルトシュヴァイン王国!様々な人種が集まる自由の王国さ!」
どうやら間違いなく異世界のようだ。ヴィルトシュヴァインなんて国は間違いなく無かった。街灯に電球使ってない時点で異世界確定だろうけどイタリア的要素があるから少し心配になってしまった。
「隣のギュルテルティーア帝国みたいに自由が制限されてるわけじゃないから安心しな。」
「自由が制限ってどんな感じに?」
「俺もギュルテルティーアに住んだ事は無いから詳しくは知らないが、向こうじゃ厳しい身分階級制度が敷かれ、人身売買なんてザラって感じらしい。お嬢ちゃんみたいな女の1人旅で人買いに捕まったら売られちまうだろうよ。」
途端に危険なワードが出て来た。こんな超絶美少女が奴隷なんかになったら性奴隷確定になる。男なんかに触られるのも御免なのにそんな事されたらまた死ぬしか無い。気をつけないといけないな。そもそもこの世界での俺の実力ってどうなんだ。他の異世界転生物なら最強設定が多いが雑魚設定の物もある。もし雑魚設定ならどうやってこの世界で生き残ればいいんだろう。強い騎士でも仲間にするしか無いか?でもタダで仲間になってくれるとは思えない。絶対に身体を使わないといけなくなる。それは嫌だ。女に身体を使うならいつでもウェルカムだが男に使うぐらいなら舌を噛み切って自害する。
「そんな怯える事は無いよ。ヴィルトシュヴァインには騎士団もいるからこの国にいる限りは危険はまずないさ。」
騎士団とか厨二心をくすぐるワードまででてきたな。治安が良いならとりあえずはこの国に滞在して身の振り方はゆっくり考えよう。幸いにも金ならある。あ、メシの値段がわからないか。メニューにも書いてないし。聞いてみるか。
「親切にありがとうございます。とりあえずはこの国に滞在する事にします。」
「それが一番だ。命あっての物種ってな。」
「そうですね。あの…メニューに値段が無いのですが…?」
「ウチは全品、ドリンクは銅貨1枚、食事は銅貨2枚だよ。」
安っ!?安くない!?いや、金貨の価値が高すぎるのか。これなら生活には当面困らなそうだ。安心したら尚更腹減ったな。
「それじゃあ、ドルドルキノコのリゾットとギュルギュルオレンジのソーダジュースをお願いします。」
「はいよ。少し待っててな。」
ドルドルキノコとギュルギュルオレンジってネーミングは気になるが元を正せばキノコとオレンジだ。それならよっぽどじゃない限りは食べれるだろう。不味ければ注文し直せばいいし。金ならある!
料理が出来上がるまでの間俺は周囲の人間観察を行う事にした。情報の無い今の現状からすればどんな些細な事でも吸収する必要がある。美味屋のオッさんの話から察するにこの世界は人間だけが人型では無いという事だ。異世界のお約束である亜人が存在する。美形の定番のエルフやハーフエルフがいる可能性が高い。それに犬耳美少女や猫耳美少女といった存在もいる可能性がある。俺はそれを見る為にここに来たんだ。そんな娘たちとのウハウハ異世界ハーレムをする為に死んだんだ。俺が男とか女とかは関係無い。先ずは仲良くなってから後の事は考えればいいんだ。
早速椅子を後ろに回転させて店内を見て見るが他人種っぽい人は居ない。それどころかここには女なんか殆どいない。よくよく見て見るとここってメシ屋というより居酒屋なんだけど。こんな店に可愛い女の子が来る訳ないだろ。可愛い女の子はもっとお洒落な店に来る。それは全世界共通なはずだ。俺は落胆しながら椅子を前に戻し、料理が出来上がるのを待つ事にした。
だがその時、後ろの方の席で揉め事が発生する。男の怒鳴り声とグラスが割れる音がこだまする。
「オイ!!打つかっといて何もねえのか!?ああ!?」
「謝ってるじゃない!!」
客同士のトラブルだろうか。男に絡まれている方は俺と同じようにフードで顔を隠しているが声と背丈から察するに女だろう。
「あの男はヨソ者だな。俺の店で暴れるなんてとんでもねえ。ちょっと行って来るか。」
オッさんが俺のリゾット作りを中断し女を助けに行く。俺は特に助ける予定は無い。強い設定か弱い設定か分からないのに余計な事はしない。
「女のクセに生意気な口叩くんじゃねえ!!」
「きゃっ…!!」
男が女を突き飛ばし、その弾みで被っていたフードが外れ、顔が露わになる。その女性の姿は、金色の美しい髪、透き通るような白い肌、柔らかい表情に青い目、俺のど真ん中どストライクだった。それを見た俺は頭で考えるよりも先に全身の細胞が反応し、鞘から剣を抜き男の前に立った。
「女に手を挙げるんじゃねえよ。俺が相手になってやる。」
彼女との出会いが俺の異世界生活を大きく変えて行く事になる事を俺はまだ知らない。
服屋から出た俺は水路近くのベンチに座り項垂れていた。念願の異世界転生は出来た。だけど美少女ってなんだよ。イケメンになってハーレムライフを送るのが俺の夢だったのに。美少女でどうやってハーレムライフを送るんだよ。イケメンと過ごすハーレムライフを送るってのかよ。それは嫌だ。俺は男は嫌いだ。男に迫られるなんて地獄以外他ならない。
「どうしよう…てか良く考えたら住む所も無いぞ。金だって無いし。」
そうだよ。異世界転生してんだから帰る家は無い。それなら宿に泊まるしかないんだから金が必要だ。金が無ければメシも食えない。
「異世界転生したって元の世界と仕組み変わらねーじゃん。転生した奴らってどうやって異世界で暮らしてんだよ。剣以外に何かねーかな…」
俺はポケットを漁って見るとチャリチャリと音がする。小銭でもあるのかと思い見て見ると金貨が10枚入っていた。
「金貨か…異世界での価値ってどれぐらいなんだろう。他にはポケットに何も無いし。初期装備は剣と金貨10枚か。日も暮れて来たしとりあえず宿に泊まろう。腹も減ったし。」
今日の宿を確保する為商店の方へと戻る。すれ違う男たちが俺を見ているのが何とも気持ち悪い。本当なら美女たちに熱い視線を向けられ片っ端から俺の女にしてハーレムを形成するつもりだったのに。何とも言えない気持ちで俺は宿屋へと辿り着いた。
「いらっしゃい。」
宿屋に入ると受付の男が咥えタバコで雑誌を読みながら接客をする。クソ店員じゃん。元の世界なら動画に撮って炎上させられてんぞ。
「一泊泊まりたいんですけどいくらですか?」
「一泊銅貨10枚だよ。」
「あ、銅貨何枚で金貨になりますか?レートわかんなくて。」
「はあ!?おい、ねーちゃん!!通貨のレート知らねえわけねーだろ!!冷やかしなら帰っーー」
店員のオッさんが俺を見て時が止まっている。咥えていたタバコも口から床に落ちてしまった。
「あの…?」
「えっ!?あ、レート!!レートですね!!銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚ですよ!!」
先程まで態度の悪かった店員が急に立ち上がりハキハキとレートについて教えてくれた。流石は超絶美少女。この見た目なら男なんかコロッと落ちるよな。中身男だけど。てか金貨の価値高いな。金貨1枚で3年ぐらい泊まれるじゃん。これなら生きる分には困らないかもしれないな。いや、それは早計か。物価が高い可能性もある。服屋ではあまりのショックに値段なんか見なかったからな。メシ屋で確認してみるか。
「教えて下さってありがとうございます。あの…金貨しか無いのですがお釣りって出ますでしょうか?」
「お釣り?お釣りね!出ますよ!」
テーブルに置いた金貨を店員が受け取り、お釣りの銀貨99枚と銅貨90枚、それに絹の袋を俺に返してきた。
「お客さん道具袋をお持ちで無いみたいなので良かったらこれに入れて下さい。それとこちらが部屋の鍵になります。部屋番号は2017号室です。」
親切な店員だな。いや、このルックスのお陰か。超絶美少女だからこそ出来る芸当だ。これだけコインが有ったらポケットに入れておくと邪魔だから有り難く貰っておこう。腰にでもぶら下げとけばいいだろ。
「ご親切にありがとうございます。」
俺は店員に礼を言って部屋へと向かう。部屋に入ると典型的なビジネスホテルの部屋って感じの部屋だった。ユニットバスに冷蔵庫も有る。これだけ見ると異世界感は全く無い。
「でも風呂があるだけマシか。風呂は貴族だけとかって異世界も有るもんな。風呂無しだったらもうワンチャン転生チャレンジしてたかもしれないな。」
ベッドにダイブする。思ったよりもフカフカだ。このベッドなら問題無い。異世界でもやって行けそうだ。
「でも女かー…いくら超絶美少女とはいえ自分が女なのはなー…何を希望に生きて行けばいいんだか。」
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「あ…字読めるのかな。でも宿屋って書いてあるの理解出来たよな。なら大丈夫なのか。」
でも先ずはメシだ。腹が減っては戦はできぬって言うしメシを食ってから考えよう。こっちのメシが口に合うかも問題だし。
俺は宿屋の店員にメシ屋の情報を聞いてみる事にした。地元民に美味いメシ屋を聞くのは全世界共通なはずだ。特に宿屋なんてポジションなら客に聞かれる事も多いはず。きっと美味いメシ屋を知っているに違いない。
「すみません。食事に行こうと思ってるんですが美味しい所をご存知でしょうか?」
さっきとは打って変わって床のモップ掛けをしている店員に聞くと待ってましたと言わんばかりの満面の笑みで俺の問いに答える。
「お食事なら隣の店がいいですよ!私のお勧めです!きっと満足できると思いますよ!」
「隣ですね。わかりました。ありがとうございます。」
宿屋の隣のメシ屋がお勧めだと聞いたのでそこに行ってみる事にした。オッさんがそこまで言うなら信頼度は高いだろう。これで美味くなかったらきっと俺の舌は異世界に順応出来ないという事だ。
宿屋を出て隣の建物に行く。歴史的建造物が立ち並ぶ夜の町並みは幻想的な光景だった。電気の供給が何から行われているか分からないが明らかに電球からでは無い。火の玉のような光の玉から街灯に明かりが供給されている。もしかしたらこれが魔法なのかもしれない。
その光景に見惚れながら隣のメシ屋へと歩みを進めて行く。宿屋と同じ様な建物だが看板には『美味屋』と書いてある。途端に胡散臭さが出て来た。大抵こういうのは大した味じゃないって相場が決まっている。それでも今は宿屋のオッさんを信じるしかない。俺は期待半分不安半分で美味屋のドアを開けた。
店内に入ると思った以上に活気が有った。席は殆ど埋まっており楽しそうな笑い声が店内に響き渡っている。肉の匂いが店内に充満し、空腹で怒りを上げている俺の腹をより一層刺激する。
空いてる席を探して店内を徘徊する。その際に俺はフードを被り顔を隠す。この超絶美少女の顔をこんな所で晒したら変な男が寄って来る。女ならウェルカムだが男なんかに近づかれたく無い。
徘徊して見るがカウンター以外に空きは無かった。本当ならカウンターには座りたく無い。カウンターというものは大概常連客の指定席みたいなもんだ。そこに座るだけで目立ってしまうし文句を言われるかもしれない。だが腹が減ってどうしようもない俺は構わず座る事にした。
「メニューってありますか?初めてなので分からなくて…」
「旅人かい?女の1人旅は危険だから気をつけなね。はい、これメニューね。」
店主らしき髭を生やしたダンディなオッさんからメニューを貰い見てみると大半が良く分からない料理ばかりだったが俺でも馴染みのある料理がいくつかあった。ピザやパスタ、リゾットだ。
「ここイタリアじゃないよな…?転生したらイタリア人でしたってオチなら笑えるんだけど。」
「イタリア…?お嬢ちゃんここが良く分からずに流れ着いたのかい?」
「まあ…そんな感じです。」
「ハッハッハ!それは困っただろうな!ここはヴィルトシュヴァイン王国!様々な人種が集まる自由の王国さ!」
どうやら間違いなく異世界のようだ。ヴィルトシュヴァインなんて国は間違いなく無かった。街灯に電球使ってない時点で異世界確定だろうけどイタリア的要素があるから少し心配になってしまった。
「隣のギュルテルティーア帝国みたいに自由が制限されてるわけじゃないから安心しな。」
「自由が制限ってどんな感じに?」
「俺もギュルテルティーアに住んだ事は無いから詳しくは知らないが、向こうじゃ厳しい身分階級制度が敷かれ、人身売買なんてザラって感じらしい。お嬢ちゃんみたいな女の1人旅で人買いに捕まったら売られちまうだろうよ。」
途端に危険なワードが出て来た。こんな超絶美少女が奴隷なんかになったら性奴隷確定になる。男なんかに触られるのも御免なのにそんな事されたらまた死ぬしか無い。気をつけないといけないな。そもそもこの世界での俺の実力ってどうなんだ。他の異世界転生物なら最強設定が多いが雑魚設定の物もある。もし雑魚設定ならどうやってこの世界で生き残ればいいんだろう。強い騎士でも仲間にするしか無いか?でもタダで仲間になってくれるとは思えない。絶対に身体を使わないといけなくなる。それは嫌だ。女に身体を使うならいつでもウェルカムだが男に使うぐらいなら舌を噛み切って自害する。
「そんな怯える事は無いよ。ヴィルトシュヴァインには騎士団もいるからこの国にいる限りは危険はまずないさ。」
騎士団とか厨二心をくすぐるワードまででてきたな。治安が良いならとりあえずはこの国に滞在して身の振り方はゆっくり考えよう。幸いにも金ならある。あ、メシの値段がわからないか。メニューにも書いてないし。聞いてみるか。
「親切にありがとうございます。とりあえずはこの国に滞在する事にします。」
「それが一番だ。命あっての物種ってな。」
「そうですね。あの…メニューに値段が無いのですが…?」
「ウチは全品、ドリンクは銅貨1枚、食事は銅貨2枚だよ。」
安っ!?安くない!?いや、金貨の価値が高すぎるのか。これなら生活には当面困らなそうだ。安心したら尚更腹減ったな。
「それじゃあ、ドルドルキノコのリゾットとギュルギュルオレンジのソーダジュースをお願いします。」
「はいよ。少し待っててな。」
ドルドルキノコとギュルギュルオレンジってネーミングは気になるが元を正せばキノコとオレンジだ。それならよっぽどじゃない限りは食べれるだろう。不味ければ注文し直せばいいし。金ならある!
料理が出来上がるまでの間俺は周囲の人間観察を行う事にした。情報の無い今の現状からすればどんな些細な事でも吸収する必要がある。美味屋のオッさんの話から察するにこの世界は人間だけが人型では無いという事だ。異世界のお約束である亜人が存在する。美形の定番のエルフやハーフエルフがいる可能性が高い。それに犬耳美少女や猫耳美少女といった存在もいる可能性がある。俺はそれを見る為にここに来たんだ。そんな娘たちとのウハウハ異世界ハーレムをする為に死んだんだ。俺が男とか女とかは関係無い。先ずは仲良くなってから後の事は考えればいいんだ。
早速椅子を後ろに回転させて店内を見て見るが他人種っぽい人は居ない。それどころかここには女なんか殆どいない。よくよく見て見るとここってメシ屋というより居酒屋なんだけど。こんな店に可愛い女の子が来る訳ないだろ。可愛い女の子はもっとお洒落な店に来る。それは全世界共通なはずだ。俺は落胆しながら椅子を前に戻し、料理が出来上がるのを待つ事にした。
だがその時、後ろの方の席で揉め事が発生する。男の怒鳴り声とグラスが割れる音がこだまする。
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オッさんが俺のリゾット作りを中断し女を助けに行く。俺は特に助ける予定は無い。強い設定か弱い設定か分からないのに余計な事はしない。
「女のクセに生意気な口叩くんじゃねえ!!」
「きゃっ…!!」
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