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5章 竜国編
42話 偽物
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「なっ……、これが人のすることか?」
人が立っているのかと近づき足を止め発した言葉だ。
首から下は焼かれ炭化しており、それを棒で串刺しにして立ててあった。
それが道の等間隔で、出迎えてくれているかのようにズラリと並ぶ。
凸凹な自然にできたような道で、馬車もまともに通れない。
地面に焦げた跡が無く雑草が多い茂っているのが、その異様さを際立たさている。
人力でわざわざここまで運んできて立てたのだろう。
風太は悪意に寒気を感じ足が震えている事に気づく。
兵士など、風太にとっては弱い存在に過ぎないというのに……。
いや、そこに芽生えつつある怨念の渦に恐怖している。
「生きたまま焼き殺すのが彼らのやり方です。
降伏してた村人ですらこの有り様」
王国兵士の質が悪いと言っても、そこまで悪質な行為をするのか?
普段は争いと無縁な仕事をしている市民だ。
それがこれほどの残虐な行為をするのは異様。
解らない……、本当に彼らが好き好んで行っているのだろうか。
「何の意味があるのか。
こんな事をする理由がわからない」
「街への一本道です。
逃げようとしたのに、多くの者が心が挫けて引き返しました」
あんな姿を見たら、誰だって怖くなる。
もし敵に見つかれば、同じようにされると恐怖しただろう。
逃げ道を塞いだと言うことは、皆殺しにするつもりに違いない。
「こんなやり方。
許せない」
村人達は、今も怯えて隠れているのだろう。
直ぐに向かって勇気付けたい。
……俺に出来るのか?
いや、やるんだ。
歩みを進め、死者が見守る中を通っていく。
異様な気配、禍々しい空気が漂っている。
粘つくような重苦しい嫌な感覚。
「うぅぅぅうぅぅっ」
裏切り者として捕まえた娘が嫌がり足を止める。
こんな君の悪い場所を通りたくないのは当然だ。
「早く来なさい」
ディアムはロープを引き、無理矢理に連れて行く。
抵抗する娘はズルズルと靴をすり減らしながらも必死に踏ん張っていた。
身体強化しているディアムは象並の力で引っ張っている。
無意味な抵抗なのは解っているはずなのに。
「嫌がっているなら置いていったら良いだろう」
「置いて行くぐらいなら処刑します」
「まだ彼女がどうして裏切り者なのか説明をして貰ってない。
根拠を教えてくれてもいいだろう?」
「若者は、聖域と呼ばれる場所へ避難するように指示が出ています。
だから村から逃げて来ることはありえない」
「だったそれだけか?
逃げ遅れただけかも知れないだろう」
「聖域外に居る者は全て敵として扱うようにとも。
ですから、彼女は裏切り者として扱いました」
「すぐに言えばいいのに。
隠匿すれば怪しまれとは考えなかったのか?」
「聞かれているような気がして……。
私の直感なので、なんとも言えませんが何かを感じたのは間違いないです」
言語化出来ない、雰囲気のようなものなのだろうか。
具体性にかけるから、怪しくて疑いたくなる。
だが、今は彼女を信じるしか無い。
「うーん。
何かをまた感じたら教えて欲しい」
裏切り者だとしても口を塞ぐ必要があるのだろうか?
魔法は黙っていても使えるし、叫ぶぐらいだろう。
それで敵に居場所を知られても、さほど不利にはならない。
むしろ向こうから襲ってきてくれたほうが探す手間が省ける。
しばらく沈黙が続く。
それにしても、この列はどれだけ続くんだ?
数えてはいないが千人を超えている気がする。
どれだけの村が襲われたんだろうか……。
死者への国へ向かう道と錯覚する。
このまま地獄に……、いやそんな事はない。
「どうして王国は、これ程残酷な事をするのでしょう。
良好な関係を築ける筈だったのに」
「古くからの因縁があったりしないのか?」
「いいえ、死者の森が緩衝地となって争うどころか。
殆ど交流も無かったぐらいです」
ますます腑に落ちない。
そもそも暗殺を偽装して侵略せずともいずれ統合して一つの国になっただろう。
力を合わせれば、困難にも立ち向かう事も出来たはずだ。
「気質や文化なのか?
こんな事をしているのを見たことはなかったけど……」
少なくともクークリフは正々堂々と戦っていた。
彼は戦死したのか行方不明となっている。
別の者が指揮を取っているのだろう。
大将が変わった影響で、こういう陰湿な策が用いられたとしたら。
見逃すことは出来ない。
打ち取って、憂いを立つ。
いつの間にか拳に力が入り、血がにじみ出ていた。
それ程に憎悪が湧いている。
……何でだ?
なんか変、どうしてか怒りが湧き上がってくる。
死体が並ぶ道を歩いているからか?
「このまま進めば、村にたどり着きます。
ですが村の前で止まって下さい」
サーシャリを待つのだろう。
召使だけを連れて行っても、村人達が不満を漏らすのは目に見えいる。
分岐する道の近く、馬を木に繋ぎ先に進んだ目印とした。
何も伝えていないが推測して来てくれる筈だ。
打ち合わせもなく、阿吽の呼吸で意思を合わせられる程の時を過ごしたとは思えない。
けど、彼女なら来てくれる……そんな予感。
「うぅぅっうぅううぅぅっ」
娘が何かを伝えたそうに暴れている。
「何かあるのか?
口は解いても……」
「見張りの合図がありません。
既に敵の手に落ちているようです」
静寂に包まれ、虫の声すら聞こえない。
封鎖空間の領域に入り込んでいるのだろうか。
でも動きはない。
村の入口は、彫刻された柱が道の両脇に立っているだけ。
壁どころか、柵すら無く出入り自由となっている。
「守りが無いのはどうしてだ?
不用心……、いや無防備過ぎて人が住んでいるのか怪しい」
「この辺りは魔獣が居ないのです。
ですから必要なくて……」
「いや敵が来ているのに何の対策も取らなかったのか?」
「多少の柵を作っても意味はないです。
ですから逃げる事を選びました」
聖域に隠れていると聞いたが、抵抗しなければ追い詰められるだけだ。
少しでも時間稼ぎをしようという考えはないのだろうか?
……いや、それは自殺行為か。
男は戦場に引っ張り出されて非力な者達しかいないのだろう。
「どうして街へ逃げなかったんだ?
少なくとも、ここよりも守りが堅いだろう」
「村の女子供は切り捨てられるのが定めです。
抵抗しなければ、命まで取らないのが常識だったのに……」
あの光景は、彼女にとっても異例のことで動揺していたのだろう。
だとしたら冷静な判断ができたとは思えない。
あの場で引き返す事もできたのに進んだ。
それは思考停止したからだとしたら。
「こういう時は、考えを整理したほうが良い。
まずは持ち物を確認しようか」
一旦、考えていることを忘れて、白紙に戻す儀式みたいなものだ。
別のことに意識を集中することで、邪念が消える。
トランクに入っている武器は7種類。
軽く指先で触れて、ビリリと来るものが2つある。
魔法が込められた武器なのだろう。
ここにはないが戦槌は、特に反応は無かった。
ブーメランの様に戻ってきたのは、サーシャリの固有技能なのだろう。
トランクの内布に紐がはみ出ている。
引っ張ってみると、パカッと開き隠し空間があった。
謎の液体の入った瓶が数本トランクに押さえつけるように紐で縛って収めてある。
「その瓶は、何に使うのでしょうか?」
あの変態が作った魔女の秘薬だろう。
罠として入れたものか、名札ぐらい付けて欲しい所だ。
まあ、妄想で話しておくか。
「これはゾンビを作るのに、使うスライムだ。
体内に注入して腐敗と乾燥を防ぐ代物だ」
勿論、スライムの製法を伝えていない。
明らかに嘘なわけだ。
それで納得してくれれば、話は終わるだろう。
ディアムは不思議そうに首を傾げる。
「あの粉でゾンビにしていたのでは?
あんな死霊術を見たのは初めてです」
彼女は粉を振りかけただけしか見ていないはずだ。
なのに死霊術だと理解している。
そんなに広く知れ渡っているのか?
いや魔女なのかも知れない。
「随分と詳しいんだな。
言うことを聞くように改良をしたゾンビパウダーだけど、時間が立てば劣化してグールに成り果てる。
ちゃんと処理をして初めてゾンビとして使える様になる……らしい」
「ゾンビを使役している様子はないですね。
何か問題でも?」
「死体と一緒に暮らすつもりはない。
周りの生命力を吸い取るから悪影響も出るだろう」
どんなに工夫してもアンデットとは相容れない。
一緒に居ることは、寿命を縮めることになるだけだ。
「都合の良い面だけで考えていました。
ゾンビで兵を作れば戦えると……」
魔素を変換して動く、魔屍人を作ったとしても数に上限がある。
何か力の源が必要で、燃料なしに動けるものなんて存在しないのだ。
馬でも、草を食べなければ飢えるし。
……いや彼女が考えていたのは、あの並んでいた死体を使うことなのか。
ゾンビパウダーを使えば可能だろう。
あんな仕打ちを受けてなお、更に酷使するのは残酷すぎる。
もう安らかに眠らせてあげたい。
それにこの手で決着を付けないと気が収まらない。
「利用する事ばかり考えないで、自分の力で出来ることをまず取り組む。
さて、どうするか考えようか」
丁度、サーシャリが合流する。
「村は全滅して、誰も居なかったわ。
敵が何処に消えたのでしょうね」
「さあ、ここに潜んでいるかも知れない」
「所でその娘を縛っているのはどうして?
それに勝手に先に行くのも……」
「それは私が強引にしたことです。
どうかお許しください」
「今後は私に無断で行動しないようにね」
余り気にしていないのか、さっさとサーシャリは村へ入っていく。
それまで静寂だった村が、ガシャガシャと金属音を響かせる。
重装備の全身鎧で固めた兵士が取り囲む。
「あら随分な歓迎。
私が来たからには勝利に喜びなさい」
高々と戦槌を掲げ、誇らしげにサーシャリは告げた。
その返答は、無言の槍投げ。
戦槌を舞うように振るい、飛んでくる槍を叩き落とす。
槍の穂先は異様な赤さで、液体が塗りつけてある。
毒なのだろうか?
ディアムは、それに気づき青ざめた。
「法術妨害液……、まだ実験段階の秘薬なのに。
完成しているなら、法術に反応し爆発します」
もし見えざる衣に付着すれば爆発で消失して無防備になっていただろう。
「厄介だな。
火を吸い込むのもあっただろう」
あの時はごろつきが持っていたが……。
王国が手配した物だった筈だ。
「王国では違法の品で所持すら出来ないはずなのに。
彼らは一体何者なの?」
秘薬は玉国の特産品であり、王国では殆ど作られていない。
だから技術を盗み出そうと間者を利用していた。
その成果が出たということなのだろうか?
秘薬開発の最高責任者だった変態女は、俺の館に居るようだけだと……。
この瓶は、その対処に?
だとしたら説明書ぐらい用意して欲しい。
「うおおぉぉぉぉっ」
雄叫びと共に兵士達が剣を振り上げ突進してくる。
「8番よ。
投げてくれる?」
軍配だ。
月と太陽が描かれただけで、特に魔力が秘められている訳でもない。
それなのに朽ちることもなく沼で眠っていた。
そもそも武器ではなく、指揮を取るための道具である。
「了解」
要望通り投げるとクルクルと回転して飛んで行く。
少し高かったかも知れない。
それでもサーシャリは、高く飛び上がり手に取る。
あんな物で戦うより手に持っている戦槌の方が強力な気がする。
幾ら金属で出来ていると言っても、刃がなく斧のような使い方はできない。
「はっきょいーーー!」
えっ?
地面に光る円が描かれる。
まさか相撲でもするつもりなのか?
サーシャリが軍配を振り下ろす。
空に裂け目が開き、5メートルはありそうな巨大な男が落ちてくる。
ふんどし一丁で四股を踏み、大地を揺らす。
力精霊である。
「召喚魔法……」
貴族は独自の魔法を隠し持っているらしいが、これもそうなのだろうか?
わざわざ道具を変えたは雰囲気というわけでもないだろう。
何かしらの条件があるのか?
行方不明のゼラは馬車の時に限定して使える魔法を持っていた。
もし武器の種類によって魔法が制限されているとしたら……。
想像するだけで、期待感が高まっていた。
何故なら、他にもすごい魔法が見れるからだ。
ディアムは風太の背後に隠れる。
脅威を感じ、巻き込まれる予感があったからだ。
「あれは一体何なのでしょうか?」
「解らない。
予想だとあの円から出たら敗北……死ぬのかも知れないな」
「儀式系の法術を得意としているのは……。
でもあり得ない」
「なにか知っているのか?」
「百数年前に現れた異界人が使っていた記録がありました。
当人は戦死して、子孫も残さなかったらしいです」
話をしている間に力精霊は迫りくる兵士達を張手で吹き飛ばす。
鎧はグニャリと曲がり、重装にも関わらず吹っ飛んていった。
光る円を越えようとした時。
ドン!
見えない壁のような物にぶつかり兵士は血を撒き散らし地面にズルズルと落ちる。
力精霊は凄まじい勢いで、次々と兵士達を突き飛ばし、投げと見えない壁にぶつけた。
見えないはずの壁が血で赤く染まる。
「きゃあぁぁっ」
ディアムは思わず悲鳴を上げていた。
その光景があまりに残酷だったからだ。
「大丈夫だ。
終わるまで、目を閉じ耳を塞いでいると良い」
もはや残す所兵士も数えられるほどに減っていた。
兵士に逃げ場は無い。
一瞬、臆して立ち止まった兵士も居たが、直ぐに覚悟を決めて向かっていく。
追い詰められた鼠は猫を噛む。
だから逃げ道は用意してやれば良い。
サーシャリは大声で告げる。
「降伏するなら武器を捨てなさい」
その言葉に立ち止まり考える兵士も居た。
天秤にかけて生きる方を選択する筈。
だが、異変が起きた。
兵士がウオオオォォッと雄叫びを上げる。
仲間に構わず、狂ったように剣を振り回す。
まともではない、何か強烈な支配でも受けているのだろうか?
「待って!」
だが止まることはなかった。
力精霊は無慈悲に兵士達を見えない壁に叩きつける。
ドン! ドン! ドン!
全滅するまでに、そう時間は掛からない。
「降伏しない限り、力精霊は戦い続ける。
……生かして捕らえる余裕はなかったわ」
「あれだけの力の差があるのにか?」
勝負が付き力精霊は光の粒子と成って消え去る。
残ったのは、無惨に潰れた兵士の屍。
「戦意を挫くために、強力なものを用意している。
それが抑止となる筈だった」
言い分はよく解る。
そもそも攻め込んでこなければ、こんな事にならなかった。
彼らに同情したのは、赤子の手を捻るよりも簡単に恐ろしいことが起きたからだ。
「君を攻めるつもりはなかった。
ごめん」
「いいえ。
この通り私も恐怖していたわ」
差し出された手は震えて冷たくなっていた。
戦いに慣れている訳ではないのだろうか?
いやあれ程の力を振るうことは、初めてだったのだろう。
「俺達で解決しよう。
まだ居るはずだ」
指揮を取っている者が居る。
あの兵士達の中で、そんな上下関係があったように見えない。
恐らく、後ろで指揮を取っているのだろう。
兵士に何かしらの魔法で、操っていたとしたら絶対に許すわけにいかない。
次に操られるのは俺達……なんて事になったら悲惨だ。
「私のトランクに、香水が入っている。
少し良いかしら?」
こんな時に、化粧をするのか?
……いや血の匂いが漂って、気持ち悪いのだろう。
なにか生臭い匂いが漂っている気がする。
「了解。
……着替えが入っているのか」
服に隠れて小瓶が一つ。
香草を濃縮させた液体が入っている。
スーとする、気持ちのいい涼しい香りだ。
「心が落ち付くわ。
見えるかしら、反応して少し光っているでしょう?」
瓶から光る煙のようなものがでている。
普通の香水では、そんな事は起きない。
魔女の秘薬だとしたら、何かしらの特別な効果があるのだろう。
「勿体ぶらずに教えてくれ」
「何かしらの法術に反応しているの。
多分、精神に作用するものよ」
「打ち消したり出来ないのか?」
「この香水なら、ある程度は無力化できます。
けど長くは持たない」
無いよりはマシと言う程度なのだろう。
首元に軽くつけるだけで良いようだ。
しばらくすると香りが感じられなくなった。
「もう切れたのか?」
「香りに慣れたからです。
ほら私の首元を見て、少し光っているでしょう?」
「本当だ」
目を閉じ耳を手で抑え丸くなっていたディアムの肩に軽く手を置く。
「もう終わった。
けど隠れている敵が未だいるかも知れない」
「殺戮を頼んだわけではありません。
憎しみ合うことになれば、どちらかが滅びるまで戦い続けることになります」
前世で繰り広げていた怪獣との戦争で、それは良く理解しているつもりだった。
無駄に攻撃しなければ怪獣は暴れたりしない。
だけど、憎しみを持ったものが仕掛け巻き込まれてきた。
「その通りだと思う。
けど力がなければ、守ることも出来ないだろう?」
「……はい」
「裏で糸を引いている者がいる。
止めるには倒すしか無い」
感情を操り支配している者がいるとしたら、そいつを止めなければ憎しみや怒りで戦いは終わらない。
パチパチパチ……。
拍手しながら村の奥から人が出てきた。
全面を覆う兜だが、兎耳が剥き出しになっている。
四つ耳族なのだろう。
「見事でした。
実に素晴らしい戦い、特にあの巨人を操って兵士共を瞬殺したのは爽快です」
聞き覚えのある声だった。
裏切り者のセウファ、彼女とは一度戦ったことがある。
「小切手は借金には足りなかったか?」
セウファは首を傾げる。
「貴方は誰です。
私は騎士セウファ、誰かと間違えているのでしょう」
様子が変だ。
洗脳でもされているのだろうか?
だとしたら、彼女の裏にいる人物こそが真の敵だ。
「ここは俺に任せて欲しい」
「召使は大人しく見ていなさい。
彼女は生け捕りにして、話を聞く必要があるから16番にしようかしら」
武器は8番までしか無い。
16番なんて無いはずだが……。
いや、瓶に書いてあるのか?
液の中に16と言う数字が浮かび上がっている物がある。
指定されるまでは、そんな数字は無かった。
「了解。
この瓶で良いのか?」
紐を解き手に取った瞬間だ。
瓶が砕け散る。
セウファの放った投石術によって貫かれたのだ。
液が溢れ手がベトベトで、スライムみたいな冷たくてヌルヌルしている。
「頭を狙ったのに……。
変ですね」
「卑劣な、召使を狙うなんて許されざる行為。
恥を知りなさい」
召使は非戦闘員であり、襲うことは恥とされていた。
それは主に仕方なく従わされているだけで、敵意がないからである。
「アハハハ……。
国に巣食う害虫に過ぎない、そんな物を庇うなんて愚か、愚か過ぎます」
セウファは言葉を発しながら、投石術を指を弾くように放つ。
その放たれた石は意地悪に軌道が波のように軌道がゆらゆらと変化する。
それをサーシャリが軍配で防ぐ。
右へ左へと走らされ叩き落とせ無ければ、後ろにいる風太に当たる。
一見すれば不利に見えるが、彼女は落ち着き冷静に淡々とこなしていた。
「様子が変だ。
操られているのかも知れない」
ディアムは背後から風太に抱きつき口を塞ぐ。
「貴方は召使です。
ですから主に口出しをしてはいけません」
裏で見ている何者かが、狙うべき相手を探っていると警戒しているのだろう。
でも、このまま戦えばセウファは敗北し、酷い死を遂げる。
助けたい。
だって彼女は生まれによって不幸に成り、苦しめられてきた。
それで人に操られ命を落とすなんて可愛そうだ。
「アハハハ……。
そんな虫けらを守らなければ楽に私の首を取れたでしょう?
ですが、これで終わりです」
セウファが使ったのは、さっきサーシャリが使った魔法と同じだった。
光る円が現れたかと思うと、空に亀裂が入り落ちてくる。
ズドーン!
力精霊……、紫のまだら模様が肌を侵食し血管が浮かび上がる。
「ぐおおおおぉぉぉっ!」
苦しそうな悲鳴のような声だ。
「どうして私の精霊が……。
そんな筈がある筈はないわ」
サーシャリはひどく驚き、後退りする。
いや、違う。
油断させるための演技だ。
相手に見えないように軍配で片方の手を隠し、何かしている。
動揺していたら思考停止して何も出来ない。
魔法の準備だろうか。
だとしたら何かしらの手があるのだろう。
「撃退したとしても法術は失われる。
契約した精霊に殺されるようなことはないと思うけど、さてどうするか見もの」
これが魔法使いの戦いなのか?
相手の力を奪い使うなんて初めて見た。
そんな乗っ取りに対処する方法は無かったのか?
まさか、この液体が……、だとしたら俺の不注意が招いた。
「勝てないわ。
私は降参する」
サーシャリは軍配を捨てる。
腰に下げていた戦槌も落とした。
だが力精霊が消える様子はない。
それどころか、向かってくる。
「アハハハ……。
契約が書き換わっているとも知らずに、滑稽。
自らの精霊に潰されるが良い」
「無防備なものに攻撃はしない。
それが彼の信条、上書きできるはずはないわ」
サーシャリは鋭い眼光で力精霊を見る。
拳を振り上げる力精霊が止まる様子はない。
振り下ろされた拳は空気が圧縮し直撃することはない筈だった。
彼女のか細い手が、何倍ものある拳を支え止めている。
「何故、兵士達を粉砕した一撃よりも遥かに強力だと言うのに……」
支配するだけでなく、身体を強化し戦闘能力は倍近い。
見た目からも分かる通り、以前よりも筋肉がムキムキで一回り大きくなっていた。
「巨大な力には制約が付く。
拳は禁止行為なの、だからこうして軽々と受け止めることが出来たわ」
そして軽く手で押すと、力精霊は吹き飛び境界線を超えた。
「ぐああぁぁぁっ」
敗北は消滅だった。
砂のように崩れ去る。
「でも法術を失ったはず……」
サーシャリはゆっくりとセウファの前まで歩み寄る。
お互い,攻撃する機会を伺っていたが手を出せなかった。
殺される気配、緊張が静寂となる。
「降伏するなら命は助けましょう。
貴方は既に負けています」
「まさか、切り札は未だあるとは考えないなんて愚か。
わざわざ死に来てくれるなんて」
お互いに隠していた切り札を出す。
同時に指先が相手の首筋に触れる。
先に法術を放ったほうが勝つ。
「貴方に出来るかしら?
試してご覧」
「深淵の氷槍……まさか。
どして発動しないあああぁぁぁっ」
セウファは頭を抑え苦しみ始めた。
パリンッと兜が割れ、充血した目から血が溢れてている。
「貴方が放ったでしょう。
法術妨害液の事を忘れるなんて愚かよ」
あの液の付いた槍を拾い隠し持っていた。
手を離せば自然と足元に突き刺さる。
打ち消せるのは一つの法術だけ、だから相手に先に打たせる必要があった。
サーシャリの掌底でセウファは吹っ飛び意識を失い倒れる。
そして風太に向かって手を向けた。
魔法を使う体制だ。
まさか……。
「いたずら好きの水精」
スライム状の液が、磯巾着の触手のようにウネウネと伸びる。
気持ち悪い……、なんてことをするんだ。
まさか操られているのか?
だとしたら不味い。
ブーン
甲虫が飛んでくると、触手が伸びて捕らえる。
「うわっなんだ?
汚いゴキブリ……」
「守ってくれているようですね。
こんな虫は初めてみました」
甲虫の背に赤い宝石が埋め込まれている。
恐らく魔獣の類なのだろう。
「彼女の額に付いていました。
その虫が精神を支配して操っていたのでしょう」
サーシャリが持ってきた虫も同じように、背に宝石が埋め込まれていた。
羽を羽ばたかせ嫌な音を出し始める。
彼女は虫をグシャリと握りつぶす。
「人を操り人形にする魔物なのか?
恐ろしいな」
「いいえ、これは法術によって生み出されたものです。
精霊の具現化によって、その形を自在に変化させ操る事ができます」
「あの巨人も?」
「はい、代々継承してきました。
お察しの通り私の先祖は異界人です」
王族や貴族は力を欲するために積極的に交わろうとしている。
彼女の一族も、異界人の血を濃くしたいと考えているのだろう。
「俺に近づいたのは、君も……」
「その話は後々、ゆっくりとしましょう。
まだ気配があります」
術師のような服装のサングラスを掛けた男が姿を表す。
「おいおい、玩具を壊さないでくれよ。
結構作るのに手間掛かってんだ」
「私はサーシャリ、貴方は?」
「名乗るほどの者でもないが……、なっ……」
彼の胸に槍が貫いていた。
目を覚ましたセウファが槍を拾い突き刺したのである。
「この男は、召喚された異界人です。
生かしておくには危険過ぎます」
本当に彼女の言う通りなら、あっけない最後だ。
でもそんな強さを感じられい。
「弱い奴は追い出されたはずだ。
いくら操れると言っても、そんなに弱い筈がないだろう」
「私を信じてください。
貴方との戦いで改心したのです」
「……解った君を信じよう」
「ああ良かった。
もう一度、あなたに会える日を楽しみにしていました」
風太はトランクから短剣を取り出す。
この状況で信じられない者が一人いる。
剣を振るい、娘の口紐を切った。
「ありがとう。
私を……」
「君が敵だと確信が持てなかったが、今は違う。
決定的なミスをした」
「何のこと?
私は縛られて身動き一つ取れなかったのに……、まさか貴方も操られているの?」
「攻撃の頃合いが上手い。
相手側からは見えないはずなのに、丁度良い感じで出くるのは不自然じゃないか?」
「助けて、私を黒幕に仕立て上げるつもり……。
ああ、なんでこんな事に」
「とぼけるなら、覚悟をすることだ」
風太は剣を振り上げる。
だが娘は怯えるだけだ。
間違っていれば、無意味に命を奪ったことになる。
そんな事が許されるはずもない。
だが覚悟を決めて切りつけた。
「何故……」
娘は倒れる。
「さてこれで良いはずだ。
これで村は助かる」
ディアムは娘に祈りを捧げる。
「彼女は囚われの身でした。
何故殺す必要があったのです」
「彼女の動きに違和感があった。
気づかなかったか?」
ディアムは否定的に横に首を振った。
当然だろう、娘の振る舞いはごく自然なものだ。
だが実際は足を使い術を仕込んでいた。
異様な雰囲気に気を取られ、彼女への注意が薄れ見落とす。
気づかぬうちに罠へと誘い込まれていたのだ。
「全く、何かしていたのなら教えてくれても良かったでしょう」
「村の前で止まった時、彼女は慌てていただろう。
始めてきた筈なのに何故兵士達が居ると解ったのか」
あの娘は、別の村から逃げてきたのだ。
この村からではない。
なのに潜伏を知っているような振る舞いをしたのだ。
「確かに、村に付けば安心するものです。
ですが、途中の光景で村が占領されてと思ったのでしょう」
「村から逃げ出さないように設置したと言ってたのは君だ。
方向が逆だろう」
「あっ……。
確かに村に閉じ込めるなら、村はまだ無事の筈」
「もし彼女を連れていけば、
隠れている場所を特定されただろう」
憶測だけで、本当の所は何も解っていない。
決断しなければ、全滅する気がした。
これでは、不安な可能性があるなら始末すると言ったあのジジイと同じではないか。
サーシャリは微笑む。
「見事です。
私も彼女が黒幕だと感じていました。
ですから技と見えるように演技をしたのです」
それで召使と言ったりしたのか。
その時は既に知られていて、結局セウファに狙われたけど。
「私が迂闊にも油断して喋ってしまいました。
この失態はどんな罰でも受けます」
「それで気がついたのよ。
私達の関係を知っているように振る舞うのは明らかに不自然でしょう」
本当に召使なら命を奪われても、それ程の痛手ではない。
むしろ囮として使えたと攻撃に転じていただろう。
「……でも、それで彼を危険にさらしてしまいました」
「俺が弱いのが悪い。
君に与える罰があるとしたら、俺の言う事を何でも聞いてくれ」
娘が黒幕説に納得したのかディアムは微笑む。
「はい。
では、聖域に案内します」
人が立っているのかと近づき足を止め発した言葉だ。
首から下は焼かれ炭化しており、それを棒で串刺しにして立ててあった。
それが道の等間隔で、出迎えてくれているかのようにズラリと並ぶ。
凸凹な自然にできたような道で、馬車もまともに通れない。
地面に焦げた跡が無く雑草が多い茂っているのが、その異様さを際立たさている。
人力でわざわざここまで運んできて立てたのだろう。
風太は悪意に寒気を感じ足が震えている事に気づく。
兵士など、風太にとっては弱い存在に過ぎないというのに……。
いや、そこに芽生えつつある怨念の渦に恐怖している。
「生きたまま焼き殺すのが彼らのやり方です。
降伏してた村人ですらこの有り様」
王国兵士の質が悪いと言っても、そこまで悪質な行為をするのか?
普段は争いと無縁な仕事をしている市民だ。
それがこれほどの残虐な行為をするのは異様。
解らない……、本当に彼らが好き好んで行っているのだろうか。
「何の意味があるのか。
こんな事をする理由がわからない」
「街への一本道です。
逃げようとしたのに、多くの者が心が挫けて引き返しました」
あんな姿を見たら、誰だって怖くなる。
もし敵に見つかれば、同じようにされると恐怖しただろう。
逃げ道を塞いだと言うことは、皆殺しにするつもりに違いない。
「こんなやり方。
許せない」
村人達は、今も怯えて隠れているのだろう。
直ぐに向かって勇気付けたい。
……俺に出来るのか?
いや、やるんだ。
歩みを進め、死者が見守る中を通っていく。
異様な気配、禍々しい空気が漂っている。
粘つくような重苦しい嫌な感覚。
「うぅぅぅうぅぅっ」
裏切り者として捕まえた娘が嫌がり足を止める。
こんな君の悪い場所を通りたくないのは当然だ。
「早く来なさい」
ディアムはロープを引き、無理矢理に連れて行く。
抵抗する娘はズルズルと靴をすり減らしながらも必死に踏ん張っていた。
身体強化しているディアムは象並の力で引っ張っている。
無意味な抵抗なのは解っているはずなのに。
「嫌がっているなら置いていったら良いだろう」
「置いて行くぐらいなら処刑します」
「まだ彼女がどうして裏切り者なのか説明をして貰ってない。
根拠を教えてくれてもいいだろう?」
「若者は、聖域と呼ばれる場所へ避難するように指示が出ています。
だから村から逃げて来ることはありえない」
「だったそれだけか?
逃げ遅れただけかも知れないだろう」
「聖域外に居る者は全て敵として扱うようにとも。
ですから、彼女は裏切り者として扱いました」
「すぐに言えばいいのに。
隠匿すれば怪しまれとは考えなかったのか?」
「聞かれているような気がして……。
私の直感なので、なんとも言えませんが何かを感じたのは間違いないです」
言語化出来ない、雰囲気のようなものなのだろうか。
具体性にかけるから、怪しくて疑いたくなる。
だが、今は彼女を信じるしか無い。
「うーん。
何かをまた感じたら教えて欲しい」
裏切り者だとしても口を塞ぐ必要があるのだろうか?
魔法は黙っていても使えるし、叫ぶぐらいだろう。
それで敵に居場所を知られても、さほど不利にはならない。
むしろ向こうから襲ってきてくれたほうが探す手間が省ける。
しばらく沈黙が続く。
それにしても、この列はどれだけ続くんだ?
数えてはいないが千人を超えている気がする。
どれだけの村が襲われたんだろうか……。
死者への国へ向かう道と錯覚する。
このまま地獄に……、いやそんな事はない。
「どうして王国は、これ程残酷な事をするのでしょう。
良好な関係を築ける筈だったのに」
「古くからの因縁があったりしないのか?」
「いいえ、死者の森が緩衝地となって争うどころか。
殆ど交流も無かったぐらいです」
ますます腑に落ちない。
そもそも暗殺を偽装して侵略せずともいずれ統合して一つの国になっただろう。
力を合わせれば、困難にも立ち向かう事も出来たはずだ。
「気質や文化なのか?
こんな事をしているのを見たことはなかったけど……」
少なくともクークリフは正々堂々と戦っていた。
彼は戦死したのか行方不明となっている。
別の者が指揮を取っているのだろう。
大将が変わった影響で、こういう陰湿な策が用いられたとしたら。
見逃すことは出来ない。
打ち取って、憂いを立つ。
いつの間にか拳に力が入り、血がにじみ出ていた。
それ程に憎悪が湧いている。
……何でだ?
なんか変、どうしてか怒りが湧き上がってくる。
死体が並ぶ道を歩いているからか?
「このまま進めば、村にたどり着きます。
ですが村の前で止まって下さい」
サーシャリを待つのだろう。
召使だけを連れて行っても、村人達が不満を漏らすのは目に見えいる。
分岐する道の近く、馬を木に繋ぎ先に進んだ目印とした。
何も伝えていないが推測して来てくれる筈だ。
打ち合わせもなく、阿吽の呼吸で意思を合わせられる程の時を過ごしたとは思えない。
けど、彼女なら来てくれる……そんな予感。
「うぅぅっうぅううぅぅっ」
娘が何かを伝えたそうに暴れている。
「何かあるのか?
口は解いても……」
「見張りの合図がありません。
既に敵の手に落ちているようです」
静寂に包まれ、虫の声すら聞こえない。
封鎖空間の領域に入り込んでいるのだろうか。
でも動きはない。
村の入口は、彫刻された柱が道の両脇に立っているだけ。
壁どころか、柵すら無く出入り自由となっている。
「守りが無いのはどうしてだ?
不用心……、いや無防備過ぎて人が住んでいるのか怪しい」
「この辺りは魔獣が居ないのです。
ですから必要なくて……」
「いや敵が来ているのに何の対策も取らなかったのか?」
「多少の柵を作っても意味はないです。
ですから逃げる事を選びました」
聖域に隠れていると聞いたが、抵抗しなければ追い詰められるだけだ。
少しでも時間稼ぎをしようという考えはないのだろうか?
……いや、それは自殺行為か。
男は戦場に引っ張り出されて非力な者達しかいないのだろう。
「どうして街へ逃げなかったんだ?
少なくとも、ここよりも守りが堅いだろう」
「村の女子供は切り捨てられるのが定めです。
抵抗しなければ、命まで取らないのが常識だったのに……」
あの光景は、彼女にとっても異例のことで動揺していたのだろう。
だとしたら冷静な判断ができたとは思えない。
あの場で引き返す事もできたのに進んだ。
それは思考停止したからだとしたら。
「こういう時は、考えを整理したほうが良い。
まずは持ち物を確認しようか」
一旦、考えていることを忘れて、白紙に戻す儀式みたいなものだ。
別のことに意識を集中することで、邪念が消える。
トランクに入っている武器は7種類。
軽く指先で触れて、ビリリと来るものが2つある。
魔法が込められた武器なのだろう。
ここにはないが戦槌は、特に反応は無かった。
ブーメランの様に戻ってきたのは、サーシャリの固有技能なのだろう。
トランクの内布に紐がはみ出ている。
引っ張ってみると、パカッと開き隠し空間があった。
謎の液体の入った瓶が数本トランクに押さえつけるように紐で縛って収めてある。
「その瓶は、何に使うのでしょうか?」
あの変態が作った魔女の秘薬だろう。
罠として入れたものか、名札ぐらい付けて欲しい所だ。
まあ、妄想で話しておくか。
「これはゾンビを作るのに、使うスライムだ。
体内に注入して腐敗と乾燥を防ぐ代物だ」
勿論、スライムの製法を伝えていない。
明らかに嘘なわけだ。
それで納得してくれれば、話は終わるだろう。
ディアムは不思議そうに首を傾げる。
「あの粉でゾンビにしていたのでは?
あんな死霊術を見たのは初めてです」
彼女は粉を振りかけただけしか見ていないはずだ。
なのに死霊術だと理解している。
そんなに広く知れ渡っているのか?
いや魔女なのかも知れない。
「随分と詳しいんだな。
言うことを聞くように改良をしたゾンビパウダーだけど、時間が立てば劣化してグールに成り果てる。
ちゃんと処理をして初めてゾンビとして使える様になる……らしい」
「ゾンビを使役している様子はないですね。
何か問題でも?」
「死体と一緒に暮らすつもりはない。
周りの生命力を吸い取るから悪影響も出るだろう」
どんなに工夫してもアンデットとは相容れない。
一緒に居ることは、寿命を縮めることになるだけだ。
「都合の良い面だけで考えていました。
ゾンビで兵を作れば戦えると……」
魔素を変換して動く、魔屍人を作ったとしても数に上限がある。
何か力の源が必要で、燃料なしに動けるものなんて存在しないのだ。
馬でも、草を食べなければ飢えるし。
……いや彼女が考えていたのは、あの並んでいた死体を使うことなのか。
ゾンビパウダーを使えば可能だろう。
あんな仕打ちを受けてなお、更に酷使するのは残酷すぎる。
もう安らかに眠らせてあげたい。
それにこの手で決着を付けないと気が収まらない。
「利用する事ばかり考えないで、自分の力で出来ることをまず取り組む。
さて、どうするか考えようか」
丁度、サーシャリが合流する。
「村は全滅して、誰も居なかったわ。
敵が何処に消えたのでしょうね」
「さあ、ここに潜んでいるかも知れない」
「所でその娘を縛っているのはどうして?
それに勝手に先に行くのも……」
「それは私が強引にしたことです。
どうかお許しください」
「今後は私に無断で行動しないようにね」
余り気にしていないのか、さっさとサーシャリは村へ入っていく。
それまで静寂だった村が、ガシャガシャと金属音を響かせる。
重装備の全身鎧で固めた兵士が取り囲む。
「あら随分な歓迎。
私が来たからには勝利に喜びなさい」
高々と戦槌を掲げ、誇らしげにサーシャリは告げた。
その返答は、無言の槍投げ。
戦槌を舞うように振るい、飛んでくる槍を叩き落とす。
槍の穂先は異様な赤さで、液体が塗りつけてある。
毒なのだろうか?
ディアムは、それに気づき青ざめた。
「法術妨害液……、まだ実験段階の秘薬なのに。
完成しているなら、法術に反応し爆発します」
もし見えざる衣に付着すれば爆発で消失して無防備になっていただろう。
「厄介だな。
火を吸い込むのもあっただろう」
あの時はごろつきが持っていたが……。
王国が手配した物だった筈だ。
「王国では違法の品で所持すら出来ないはずなのに。
彼らは一体何者なの?」
秘薬は玉国の特産品であり、王国では殆ど作られていない。
だから技術を盗み出そうと間者を利用していた。
その成果が出たということなのだろうか?
秘薬開発の最高責任者だった変態女は、俺の館に居るようだけだと……。
この瓶は、その対処に?
だとしたら説明書ぐらい用意して欲しい。
「うおおぉぉぉぉっ」
雄叫びと共に兵士達が剣を振り上げ突進してくる。
「8番よ。
投げてくれる?」
軍配だ。
月と太陽が描かれただけで、特に魔力が秘められている訳でもない。
それなのに朽ちることもなく沼で眠っていた。
そもそも武器ではなく、指揮を取るための道具である。
「了解」
要望通り投げるとクルクルと回転して飛んで行く。
少し高かったかも知れない。
それでもサーシャリは、高く飛び上がり手に取る。
あんな物で戦うより手に持っている戦槌の方が強力な気がする。
幾ら金属で出来ていると言っても、刃がなく斧のような使い方はできない。
「はっきょいーーー!」
えっ?
地面に光る円が描かれる。
まさか相撲でもするつもりなのか?
サーシャリが軍配を振り下ろす。
空に裂け目が開き、5メートルはありそうな巨大な男が落ちてくる。
ふんどし一丁で四股を踏み、大地を揺らす。
力精霊である。
「召喚魔法……」
貴族は独自の魔法を隠し持っているらしいが、これもそうなのだろうか?
わざわざ道具を変えたは雰囲気というわけでもないだろう。
何かしらの条件があるのか?
行方不明のゼラは馬車の時に限定して使える魔法を持っていた。
もし武器の種類によって魔法が制限されているとしたら……。
想像するだけで、期待感が高まっていた。
何故なら、他にもすごい魔法が見れるからだ。
ディアムは風太の背後に隠れる。
脅威を感じ、巻き込まれる予感があったからだ。
「あれは一体何なのでしょうか?」
「解らない。
予想だとあの円から出たら敗北……死ぬのかも知れないな」
「儀式系の法術を得意としているのは……。
でもあり得ない」
「なにか知っているのか?」
「百数年前に現れた異界人が使っていた記録がありました。
当人は戦死して、子孫も残さなかったらしいです」
話をしている間に力精霊は迫りくる兵士達を張手で吹き飛ばす。
鎧はグニャリと曲がり、重装にも関わらず吹っ飛んていった。
光る円を越えようとした時。
ドン!
見えない壁のような物にぶつかり兵士は血を撒き散らし地面にズルズルと落ちる。
力精霊は凄まじい勢いで、次々と兵士達を突き飛ばし、投げと見えない壁にぶつけた。
見えないはずの壁が血で赤く染まる。
「きゃあぁぁっ」
ディアムは思わず悲鳴を上げていた。
その光景があまりに残酷だったからだ。
「大丈夫だ。
終わるまで、目を閉じ耳を塞いでいると良い」
もはや残す所兵士も数えられるほどに減っていた。
兵士に逃げ場は無い。
一瞬、臆して立ち止まった兵士も居たが、直ぐに覚悟を決めて向かっていく。
追い詰められた鼠は猫を噛む。
だから逃げ道は用意してやれば良い。
サーシャリは大声で告げる。
「降伏するなら武器を捨てなさい」
その言葉に立ち止まり考える兵士も居た。
天秤にかけて生きる方を選択する筈。
だが、異変が起きた。
兵士がウオオオォォッと雄叫びを上げる。
仲間に構わず、狂ったように剣を振り回す。
まともではない、何か強烈な支配でも受けているのだろうか?
「待って!」
だが止まることはなかった。
力精霊は無慈悲に兵士達を見えない壁に叩きつける。
ドン! ドン! ドン!
全滅するまでに、そう時間は掛からない。
「降伏しない限り、力精霊は戦い続ける。
……生かして捕らえる余裕はなかったわ」
「あれだけの力の差があるのにか?」
勝負が付き力精霊は光の粒子と成って消え去る。
残ったのは、無惨に潰れた兵士の屍。
「戦意を挫くために、強力なものを用意している。
それが抑止となる筈だった」
言い分はよく解る。
そもそも攻め込んでこなければ、こんな事にならなかった。
彼らに同情したのは、赤子の手を捻るよりも簡単に恐ろしいことが起きたからだ。
「君を攻めるつもりはなかった。
ごめん」
「いいえ。
この通り私も恐怖していたわ」
差し出された手は震えて冷たくなっていた。
戦いに慣れている訳ではないのだろうか?
いやあれ程の力を振るうことは、初めてだったのだろう。
「俺達で解決しよう。
まだ居るはずだ」
指揮を取っている者が居る。
あの兵士達の中で、そんな上下関係があったように見えない。
恐らく、後ろで指揮を取っているのだろう。
兵士に何かしらの魔法で、操っていたとしたら絶対に許すわけにいかない。
次に操られるのは俺達……なんて事になったら悲惨だ。
「私のトランクに、香水が入っている。
少し良いかしら?」
こんな時に、化粧をするのか?
……いや血の匂いが漂って、気持ち悪いのだろう。
なにか生臭い匂いが漂っている気がする。
「了解。
……着替えが入っているのか」
服に隠れて小瓶が一つ。
香草を濃縮させた液体が入っている。
スーとする、気持ちのいい涼しい香りだ。
「心が落ち付くわ。
見えるかしら、反応して少し光っているでしょう?」
瓶から光る煙のようなものがでている。
普通の香水では、そんな事は起きない。
魔女の秘薬だとしたら、何かしらの特別な効果があるのだろう。
「勿体ぶらずに教えてくれ」
「何かしらの法術に反応しているの。
多分、精神に作用するものよ」
「打ち消したり出来ないのか?」
「この香水なら、ある程度は無力化できます。
けど長くは持たない」
無いよりはマシと言う程度なのだろう。
首元に軽くつけるだけで良いようだ。
しばらくすると香りが感じられなくなった。
「もう切れたのか?」
「香りに慣れたからです。
ほら私の首元を見て、少し光っているでしょう?」
「本当だ」
目を閉じ耳を手で抑え丸くなっていたディアムの肩に軽く手を置く。
「もう終わった。
けど隠れている敵が未だいるかも知れない」
「殺戮を頼んだわけではありません。
憎しみ合うことになれば、どちらかが滅びるまで戦い続けることになります」
前世で繰り広げていた怪獣との戦争で、それは良く理解しているつもりだった。
無駄に攻撃しなければ怪獣は暴れたりしない。
だけど、憎しみを持ったものが仕掛け巻き込まれてきた。
「その通りだと思う。
けど力がなければ、守ることも出来ないだろう?」
「……はい」
「裏で糸を引いている者がいる。
止めるには倒すしか無い」
感情を操り支配している者がいるとしたら、そいつを止めなければ憎しみや怒りで戦いは終わらない。
パチパチパチ……。
拍手しながら村の奥から人が出てきた。
全面を覆う兜だが、兎耳が剥き出しになっている。
四つ耳族なのだろう。
「見事でした。
実に素晴らしい戦い、特にあの巨人を操って兵士共を瞬殺したのは爽快です」
聞き覚えのある声だった。
裏切り者のセウファ、彼女とは一度戦ったことがある。
「小切手は借金には足りなかったか?」
セウファは首を傾げる。
「貴方は誰です。
私は騎士セウファ、誰かと間違えているのでしょう」
様子が変だ。
洗脳でもされているのだろうか?
だとしたら、彼女の裏にいる人物こそが真の敵だ。
「ここは俺に任せて欲しい」
「召使は大人しく見ていなさい。
彼女は生け捕りにして、話を聞く必要があるから16番にしようかしら」
武器は8番までしか無い。
16番なんて無いはずだが……。
いや、瓶に書いてあるのか?
液の中に16と言う数字が浮かび上がっている物がある。
指定されるまでは、そんな数字は無かった。
「了解。
この瓶で良いのか?」
紐を解き手に取った瞬間だ。
瓶が砕け散る。
セウファの放った投石術によって貫かれたのだ。
液が溢れ手がベトベトで、スライムみたいな冷たくてヌルヌルしている。
「頭を狙ったのに……。
変ですね」
「卑劣な、召使を狙うなんて許されざる行為。
恥を知りなさい」
召使は非戦闘員であり、襲うことは恥とされていた。
それは主に仕方なく従わされているだけで、敵意がないからである。
「アハハハ……。
国に巣食う害虫に過ぎない、そんな物を庇うなんて愚か、愚か過ぎます」
セウファは言葉を発しながら、投石術を指を弾くように放つ。
その放たれた石は意地悪に軌道が波のように軌道がゆらゆらと変化する。
それをサーシャリが軍配で防ぐ。
右へ左へと走らされ叩き落とせ無ければ、後ろにいる風太に当たる。
一見すれば不利に見えるが、彼女は落ち着き冷静に淡々とこなしていた。
「様子が変だ。
操られているのかも知れない」
ディアムは背後から風太に抱きつき口を塞ぐ。
「貴方は召使です。
ですから主に口出しをしてはいけません」
裏で見ている何者かが、狙うべき相手を探っていると警戒しているのだろう。
でも、このまま戦えばセウファは敗北し、酷い死を遂げる。
助けたい。
だって彼女は生まれによって不幸に成り、苦しめられてきた。
それで人に操られ命を落とすなんて可愛そうだ。
「アハハハ……。
そんな虫けらを守らなければ楽に私の首を取れたでしょう?
ですが、これで終わりです」
セウファが使ったのは、さっきサーシャリが使った魔法と同じだった。
光る円が現れたかと思うと、空に亀裂が入り落ちてくる。
ズドーン!
力精霊……、紫のまだら模様が肌を侵食し血管が浮かび上がる。
「ぐおおおおぉぉぉっ!」
苦しそうな悲鳴のような声だ。
「どうして私の精霊が……。
そんな筈がある筈はないわ」
サーシャリはひどく驚き、後退りする。
いや、違う。
油断させるための演技だ。
相手に見えないように軍配で片方の手を隠し、何かしている。
動揺していたら思考停止して何も出来ない。
魔法の準備だろうか。
だとしたら何かしらの手があるのだろう。
「撃退したとしても法術は失われる。
契約した精霊に殺されるようなことはないと思うけど、さてどうするか見もの」
これが魔法使いの戦いなのか?
相手の力を奪い使うなんて初めて見た。
そんな乗っ取りに対処する方法は無かったのか?
まさか、この液体が……、だとしたら俺の不注意が招いた。
「勝てないわ。
私は降参する」
サーシャリは軍配を捨てる。
腰に下げていた戦槌も落とした。
だが力精霊が消える様子はない。
それどころか、向かってくる。
「アハハハ……。
契約が書き換わっているとも知らずに、滑稽。
自らの精霊に潰されるが良い」
「無防備なものに攻撃はしない。
それが彼の信条、上書きできるはずはないわ」
サーシャリは鋭い眼光で力精霊を見る。
拳を振り上げる力精霊が止まる様子はない。
振り下ろされた拳は空気が圧縮し直撃することはない筈だった。
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「ぐああぁぁぁっ」
敗北は消滅だった。
砂のように崩れ去る。
「でも法術を失ったはず……」
サーシャリはゆっくりとセウファの前まで歩み寄る。
お互い,攻撃する機会を伺っていたが手を出せなかった。
殺される気配、緊張が静寂となる。
「降伏するなら命は助けましょう。
貴方は既に負けています」
「まさか、切り札は未だあるとは考えないなんて愚か。
わざわざ死に来てくれるなんて」
お互いに隠していた切り札を出す。
同時に指先が相手の首筋に触れる。
先に法術を放ったほうが勝つ。
「貴方に出来るかしら?
試してご覧」
「深淵の氷槍……まさか。
どして発動しないあああぁぁぁっ」
セウファは頭を抑え苦しみ始めた。
パリンッと兜が割れ、充血した目から血が溢れてている。
「貴方が放ったでしょう。
法術妨害液の事を忘れるなんて愚かよ」
あの液の付いた槍を拾い隠し持っていた。
手を離せば自然と足元に突き刺さる。
打ち消せるのは一つの法術だけ、だから相手に先に打たせる必要があった。
サーシャリの掌底でセウファは吹っ飛び意識を失い倒れる。
そして風太に向かって手を向けた。
魔法を使う体制だ。
まさか……。
「いたずら好きの水精」
スライム状の液が、磯巾着の触手のようにウネウネと伸びる。
気持ち悪い……、なんてことをするんだ。
まさか操られているのか?
だとしたら不味い。
ブーン
甲虫が飛んでくると、触手が伸びて捕らえる。
「うわっなんだ?
汚いゴキブリ……」
「守ってくれているようですね。
こんな虫は初めてみました」
甲虫の背に赤い宝石が埋め込まれている。
恐らく魔獣の類なのだろう。
「彼女の額に付いていました。
その虫が精神を支配して操っていたのでしょう」
サーシャリが持ってきた虫も同じように、背に宝石が埋め込まれていた。
羽を羽ばたかせ嫌な音を出し始める。
彼女は虫をグシャリと握りつぶす。
「人を操り人形にする魔物なのか?
恐ろしいな」
「いいえ、これは法術によって生み出されたものです。
精霊の具現化によって、その形を自在に変化させ操る事ができます」
「あの巨人も?」
「はい、代々継承してきました。
お察しの通り私の先祖は異界人です」
王族や貴族は力を欲するために積極的に交わろうとしている。
彼女の一族も、異界人の血を濃くしたいと考えているのだろう。
「俺に近づいたのは、君も……」
「その話は後々、ゆっくりとしましょう。
まだ気配があります」
術師のような服装のサングラスを掛けた男が姿を表す。
「おいおい、玩具を壊さないでくれよ。
結構作るのに手間掛かってんだ」
「私はサーシャリ、貴方は?」
「名乗るほどの者でもないが……、なっ……」
彼の胸に槍が貫いていた。
目を覚ましたセウファが槍を拾い突き刺したのである。
「この男は、召喚された異界人です。
生かしておくには危険過ぎます」
本当に彼女の言う通りなら、あっけない最後だ。
でもそんな強さを感じられい。
「弱い奴は追い出されたはずだ。
いくら操れると言っても、そんなに弱い筈がないだろう」
「私を信じてください。
貴方との戦いで改心したのです」
「……解った君を信じよう」
「ああ良かった。
もう一度、あなたに会える日を楽しみにしていました」
風太はトランクから短剣を取り出す。
この状況で信じられない者が一人いる。
剣を振るい、娘の口紐を切った。
「ありがとう。
私を……」
「君が敵だと確信が持てなかったが、今は違う。
決定的なミスをした」
「何のこと?
私は縛られて身動き一つ取れなかったのに……、まさか貴方も操られているの?」
「攻撃の頃合いが上手い。
相手側からは見えないはずなのに、丁度良い感じで出くるのは不自然じゃないか?」
「助けて、私を黒幕に仕立て上げるつもり……。
ああ、なんでこんな事に」
「とぼけるなら、覚悟をすることだ」
風太は剣を振り上げる。
だが娘は怯えるだけだ。
間違っていれば、無意味に命を奪ったことになる。
そんな事が許されるはずもない。
だが覚悟を決めて切りつけた。
「何故……」
娘は倒れる。
「さてこれで良いはずだ。
これで村は助かる」
ディアムは娘に祈りを捧げる。
「彼女は囚われの身でした。
何故殺す必要があったのです」
「彼女の動きに違和感があった。
気づかなかったか?」
ディアムは否定的に横に首を振った。
当然だろう、娘の振る舞いはごく自然なものだ。
だが実際は足を使い術を仕込んでいた。
異様な雰囲気に気を取られ、彼女への注意が薄れ見落とす。
気づかぬうちに罠へと誘い込まれていたのだ。
「全く、何かしていたのなら教えてくれても良かったでしょう」
「村の前で止まった時、彼女は慌てていただろう。
始めてきた筈なのに何故兵士達が居ると解ったのか」
あの娘は、別の村から逃げてきたのだ。
この村からではない。
なのに潜伏を知っているような振る舞いをしたのだ。
「確かに、村に付けば安心するものです。
ですが、途中の光景で村が占領されてと思ったのでしょう」
「村から逃げ出さないように設置したと言ってたのは君だ。
方向が逆だろう」
「あっ……。
確かに村に閉じ込めるなら、村はまだ無事の筈」
「もし彼女を連れていけば、
隠れている場所を特定されただろう」
憶測だけで、本当の所は何も解っていない。
決断しなければ、全滅する気がした。
これでは、不安な可能性があるなら始末すると言ったあのジジイと同じではないか。
サーシャリは微笑む。
「見事です。
私も彼女が黒幕だと感じていました。
ですから技と見えるように演技をしたのです」
それで召使と言ったりしたのか。
その時は既に知られていて、結局セウファに狙われたけど。
「私が迂闊にも油断して喋ってしまいました。
この失態はどんな罰でも受けます」
「それで気がついたのよ。
私達の関係を知っているように振る舞うのは明らかに不自然でしょう」
本当に召使なら命を奪われても、それ程の痛手ではない。
むしろ囮として使えたと攻撃に転じていただろう。
「……でも、それで彼を危険にさらしてしまいました」
「俺が弱いのが悪い。
君に与える罰があるとしたら、俺の言う事を何でも聞いてくれ」
娘が黒幕説に納得したのかディアムは微笑む。
「はい。
では、聖域に案内します」
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