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6章 帝国編
50話 弟子
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「どうして奥様が、いらっしゃるのです」
時は少し戻り、館で寛ぐ風太とリアハとの会話から事は始まる。
「探し物があって、今度の休みに辺りに出かけようと思う。
何処か良い場所があったら教えて欲しい」
「それなら北の街に行けば良いです。
私は風太が作ったものであれば嬉しいですけど……」
リアハは質素を好み、部屋も特に飾りがない。
そんな彼女が何かを欲しそうにしているのは、星の日が近いからだろう。
恋する者達が贈り物を交換し、愛を深めるという帝国の習慣である。
「それは、準備してある。
茨に囚われた者達を助けたくて……」
そんな会話を側で聞いていた猫耳少年テラスタンは妄想を膨らませていた。
全ての輸送網を監視するには人員が足りない。
王国に近い南側の都市を中心にメイドを派遣し調査を行っていたが成果がほぼ無く行き詰まっていた。
テラスタンが裏で行っている諜報活動に気づきアドバイスをしているのだと。
北側ルートは危険な海路を通り、数ヶ国をまたぎ王国に到達する。
凍てつく寒さに氷塊、船に体当たりする巨大な鯨、海賊と……。
なので候補から外していた。
「クフフ……。
では準備させましよう」
リアハは風太にもたれ掛かり、体の温もりを感じて甘える目つきで手をそっと握る。
この時だけは役目を忘れて素直に自分に戻れる一時の休息であった。
そんな二人だけの時間に水を差すのは良くないとテラスタンは部屋を出た。
そして、即行動に出る。
派遣したメイド達から直ぐに調査報告が届く。
赤い爪商会が所有する運送拠点が怪しいとの事だった。
大規模な倉庫があり、収用した品を梱包し各地へと配送されるのである。
確実な証拠を手に入れるために、潜入する実戦部隊アルファが編成された。
8人で構成され、まだ日が浅くお互いの事もまだわかっていない。
その中に奥様の一人であるカミューラ……。
玉国で法術士になる際、偽装に家名を借りたのが縁で風太と結ばれという経緯がある。
「波乱と冒険を期待していましたの。
ですけど、今の生活も以前と変わらず退屈な日々です」
辺境領主の娘、微妙に優遇された地位。
気苦労もなく守られて育ったがゆえに、刺激がなく物足りなさに悩む。
民は常に外敵、魔獣や魔族、人間同士の戦争に巻き込まれ命の危機に晒されているというのに。
彼女はそんな場所に憧れていたのである。
「命がけの任務です。
奥様に、もしものことがあれば我々の首が飛んでしまいます」
「それはスリリングで面白いではないですか。
その時は共に地獄に参りましょう」
話が通じる相手ではない。
厄介な重荷を背負って任務を遂行するなんて考えるだけで気が重くなる。
赤い爪商会は同業者からも恨まれ嫌がらせが多いと聞く。
其の為、警備に力を入れており侵入は困難である。
アルファの隊長スボルエッタは少し考え追い返すのは止めた。
彼女は魔族に憧れていたがクロニャにその時の記憶を奪われて風太に狂酔するように教育されている。
愛するものを助けたい思いは同じと絆を感じ同行を拒めなかった。
「確か、実力を認めて欲しいと言っていたな。
セフー、奥様の護衛を任せる」
セフーは緊張し体が硬直し、ドッと冷や汗がこぼれる。
何故なら赤い爪商会が送り込んだスパイだからだ。
猫耳族を見下した事によって謹慎処分を受けたばかり、これ以上の失態は許されない。
両方からクビを宣告されれば良い方で処理され地中で眠ることになる……。
どちらの立場も危うい。
奥様と言う、買収も処理も出来ない監視付き。
「了解。
命に変えて守りきり、任務も無事に遂行します」
アルファの面々は、何かしらの問題を抱えている者だけで編成されていた。
誰が裏切るか解らない。
そんな歪な集まりである。
だからこそ、カミューラは興奮していた。
裏切った瞬間に粛清する場面を仮想しニヤニヤが止まらない。
「期待しています。
その鍛え上げられた肉体に恥じないように守ってください」
部隊に支給されたスーツは、体格をくっきりと見せるキツめの黒革である。
法術で身体強化に、耐打性も優れ、柔軟な動きを可能にしていた。
まだ試作段階で、これからテストを兼ねて魔獣狩りを行いながら北の街へと向かう。
「では私の後ろを付いて来て下さい」
「従者は後ろにつくものです。
私に後ろを歩けと、また謹慎したいようですね」
(理不尽、ここまで傲慢だと守る気も失せる)
しかし、何かあれば処罰されるのはセフー自身だ。
どんなに嫌でも手を抜く事は出来ない。
「了解。
ですが危険だと思ったら後ろへ引いて下さい」
支給品が入った箱をメイドが持ってくる。
「お待たせしました。
これを装備して任務に向かって下さい」
猫耳飾りの付いたヘッドギア、フレーム無しのサングラス、特殊ナイフ。
それに小道具の入った革のポーチ……。
カミューラはニコニコしながら装着して居いたが、疑問があった。
「この猫耳はどういう意味でしょうか?
猫耳族への不評被害となるのは彼は望まない筈です」
「無線受信装置です。
ある程度離れていても会話できるネットワークを構築してチームの連帯を高める目的があります」
「言葉は皆に聞こえるというわけね。
でも特定の相手とだけ話したい場合はどすれば良い?」
「この腕輪を渡しておきます。
ですが2つしかありませんので、奥様と隊長に預けます」
リングに数字が書かれていて、回転できる仕組みとなっていた。
回して話す対象を選べるようだ。
「あーあー、聞こえていますか?」
『なんで私に……。
はい、聞こえます』
本来なら聞き取れないような小さい呟きも拾うようだ。
「では出発しましょう。
さあ行きますよー」
全力で駆け抜け、魔獣が住み着く森へと入っていく。
一般市民どころか、武装した帝国兵ですら危なくて近づくことはない。
入って直ぐに洗礼を受ける。
赤く光る数多くの目が闇から現れ、遠吠えと共に一斉に襲いかかってきた。
剣毛狼、剣のような鋭い切れ味の毛に覆われた魔獣だ。
群れで狩りを行い連携の取れた動きで翻弄した獲物の喉元を食いちぎる。
ガウゥゥッ
飛び跳ね噛みつこうと口を開いた剣毛狼の口の中にカミューラは手を突っ込み喉や舌を荒らす。
喉が詰まったときの吐き戻しの衝動に剣毛狼はたまらんと尻尾を丸めて逃げ出す。
「こんな雑魚相手に怯んでいたりしないわよね?
やってしまいなさい」
セフーは戦意を喪失し終わったと生きることを諦めていた。
かつて帝国兵として魔獣の掃討作戦に参加したことがある。
それは過酷な戦いで、共に戦った仲間が次々と倒れ半壊するほどの負け戦だった。
その悪夢が再び……。
「ああっ……、こんな事になるなんて。
なんでここにあの化け物がいるの!」
「叫ばないで耳が痛い。
皮は硬いから、弱い口の中を狙い突き刺せば容易く倒せます」
一撃で骨すら砕き噛み切ってしまうのに、手を突っ込めという。
セフーは手本を見せて貰っても出来はずもなく呆然とした。
たった刃が30cm程度の特殊ナイフ一本しか与えられずにどうして戦えるというのか。
得意な槍であっても心もとないと言うのに。
カミューラの言葉を実行する勇気はなかった。
腕を失えば死んだようなもの。
「出来ません」
「なら脱落、帰りなさい。
故郷で別の道を探すことです」
(逃げ出せば暗殺される。
……結局死ぬのなら逃げ出し臆病者としてより、魔獣の殺されたほうがまし)
「嫌っ!
戦います」
セフーは覚悟を決めて、剣毛狼の顔面を殴った。
バキッ!
骨が砕ける感触と共に剣毛狼がどろり解けて魔石が剥き出しとなる。
最も硬い頭蓋骨を叩き割ったのだ。
「なら初めからやりなさい。
今回は大目に見てあげます」
強化スーツによって人並み外れた力を得ていた。
それにアルファ部隊の面々が気づくと、それまで戸惑って何も出来なかった者達も攻撃に転じた。
20匹近い魔獣の群れだったが、一掃するのにそう時間はかからない。
拳や蹴り、そんな格闘だけで勝利を収めた。
「はぁ、はぁ……。
もう敵はいない……」
「もっと恐ろしい魔獣が住んでいると聞いています。
情報ぐらい頭に入れておきなさい」
(無茶なことを、話を聞いたのは前日の深夜。
情報を持っていなら事前に資料としてまとめてくれれば……)
セフーは感情が顔に出て苛ついているのが隠せていなかった。
「気をつけます」
「なら先行して、様子を見てきなさい。
少しは頭が冷えて、冷静に成れると良いですね」
「くっ……」
思わず手を出しそうになるセフーだったが、ぐっと堪えた。
(ただ貴族というだけで優遇された地位にいる。
それだと言うのに、その化けの皮を剥いでやる……)
ラフーは単独で先行し、周囲を警戒する。
ザザザ……、茂った草をかき分け進む。
岩皮熊が立ち上がり威嚇する姿が見えた。
音に反応して敵意があると見なされたのだろう。
口を大きく開き、今にも襲ってきそうだ。
「丁度、苛ついていた所。
サンドバッグに成ってもらう」
一気に間合いに飛び込み殴りつける。
ドカ、ドカ、ドカ……。
自分よりも一回り大きい相手だが、このスーツで強化されている今なら勝てる。
実際、相手は動かず鋭い拳が何発も魔獣の弱い腹に入り動く気配はない。
だが全く衝撃が届いていなかった。
厚い岩肌の下に脂肪がたっぷりで衝撃を吸収し体外へと波のように受け流していたからだ。
岩皮熊の赤い爪がブンッと振るわれ、ラフーは薙ぎ飛ばされる。
バキッと木に叩きつけられて地面に倒れた。
たった一撃、戦意を喪失するには十分。
「殺される……」
「手を出してはいけない相手に挑むなんて愚か。
必要に応じて仲間を呼びなさい」
カミューラは特殊ナイフを岩皮熊の首筋に当てる。
避ける様子もないのは、その肉体が傷つく事がないという経験則だからだろう。
あまり体力を使いたくないという魔獣の本能が手を出すことをためらわせ観察し狙いすます。
だからこそ、その動き止めた隙を狙って一撃を繰り出せば良い。
手の甲で、まるで杭を打ち付けるように叩きつけた。
岩の肌に一線のヒビが入り、パキッと割れる。
掻っ切るように押し込み切り裂く。
黒紫の血が吹きでて止まらない。
再生能力の高い魔獣の肉体が再生しないのには秘密があった。
特殊ナイフにはめ込まれた玉に魔骸骨がすり潰されて混ぜ込まれている。
命を啜る武器であった。
巨体が倒れ、埃を舞い上げる。
「そんな貴族と私達とは違うっていうの?」
「さあ、もし違うとしたらそれは努力の差でしょう。
目的の為にどうすれば実現するかを考え行動して行くだけのことです」
セフーは悔しさと無気力感が襲い涙がこぼれ落ちる。
(どうあがいても無力……。
貴族に守られることが運命だというの)
「ううぅぅぅっ」
「立ちなさい。
貴方にだけに話しておきたいことがあります」
「はい……、了解」
セフーは目が真っ赤に、涙を拭き取り立ち上がった。
「赤い爪が送り込んだスパイがどうやら紛れているらしい。
私は隊長が怪しいと思っています」
スボルエッタは魔族崇拝の疑いによって幽閉されていた経緯がある。
その時は、まだ工房が明るみに出ておらず、赤い爪が知るはずもない。
また、後から赤い爪が接触する事も出来ないほどに常に複数の監視が常についていた。
つまり全くの的外れなのはセフーには解った。
(武術に長けても、人を見る目は節穴という事。
これは良い利用させて貰う)
「どうして私にそれを話すのでしょうか?
……こんなに惨めにボロボロなのに」
「期待しているから。
恐怖を克服して立ち上がることが出来た、それは素晴らしい才能です」
「はい、頑張ります」
(ひっくり返せる。
地位も何もかも滅茶苦茶にして、どん底に落ちた時、どんな顔をするのか見もの)
戦意を失っていたセフーに闘志が燃え上がる。
カミューラはチャンネルを変えて全員に伝わるように告げる。
「なるべく戦闘を避けて、中継地の小屋まで一気に駆け抜けましょう。
全員、付いて来なさい」
魔獣を一々相手しては時間が幾らあっても足りない。
風太よりも早く、目的地に到達し任務を終えるのが目標だ。
残された時間は少ない。
森の奥深くに小屋が立っている。
そこにチャナタがいた。
彼女は王国旧体制派の騎士団の副団長であったが、風太に敗れあろうことか恋をしてしまう。
結ばれて一緒に暮らし初めたが……、罪悪感によって魔獣の巣窟での生活を送る日々。
体格よりも遥かに大きい巨剣の素振りを行っている。
風を裂く音が響き、真空波によって投げられた丸太がパリンッと割れて落ちた。
メイドとして付いてきたオッセアは丸太を掴み、手を止める。
彼女は風太に命を助けられたが王国から追放され、帝国で風太と再開し結ばれた。
「チャナタ殿、いい加減こんな暮らしを止めてませんか?
誰もこんな事を望んでいません」
「私が遅れなければ、隊長も仲間達も石化せずに助かったかも知れない。
道に迷って、時間を掛けてしまった償いをしなければ許せない……、一人にして欲しい」
「いいえ。
そんな事はない、要塞都市を任されていた時には既に石化しています」
連絡が途絶えたのは、丁度その頃だ。
役目を放ったらかしにして向かえば間に合ったかも知れない。
しっかり統治し治安を維持できたのは、彼女の活躍があってこそ。
もし統治できていなければ、犯罪が横行し田畑も荒らされて居ただろう。
「……これは気持ちの問題です。
隊長は私の心の支え、だから助けるために少しでも稼ぎたい」
魔獣を狩り、魔石や素材を売りさばいたとしても雀の涙程度。
それでも助けになると信じて狩りを続けるしか、儲ける方法を知らなかった。
元王国の騎士でなければ、帝国に士官し活躍出来るだけの能力はある。
今は時期が悪く、王国関係者と解ればいらぬ疑いを掛けられ身動きが取れなくなってしまう。
「にひひ……、でもこれは何でしょうね。
風太の人形を並べて置くのは部屋だけにして下さい」
長椅子に風太の姿をした人形が並べて置いてある。
見守られていると感じるだけで気合が入り、動きもキビキビとしなやかに。
決して人形遊びをしているわけではない。
「私の家をどう飾り付けようと自由。
とやかく言わないで欲しい」
「帰っておいで。
いえ私が幸せになることは許されない……」
今朝の寸劇の台詞だ。
個室になっているが、壁越しでも筒抜けでオッセア掃除の楽しみに聞いていた。
チャナタは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「これぐらいは、許しくれるはずです。
だって淋しいし……」
「だったら戻ればいいのに。
面倒な女になって困らせないで下さいね」
「うぅぅぅっ面目ない。
今はそっとしていて欲しい」
「所で、ここに来客が来るようです」
チャナタの顔が真っ青になる。
部屋を見られたくない。
ハートマークで彩られた家具だけなら良かった。
風太グッツが大量に置いてあり、特にお気に入りなのが等身大の抱き人形。
隠す場所もなく、ベットの上に置いたままになっている。
もし知られれば真面目で堅物という作り上げた虚像が崩れてしまう。
「待て、そんな話は聞いていない。
第一ここは私が暮らす為に用意した、部外者に来て貰っては困る」
「私達、家族の一人が来るらしいです。
メイドを引き連れている誰かさんですけど……にひひ……」
「まさか、風太! いやそれならサプライズで黙っている。
そんな意地悪さが貴女にある、と言うことはリアハ殿」
「あらら、残念。
外れです」
「なら部屋に入ることは許さない。
これは絶対に守って貰う」
「はーい。
食事をしたいだけで直ぐに立つらしいので、外で食べていただこうかと思っていました」
チャナタは直ぐに長椅子の人形を小屋の中に隠す。
そしてテーブルを作り始める。
要塞都市で経験……城の崩壊によって会議室もなく、協力してくれる民も居ない。
自前で用意するしか無い、そんな時魔骸骨が作ってくれた。
元は職人だったのだろう。
無言での働きにチャナタも自ら働くことを示す。
それが民を動かしたのである。
そんな思い出が過ぎり、微笑むチャナタ。
「何人来る予定?」
「8人です。
では私は食事の準備を始めます」
軍用の大人数分が用意できる大きな鍋に火を掛ける。
オッセアは鼻歌交じりに食材を切り始めた。
「その大鍋、いつの間に。
あっ、伝えるを遅らせ……」
「にひひ……。
ええ、昨日には連絡が入っていました」
慌てる様子を楽しもうという魂胆に呆れつつチャナタは笑う。
孤独より、誰かと一緒に……、愛する者の側に……。
「決意が揺らぎそうになってしまう。
でも決めたことは成し遂げたい」
ぐつぐつとスープの美味しそうな匂いが漂う頃。
アルファの面々が到着した。
チャナタが出迎え歓迎の意を示す。
「温かいスープが出来ている。
さあ食べると良い」
丸で新米の部下に接するような態度だ。
アルファの面々は疲れ果て、息を切らしヘトヘトで今にも倒れそう。
そんな中でも、涼しい顔をしているカミューラは物足りなさを感じていた。
「うーん、まだ食事には早いです。
その肉体、実に素晴らしくて魅力的、腕試しなんてどうかしら?」
「どんな勝負をするつもりかによる。
これから狩りに向かう予定があって、怪我をしたくない」
「軽く手合わせ」
チャナタは予備の巨剣を地面に突き刺す。
「これで良いなら。
遊びに付き合っても良い」
二人が巨剣を手にした瞬間に動き、剣と剣がぶつかり合う。
キン! 金属音が反響し脳を刺激する嫌な音として響く。
それが連続し、見ている者達は耳を抑える。
響く音だけで、脳が破壊されるようなギンギンして感覚が狂いそう。
キン! キン! ……。
「手加減してくれたのですね。
この剣は私には大きいようです」
それもその筈、地魔将の残党である巨人族が扱う大雑把な剣だ。
戦利品なのだが、余りの大きさに売れず渋々訓練用として使っていた。
華奢なカミューラが振り回せるだけでも異様な光景だ。
「貴女も、手の内を隠していたでしょう。
さて、少し出かけてくるからのんびりして行って」
チャナタが森へと消えていく。
セフーは置いていった巨剣を持ち上げようとしたがビクとも動かない。
(はああなんて化け物……、こんな剣をどうやって持ち上げたというの?
実は奥様は人外……)
カミューラに肩を軽く叩かれセフーはビクッとなる。
「制限解除で、一時的に大幅強化できます。
慣れない内は一分以内しか使わないほうが良い、後々に筋肉痛で……フフフ……」
(制限解除……! 軽い、これがこのスーツの隠し機能。
小さい工房をどうして警戒していたのか解らなかったけど。
こんな高性能の兵器を開発していたから……)
赤い爪にこのスーツを持ち帰れば、それだけでも十分な成果となる。
極秘裏に開発していた物を盗まれたとなれば信用はガタ落ち。
帝国議会も黙っておらず、補助を打ち切るに違いない。
(でも、それでは気が収まらない。
あの片猫耳にも同時に復讐するには、もっと大きな失態を……)
アルファの全滅。
なら油断している今しか無かった。
魔獣を食材として利用しないのは、毒があるからだ。
この瓶に魔獣の体液を採取しておいた。
これを鍋に垂らすだけ。
ポチャッ……!
(巨剣に夢中で誰も気づいていない。
こんなにあっけなく上手くいくなんて……)
茶色かったスープが紫色に変化して、ゲロマズな感じに。
(なっ!)
「あら、お料理が失敗してしまいました。
申し訳ないですが、スープの代わりに干し肉で我慢して下さい」
オッセアは頭を下げ、干し肉を持ってくる。
一人ずつに干し肉を渡し、セフーには微笑みを送る。
「何か?」
「これを入れたのは貴方ですよね?
入れるなら自分の器だけにして下さればこんな事にならずに済んだのですよ」
人形が小屋の窓から覗いている事に気づく。
(まさか、監視法術具……。
一部始終を記録されていたとしたら、破滅しかない)
どんよりと生臭いスープが入った猫顔モチーフの器を渡される。
「美味しくなると聞いて。
こんな事になるとは知らなかったです」
「どうぞ、味見して試して下さい。
折角作った30人分のスープを全部捨てるのは勿体ない、にひひ……」
拒絶して逃げるのも手がだが、カミューラはあれだけの激闘をしても余裕でブンブン巨剣を振り回している。
(逃げ切れる未来が見えない。
追いつかれて、あの巨剣で真っ二つに……)
息を止め、スープを口に入れる。
「あちちちち……、ひぃーやふけたです」
火傷を利用して吐き出す。
少々口に入ってしまったが、それぐらいでは致死量に達しない。
「慌てることも無いのに、優しい癒やしの光。
この術は風太殿の術書に記してありました、彼の暖かさがとても現れて居て、にひひ……」
オッセアの手が柔らかい緑の光を放つ。
その手でセフーの頬から喉にかけて優しく撫でた。
学園の術書だけでは足りず、工房で術書を独自に作らせて保管している。
実験が必要な高度な術式を試すには、この離れた小屋の方が都合が良く保管されていた。
(法術による癒やしは体力の消耗が激しくて有用性が無いと結論付けられているのに。
いや制裁によって入手ができないとしたら……)
帝国内では回復薬等は、赤い爪が独占している。
特定の相手には高額でしか販売しない嫌がらせが出来てしまう。
(回復薬すら用意できないほどに、経営が苦しいとしたら。
このスーツ開発に賭けていると考えて間違いない)
「痛みが引きました。
こんな素晴らしい法術なら広まるべきです」
「慌てずゆっくりと時間はあります。
さあ全部飲んで下さいね」
(なっ。
火傷して痛い思いをしただけ、この腐った匂いのするスープを……無理、無理)
「ごめんなさい。
許して下さい」
パッチン!
オッセアが指を鳴らすとスープの色が元に戻り美味しそうな匂いが漂う。
「魔素を抜き忘れると、こんな事になるって理解しておくことです。
魔獣の中には美味しい物もありますが、それはちゃんと下処理しています」
セフーの喉元が紫に色に光っている。
毒見の法術をこっそりとオッセアは掛けたのである。
「……はい、気をつけます」
甘みがあって濃厚なスープ、根菜が柔くて美味しい。
(なんて愚かな事をしてしまった。
こんにも美味しい物を台無しにしようとしていたなんて……)
セフーは涙が溢れる。
「皆さんも、どうぞ。
毒見は大丈夫です」
皆が食事をしている間にオッセアは木箱を運んでくる。
(棺桶……、まさか公開処刑するつもり。
ならば一人でも道連れにする)
木箱が開かれる。
防寒コート……、山ルートなら必須。
山脈によって比較的温暖な気候となっているが、山脈はもろに冷風に晒され大地が凍っている。
セフーはゴクリと唾を飲み、緊張を解く。
(紛らわしい長い木箱を。
危うく本当に棺桶になる所……)
「山越えするなら、靴も専用の硬い物にして他にも道具が欲しい」
「途中に古代遺跡、通称ドワーフの穴があります。
そこを通れば反対側へ到達できます」
「費用はかかりますがゲートを通れば、
山を通らずに行けると……」
「確かに、帝国が管理する転送ゲートを利用すれば行けますが記録に残ってしまいます。
秘密裏にとの計画をお忘れですか?」
「いえ、出過ぎました。
申し訳ないです」
「雪山の話、偶然であった旅人達が一緒に雪山を越えようとして吹雪に襲われます。
途中、穴を見つけて避難し人数を確かめたら一人多い……」
「突然、何を言い出すかと思ったら怖い話。
止めて欲しい」
「にひひひ……。
お気に召しませんでしたか、でも気をつけて下さいね」
誰が増えたのか気になりながらも、山を降りると人数が元に戻っていた。
旅人達は彼が導いて守ってくれていたのだと気づき。
あれは山の神の使いだと感謝したのです。
オッセアは折角、いい話を覚えてきたのに披露できずに少しガッカリしつつも微笑みを絶やさない。
(異様に怖い……。
何を考えているのか解らない)
ザザザ……。
草をかき分けて巨大な影が姿を表す。
6本腕の骸骨……禍々しい邪悪な気を纏う。
悪霊の呻きが、殺害された者達の怨念だろうか。
セフーの足がガクガクと震える。
(怖い話に引き寄せられて化け物が……。
カミューラは!)
皆は怯え絶望している。
そんな中カミューラは巨剣を構えていた。
ただ顔は蒼白になり動く様子はない。
反撃を狙っているのだろう、先手必勝と先制しないのは6本の腕によって攻撃を防がれる事を警戒しての事。
(勝算があるのは彼女だけ……。
運よく相打ちになってくれれば、いや全員で彼女を助けなければ全滅する)
そんな中、オッセアだけが呑気に鼻歌を。
ルルル♪ ルル~♪
「お疲れ様。
彼女達は客人です」
その骸骨は頷くと、巨大な袋を置き去っていく。
「あれは一体……」
「さあ解りません。
チャナタ殿は戦友と、色々あってとしか教えてくれませんでした」
(工房の新兵器なのか、あるいは……。
いや報告しても信じて貰えるか解らない、この事は見なかったことにして忘れよう)
足元に感触が……。
目線を下ろすと人形が足首に捕まっていた。
窓から覗いていた、あの人形。
(怖い……、引き剥が……。
いえ。落ち着くのよ、これも何かしらの試練……、このまま付けて知らないフリを)
暫く休息を取った後、出発することになる。
誰が言ったのかドワーフの穴は人工的に創られた巨大な遺跡だった。
吸い込まれるような黒さ。
カミューラは壁面が鏡のように輝き自分の姿がうっすら見える事に神秘性を。
それが巨大な遺跡全体に施されている。
人や鳥、草花を象った彫刻も見事で未だに輝きを放つ。
「ドワーフと言う生き物は発見されていない。
一体誰が何のために作ったのか学者達は幾つもの仮説を立てたけど……」
どれも空想の域を出なかった。
そんな謎の遺跡、女子供すらもヒゲの生えたずんぐりむっくりな短足の亜人がいたとしたら、
こんなに高い屋根にしないだろう。
それほどに高く、見上げれば闇。
対象的にセフーは不気味さを感じていた。
「誰か管理しているのでしょうか?
こんなに綺麗に掃除されているのは手入れされているとしか」
「ここを通って抜ければ目的の街まで後少し。
夢のない話はやめなさい」
「……はい。
森に囲まれて魔獣が徘徊するこんな場所にわざわざ掃除はしたくないです。
精霊に守られているとしか……」
カミューラはセフーの足首に付いている人形が気になっていたが、今まで聞かずに居た。
明らかに風太を模した人形なのだが、汚れてドロだらけになっている。
「人形遊びは程々にして。
ポーチに入れて、楽しむのは余暇の間だけです」
(うわぁ、泥だらけで汚い。
こんなものをポーチに入れたくない……)
だからといって捨てることも出来ない。
「はい……、水の精霊よ。
私の祈りに答え姿を現したまえ。 悪戯好きの水洗浄」
プルン
スライム状の水が地面から出てきて人形を飲み込む。
ペッと人形を吐き出すと綺麗に汚れが取れていた。
片方の目がポロリと取れかかっている。
縫製が甘いのだろう。
(手洗い出来ればこんな事に、もしかして不味いことを。
……気づかれないように、さっさとしまおう)
ポーチに入れようとした時、カミューラに腕を掴まれる。
「待ちなさい。
取れかかっています」
針と糸でササッと直しカミューラは微笑む。
手作りの人形なのは明らかで、下手な部分があるが特徴をよく捉えている。
愛がなければ作れない代物だろう。
「助かります」
「大切にしなさい。
きっと良いお守りとなってくれます」
(呪いの人形なのに……。
やはり見る目は無い、こんな気味の悪いものはさっさと捨てたいぐらい)
コーコーと、風が吹く度に音が鳴り響く。
(こういう場所は苦手、お化けが出そうで……)
床は滑らないようにザラザラだが、コツコツと音の反響が酷い。
「サングラスを暗視に切り替えなさい。
確認ができたら歩き始めて」
輪郭が分かる程度で色の識別は濃淡で判断する。
余り精度は良くなく、近距離しか見えない。
カミューラを先頭に奥へと進んでいく。
(上手く誰かを引き離して始末すれば。
後でスーツを回収できる……けど、人形の監視をどうするか)
触った感じ何か仕掛けがあるように感じない。
ただの人形。
背後に居たスボルエッタはイラッとして、人形を取り上げた。
「セフー、まだ遊んでいるようですね。
これは没収します」
「あっ……、はい」
(これは運が向いてきた。
捨てることも出来ずに困っていたのに、何も知らされていない様子で滑稽)
人形を手にしてニタニタしている事に気づいていれば過ちに気付けた。
しかし、策略に夢中になっていたセフーは見落とす。
内部は広く、真四角な建築物が並ぶ。
家だとしても、扉はなく一部屋の空間しか無い。
何のために存在しているのか。
家具が残っていても良さそうだが、置かれた形跡すら発見できなかった。
調査は直ぐに辞め、先に進み始める。
もし何者かが隠れていて不意打ちしてくるかもと緊張しつつも急ぐ。
視野を確保するために若干、隊列が広がり気味になっていた。
これは好機とセフーは動く。
(確実にやるには、一番弱い相手……。
なら彼女……)
少し遅れてついて来ていたメンバー最年少の女。
小柄で戦いでも余り目立たつ逃げてばかり。
そっと近づき、背後から首を絞めナイフで首を突き刺す。
何も出来ずに息絶え、ぐったりする。
(まずは一人……)
気づかれた様子はなく皆は周囲の警戒を続けている。
そっと小部屋に運び込み、何食わぬ顔で隊列に戻った。
「魔獣の気配はない。
少しペースを上げて進みます、遅れずに付いてきなさい」
そう言うとカミューラは一気に加速する。
(はっ、早い、これは全力でギリギリ追いつける。
ここ一旦付いて行く事に専念するしか……)
複雑に曲がりくねった道が続くが、一本道で迷うことはなかった。
明かりが見え出口がもうすぐ。
(これなら、一人二人を狙って居れば……。
迷路になっていると思っていたから、くっ)
カミューラは立ち止まり振り返る。
「脱落がないか確認します。
識別番号を呼ぶから返事しなさい」
数字が読み上げられ返事をする声が響く。
配属が決まった時に与えられた3桁の番号。
誰にも知られないようにと念を押されていて、確認したら燃やす事になっている。
「……219!」
「はい!」
(7人全員返事があった。
一人殺したはずなのに……、一体何者を?)
「全員、揃っているようね。
では行きましょう」
一人増えているあの話を思い出しセフーは震えた。
(誰とも解らない謎の人物が紛れていた……)
ギロリと赤い目の視線が彼女に向けられているとは知る由もない。
白銀の世界が広がる。
一歩踏み出せば、ズボーとめり込む。
「これは想定外、セフーなら知っているでしょう。
こういう時はどのようにして進むのです」
「雪上歩行の法術で歩くことが出来ます。
ですが未習得です」
ぱらぱらと雪が舞い降りてくる。
「では私に任せて下さい」
スボルエッタはポーチから瓶を取り出すと雪の上に中の青い液をまく。
ニョキニョキと雪だるまが生えてくる。
キラー雪だるま。
悪霊が取り付き、人の温もりを感じようと体内に取り込み凍死させる。
恐るべきアンデット。
見た目は可愛い雪だるま、ピョンピヨン跳ね回り動く。
それが雪を吸収し少しずつ大きくなる。
「ここからはペアになって別行動で行きましょう。
合流地点は、大倉庫前にあるヤドリギの宿です」
カミューラはセフーを手招きし一緒に行動するように指示する。
(二人……、これは最強の好機。
彼女を始末すれば、侵入計画は頓挫する)
殺した筈の誰かが気になるが、考えないことにした。
ズルズルと留まり続けてもスパイだとバレて立場が終わる。
そんな予感が過ぎり焦っていた。
一度の失敗が、足を引っ張り連鎖的に転落していく。
キラー雪だるまによって固められた道は歩きやすく走っても問題なかった。
どんどん速度が加速していく。
それに比例するように雪の激しさが増し、視界が悪くなり吹き付ける風が肌を切り裂くようだ。
周囲に仲間の様子は見えない。
(背後から襲えば……)
セフーがナイフを手に突進する。
「止めておきなさい。
貴女は初めから詰んでいたのです」
声と共に吹雪の中、誰かが近づいてくる。
「なっ……」
セフーの体が硬直したように動かなくなっていた。
悪霊によって体の動きを拘束されているのだが、それがセフーには解らない。
拘束法術なら無詠唱でも切り裂き突破できる。
(どうして、動けない……。
こんな事はあり得ない)
姿を表したのはスボルエッタ。
「この部隊の秘密を明かしましょう。
ゾンビ化兵の育成、管理、兵士として実戦に投入できるかの実験を行っていたのです」
「どうして……」
「帝国の兵士不足は深刻で、産業の人員まで投入しなければならず。
生産能力が年々低下しています、それは国力の低下となりいずれ魔族に敗北する」
「非人道的な行いを……」
「人殺しの貴女の台詞とは思えない。
ゾンビでなければ死んでいたでしょうね」
「くっ……」
ゾンビ計画を打ち開けながらセフーの体を冷たく冷えた手で触れていく。
「任務は最後まで遂行してもらいましょう。
裏切れば鼓動が止まる呪いを掛けさせて頂きました、では成果を期待しています」
「殺さないの?」
「スパイが暗殺者の真似をしたのは愚策です。
そして私の役目は隊の全員が生存し目的を完遂すること、貴女を処刑するのは少なくとも私ではない」
(たとえ裏切り者でも、首輪を付けて従わせようという傲慢さ。
それが仇となると思い知らせてやる)
「解りました。
従います、命だけは助けて下さい」
「では私に付いてきなさい。
少しでも怪しい動きをすれば容赦なくいきます」
「奥様が、貴方がスパイだと言ったのは私を欺くためですか?
つまり初めから疑っていたという訳ですね」
「いいえ、奥様はだれがゾンビなのか知らせていませんでした。
ですから、ゾンビか見極めるためのブラフでしょう」
従順なゾンビなら、主の疑いを晴らそうと拒絶するはず。
そんな考えだったのだろう。
(死霊術師が居たのなら、今までの怪奇現象も納得。
勝手に勘違いしてピエロを……)
「その死霊術はどうやって習得できたか知りたい。
伝承では存在するけど、実際に使える存在は確認できなかったのに」
「クロニャ……、黒猫に教わりました。
とっても愛くるしくて可愛いです」
屋敷で飼っている猫で、たまに見かける程度で殆ど関わったことがない。
(ふーん。
事実だとしたら、霊が猫に取り付いているとしか……)
二人は街に入り、巨大倉庫にたどり着く。
「合流せずに、潜入開始します。
正面から入るので付いてきて下さい」
「正面突破は無謀すぎです。
幾らスーツで身体強化していると言っても……」
正面の門に誰もおらず、すんなりと内部へと入っていく。
人が避けてくれているかのように、視界に入る前に容易く内部に侵入できた。
(警備は何をしている。
こんなにがバガバなのは明らかにおかしい)
ガタガタと物が揺れたり、不気味な音が聞こえたりと異変が起きていた。
その対処に人手を取られて、隙が出来た。
それは数分という短い時間だったが、十分だった。
目的の資料が収められている部屋に到達する。
「この石をスライドさせれば、文面が記録される。
私は判別するから、記録は頼みます」
(重要書類の記録を任せるなんて愚か。
重要な部分は飛ばして読めなくしてやる)
取り出された資料を見てセフーは困惑した。
裏取引の記録、それも人身売買に関するものだった。
ターゲットにしてる人物のデータは詳細で、年齢からそれまでの経歴まで事細かに書かれている。
「これを何に使う」
「助けるために決まっているでしょう。
誘拐して実験材料とする、そんなやり方は許せない」
「ゾンビ化計画に利用しようと考えている。
同じ穴のムジナではないですか!」
「魔素の濃度が薄いほどゾンビに適していて、この人材は不適格です。
魔素によって肉体が変化し暴走状態、つまりグールになってしまいます」
「……」
(金の為だけで、このスパイを行っているわけではない。
赤い爪を信じて、悪意あるものたちから守る、そう決意したのに……)
裏で行っていた悪事、それがこの赤い爪の本質に思えた。
「人々を救うために行動している。
貴女を生かしているのも、その理念に従っているからです」
納得するしか無かった。
セフーは覚悟を決める。
その頃、カミューラは宿に居た。
「風太♥
ねえねえ、この衣装はどうかしら?」
長い布で胸元と腰に巻いてリボンにしているだけの服とは言えないような格好。
「どういうつもり?
そんな格好で寒くないか」
「私からの贈り物です。
さあ、紐を引っ張って……♥」
パチッン!
風太が指を鳴らすと、メイド達がやって来てカミューラの衣装を着替えさせた。
もこもこした温かい服装。
「俺からのプレゼントだ」
「フフフ……。
素敵です、愛しています」
カミューラは風太に抱きつく。
時は少し戻り、館で寛ぐ風太とリアハとの会話から事は始まる。
「探し物があって、今度の休みに辺りに出かけようと思う。
何処か良い場所があったら教えて欲しい」
「それなら北の街に行けば良いです。
私は風太が作ったものであれば嬉しいですけど……」
リアハは質素を好み、部屋も特に飾りがない。
そんな彼女が何かを欲しそうにしているのは、星の日が近いからだろう。
恋する者達が贈り物を交換し、愛を深めるという帝国の習慣である。
「それは、準備してある。
茨に囚われた者達を助けたくて……」
そんな会話を側で聞いていた猫耳少年テラスタンは妄想を膨らませていた。
全ての輸送網を監視するには人員が足りない。
王国に近い南側の都市を中心にメイドを派遣し調査を行っていたが成果がほぼ無く行き詰まっていた。
テラスタンが裏で行っている諜報活動に気づきアドバイスをしているのだと。
北側ルートは危険な海路を通り、数ヶ国をまたぎ王国に到達する。
凍てつく寒さに氷塊、船に体当たりする巨大な鯨、海賊と……。
なので候補から外していた。
「クフフ……。
では準備させましよう」
リアハは風太にもたれ掛かり、体の温もりを感じて甘える目つきで手をそっと握る。
この時だけは役目を忘れて素直に自分に戻れる一時の休息であった。
そんな二人だけの時間に水を差すのは良くないとテラスタンは部屋を出た。
そして、即行動に出る。
派遣したメイド達から直ぐに調査報告が届く。
赤い爪商会が所有する運送拠点が怪しいとの事だった。
大規模な倉庫があり、収用した品を梱包し各地へと配送されるのである。
確実な証拠を手に入れるために、潜入する実戦部隊アルファが編成された。
8人で構成され、まだ日が浅くお互いの事もまだわかっていない。
その中に奥様の一人であるカミューラ……。
玉国で法術士になる際、偽装に家名を借りたのが縁で風太と結ばれという経緯がある。
「波乱と冒険を期待していましたの。
ですけど、今の生活も以前と変わらず退屈な日々です」
辺境領主の娘、微妙に優遇された地位。
気苦労もなく守られて育ったがゆえに、刺激がなく物足りなさに悩む。
民は常に外敵、魔獣や魔族、人間同士の戦争に巻き込まれ命の危機に晒されているというのに。
彼女はそんな場所に憧れていたのである。
「命がけの任務です。
奥様に、もしものことがあれば我々の首が飛んでしまいます」
「それはスリリングで面白いではないですか。
その時は共に地獄に参りましょう」
話が通じる相手ではない。
厄介な重荷を背負って任務を遂行するなんて考えるだけで気が重くなる。
赤い爪商会は同業者からも恨まれ嫌がらせが多いと聞く。
其の為、警備に力を入れており侵入は困難である。
アルファの隊長スボルエッタは少し考え追い返すのは止めた。
彼女は魔族に憧れていたがクロニャにその時の記憶を奪われて風太に狂酔するように教育されている。
愛するものを助けたい思いは同じと絆を感じ同行を拒めなかった。
「確か、実力を認めて欲しいと言っていたな。
セフー、奥様の護衛を任せる」
セフーは緊張し体が硬直し、ドッと冷や汗がこぼれる。
何故なら赤い爪商会が送り込んだスパイだからだ。
猫耳族を見下した事によって謹慎処分を受けたばかり、これ以上の失態は許されない。
両方からクビを宣告されれば良い方で処理され地中で眠ることになる……。
どちらの立場も危うい。
奥様と言う、買収も処理も出来ない監視付き。
「了解。
命に変えて守りきり、任務も無事に遂行します」
アルファの面々は、何かしらの問題を抱えている者だけで編成されていた。
誰が裏切るか解らない。
そんな歪な集まりである。
だからこそ、カミューラは興奮していた。
裏切った瞬間に粛清する場面を仮想しニヤニヤが止まらない。
「期待しています。
その鍛え上げられた肉体に恥じないように守ってください」
部隊に支給されたスーツは、体格をくっきりと見せるキツめの黒革である。
法術で身体強化に、耐打性も優れ、柔軟な動きを可能にしていた。
まだ試作段階で、これからテストを兼ねて魔獣狩りを行いながら北の街へと向かう。
「では私の後ろを付いて来て下さい」
「従者は後ろにつくものです。
私に後ろを歩けと、また謹慎したいようですね」
(理不尽、ここまで傲慢だと守る気も失せる)
しかし、何かあれば処罰されるのはセフー自身だ。
どんなに嫌でも手を抜く事は出来ない。
「了解。
ですが危険だと思ったら後ろへ引いて下さい」
支給品が入った箱をメイドが持ってくる。
「お待たせしました。
これを装備して任務に向かって下さい」
猫耳飾りの付いたヘッドギア、フレーム無しのサングラス、特殊ナイフ。
それに小道具の入った革のポーチ……。
カミューラはニコニコしながら装着して居いたが、疑問があった。
「この猫耳はどういう意味でしょうか?
猫耳族への不評被害となるのは彼は望まない筈です」
「無線受信装置です。
ある程度離れていても会話できるネットワークを構築してチームの連帯を高める目的があります」
「言葉は皆に聞こえるというわけね。
でも特定の相手とだけ話したい場合はどすれば良い?」
「この腕輪を渡しておきます。
ですが2つしかありませんので、奥様と隊長に預けます」
リングに数字が書かれていて、回転できる仕組みとなっていた。
回して話す対象を選べるようだ。
「あーあー、聞こえていますか?」
『なんで私に……。
はい、聞こえます』
本来なら聞き取れないような小さい呟きも拾うようだ。
「では出発しましょう。
さあ行きますよー」
全力で駆け抜け、魔獣が住み着く森へと入っていく。
一般市民どころか、武装した帝国兵ですら危なくて近づくことはない。
入って直ぐに洗礼を受ける。
赤く光る数多くの目が闇から現れ、遠吠えと共に一斉に襲いかかってきた。
剣毛狼、剣のような鋭い切れ味の毛に覆われた魔獣だ。
群れで狩りを行い連携の取れた動きで翻弄した獲物の喉元を食いちぎる。
ガウゥゥッ
飛び跳ね噛みつこうと口を開いた剣毛狼の口の中にカミューラは手を突っ込み喉や舌を荒らす。
喉が詰まったときの吐き戻しの衝動に剣毛狼はたまらんと尻尾を丸めて逃げ出す。
「こんな雑魚相手に怯んでいたりしないわよね?
やってしまいなさい」
セフーは戦意を喪失し終わったと生きることを諦めていた。
かつて帝国兵として魔獣の掃討作戦に参加したことがある。
それは過酷な戦いで、共に戦った仲間が次々と倒れ半壊するほどの負け戦だった。
その悪夢が再び……。
「ああっ……、こんな事になるなんて。
なんでここにあの化け物がいるの!」
「叫ばないで耳が痛い。
皮は硬いから、弱い口の中を狙い突き刺せば容易く倒せます」
一撃で骨すら砕き噛み切ってしまうのに、手を突っ込めという。
セフーは手本を見せて貰っても出来はずもなく呆然とした。
たった刃が30cm程度の特殊ナイフ一本しか与えられずにどうして戦えるというのか。
得意な槍であっても心もとないと言うのに。
カミューラの言葉を実行する勇気はなかった。
腕を失えば死んだようなもの。
「出来ません」
「なら脱落、帰りなさい。
故郷で別の道を探すことです」
(逃げ出せば暗殺される。
……結局死ぬのなら逃げ出し臆病者としてより、魔獣の殺されたほうがまし)
「嫌っ!
戦います」
セフーは覚悟を決めて、剣毛狼の顔面を殴った。
バキッ!
骨が砕ける感触と共に剣毛狼がどろり解けて魔石が剥き出しとなる。
最も硬い頭蓋骨を叩き割ったのだ。
「なら初めからやりなさい。
今回は大目に見てあげます」
強化スーツによって人並み外れた力を得ていた。
それにアルファ部隊の面々が気づくと、それまで戸惑って何も出来なかった者達も攻撃に転じた。
20匹近い魔獣の群れだったが、一掃するのにそう時間はかからない。
拳や蹴り、そんな格闘だけで勝利を収めた。
「はぁ、はぁ……。
もう敵はいない……」
「もっと恐ろしい魔獣が住んでいると聞いています。
情報ぐらい頭に入れておきなさい」
(無茶なことを、話を聞いたのは前日の深夜。
情報を持っていなら事前に資料としてまとめてくれれば……)
セフーは感情が顔に出て苛ついているのが隠せていなかった。
「気をつけます」
「なら先行して、様子を見てきなさい。
少しは頭が冷えて、冷静に成れると良いですね」
「くっ……」
思わず手を出しそうになるセフーだったが、ぐっと堪えた。
(ただ貴族というだけで優遇された地位にいる。
それだと言うのに、その化けの皮を剥いでやる……)
ラフーは単独で先行し、周囲を警戒する。
ザザザ……、茂った草をかき分け進む。
岩皮熊が立ち上がり威嚇する姿が見えた。
音に反応して敵意があると見なされたのだろう。
口を大きく開き、今にも襲ってきそうだ。
「丁度、苛ついていた所。
サンドバッグに成ってもらう」
一気に間合いに飛び込み殴りつける。
ドカ、ドカ、ドカ……。
自分よりも一回り大きい相手だが、このスーツで強化されている今なら勝てる。
実際、相手は動かず鋭い拳が何発も魔獣の弱い腹に入り動く気配はない。
だが全く衝撃が届いていなかった。
厚い岩肌の下に脂肪がたっぷりで衝撃を吸収し体外へと波のように受け流していたからだ。
岩皮熊の赤い爪がブンッと振るわれ、ラフーは薙ぎ飛ばされる。
バキッと木に叩きつけられて地面に倒れた。
たった一撃、戦意を喪失するには十分。
「殺される……」
「手を出してはいけない相手に挑むなんて愚か。
必要に応じて仲間を呼びなさい」
カミューラは特殊ナイフを岩皮熊の首筋に当てる。
避ける様子もないのは、その肉体が傷つく事がないという経験則だからだろう。
あまり体力を使いたくないという魔獣の本能が手を出すことをためらわせ観察し狙いすます。
だからこそ、その動き止めた隙を狙って一撃を繰り出せば良い。
手の甲で、まるで杭を打ち付けるように叩きつけた。
岩の肌に一線のヒビが入り、パキッと割れる。
掻っ切るように押し込み切り裂く。
黒紫の血が吹きでて止まらない。
再生能力の高い魔獣の肉体が再生しないのには秘密があった。
特殊ナイフにはめ込まれた玉に魔骸骨がすり潰されて混ぜ込まれている。
命を啜る武器であった。
巨体が倒れ、埃を舞い上げる。
「そんな貴族と私達とは違うっていうの?」
「さあ、もし違うとしたらそれは努力の差でしょう。
目的の為にどうすれば実現するかを考え行動して行くだけのことです」
セフーは悔しさと無気力感が襲い涙がこぼれ落ちる。
(どうあがいても無力……。
貴族に守られることが運命だというの)
「ううぅぅぅっ」
「立ちなさい。
貴方にだけに話しておきたいことがあります」
「はい……、了解」
セフーは目が真っ赤に、涙を拭き取り立ち上がった。
「赤い爪が送り込んだスパイがどうやら紛れているらしい。
私は隊長が怪しいと思っています」
スボルエッタは魔族崇拝の疑いによって幽閉されていた経緯がある。
その時は、まだ工房が明るみに出ておらず、赤い爪が知るはずもない。
また、後から赤い爪が接触する事も出来ないほどに常に複数の監視が常についていた。
つまり全くの的外れなのはセフーには解った。
(武術に長けても、人を見る目は節穴という事。
これは良い利用させて貰う)
「どうして私にそれを話すのでしょうか?
……こんなに惨めにボロボロなのに」
「期待しているから。
恐怖を克服して立ち上がることが出来た、それは素晴らしい才能です」
「はい、頑張ります」
(ひっくり返せる。
地位も何もかも滅茶苦茶にして、どん底に落ちた時、どんな顔をするのか見もの)
戦意を失っていたセフーに闘志が燃え上がる。
カミューラはチャンネルを変えて全員に伝わるように告げる。
「なるべく戦闘を避けて、中継地の小屋まで一気に駆け抜けましょう。
全員、付いて来なさい」
魔獣を一々相手しては時間が幾らあっても足りない。
風太よりも早く、目的地に到達し任務を終えるのが目標だ。
残された時間は少ない。
森の奥深くに小屋が立っている。
そこにチャナタがいた。
彼女は王国旧体制派の騎士団の副団長であったが、風太に敗れあろうことか恋をしてしまう。
結ばれて一緒に暮らし初めたが……、罪悪感によって魔獣の巣窟での生活を送る日々。
体格よりも遥かに大きい巨剣の素振りを行っている。
風を裂く音が響き、真空波によって投げられた丸太がパリンッと割れて落ちた。
メイドとして付いてきたオッセアは丸太を掴み、手を止める。
彼女は風太に命を助けられたが王国から追放され、帝国で風太と再開し結ばれた。
「チャナタ殿、いい加減こんな暮らしを止めてませんか?
誰もこんな事を望んでいません」
「私が遅れなければ、隊長も仲間達も石化せずに助かったかも知れない。
道に迷って、時間を掛けてしまった償いをしなければ許せない……、一人にして欲しい」
「いいえ。
そんな事はない、要塞都市を任されていた時には既に石化しています」
連絡が途絶えたのは、丁度その頃だ。
役目を放ったらかしにして向かえば間に合ったかも知れない。
しっかり統治し治安を維持できたのは、彼女の活躍があってこそ。
もし統治できていなければ、犯罪が横行し田畑も荒らされて居ただろう。
「……これは気持ちの問題です。
隊長は私の心の支え、だから助けるために少しでも稼ぎたい」
魔獣を狩り、魔石や素材を売りさばいたとしても雀の涙程度。
それでも助けになると信じて狩りを続けるしか、儲ける方法を知らなかった。
元王国の騎士でなければ、帝国に士官し活躍出来るだけの能力はある。
今は時期が悪く、王国関係者と解ればいらぬ疑いを掛けられ身動きが取れなくなってしまう。
「にひひ……、でもこれは何でしょうね。
風太の人形を並べて置くのは部屋だけにして下さい」
長椅子に風太の姿をした人形が並べて置いてある。
見守られていると感じるだけで気合が入り、動きもキビキビとしなやかに。
決して人形遊びをしているわけではない。
「私の家をどう飾り付けようと自由。
とやかく言わないで欲しい」
「帰っておいで。
いえ私が幸せになることは許されない……」
今朝の寸劇の台詞だ。
個室になっているが、壁越しでも筒抜けでオッセア掃除の楽しみに聞いていた。
チャナタは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「これぐらいは、許しくれるはずです。
だって淋しいし……」
「だったら戻ればいいのに。
面倒な女になって困らせないで下さいね」
「うぅぅぅっ面目ない。
今はそっとしていて欲しい」
「所で、ここに来客が来るようです」
チャナタの顔が真っ青になる。
部屋を見られたくない。
ハートマークで彩られた家具だけなら良かった。
風太グッツが大量に置いてあり、特にお気に入りなのが等身大の抱き人形。
隠す場所もなく、ベットの上に置いたままになっている。
もし知られれば真面目で堅物という作り上げた虚像が崩れてしまう。
「待て、そんな話は聞いていない。
第一ここは私が暮らす為に用意した、部外者に来て貰っては困る」
「私達、家族の一人が来るらしいです。
メイドを引き連れている誰かさんですけど……にひひ……」
「まさか、風太! いやそれならサプライズで黙っている。
そんな意地悪さが貴女にある、と言うことはリアハ殿」
「あらら、残念。
外れです」
「なら部屋に入ることは許さない。
これは絶対に守って貰う」
「はーい。
食事をしたいだけで直ぐに立つらしいので、外で食べていただこうかと思っていました」
チャナタは直ぐに長椅子の人形を小屋の中に隠す。
そしてテーブルを作り始める。
要塞都市で経験……城の崩壊によって会議室もなく、協力してくれる民も居ない。
自前で用意するしか無い、そんな時魔骸骨が作ってくれた。
元は職人だったのだろう。
無言での働きにチャナタも自ら働くことを示す。
それが民を動かしたのである。
そんな思い出が過ぎり、微笑むチャナタ。
「何人来る予定?」
「8人です。
では私は食事の準備を始めます」
軍用の大人数分が用意できる大きな鍋に火を掛ける。
オッセアは鼻歌交じりに食材を切り始めた。
「その大鍋、いつの間に。
あっ、伝えるを遅らせ……」
「にひひ……。
ええ、昨日には連絡が入っていました」
慌てる様子を楽しもうという魂胆に呆れつつチャナタは笑う。
孤独より、誰かと一緒に……、愛する者の側に……。
「決意が揺らぎそうになってしまう。
でも決めたことは成し遂げたい」
ぐつぐつとスープの美味しそうな匂いが漂う頃。
アルファの面々が到着した。
チャナタが出迎え歓迎の意を示す。
「温かいスープが出来ている。
さあ食べると良い」
丸で新米の部下に接するような態度だ。
アルファの面々は疲れ果て、息を切らしヘトヘトで今にも倒れそう。
そんな中でも、涼しい顔をしているカミューラは物足りなさを感じていた。
「うーん、まだ食事には早いです。
その肉体、実に素晴らしくて魅力的、腕試しなんてどうかしら?」
「どんな勝負をするつもりかによる。
これから狩りに向かう予定があって、怪我をしたくない」
「軽く手合わせ」
チャナタは予備の巨剣を地面に突き刺す。
「これで良いなら。
遊びに付き合っても良い」
二人が巨剣を手にした瞬間に動き、剣と剣がぶつかり合う。
キン! 金属音が反響し脳を刺激する嫌な音として響く。
それが連続し、見ている者達は耳を抑える。
響く音だけで、脳が破壊されるようなギンギンして感覚が狂いそう。
キン! キン! ……。
「手加減してくれたのですね。
この剣は私には大きいようです」
それもその筈、地魔将の残党である巨人族が扱う大雑把な剣だ。
戦利品なのだが、余りの大きさに売れず渋々訓練用として使っていた。
華奢なカミューラが振り回せるだけでも異様な光景だ。
「貴女も、手の内を隠していたでしょう。
さて、少し出かけてくるからのんびりして行って」
チャナタが森へと消えていく。
セフーは置いていった巨剣を持ち上げようとしたがビクとも動かない。
(はああなんて化け物……、こんな剣をどうやって持ち上げたというの?
実は奥様は人外……)
カミューラに肩を軽く叩かれセフーはビクッとなる。
「制限解除で、一時的に大幅強化できます。
慣れない内は一分以内しか使わないほうが良い、後々に筋肉痛で……フフフ……」
(制限解除……! 軽い、これがこのスーツの隠し機能。
小さい工房をどうして警戒していたのか解らなかったけど。
こんな高性能の兵器を開発していたから……)
赤い爪にこのスーツを持ち帰れば、それだけでも十分な成果となる。
極秘裏に開発していた物を盗まれたとなれば信用はガタ落ち。
帝国議会も黙っておらず、補助を打ち切るに違いない。
(でも、それでは気が収まらない。
あの片猫耳にも同時に復讐するには、もっと大きな失態を……)
アルファの全滅。
なら油断している今しか無かった。
魔獣を食材として利用しないのは、毒があるからだ。
この瓶に魔獣の体液を採取しておいた。
これを鍋に垂らすだけ。
ポチャッ……!
(巨剣に夢中で誰も気づいていない。
こんなにあっけなく上手くいくなんて……)
茶色かったスープが紫色に変化して、ゲロマズな感じに。
(なっ!)
「あら、お料理が失敗してしまいました。
申し訳ないですが、スープの代わりに干し肉で我慢して下さい」
オッセアは頭を下げ、干し肉を持ってくる。
一人ずつに干し肉を渡し、セフーには微笑みを送る。
「何か?」
「これを入れたのは貴方ですよね?
入れるなら自分の器だけにして下さればこんな事にならずに済んだのですよ」
人形が小屋の窓から覗いている事に気づく。
(まさか、監視法術具……。
一部始終を記録されていたとしたら、破滅しかない)
どんよりと生臭いスープが入った猫顔モチーフの器を渡される。
「美味しくなると聞いて。
こんな事になるとは知らなかったです」
「どうぞ、味見して試して下さい。
折角作った30人分のスープを全部捨てるのは勿体ない、にひひ……」
拒絶して逃げるのも手がだが、カミューラはあれだけの激闘をしても余裕でブンブン巨剣を振り回している。
(逃げ切れる未来が見えない。
追いつかれて、あの巨剣で真っ二つに……)
息を止め、スープを口に入れる。
「あちちちち……、ひぃーやふけたです」
火傷を利用して吐き出す。
少々口に入ってしまったが、それぐらいでは致死量に達しない。
「慌てることも無いのに、優しい癒やしの光。
この術は風太殿の術書に記してありました、彼の暖かさがとても現れて居て、にひひ……」
オッセアの手が柔らかい緑の光を放つ。
その手でセフーの頬から喉にかけて優しく撫でた。
学園の術書だけでは足りず、工房で術書を独自に作らせて保管している。
実験が必要な高度な術式を試すには、この離れた小屋の方が都合が良く保管されていた。
(法術による癒やしは体力の消耗が激しくて有用性が無いと結論付けられているのに。
いや制裁によって入手ができないとしたら……)
帝国内では回復薬等は、赤い爪が独占している。
特定の相手には高額でしか販売しない嫌がらせが出来てしまう。
(回復薬すら用意できないほどに、経営が苦しいとしたら。
このスーツ開発に賭けていると考えて間違いない)
「痛みが引きました。
こんな素晴らしい法術なら広まるべきです」
「慌てずゆっくりと時間はあります。
さあ全部飲んで下さいね」
(なっ。
火傷して痛い思いをしただけ、この腐った匂いのするスープを……無理、無理)
「ごめんなさい。
許して下さい」
パッチン!
オッセアが指を鳴らすとスープの色が元に戻り美味しそうな匂いが漂う。
「魔素を抜き忘れると、こんな事になるって理解しておくことです。
魔獣の中には美味しい物もありますが、それはちゃんと下処理しています」
セフーの喉元が紫に色に光っている。
毒見の法術をこっそりとオッセアは掛けたのである。
「……はい、気をつけます」
甘みがあって濃厚なスープ、根菜が柔くて美味しい。
(なんて愚かな事をしてしまった。
こんにも美味しい物を台無しにしようとしていたなんて……)
セフーは涙が溢れる。
「皆さんも、どうぞ。
毒見は大丈夫です」
皆が食事をしている間にオッセアは木箱を運んでくる。
(棺桶……、まさか公開処刑するつもり。
ならば一人でも道連れにする)
木箱が開かれる。
防寒コート……、山ルートなら必須。
山脈によって比較的温暖な気候となっているが、山脈はもろに冷風に晒され大地が凍っている。
セフーはゴクリと唾を飲み、緊張を解く。
(紛らわしい長い木箱を。
危うく本当に棺桶になる所……)
「山越えするなら、靴も専用の硬い物にして他にも道具が欲しい」
「途中に古代遺跡、通称ドワーフの穴があります。
そこを通れば反対側へ到達できます」
「費用はかかりますがゲートを通れば、
山を通らずに行けると……」
「確かに、帝国が管理する転送ゲートを利用すれば行けますが記録に残ってしまいます。
秘密裏にとの計画をお忘れですか?」
「いえ、出過ぎました。
申し訳ないです」
「雪山の話、偶然であった旅人達が一緒に雪山を越えようとして吹雪に襲われます。
途中、穴を見つけて避難し人数を確かめたら一人多い……」
「突然、何を言い出すかと思ったら怖い話。
止めて欲しい」
「にひひひ……。
お気に召しませんでしたか、でも気をつけて下さいね」
誰が増えたのか気になりながらも、山を降りると人数が元に戻っていた。
旅人達は彼が導いて守ってくれていたのだと気づき。
あれは山の神の使いだと感謝したのです。
オッセアは折角、いい話を覚えてきたのに披露できずに少しガッカリしつつも微笑みを絶やさない。
(異様に怖い……。
何を考えているのか解らない)
ザザザ……。
草をかき分けて巨大な影が姿を表す。
6本腕の骸骨……禍々しい邪悪な気を纏う。
悪霊の呻きが、殺害された者達の怨念だろうか。
セフーの足がガクガクと震える。
(怖い話に引き寄せられて化け物が……。
カミューラは!)
皆は怯え絶望している。
そんな中カミューラは巨剣を構えていた。
ただ顔は蒼白になり動く様子はない。
反撃を狙っているのだろう、先手必勝と先制しないのは6本の腕によって攻撃を防がれる事を警戒しての事。
(勝算があるのは彼女だけ……。
運よく相打ちになってくれれば、いや全員で彼女を助けなければ全滅する)
そんな中、オッセアだけが呑気に鼻歌を。
ルルル♪ ルル~♪
「お疲れ様。
彼女達は客人です」
その骸骨は頷くと、巨大な袋を置き去っていく。
「あれは一体……」
「さあ解りません。
チャナタ殿は戦友と、色々あってとしか教えてくれませんでした」
(工房の新兵器なのか、あるいは……。
いや報告しても信じて貰えるか解らない、この事は見なかったことにして忘れよう)
足元に感触が……。
目線を下ろすと人形が足首に捕まっていた。
窓から覗いていた、あの人形。
(怖い……、引き剥が……。
いえ。落ち着くのよ、これも何かしらの試練……、このまま付けて知らないフリを)
暫く休息を取った後、出発することになる。
誰が言ったのかドワーフの穴は人工的に創られた巨大な遺跡だった。
吸い込まれるような黒さ。
カミューラは壁面が鏡のように輝き自分の姿がうっすら見える事に神秘性を。
それが巨大な遺跡全体に施されている。
人や鳥、草花を象った彫刻も見事で未だに輝きを放つ。
「ドワーフと言う生き物は発見されていない。
一体誰が何のために作ったのか学者達は幾つもの仮説を立てたけど……」
どれも空想の域を出なかった。
そんな謎の遺跡、女子供すらもヒゲの生えたずんぐりむっくりな短足の亜人がいたとしたら、
こんなに高い屋根にしないだろう。
それほどに高く、見上げれば闇。
対象的にセフーは不気味さを感じていた。
「誰か管理しているのでしょうか?
こんなに綺麗に掃除されているのは手入れされているとしか」
「ここを通って抜ければ目的の街まで後少し。
夢のない話はやめなさい」
「……はい。
森に囲まれて魔獣が徘徊するこんな場所にわざわざ掃除はしたくないです。
精霊に守られているとしか……」
カミューラはセフーの足首に付いている人形が気になっていたが、今まで聞かずに居た。
明らかに風太を模した人形なのだが、汚れてドロだらけになっている。
「人形遊びは程々にして。
ポーチに入れて、楽しむのは余暇の間だけです」
(うわぁ、泥だらけで汚い。
こんなものをポーチに入れたくない……)
だからといって捨てることも出来ない。
「はい……、水の精霊よ。
私の祈りに答え姿を現したまえ。 悪戯好きの水洗浄」
プルン
スライム状の水が地面から出てきて人形を飲み込む。
ペッと人形を吐き出すと綺麗に汚れが取れていた。
片方の目がポロリと取れかかっている。
縫製が甘いのだろう。
(手洗い出来ればこんな事に、もしかして不味いことを。
……気づかれないように、さっさとしまおう)
ポーチに入れようとした時、カミューラに腕を掴まれる。
「待ちなさい。
取れかかっています」
針と糸でササッと直しカミューラは微笑む。
手作りの人形なのは明らかで、下手な部分があるが特徴をよく捉えている。
愛がなければ作れない代物だろう。
「助かります」
「大切にしなさい。
きっと良いお守りとなってくれます」
(呪いの人形なのに……。
やはり見る目は無い、こんな気味の悪いものはさっさと捨てたいぐらい)
コーコーと、風が吹く度に音が鳴り響く。
(こういう場所は苦手、お化けが出そうで……)
床は滑らないようにザラザラだが、コツコツと音の反響が酷い。
「サングラスを暗視に切り替えなさい。
確認ができたら歩き始めて」
輪郭が分かる程度で色の識別は濃淡で判断する。
余り精度は良くなく、近距離しか見えない。
カミューラを先頭に奥へと進んでいく。
(上手く誰かを引き離して始末すれば。
後でスーツを回収できる……けど、人形の監視をどうするか)
触った感じ何か仕掛けがあるように感じない。
ただの人形。
背後に居たスボルエッタはイラッとして、人形を取り上げた。
「セフー、まだ遊んでいるようですね。
これは没収します」
「あっ……、はい」
(これは運が向いてきた。
捨てることも出来ずに困っていたのに、何も知らされていない様子で滑稽)
人形を手にしてニタニタしている事に気づいていれば過ちに気付けた。
しかし、策略に夢中になっていたセフーは見落とす。
内部は広く、真四角な建築物が並ぶ。
家だとしても、扉はなく一部屋の空間しか無い。
何のために存在しているのか。
家具が残っていても良さそうだが、置かれた形跡すら発見できなかった。
調査は直ぐに辞め、先に進み始める。
もし何者かが隠れていて不意打ちしてくるかもと緊張しつつも急ぐ。
視野を確保するために若干、隊列が広がり気味になっていた。
これは好機とセフーは動く。
(確実にやるには、一番弱い相手……。
なら彼女……)
少し遅れてついて来ていたメンバー最年少の女。
小柄で戦いでも余り目立たつ逃げてばかり。
そっと近づき、背後から首を絞めナイフで首を突き刺す。
何も出来ずに息絶え、ぐったりする。
(まずは一人……)
気づかれた様子はなく皆は周囲の警戒を続けている。
そっと小部屋に運び込み、何食わぬ顔で隊列に戻った。
「魔獣の気配はない。
少しペースを上げて進みます、遅れずに付いてきなさい」
そう言うとカミューラは一気に加速する。
(はっ、早い、これは全力でギリギリ追いつける。
ここ一旦付いて行く事に専念するしか……)
複雑に曲がりくねった道が続くが、一本道で迷うことはなかった。
明かりが見え出口がもうすぐ。
(これなら、一人二人を狙って居れば……。
迷路になっていると思っていたから、くっ)
カミューラは立ち止まり振り返る。
「脱落がないか確認します。
識別番号を呼ぶから返事しなさい」
数字が読み上げられ返事をする声が響く。
配属が決まった時に与えられた3桁の番号。
誰にも知られないようにと念を押されていて、確認したら燃やす事になっている。
「……219!」
「はい!」
(7人全員返事があった。
一人殺したはずなのに……、一体何者を?)
「全員、揃っているようね。
では行きましょう」
一人増えているあの話を思い出しセフーは震えた。
(誰とも解らない謎の人物が紛れていた……)
ギロリと赤い目の視線が彼女に向けられているとは知る由もない。
白銀の世界が広がる。
一歩踏み出せば、ズボーとめり込む。
「これは想定外、セフーなら知っているでしょう。
こういう時はどのようにして進むのです」
「雪上歩行の法術で歩くことが出来ます。
ですが未習得です」
ぱらぱらと雪が舞い降りてくる。
「では私に任せて下さい」
スボルエッタはポーチから瓶を取り出すと雪の上に中の青い液をまく。
ニョキニョキと雪だるまが生えてくる。
キラー雪だるま。
悪霊が取り付き、人の温もりを感じようと体内に取り込み凍死させる。
恐るべきアンデット。
見た目は可愛い雪だるま、ピョンピヨン跳ね回り動く。
それが雪を吸収し少しずつ大きくなる。
「ここからはペアになって別行動で行きましょう。
合流地点は、大倉庫前にあるヤドリギの宿です」
カミューラはセフーを手招きし一緒に行動するように指示する。
(二人……、これは最強の好機。
彼女を始末すれば、侵入計画は頓挫する)
殺した筈の誰かが気になるが、考えないことにした。
ズルズルと留まり続けてもスパイだとバレて立場が終わる。
そんな予感が過ぎり焦っていた。
一度の失敗が、足を引っ張り連鎖的に転落していく。
キラー雪だるまによって固められた道は歩きやすく走っても問題なかった。
どんどん速度が加速していく。
それに比例するように雪の激しさが増し、視界が悪くなり吹き付ける風が肌を切り裂くようだ。
周囲に仲間の様子は見えない。
(背後から襲えば……)
セフーがナイフを手に突進する。
「止めておきなさい。
貴女は初めから詰んでいたのです」
声と共に吹雪の中、誰かが近づいてくる。
「なっ……」
セフーの体が硬直したように動かなくなっていた。
悪霊によって体の動きを拘束されているのだが、それがセフーには解らない。
拘束法術なら無詠唱でも切り裂き突破できる。
(どうして、動けない……。
こんな事はあり得ない)
姿を表したのはスボルエッタ。
「この部隊の秘密を明かしましょう。
ゾンビ化兵の育成、管理、兵士として実戦に投入できるかの実験を行っていたのです」
「どうして……」
「帝国の兵士不足は深刻で、産業の人員まで投入しなければならず。
生産能力が年々低下しています、それは国力の低下となりいずれ魔族に敗北する」
「非人道的な行いを……」
「人殺しの貴女の台詞とは思えない。
ゾンビでなければ死んでいたでしょうね」
「くっ……」
ゾンビ計画を打ち開けながらセフーの体を冷たく冷えた手で触れていく。
「任務は最後まで遂行してもらいましょう。
裏切れば鼓動が止まる呪いを掛けさせて頂きました、では成果を期待しています」
「殺さないの?」
「スパイが暗殺者の真似をしたのは愚策です。
そして私の役目は隊の全員が生存し目的を完遂すること、貴女を処刑するのは少なくとも私ではない」
(たとえ裏切り者でも、首輪を付けて従わせようという傲慢さ。
それが仇となると思い知らせてやる)
「解りました。
従います、命だけは助けて下さい」
「では私に付いてきなさい。
少しでも怪しい動きをすれば容赦なくいきます」
「奥様が、貴方がスパイだと言ったのは私を欺くためですか?
つまり初めから疑っていたという訳ですね」
「いいえ、奥様はだれがゾンビなのか知らせていませんでした。
ですから、ゾンビか見極めるためのブラフでしょう」
従順なゾンビなら、主の疑いを晴らそうと拒絶するはず。
そんな考えだったのだろう。
(死霊術師が居たのなら、今までの怪奇現象も納得。
勝手に勘違いしてピエロを……)
「その死霊術はどうやって習得できたか知りたい。
伝承では存在するけど、実際に使える存在は確認できなかったのに」
「クロニャ……、黒猫に教わりました。
とっても愛くるしくて可愛いです」
屋敷で飼っている猫で、たまに見かける程度で殆ど関わったことがない。
(ふーん。
事実だとしたら、霊が猫に取り付いているとしか……)
二人は街に入り、巨大倉庫にたどり着く。
「合流せずに、潜入開始します。
正面から入るので付いてきて下さい」
「正面突破は無謀すぎです。
幾らスーツで身体強化していると言っても……」
正面の門に誰もおらず、すんなりと内部へと入っていく。
人が避けてくれているかのように、視界に入る前に容易く内部に侵入できた。
(警備は何をしている。
こんなにがバガバなのは明らかにおかしい)
ガタガタと物が揺れたり、不気味な音が聞こえたりと異変が起きていた。
その対処に人手を取られて、隙が出来た。
それは数分という短い時間だったが、十分だった。
目的の資料が収められている部屋に到達する。
「この石をスライドさせれば、文面が記録される。
私は判別するから、記録は頼みます」
(重要書類の記録を任せるなんて愚か。
重要な部分は飛ばして読めなくしてやる)
取り出された資料を見てセフーは困惑した。
裏取引の記録、それも人身売買に関するものだった。
ターゲットにしてる人物のデータは詳細で、年齢からそれまでの経歴まで事細かに書かれている。
「これを何に使う」
「助けるために決まっているでしょう。
誘拐して実験材料とする、そんなやり方は許せない」
「ゾンビ化計画に利用しようと考えている。
同じ穴のムジナではないですか!」
「魔素の濃度が薄いほどゾンビに適していて、この人材は不適格です。
魔素によって肉体が変化し暴走状態、つまりグールになってしまいます」
「……」
(金の為だけで、このスパイを行っているわけではない。
赤い爪を信じて、悪意あるものたちから守る、そう決意したのに……)
裏で行っていた悪事、それがこの赤い爪の本質に思えた。
「人々を救うために行動している。
貴女を生かしているのも、その理念に従っているからです」
納得するしか無かった。
セフーは覚悟を決める。
その頃、カミューラは宿に居た。
「風太♥
ねえねえ、この衣装はどうかしら?」
長い布で胸元と腰に巻いてリボンにしているだけの服とは言えないような格好。
「どういうつもり?
そんな格好で寒くないか」
「私からの贈り物です。
さあ、紐を引っ張って……♥」
パチッン!
風太が指を鳴らすと、メイド達がやって来てカミューラの衣装を着替えさせた。
もこもこした温かい服装。
「俺からのプレゼントだ」
「フフフ……。
素敵です、愛しています」
カミューラは風太に抱きつく。
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