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3の寿命
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今日は、眠気がひどい。
僕は学校に帰ってからずっとソファーに腰を掛けていた。静かなポップミュージックでも流して目を覚まそうかと考えたが、ダメだった。まず、体を動かすのですら怠いのだ。
昨日もこうだった。昨日もこの調子でつい寝てしまい、全く夜が眠れなくなったのだ。しかし、ここ最近少し体の調子が悪いような気がするのだ。何かにとりつかれたような、なにか僕にないものが体に入り込んだ気がするのだ。
徐々に、手が動かなくなる。全く金縛りじゃなんだぞ。僕は思った。
そして、次第にまだ可能性のあった脳の働きまでスリープモードのようになってしまった。
それから、何分たったかはわからない。もしかすると、何時間たったのかもしれない。とにかく、僕は目を覚めた。というのも、自分で起きたわけではない。起こされたのだ。
「にいちゃーん、助けてー!」
その声は部屋を響かせた。それは僕の鼓膜まで届かせ、脳に信号を送り、ついでに少し覚醒させた。
「ん、どうした?」
発声が基準状態に戻る。
「入試の不安がー」
妹は頭を抱えながら不満をつぶやく。
妹は今年受験生だ。受ける高校は僕と同じらしく、試験まで残り二週間だ。やはり、この時期になれば積み重ねいてきたものにも不安も出るのだろう。
僕は妹に対してのアドバイスを少しばかり考えてから口に出した。
「まぁ、お前ならどうせ大丈夫だろ。なんやかんやで本番に強いしな」
だが、答えは不正解みたいだった。妹はやれやれと言わんばかりにため息をつく。
「もうー、お兄ちゃんはアドバイス下手すぎだよ。そんなんじゃ、彼女できてもいすぐに呆れられちゃうよ」
「まじか、女ってめんどくさいな」
「もう、またそういう!」
妹はぷんすかと怒りながら、僕の隣に座りだす。
「お兄ちゃんが怒らせたせいで、私はやる気なくなっちゃったよ」
「いや待て、俺のせいではないだろ」
「お兄ちゃんのせいだよ。絶対に」
なんで倒置法使うの? もしかして、今も試験勉強してるの?
「あーあ、お兄ちゃんのせいでやる気がなくなっちゃったー」
妹はそう言いながら猫のように僕の太ももに頭を乗せた。
「ねぇ、せっかくだから、私がやる気出る話してよー」
ほんとこいつ図々しいな。だが、まぁ受験生だからな、そこんところは許そう。
俺はわざとらしく一つ咳ばらいをした。
「わかった。やる気が出るかどうかはわからんが話をしてやろう」
「へへ、待ってました」
しかし、何の話をしようか。話すネタというのはいくらでもあるが、さすがに今のこいつの状況に合わせた話となると難しいな。
とりあえず、あたりを見渡した。僕の部屋は別にきれいと呼べるほどではない。というのも、散らかるものを大して置いてないからだ。僕はそんな寂しい部屋で妹への話しのネタになるものを探し出してみた。
そんな中で、すぐに一枚の写真が入った写真立てと目が合った。そうだな、じゃあ...。
「3の寿命という話をしようか」
「3の寿命?」
「そう、3の寿命だ。これはちょっとアキレスと亀をいじったような話なんだがな...」
僕はあの写真立てを見ながら語り始めた。
まず、ある少女がいた。ここでは名前を付けるのが面倒なので主人公という名前にしよう。
その主人公という少女は普通の女だった。大して世の中には興味を持たず、ましてや物欲も弱く。まぁ、とにかく一般的な女だと思ってくれたいい。まぁ、一般的な女性がどのようなものなのかはわからないが、普通によくいる女だと思ってくれていい。
ある日、主人公が余命宣告されるんだ。いや、余命宣告という言葉は好きじゃないな...。
そうだな、じゃあこうしよう。ある日、占い師に「お前さんの命は後3か月で終わる」と言われたんだ。ちなみに、この占い師の予言はほとんど外れないのを前提と、主人公を含めた家族や友人もその予言を過信しているとする。
それで、何だったかな。あぁ、そうだ、主人公は残り3か月というカウントダウンを宣言されるわけだ。
それで主人公は初めの一週間は自暴自棄になって、すべてに対して疑念を抱いたりとか、見えない先に恐れたりとか、今まで感じなかった死のリアルを身に感じるわけだ。
それから、少ししてようやく主人公は自分を取り戻す。そして、迷惑をかけた家族や友人A達に対しての謝罪や、遺書なんかを書いて身の整理を済ませた。
そこまでが、二週間としよう。
次に主人公は世界への旅を企てた。実は主人公、億劫な性格であまり表面的に使うことはなかったが、英語ができた。死ぬ前となれば躊躇や羞恥心が消えるのか、主人公は迷いもなく世界に行ったのだ。
まずはアジアから、次に北欧、最後に南米。どうしてこの順番で行ったのかは知らんが、こうすると効率的に回れるのだろう。
そして、主人公は旅に出てから二か月と一週間後に帰ってくる。いや、もう少し早く帰ってきてたかな。まぁ、そこのところはいいだろう。
それで、主人公は次に慈善活動を国内で行った。本当に主人公は性格が変わったのだ。そして、本当に主人公は自分の命が尽きるまで燃やし続けた。
そして、宣告から2か月と29日がたった。そう、明日になれば主人公は死ぬのだ。それで、最後に主人公はお礼を言いに、占い屋に行った。
そして、一応再度占ってもらう。するとだ、占い屋は主人公に対してこういったわけだ「わしはあの時お前さんに残り3か月といったがあれは間違いじゃったと」、そして占い師は言葉を続ける。「あと、三日を付け加えるのを忘れたと」
だが、主人公はうれしい気持ちにも悲しい気持ちにもならかったそうだ。だって、そうだろ、三日だぜ、三日。大して、この三日でできることは少ない。
それでも、主人公は尽きるまで命を燃やし続けた。今度こそ本当の後悔のないようにな。
.....................................................。
「えっ、終わり?」
妹はあり得ないというような顔で僕を見つめた。
「いや、どのように終わったかは各自で考えてほしいなと」
「えー、私は別にそんなの求めてないよー」
妹は頬を膨らませて、優しく僕を睨む。
「あっ、でもわかったかも...。」
「はい、妹さん」
僕はクイズ番組のように妹をあてる。
「えっとね、話のタイトルが3の寿命でしょ、それにお兄ちゃんが最初にアキレスと亀の話に似てるって言ったから...。わかった! 主人公はいつまでも占い師に3ずつ間違っていたと言われるんでしょ。だから、3か月、3日、3時間、3分、3秒、これが答えでしょ」
妹はふふーんといった顔でどや顔をかましていたが、”真の答え”は違う。
けど、まぁ僕の作った話では大体正解なので、ピンポーンとでも言っておく。
「へへ、やっぱりね。さすがに受験生の読解力は舐めたらいけないよ、お兄ちゃん」
妹の態度は風船のように膨れ上がっていったが、まぁここで割るなんてことはしない。これで少しはモチベーションも上がってくれただろう。
あっ、そういえば一つ言い忘れていたな。
「妹よ、この話のテーマは何だと思う?」
「えー、テーマね...」
妹はテーマという単語を10回ほど復唱し、考ええている仕草をする。
「もしかして、後悔なく生きること?」
正直なにを言っても正解というつもりではあったが、まぁそうだな...。
「大正解だ」
妹のボルテージは最高潮。やばいな、僕はいつの間に妹の心情を操れるようになったのだ。
「さーてと、ちょっとためになる話も聞けたことですし、残り2週間頑張りますかね!」
妹は立ち上がり、右腕を上げて宣言する。おぉ、その調子だ、妹よ。
「まぁ、悔いのないように頑張れ」
「うん、お兄ちゃんありがとね。アドバイスは相変わらずのくそだったけど、話は面白かったよ。じゃね」
そう言い終えると、妹は部屋から出て行った。
僕、そんなアドバイス下手かな? 全く難しいものだ。
僕はまた再度ソファーに深く座り込む。また、眠気が襲ってきたのだ。
徐々に指先の感覚を失うことに気付く。やがて、手も金縛りのように動かなくなるだろう。
その前に僕はもう一度あの写真立てを見つめた。よく見ると、左の隅にAと書かれた文字が見えた。そういえば、あれは僕が彫ったのだ。どうして、彫ったのかはうまく思い出せないけど確かに彫ったのは僕だ。
再度、僕は力を振り絞り写真を見つめた。
そこには彼女と僕が写っていた。
僕は学校に帰ってからずっとソファーに腰を掛けていた。静かなポップミュージックでも流して目を覚まそうかと考えたが、ダメだった。まず、体を動かすのですら怠いのだ。
昨日もこうだった。昨日もこの調子でつい寝てしまい、全く夜が眠れなくなったのだ。しかし、ここ最近少し体の調子が悪いような気がするのだ。何かにとりつかれたような、なにか僕にないものが体に入り込んだ気がするのだ。
徐々に、手が動かなくなる。全く金縛りじゃなんだぞ。僕は思った。
そして、次第にまだ可能性のあった脳の働きまでスリープモードのようになってしまった。
それから、何分たったかはわからない。もしかすると、何時間たったのかもしれない。とにかく、僕は目を覚めた。というのも、自分で起きたわけではない。起こされたのだ。
「にいちゃーん、助けてー!」
その声は部屋を響かせた。それは僕の鼓膜まで届かせ、脳に信号を送り、ついでに少し覚醒させた。
「ん、どうした?」
発声が基準状態に戻る。
「入試の不安がー」
妹は頭を抱えながら不満をつぶやく。
妹は今年受験生だ。受ける高校は僕と同じらしく、試験まで残り二週間だ。やはり、この時期になれば積み重ねいてきたものにも不安も出るのだろう。
僕は妹に対してのアドバイスを少しばかり考えてから口に出した。
「まぁ、お前ならどうせ大丈夫だろ。なんやかんやで本番に強いしな」
だが、答えは不正解みたいだった。妹はやれやれと言わんばかりにため息をつく。
「もうー、お兄ちゃんはアドバイス下手すぎだよ。そんなんじゃ、彼女できてもいすぐに呆れられちゃうよ」
「まじか、女ってめんどくさいな」
「もう、またそういう!」
妹はぷんすかと怒りながら、僕の隣に座りだす。
「お兄ちゃんが怒らせたせいで、私はやる気なくなっちゃったよ」
「いや待て、俺のせいではないだろ」
「お兄ちゃんのせいだよ。絶対に」
なんで倒置法使うの? もしかして、今も試験勉強してるの?
「あーあ、お兄ちゃんのせいでやる気がなくなっちゃったー」
妹はそう言いながら猫のように僕の太ももに頭を乗せた。
「ねぇ、せっかくだから、私がやる気出る話してよー」
ほんとこいつ図々しいな。だが、まぁ受験生だからな、そこんところは許そう。
俺はわざとらしく一つ咳ばらいをした。
「わかった。やる気が出るかどうかはわからんが話をしてやろう」
「へへ、待ってました」
しかし、何の話をしようか。話すネタというのはいくらでもあるが、さすがに今のこいつの状況に合わせた話となると難しいな。
とりあえず、あたりを見渡した。僕の部屋は別にきれいと呼べるほどではない。というのも、散らかるものを大して置いてないからだ。僕はそんな寂しい部屋で妹への話しのネタになるものを探し出してみた。
そんな中で、すぐに一枚の写真が入った写真立てと目が合った。そうだな、じゃあ...。
「3の寿命という話をしようか」
「3の寿命?」
「そう、3の寿命だ。これはちょっとアキレスと亀をいじったような話なんだがな...」
僕はあの写真立てを見ながら語り始めた。
まず、ある少女がいた。ここでは名前を付けるのが面倒なので主人公という名前にしよう。
その主人公という少女は普通の女だった。大して世の中には興味を持たず、ましてや物欲も弱く。まぁ、とにかく一般的な女だと思ってくれたいい。まぁ、一般的な女性がどのようなものなのかはわからないが、普通によくいる女だと思ってくれていい。
ある日、主人公が余命宣告されるんだ。いや、余命宣告という言葉は好きじゃないな...。
そうだな、じゃあこうしよう。ある日、占い師に「お前さんの命は後3か月で終わる」と言われたんだ。ちなみに、この占い師の予言はほとんど外れないのを前提と、主人公を含めた家族や友人もその予言を過信しているとする。
それで、何だったかな。あぁ、そうだ、主人公は残り3か月というカウントダウンを宣言されるわけだ。
それで主人公は初めの一週間は自暴自棄になって、すべてに対して疑念を抱いたりとか、見えない先に恐れたりとか、今まで感じなかった死のリアルを身に感じるわけだ。
それから、少ししてようやく主人公は自分を取り戻す。そして、迷惑をかけた家族や友人A達に対しての謝罪や、遺書なんかを書いて身の整理を済ませた。
そこまでが、二週間としよう。
次に主人公は世界への旅を企てた。実は主人公、億劫な性格であまり表面的に使うことはなかったが、英語ができた。死ぬ前となれば躊躇や羞恥心が消えるのか、主人公は迷いもなく世界に行ったのだ。
まずはアジアから、次に北欧、最後に南米。どうしてこの順番で行ったのかは知らんが、こうすると効率的に回れるのだろう。
そして、主人公は旅に出てから二か月と一週間後に帰ってくる。いや、もう少し早く帰ってきてたかな。まぁ、そこのところはいいだろう。
それで、主人公は次に慈善活動を国内で行った。本当に主人公は性格が変わったのだ。そして、本当に主人公は自分の命が尽きるまで燃やし続けた。
そして、宣告から2か月と29日がたった。そう、明日になれば主人公は死ぬのだ。それで、最後に主人公はお礼を言いに、占い屋に行った。
そして、一応再度占ってもらう。するとだ、占い屋は主人公に対してこういったわけだ「わしはあの時お前さんに残り3か月といったがあれは間違いじゃったと」、そして占い師は言葉を続ける。「あと、三日を付け加えるのを忘れたと」
だが、主人公はうれしい気持ちにも悲しい気持ちにもならかったそうだ。だって、そうだろ、三日だぜ、三日。大して、この三日でできることは少ない。
それでも、主人公は尽きるまで命を燃やし続けた。今度こそ本当の後悔のないようにな。
.....................................................。
「えっ、終わり?」
妹はあり得ないというような顔で僕を見つめた。
「いや、どのように終わったかは各自で考えてほしいなと」
「えー、私は別にそんなの求めてないよー」
妹は頬を膨らませて、優しく僕を睨む。
「あっ、でもわかったかも...。」
「はい、妹さん」
僕はクイズ番組のように妹をあてる。
「えっとね、話のタイトルが3の寿命でしょ、それにお兄ちゃんが最初にアキレスと亀の話に似てるって言ったから...。わかった! 主人公はいつまでも占い師に3ずつ間違っていたと言われるんでしょ。だから、3か月、3日、3時間、3分、3秒、これが答えでしょ」
妹はふふーんといった顔でどや顔をかましていたが、”真の答え”は違う。
けど、まぁ僕の作った話では大体正解なので、ピンポーンとでも言っておく。
「へへ、やっぱりね。さすがに受験生の読解力は舐めたらいけないよ、お兄ちゃん」
妹の態度は風船のように膨れ上がっていったが、まぁここで割るなんてことはしない。これで少しはモチベーションも上がってくれただろう。
あっ、そういえば一つ言い忘れていたな。
「妹よ、この話のテーマは何だと思う?」
「えー、テーマね...」
妹はテーマという単語を10回ほど復唱し、考ええている仕草をする。
「もしかして、後悔なく生きること?」
正直なにを言っても正解というつもりではあったが、まぁそうだな...。
「大正解だ」
妹のボルテージは最高潮。やばいな、僕はいつの間に妹の心情を操れるようになったのだ。
「さーてと、ちょっとためになる話も聞けたことですし、残り2週間頑張りますかね!」
妹は立ち上がり、右腕を上げて宣言する。おぉ、その調子だ、妹よ。
「まぁ、悔いのないように頑張れ」
「うん、お兄ちゃんありがとね。アドバイスは相変わらずのくそだったけど、話は面白かったよ。じゃね」
そう言い終えると、妹は部屋から出て行った。
僕、そんなアドバイス下手かな? 全く難しいものだ。
僕はまた再度ソファーに深く座り込む。また、眠気が襲ってきたのだ。
徐々に指先の感覚を失うことに気付く。やがて、手も金縛りのように動かなくなるだろう。
その前に僕はもう一度あの写真立てを見つめた。よく見ると、左の隅にAと書かれた文字が見えた。そういえば、あれは僕が彫ったのだ。どうして、彫ったのかはうまく思い出せないけど確かに彫ったのは僕だ。
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