こんな青春を

門松 梅竹

文字の大きさ
3 / 4

空気浮遊の電波

しおりを挟む
  部室に着いたとき、ドアに「現在、わが校の学生が一番望んでいるもの:アンケート結果!」とか言う、新聞部発行の記事が張り出されていた。
 ったく、うちは新聞なんかいらないんだよ。
 別に興味なんか微塵にもなかったが、まぁ暇つぶしにと部室で読んでみることにした。
 まず、新聞は全5ページで、お目当ての記事以外の4ページすべて「今月の教師スキャンダル!」で構成されていた。ほんと、教師から強制廃部にさせられるぞ...。
 まぁ、教師のスキャンダルには興味がないので1ページ目だけを取り出して、読むことにした。
 アンケートは全生徒の半分ぐらいの人数を対象として聞き出したらしく、それの証拠としてか何人かの顔を掲示していた。って言うか、すげぇーな、うちの学校はそこまでは多くないとは言えども600人はいるぞ。はっきり言って調査人数が少々信憑性が欠けているような気がしたが、まぁあの新聞部は行動力だけはほんと感服するレベルだからな、本当なんだろう。
 ではまず、第三位。彼氏彼女、12パーセント。
 はっきり言って驚いた。いや、誰だって一番に彼氏彼女欲しいんじゃねぇのか...。俺なんか毎年神社で500円投げてお願いしてるぐらいだぞ。
 まぁ、そのことはいい。
 次は第二位。金、21パーセント。
 いや、まぁ、金は欲しいけど。なんていうか、こう...、 まぁいいか。
 最後、第一位。
 これを見た時、あー確かにと思った。俺もやっぱりそれを一番望んでるかな。当たり前だがなんとなく忘れていた、あんまり身に感じるものじゃないからな。
 とりあえず、全部一読したので紙を丸めてゴミ箱に3Pシュートをした。見事ぶれることなく放射運動。
 ちなみに一位青春。58パーセント。

「おっはよー!」

 ちょうど活動を始めようとした時に、長い茶髪のおてんば少女が現れた。
 彼女は俺と同じ学年の出雲という。意外と言動があほっぽいが案外賢かったりする。

「おー、ちょうどいいところに来たな、機材運ぶから手伝ってくれ」

「はいはーい。あ、そういえばね、これ新聞部が君たちにだってよ」

 彼女が渡してきたものは先ほど一読した記事だった。バカなのあいつら? さっ
き、部室のドアに読めと言わんばかりに張ってあったじゃねぇか。

「あー、さっき読んだよ」

「えっ、そうなの。なんで渡してきたんだろう?」

「知らん。あいつらどっかのパーツが抜けてるからな、頭がうまく働いてなんだろうよ」

「ははは、それはちょっと言いすぎだよー」

 彼女は笑いながら記事を机に置いた。それから、カバンを置き、一度背を伸ばし
てから機材運びに取り掛かった。

「そういえば、今日は何をテーマにして話すの?」
 
出雲は機材を持ち運びなら、顔を出して聞いてきた。

「そうだなー、今日は暖かいし、校庭の魅力でいいんじゃねーの、あそこ晴れの日は結構人が来るしな」

「あれ、それ二週間前にやらなかったけ?」

「ん? いや、そう言えばやったな。じゃあ食堂の新メニューは?」

「それも、一週間前にやったじゃん」

「えっ、まじか。ちょっといろいろやりすぎてネタが枯渇してるな」

「もう、そろそろネタ探ししないとねー」

 とりあえず、機材はすべて机に運んだので、彼女と対峙するように腰を掛けた。

「じゃあ、今日はどうしようかー?」

 彼女は手を合わせて、考える仕草を始めた。
 そうだな、ネタか。今日に限ってあんまり浮かんでこねーな。ネタ、ネタ、ネタ。だめだ、このままでは寝てしまいそうになる。
 そうやって、俺も腕を組みながら考えていると彼女が小さく手を叩いた。

「そうだ! この記事はどうかな? ネタ探しは明日からにして今日だけこれを使
うってのは?」

「まぁ、そうだな。せっかくだし、これを使うか。けど...」

 俺は机に置かれている記事を手に取り、四枚を抜き出した。

「これはだめだ」

「えっ、なんで、なんで?」

 俺はその疑問に対して言葉で返すのは面倒なので、記事の見出しを見せた。

「あ、あー、確かにね...。それはだめだね」

「じゃあ、今日はこれでいくか」

「そうだね。今日はこれでいこう!」

そうして、この記事を基に少し話し合いながら今日の打ち合わせ、内容を決めた。

現在は16時23分。俺たちの活動は後七分経てば始まる。




 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...