51 / 54
6章 帝国編
51話 隠匿
しおりを挟む
「あわわ……、あのその、これは違うんです」
専属講師のフルムは顔を真赤に慌てふためき、手を慌ただしく降って動揺していた。
風太♥チュッチュッと術書相手に口づけをしていたのを当の風太に見られてしまったのである。
もう筈隠して顔から火が出そうなほど熱くなっていた。
「ごめん、ノックしたんだけど聞こえてなかったみたい。
えっと……」
フリムは早口で一気に捲し立てるように喋る。
「ああぁっ、わ、悪いのは私ですから。
どうしようましょう、ああっ終わったもう変な女って思われてドン引きあああっわわ……」
「取り敢えず落ち着こう。
君はとっても素敵だから」
「はい?」
フルムはキョトンとして、言葉が理解できていなかった。
脳内が真っ白で理解力が無くなっている。
ほんの10分早く来てしまった事が原因でこんな事になるなんて。
風太は紙袋を開き、べーリパイを取り出す。
「北の街に行ってきたから、お土産を買ってきた。
とっても甘くて美味しいから」
フルムはパクっと一口。
熱せられてベリーの酸味が弱くなり甘さが濃縮されている。
生地のサク、サク、と食感と相まって、ゴツゴツの砂糖の結晶が……。
「美味しい!
……口が幸せ」
そっと、お茶を注ぎ渡す。
フルムは少し飲み落ち着き、冷静さを取り戻し……、顔色が真っ青になる。
「俺の術書が気に入ったなら君に預けておくから、安心してくれ」
チャイムが鳴り響く。
何時もなら、このあとに来る。
お菓子を食べて貰いたくて早く来たのが失態だった。
「はわっ、違います。
好きなのは……、あわわっ……もう冗談は止めて下さい、恥ずかしい」
「君は反応が面白いから。
ごめん」
「すーはー。
では、気を取り直して……、ああ術式の常識が変わる大発明です」
「ん?
どれも習った術式を記録しただけなのに」
「ええ、内容は低学年が習う初級術なのは解っています。
でずか管理方法がこれまで誰もなし得なかった事です」
「具体的に……」
取り敢えず詰められるだけ入れただけで、特に変わったことをしたつもりはない。
他の人が30記録する所を150近く記録しているけど。
だからといって常識が変わるとは思えない。
「複数の精霊による並列化で効率が段違い。
今までとは段違いです」
精霊の伝達は波紋状に広がり、伝わった順に実行していく。
魔法陣が円形なのはそういう理由で、精霊の配置と指示の組み合わせで形成されている。
指示が増えれば魔法陣も巨大化し、伝達順を意識しなければ順番飛ばしが起きて術が失敗する。
ワイワイ騒ぐ中で伝言ゲームをするようなもの。
規模が大きくなればそれだけ騒がしくなり、伝達に混乱が生じる。
それが従来の法術の基礎である。
「沢山術式を記録すると、精霊が探すのに手間取って発動に遅延が起きたんだ。
それで早く発動できるように色々と試していたら偶然出来た」
「並列化を提唱した賢者も居ましたが、それをどうすれば精霊に伝えられるのか。
ここが課題となって実現できなかったのです」
竜人が示した線で結ぶ方法が知られていなかった。
波紋状に広がっては、余計な指示が精霊に届いてしまう。
それを糸電話で繋ぐような感覚で、伝達する精霊を選ぶのである。
精霊の大きさ、能力、全てを揃えれば理論上は波紋状でも並列処理ができると考えられていた。
しかし、その条件では融合が起きて一つの精霊となって変質してしまう。
それが長年の課題となりバラバラで釣り合う精霊の組み合わせを見つけるのが並列化の道とされた。
そんな難しい話を風太は理解できるはずもなく。
フルムが長々と早口で歴史的背景を説明する。
「……ということで、幾多の賢者が到達できなかった事なんです。
これを発表するだけでも、学園がひっくり返るかも知れない発見です。
ああ、なんて素晴らしくてこの感動……」
ボーと見つめる風太に気づき、フルムは顔を赤く染めた。
本人を眼の前に素晴らしさを解くというのは、神に説法を解くようなものだ。
「君ならもっと効率良く出来そう。
何処を直せばいいか知りたい」
「ええっ、えーとですね。
そう言われると、こうして……、いや、違う、もっと……」
フリムは考え始めると回りが見えなくなり、完全に一人の世界に入ってしまっていた。
こうなると話しかけても聞こえない。
脳が全力を出すために、聞く事を止め視界も狭まる。
風太はその間、用意された文献を読む。
呪術に関する内容なのだが真偽は不明だ。
研究を盗まれないように偽書を紛れ込ませている為だ。
研究者が途中で息絶えた事により失われた情報も多く不完全な物となる。
そんな識別を行い、修復する作業も学びであった。
「時代ごとに、書き方や文字とかの流行りがあって違うように見えるけど、
結局同じ内容だったりとややこしいな」
学園から持ち立ち禁止の文献ばかり。
持ち帰って調べることは出来ず、この教室の本棚に置くのが妥協点である。
ここにあるのは複製で原本は保管庫にあるのに持ち帰れないのは、他国に流出することを恐れての事だろう。
一つ一つ解読して情報の整理するのは大変で時間の掛かる作業だ。
こんな事をしていたら幾ら時間があっても足りない。
楽できないのか?
解読は精霊が行って文字に出力するのだから、それを皆でやったら……。
同じ精霊を並列で動かして、一致する物を半部してと……。
有用性を精査して評価を付けて、順番に並び替えて。
一つ一つは簡単な命令で精霊を動かす。
組み立てが終われば試しに発動する。
フリムはハッと成って風太の方を見た。
「あはっ、夢中になって……、あわわ……色々と改変して原型が崩れてしまいました。
あの、確認して頂けないでしょうか?」
「ありがとう」
術書の機能が格段に向上して、空きが倍に増えていた。
格納方法を変更したようで、冗長な部分が無くなりスリムになって処理自体が削減されている。
ゴリ押しだった所が、初めて見る術式に置き換わり加速する要因になっていた。
「私の知識では、これで精一杯です。
まだ改善できる余地があると思いますが如何でしょうか……あわわっ、差し出がましいことを……」
「凄く良い、検索も付けてくれたんだ。
それによく使うものを優先するように改良まで、そこまで気が回らなくて」
「あっ、それはほんの性能を生かすには、術が多すぎるので優先度を付けたんです。
戦闘だと急ぐし、別に急がないものはじっくりと発動しても良いので、
そういう工夫が生きるほどの術書が無くて……」
必要な分だけ記録して置けば良くて、無駄に数多くの術式を記録する必要性がない。
本来なら必要のない機能だ。
「でも知っているのは凄い。
こんなに素晴らしいものに改善しくれて良かった」
「あっ、そうそうまだ話は終わってないです。
命令のカプセル化、大規模開発には必要だと提唱されていたのに誰も成し遂げられなかったのに。
精霊は意義同音を解釈できず、同じものとして扱う為に命名の競合によって混乱が起きて暴走する……」
うわっ、早口で意味不明なことを言っている。
そんな事を言われても、何のことかわからない。
「えっと、ゆっくり落ち着いて」
「あわわっ……ごめん。
同じ名前を付けているのに、別の法術として扱っているでしょう?」
「小さな火と荒れ狂い増殖せし暗黒の火炎みたいな事?
同じファイアボルトだけど違う効果みたいな」
「うん、うん、そう。
精霊が聞いたら同じだから、どっちて困る筈なのに……、どうして」
風太の場合は、精霊は感情を読み取り術を使ってほしいか判断し心を読むことで解釈をしていた。
言葉は気持ちを整理するための自己暗示と解釈され、精霊は呪文を無視している。
名前の重複は問題と成らなかった。
しかし術書に記すとどっちも同じ名前になってしまう。
当然、術書を使ったら直ぐにその問題に直面した。
「実は翻訳に手を加えて、術式事に特別な割当の名前を前につけることで解決した。
1番の、2番の……って感じで」
術式が発動するためには、精霊に命令が必要だ。
しかし、人の言葉を全ての精霊が理解しているのではない。
翻訳精霊を介して、他の精霊に伝えているのである。
どう翻訳してい良いのか規則をつけるだけで良かったのだ。
「そんな簡単な方法で……、盲点です。
部品化、それに大規模開発を複数人で行える。
ああっなんて、凄い発見なんでしょうか」
「そうなのか。
誰でも思いつきそうな気がするけど」
「全ての方法を試すことは出来ないので、仮説を立てて実証しようとします。
なので仮説が間違っていると、盲点となりがちだと賢人も言っています」
「ふーん。
青い鳥みたいに実は近くに答えがあったみたいな事か」
「ああぁなんて幸せなんでしょう。
賢人達にも認めてもらえる、風太、素敵です、大好き!」
フリムは思わず風太に抱きつき、軽く頬に口づけする。
「どさくさに紛れて……」
「あわわっ……、あっ……違うんです。
いや、違わないんですけど……あの、その……」
フリムは賢人に選ばれることを夢見て学園に入った。
その賢人に認めてもらえるかも知れないと喜びの余りについつい本音を漏らし顔を赤らめ俯く。
「そう言えば、シェヌサが一緒に学びたいって言っていたけど。
どうなったのかな?」
無口な彼女が一緒に学びたいと言ってきたのは驚いたが、一緒に勝利を掴んだ仲。
それを拒む理由もなかった。
「えっあっ……えーと。彼女の申請は承認されています。
あくまで風太の専属なので、おまけ程度の扱いになるんですけど受け入れてくれたようです」
補佐役という扱いで、連携と言った一人では出来ない事を学ぶ為に許されている。
「ありがとう」
フリムは資料を記録している術書に気づき手に取り確認する。
恥ずかしいのを隠すために思いっきり持ち上げて、読んでいる風に書を開いていた。
術書は基本的に白紙で何も記載がない。
精霊の寿命が尽きる時、命令を書き残して引き継ぐためにある。
「はうぁ……、これは……まさか!
ふ、ふうーたー、なんてことをしてくれたんですか!」
「えっ何?
まだ試しただけで、これから調整しようと……」
「違います。
また大発見して、レポートを山積みになってしまいます、こんなに知らないことが多いなんて。
……ああ幸せ」
「ただ資料をまとめただけで、特に珍しい事はしてないのに。
うーん、何が大発見なんだ?」
「んん?
隠し文を見つけて纏めてくれたのかと、この内容は明らかに呪術とは違います」
別の文献に擬態し鍵となる術によって復元させる隠匿方法によって研究を隠すことがある。
高度に隠匿されたものは発見することが難しく著者しか解除できない。
その著者が死亡し存在を知られること無く眠り続ける物も多い。
そんな隠匿も精霊の目には明確に見えていた。
整列させる時に今まで一つ物としていたのを別物と認識し区別して扱ったのである。
「どの書物か調べるから返して。
文献を探知して光るようにすれば……、不思議な精霊の探し物」
半透明な蝶の姿をした精霊が大量にひらひらと飛び回る。
一瞬でそれは消え去り、文献がキラキラが輝き光る。
探知が終わったのだろう。
違うものは退ければ良いだけで、それだけを纏めてフリムに渡す。
するとフリムはにっこり笑い、読むように指示を出した。
呪術について書かれている。
どういう事だ?
違う内容を探知した筈なのに、内容が間違っていない。
どの部分が間違ったんだ?
風太は術式に問題が有ったのかと考え始める。
「術式は合っているはずだけど……」
「あわわわっ……、えっあっ……合ってます。
裏文が書かれていて、表文が見えている間は見えないんです」
風太は見たいと思ってパチッンと指を鳴らす。
すると隠れていた文面が現れた。
「本当だ。
でもこれは……」
強力な攻撃の術の構想が殆どだったが、一つ死霊術に関する内容があった。
それはかなりの間違いがあり不完全なものだ。
霊に関することが一切書かれておらず、新鮮な心臓が重要とされていた。
生者では死霊術の研究に行き詰まり失敗の記録だけが積み上がる。
「これは処分したほうが良さそう。
表の内容も偽りで信頼に足るものではないです」
フリムは廃棄の印を押す。
「でもそれは複製だろう?
廃棄しても原本が残って……」
「管理者達に渡すと審査が入り廃棄されます。
だから安心して下さい」
安心すると改めて隠されていた文書が気になった。
古代の超テクノロジーみたいなものはないのだろうか?
ピラピラ……と見ていく。
ん?
「これは精霊獣を利用した遠隔攻撃について書かれているけど。
召喚とは違うのか?」
「旧時代に使われていた戦術です。
精霊を実体化させて移動させるので、攻撃が読まれやすく防がれたために廃れていきました。
あわわわっ……なんですか、じっと見ないで下さい、恥ずかしい……です」
「いや、相変わらず説明している時は割と落ち着いて話すと思って。
ずっと同じ感じで……」
「むっ、無理……」
親しくなるとより恥ずかしい気がして余計に動揺してしまう。
特に相手が好きな相手だとフリムは顔を赤くしてそう思った。
時が流れるのは早くチャイムが鳴り、授業の時間が終わる。
予定が詰まっていて、直ぐに移動しなければ遅刻してしまう。
「じゃあ行きます。
後でちゃんとするから、置いといて」
「ああっ、……待って欲しかったのに……んー」
転移門を通ると、翼人エルニアが待っていた。
彼女は施設の管理を任されていて教師ではない。
「ようこそ、風太」
「どう言うつもりだ。
これから実技試験を受ける事になっているのに」
「学園は迷宮を改造し利用しているって教えたでしょ?
初めての受験者は説明を受けることになっているの」
「はい、これも試験なのか。
私用で転送されたのかと思った」
実際、何度か彼女によって転送されたことがある。
その理由がただ会いたいだけだったりと身勝手だった。
「あはっ。
試験区画は魔獣が自然発生するとても危険な場所です」
エルニアは風太に近づくと抱擁しニヤニヤし始める。
髪を梳くように撫でながら匂いを嗅ぐ。
「ちょっと、なんだ」
「加護を授けるための儀式です。
大人しーく、じっとしていなさい」
嘘なのか本当なのか怪しい。
事実だとしも抱擁する必要はなかったりするのではないか?
判別する方法は無く言われるがままに従うしか無い。
この試験に合格しなければ、受けられない授業も多い。
だが絶対に違う、ただ彼女の嗜好だろう。
こんなねっちりと抱きしめられたら、……恥ずかしいし。
健全じゃない。
「皆にこんな事をしているのか?」
「そんな変態みたいに言わないで。
風太だけのサービスです」
その振る舞いが既に変態の域に達している気がするけど……。
「いやいや、それは贔屓が過ぎる。
ほかの人と同じにしてくれ」
彼女は耳元で小声で伝える。
「学園生の失踪が起きています。
学園から出た記録がなく、そのまま行方不明となっているのです」
ここで態度を豹変させた彼女の振る舞いが台無しになる。
だからここは、無視の一択。
「……だから離してくれ」
彼女は離れると少し顔を膨らませて怒る。
「もう、恥ずかしがり屋なんだから。
この加護が無いと致命傷を受けた時に離脱出来ないのよ」
学園生の命に関わる事があれば、強制的に離脱させられる。
魔獣、罠、学園生の誤射による事故……。
試験前に確認できる内容だ。
けど彼女の加護を受けるなんて事は記してなかった。
それぐらい前もって教えてくれても良さそうだが……。
毎回丁寧に説明して確認するためなのだろうと解釈しておこう。
「魔獣には特殊な力を持つ者も居るだろう。
意識を失ったり眠らされたりしても離脱するのか?」
「意識を失った場合は、時間ぎれとなった時に離脱させられます。
組んで行動することも認められていて救出する事も想定して居るからです」
「本当に加護は大丈夫なのか?
打ち消さたりして無力化されたり」
「安心して、そんな魔獣は確認されていないです。
管理権限のある私に与えられた特殊な力で解除されることは絶対にありません」
試そうかと思ったが、そんな事をして強制離脱させられたら最悪だ。
その言葉を信じるしか無い。
そけだと、ここで行方不明になる事はない。
時間が来れば強制退場させられて、天使の間に飛ばされるのだから。
ん? 待てよ。
変だな。
「決闘の時は何もされてなかったけど。
あの時は何だったんだ?」
「この学園は侵入者を防ぐ為に常に拡張……成長し続けているのです。
その代償として支配の及ばない区画が出来て、その場所には加護が必要となっています」
この試験区画は支配の及ばない場所なのだろう。
そんな場所を試験場所を選ぶ理由があるとすれば、魔獣との戦闘経験が出来るからか。
試験の地図は受け取っている。
道が別れている所もあるが、合流し迷うこともない単純な道だ。
「ありがとう。
話は終わりで良いよな?」
彼女は風太に聞こえる程度の小声で言う。
「お土産は嬉しかった。
応援しています」
彼女が欲しがっていた何に使うのか謎の安らぎの木と言う枝を贈った。
術杖によく使われている代物らしく、それでここから出られるらしい。
特に特別な力を持っているわけでもないのにどういう理屈なのだろうか。
でも喜んでくれたのなら良かった。
出発地点に転送される。
地面に六角の魔法陣風の絵が書かれていた。
ただの雰囲気作りでしかなく、何の力も効力もない。
疫病女のラカーユは風太を見つけると腕を掴む。
これは女難の相が出ているのかも……。
「一緒にチームを組みましょう。
ねぇ良いよね?」
「旗を取りに行くぐらい一人で十分だけど。
もしかして君は不安なのか?」
試験は最終地点に立てられた旗を手にしたら終わりだ。
全力を出せば直ぐに取れる距離だが、楽しむために自らに制限を掛けている。
ラカーユは決闘での失態を取り戻したいと考えていた。
少しでも風太の役に立ちたいと。
だから近く居たい。
「そんな事は無い。
私達、良いコンビに成れると思うし難関ルートで最速目指せる筈よ」
やんわり断ったつもりなんだけど気づいてくれなかったみたいだ。
あからさまに拒否しないと駄目か。
「残念だけど、その期待には答えられない。
初級ルートを通って中級から戻り、上級を通ってゴールを目指すつもりだ」
「全ルートを踏破する意味はないのに。
旗を取れば、それで終わるのにどうして?」
下手にウロウロすれば脱落するリスクが高まるだけだ。
全く利益のない行動でしかない。
「その方が楽しめそうだから。
色々と魔獣を見たり素材を集めたりと……」
覚えた魔法を使ってみたいのが一番の理由だが。
おまけで抜け道を探してみようかと思っているぐらいだ。
「そういうのなら、全攻略して最速でゴールする。
それで行きましょう」
いやのんびり一人で行こうと……。
話を聞いてくれそうもない。
周りにいる誰よりも早く出発しようとグイグイ引っ張って歩き始める。
他の人達はチームや役割分担を決めるのに慎重な様子で、即断できたのは大きい。
遺跡みたいな崩れた柱等の雰囲気を出すための装飾。
光を放つ大きな茸、光る羽虫……。
そんな学園内とは思えない、本来の姿が垣間見える。
「まずは魔獣の位置を確認するか。
鋭い目の索敵……」
景色が灰色に成って見える。
その中に赤く光る姿がちらほら。
巨大な芋虫……大型犬ぐらいの巨大さがある。
尺を取るような動きで進むようだ。
動きはゆっくりとしている様に見える。
「ここは私に任せて。
遠距離赤い火の矢」
火の矢が飛んでいく。
上級生が使っていた術式はまだらしくゴリ押しで遠くに飛ばしているだけだ。
速度はボルト系の倍近く早い。
命中すると、表皮が燃え上がり瞬く間に灰と化す。
初級に出てくる魔獣だからか、簡単に撃退出来た。
そこら辺の森に出てくる魔獣の方が圧倒的に強く脅威だ。
そんな場所で魔法の制御練習をしていた風太には、ここの魔獣は雑魚でしかない。
「凄い。
君も上達していて、とっても良かった」
「えっへん。
私でもこれぐらいは……」
ラカーユはフラッと倒れそうになる。
風太は彼女を抱きしめて支えた。
術の使いすぎによって引き起こされる現象だ。
帝国の魔法は消耗量も術式の中に組み込まれている。
使う回数を意識すれば、そういう使いすぎに陥る事はない。
決闘で何も出来ずに退場させられたのが余程悔しかったのだろう。
こんなに消耗するということは射程を伸ばすために無茶をした筈だ。
「少し力みすぎ。
一気に力を使わずに小分けにしたほうが消耗は抑えられる」
「参考にするわ。
ダイエットで朝食を抜いたから貧血に成っただけ」
この調子では、彼女は脱落する。
力を分け与える魔法をこっそり彼女に使う。
すると直ぐに元気を取り戻す。
「どちらかと言えば痩せすぎ無きがする。
食事を抜くのは止めたほうが良い」
「ブクブク太っている方が好きなら。
でもそういうのはモテないよね」
どうして極端な例で否定するんだろう。
1~2増やせば良い程度なのに10~20みたいな感じで、それなら極端にずれるから元の方が良いとなってしまう。
そういうズルい提案は嫌なものを感じる。
「なんで過ぎれば良くない。
程々の加減があるだろう」
「それが難しいの。
でもありがとう、無理はしないから」
理力充填を彼女にこっそり付与する。
蓄電池のように魔力を貯めて切り崩しながら使える。
強力な魔法を使っても補填されて消耗で気を失うことは無くなる。
試そうにも気絶するほどの消費が出来なくなっていた。
低消費のコスパ重視の魔法が殆どだからだ。
王国の魔法がどれだけ効率が悪くて消耗が激しいのかよく解る。
だからといって王国式で消耗すると、この学園が消滅するだろう。
結局加減するしか無く、消耗し切る前に一日が終わってしまう。
食事も取らず寝ずに使い続けるのは体力の方が持たない。
「さっきの魔獣なら、中距離の術でも届くと思う。
適切な選択をして進んでいこう」
「この法術しか記してないから、
他のはちょっと……」
いやいや、火の矢だけで挑戦しようって気になるのは流石に……。
火に耐性のある魔獣が居たら詰む。
「それなら書き換えて調整すれば良い」
「それが難しくて丸写ししてきただけなの。
強力な一発があれば十分でしょう?」
臨機応変に対応出来るのが良いところなのに……。
使う専門で行くつもりなのだろう。
「俺の後を……」
「いいえ、初級位は私に任せて。
絶対にクリアできるから」
何処から湧いてくるのだろう。
何も考えてないだけなのは解っているけど。
彼女の成長には、失敗が必要かもしれない。
「解った。
君に任せる」
初級の道だけあって、魔獣は殆ど見当たらず半場あたりまで何事もなくたどり着く。
『助けて……』
何処からか女の声が聞こえてくる。
「誰が助けを呼んでいるわ。
今行くから安心て!」
「待って、さっきのは声じゃない。
念話のような脳に直接響く感じだった」
「それがどうしたっていうの?
助けを求めているのに放って行くつもり」
ラカーユは、飛び出そうとしたが、失態を思い出し止まった。
(あの時みたいにまた迷惑をかけるかも知れない。
……話だけも聞くべき)
彼女が踏みとどまった事にに風太はホッとする。
試験会場だ、無関係な者が居たりはしない。
罠の可能性が最も高い。
「よく考えてみてくれ。
一体誰が助けを求めているんだ?」
「それは……解らない。
同じ試験を受けている同級生?」
「君は一番を目指して急いできたんだろう。
なんで前に人が居るんだ」
「それは確かに……。
一足先に出発したから皆は後ろに居るよね。
んー、どういう事?」
「そこまで解って、どうして罠の可能性を考えないんだ?」
「確かに罠かもしれない。
けど確かめないことには気になるし……」
理解は出来ても感情を優先してしまう。
それは危険なことだ。
「君が調べたいなら、もう止めない。
先に進めば君が目指した最速が狙えるかも知れないのに」
「……解ってる。
でも見捨てることは出来ない」
『暗くて怖い……』
ラカーユは自分が正しいと思うことを全力で突き進みたい。
幼き頃に親友が居たのだが、虐められている所を見たのに怖くて何も出来なかった。
その時動いていれば助けられたかも知れない。
(もう二度と見捨てたりはしない)
決意した彼女は素早く動いた。
罠を警戒しつつ、何時でも攻撃できる体制を取りながら走る。
声のする方向へと近づいていく。
風太は後を追う。
ただ嫌な気配に寒気が襲い、霊的な存在を感じていた。
壁から白い手が招いている。
ラカーユは気づかずに通り過ぎていく。
「待って、通り過ぎた。
こっちだ」
「そこは壁よ。
地図にも書いてないし」
風太が壁に触れるとすり抜けた。
隠し通路なのだろうか。
幻影で隠匿されて実際に存在しない壁。
魔法では反応せず、実際に触れるまでは気づくこともなかった。
呼ばずに一人で向かっても良かったか。
いや……。
「初級の道なのに、こんな隠し要素があるのは不自然。
もしかすると危険かもしれない」
「ここで待てと言うつもり?
たとえどんな危険があっても私は助けに行く」
「そういうと思った」
明るい通路と違って、そこは暗く殆ど何も見えない。
舞い踊る光り蝶の魔法を使い、光る蝶を飛ばした。
鱗粉をちらしながら飛んでいく。
地面が薄っすらと光り、異質な壁の模様が見えてくる。
魂が抜けて閉じ込められた様な人の顔。
血しぶきのような赤と黒。
「何、気味が悪い。
ひぃー、こういうのは苦手……」
これはもしかすると死霊術の研究をしていた場所なのか?
試験を受けに来たものを連れ去っていたとしたら。
でもあの研究は随分前で記録が止まっていた。
「別に引き返しても良いけど。
どうする?」
「意地悪、行きます。
というか手を離さないで」
「いや、術を使うには手は自由な方が良いだろう」
ラカーユは不満げな顔をするが、言い分はわかる。
足元には何か蠢くものがある。
チューチュー……。
ネズミが足元を走り抜ける。
「ひいぃぃぃっ」
シェーリアは風太に飛びついていた。
その一瞬、片腕が使えなく片手で攻撃を防ぐしかない。
「不動な円錐の盾」
幾つもの闇に紛れた黒い矢が飛んでくる。
予想した通りの罠だ。
魔法の盾によって弾かれ矢は壁や床へと刺さる。
刺さった矢が霧状になり周囲に異臭を放つ。
防御されることを想定した二段階の仕掛けだと気づく。
屋の攻撃が収まる様子はなく直ぐに風で匂いを飛ばしたいが、彼女が抱きついていて離れてくれない。
ギュッ!
よりきつく身体を締め付けてくる。
なんだ。
ネズミがそんなに怖いのか、いい加減離れてくれないと邪魔だ。
霧が徐々に上がってくるのが見える。
「離してくれ。
恐怖があるかも知れない、俺が居るだろう勇気を持て!」
「あっ、はい。
どうして抱きついていたのか解らない」
彼女は意識を半分操られていた。
それが解けたのは声が聞こえたからだ。
(あのネズミは精霊、だとしたら……)
ラカーユは火矢の術を放っていた。
近距離で長距離用に調整された魔法を放ったのだ。
ドンッ!
小さな爆発のような炎が上がる。
ドンッ! ドンッ! ドンッと連発するも中々当たらない。
それもその筈、一定距離進んでから軌道補正するのである。
近すぎればその補正が効かずに直進してしまう。
ただでさえ小さくちょこまか動き回る相手を狙うには適さない。
あまりにも近くで爆発が起きて火花が散る。
「あちっ。
いくら苦手だからって、ネズミにそんな八つ当たりは……」
「違うの。
あれが術を使っていた精霊の筈」
命中精度を上げるには、移動先を予測すれば良い。
「狩猟者の予知目……。
青い影を狙って」
青い影の後をネズミが進んでいるように見えた。
「行ける!
恋する二人の矢……当たっれぇぇぇ!」
ネズミを火の矢が貫く。
ジュポッー……、シュルシュルと解けて消える。
続いていた屋の攻撃が収まり、霧も消えていた。
信用して良いのか判断に困る。
勘違いや偶然止まっただけかも知れない。
それで術を解いたら次の攻撃を受けてしまう。
「攻撃は君に任せて良いか?
少し奥を見ておきたい」
ネズミ一匹であれだけ抱きつくほど怖がったんだ、嫌がるはず。
まだまだ奥にいる可能性が高いし、それで少しでも嫌がったら引き返せる。
「ええ、勿論。
不意打ちで精神干渉を受けたから、今度はそんな失態はしない」
引いて駄目なら押してみたら、余計に駄目だった感が強い。
えっ怖い、やっぱり戻ろうなんて言葉をほんの少しでも期待したのが間違いだった。
奥へ進むと、監獄のような鉄格子が嵌められた部屋が幾つもある。
屍となった者達が転がっているだけだ。
飢えと渇きに苦しむ悪霊が飛び回り、苦しみを伝えてくる。
「白骨化している。
かなり前に死んだんだろう、生存者が居るとは思えない」
『助けて……』
あの声が聞こえてくる。
引き返そうと考えた瞬間に聞こえるのは流石に都合が良すぎる。
恐らく感情に反応して声を発する術式が組まれているのだろうか。
だとしたら、この先に進む意味はない。
報告して対処は任せるべきだ。
「風太の言いたいことは解る。
でもここまで来たのに何もせずに戻るのは違う、被害を出さないためにも何かの処置はしたい」
それでも強引に引き返して彼女が納得するとは思えない。
しかし危険に晒すのは、愚かなことだろう。
なら、解禁するしか無い。
「今から見たことは秘密にして欲しい。
それが出来るなら俺も本気を出そう」
「はい、絶対に言わない」
パチッン!
指を鳴らすと、地面に魔法陣が浮かび上がる。
そこから骨の手が出て、魔骸骨が姿を表した。
「案内を頼む」
敵を見せるなら、即壊す。
従うかどうか……。
吸血龍ラビリスの反逆のような事が起きないか不安はあった。
だがあえて死霊術を使ったのは、この場所にも同じく死霊術の気配がしたからだ。
怨念に取り憑かれると正気を失うこともある。
ラカーユはほぼ無防備で守るには、風太にはこれしか無かった。
『……お任せ下さい』
礼儀正しく礼をする骸骨の姿はなんとも奇妙だ。
魔骸骨は悪霊をつまみ、喰らいながらゆっくりと奥へと進む。
これで悪霊に体を乗っ取られたりする心配はない。
それに取り込むことで強化されていく。
凶悪なアンデットが出てきたとしても撃退できるだろう。
ラカーユは困惑しつつも風太の側を付かず離れずの所を歩く。
聞いて良いのか解らず、戸惑っていたが意を決して尋ねた。
「えっとこの術は何なの?」
「俺は異界人らしい。
これはその力で俺自身も良く解っていない」
全くの嘘だ。
死者の書から教わったものを独自に改良して使いやすくした魔法だ。
メーメル師匠が最後に残した魔法が仕掛けてあって、役目を終えた時に崩れて花を開かせる。
死で終わりではなく、新たな生命を芽吹かせ広がっていく。
利用する罪滅ぼし、いや自己満足かも知れない。
そんな死霊術である。
「異界人の子孫なら知っているけど、
今度合わせてあげるね」
「なんでだろう結構、異界人の子孫って多い気がする」
「それはそうよ。
最初に召喚された異界人は500年前ぐらい、それから何代も世代を引き継げば数も多くなっていくわ」
「確かに……」
ビル群の痕跡から、そんなに時代の差がない時代から召喚されていたのかと思っていた。
前世の世界が急激な発展をしたのが受け入れられず。
色々と禁忌にして封印したのかも知れない。
魔骸骨が木の扉の前で止まる。
『この先、怖い……』
邪悪な気配が扉の隙間から漏れている。
引き返す選択肢は無いようだ。
ラカーユが扉を開こうと手を伸ばす。
『駄目……、触れてはならない』
魔骸骨が彼女を静止する。
触れてもなく木の扉が、ギギギィと音を立て開く。
鎖に繋がれた女が立っている。
開いた口は裂け鋭い牙が見える。
襲おうと走るが首に繋がった鎖がそれを止めていた。
手を振り回し、狂犬を思わす噛みつき。
鎖を何度も引っ張り倒れるさまは理性を感じる事はできない。
そんな光景に違和感があった。
だがラカーユは直ぐに攻撃態勢に入る。
「いま楽にしてあげるから……。
ファイア……」
風太はラカーユの口を抑えて止めた。
「うぐぐっ……、なんで止めるの?」
眼の前の繋がれた女は激しく暴れている。
今にも鎖が切りそうな程だ。
なのに鎖のジャラジャラ音が聞こえない。
静寂が包んでいる。
「冷静になれ。
君なら気付ける」
「幻……」
風太はパチッンと指を鳴らすと同時に新たに光る蝶を放つ。
幻影を消す力を付与した光の粒子が真実を見せる。
術式を脳内で改変し改定したのだ。
『後少しだったのに……』
あの女声だ。
幻影が消えると、ただボーと学園生の女が立っていた。
もし火の矢を放っていたら、直撃して居ただろう。
どうやら、この場所では加護が届かないらしく比較的新しい死体が転がっている。
悪霊の仕業なら、回りくどく幻影を見せて殺させない。
だとしたら、この殺人は生存した彼女なのだろうか?
真実を知るのは黒幕の悪霊だけ。
恐らく彼女は幻影を見せられて、人殺しをした記憶はない筈。
なら被害者として救うだけだ。
「鎖を切ってくれ」
『はい……』
魔骸骨は、鎖を引きちぎり解放する。
すると魔骸骨は砂のように崩れ落ちた。
「時間切れなの?
崩れてしまったけど……」
「役目を終えたんだ。
それより早く脱出しよう」
解放した女を抱きかかえると外を目指す。
『待って、まだ居るの……』
悪霊が動揺して追いかけようとした時、砂となっていた魔骸骨が手を再生し掴む。
一芝居打ったのだ。
まだ、何も解決していない。
元凶の悪霊を撃退するという大切な役目を。
その悪霊は死霊術師の魅力に取りつかれた女だった。
実験のために幾多の人間が犠牲になったか。
『ぎああぁぁっ』
魔骸骨に宿った霊は、そんな女に魅了されていた。
彼にとっては表の顔である教師に憧れ。
裏の顔を知ってなお、その生命を奪われても諦められなかった。
美しかったはるか昔の姿を思い浮かべ抱きしめる。
『共に消えよう……』
後に調査が入るが、そこには綺麗な花が咲き乱れていた。
死霊術を研究した者の成れの果て。
それが悪霊の正体だった。
その研究も何もかも禁忌として処理されることになる。
風太は旗を手にする。
他の所を巡りたかったけど、被害者を放置はできない。
エルニアの部屋に転送される。
被害者の姿がは無く別の所に転送されたのだろう。
同じくラカーユも居ない。
「見つけてくれてありがとう。
でもコースから一度出たからやり直しです」
エルニアは意地悪を言えば、何かしらの交渉をしてくると予想。
そうなれば妥協案として、一日デートとか、ムフフな事を企んでいた。
それを悟られないように真面目顔で言った。
「失格ってことなのか?」
「まだ時間は残っています。
スタート地点から、もう一度」
帝国の人々は規則を重視する。
多民族が暮らすための知恵だ。
交渉するだけ時間を失うだけと、気持ちを切り替えた。
「次は上級を通ろう。
時間がないから早く」
「もう少し時間を伸ばして欲しいみたいな要望は無いのですか?」
「規則は守らないと。
君にも立場があるだろう」
「それはそうですけど。
融通を聞かせても良いと思っていて」
んっ?
なんか怪しいな、親切で言っている気もするけど。
これまでの振る舞いが……。
「いや別にいい」
「借りを作りたくないのです。
ですから……」
「だから必要ないって言っているだろう。
君が何かを企んでいるのは何となく解る」
「そんな事はないです。
……はぁ、少しばかりデートをして欲しくて。それぐらい良いでしょう?」
「別にいいけど」
「やっぱり駄目ですよね。
ええっ、本当に……、では放課後に……」
エルニアは学園の外には出られない。
だが内部を、デートスポットに作り変えることは出来る。
早速、どう言う風に改装しようかとニタニタ初めた。
「その代わり、色々と試すことを見て見ぬふりをして欲しい」
「ええ、解りました。
けど学園を破壊しないで下さい」
スタート地点に転送されると風太は気合を入れた。
「全魔法起動」
術書に記載してある全ての魔法が順番に発動していく。
風太はふんわりと浮かび上がり、全ての能力が飛躍する。
「そうだ、覚えたばかりのを試してみるか。
昆虫型爆撃」
トンボの形をした精霊が無数飛び立つ。
魔獣を見つけると、拘束術式を発動し動きを封じ片っ端から攻撃術式を発動し撃退していく。
「おっと素材の回収も忘れずにと……。
食いしん坊の子栗鼠」
リスの姿の精霊がブワッと大量に現れ走り出す。
これで後はゴールするだけか。
高速で飛行し旗を取るまでに対して時間はかからなかった。
エルニアは驚愕して、監視の水晶玉を落として割ってしまう。
「凶悪魔獣をいとも容易く……。
再生成されまで試験は中止になりそう」
再び風太が彼女の前に転送される。
今度は……。
その頃アリアは、不思議な空間に迷い込んでいた。
「私が生徒会の一員に成れるなんてとっても嬉しいです」
美男子達に囲まれ、優しく接してくれる事に喜びを感じる日々。
様々な錬金術の研究が進んでいく。
調合釜に薬草や鉱石を放り込むことで、ポーションが作られる。
そんなことに何の疑問を持たなくなっていた。
彼女はこの迷宮に取り込まれて一部となりつつある。
与えられた役目を果たす為に記憶を刷り込まれていく。
気がつけば、前世の記憶が消え去りかけていた。
それどころか、風太との記憶も薄れつつある。
専属講師のフルムは顔を真赤に慌てふためき、手を慌ただしく降って動揺していた。
風太♥チュッチュッと術書相手に口づけをしていたのを当の風太に見られてしまったのである。
もう筈隠して顔から火が出そうなほど熱くなっていた。
「ごめん、ノックしたんだけど聞こえてなかったみたい。
えっと……」
フリムは早口で一気に捲し立てるように喋る。
「ああぁっ、わ、悪いのは私ですから。
どうしようましょう、ああっ終わったもう変な女って思われてドン引きあああっわわ……」
「取り敢えず落ち着こう。
君はとっても素敵だから」
「はい?」
フルムはキョトンとして、言葉が理解できていなかった。
脳内が真っ白で理解力が無くなっている。
ほんの10分早く来てしまった事が原因でこんな事になるなんて。
風太は紙袋を開き、べーリパイを取り出す。
「北の街に行ってきたから、お土産を買ってきた。
とっても甘くて美味しいから」
フルムはパクっと一口。
熱せられてベリーの酸味が弱くなり甘さが濃縮されている。
生地のサク、サク、と食感と相まって、ゴツゴツの砂糖の結晶が……。
「美味しい!
……口が幸せ」
そっと、お茶を注ぎ渡す。
フルムは少し飲み落ち着き、冷静さを取り戻し……、顔色が真っ青になる。
「俺の術書が気に入ったなら君に預けておくから、安心してくれ」
チャイムが鳴り響く。
何時もなら、このあとに来る。
お菓子を食べて貰いたくて早く来たのが失態だった。
「はわっ、違います。
好きなのは……、あわわっ……もう冗談は止めて下さい、恥ずかしい」
「君は反応が面白いから。
ごめん」
「すーはー。
では、気を取り直して……、ああ術式の常識が変わる大発明です」
「ん?
どれも習った術式を記録しただけなのに」
「ええ、内容は低学年が習う初級術なのは解っています。
でずか管理方法がこれまで誰もなし得なかった事です」
「具体的に……」
取り敢えず詰められるだけ入れただけで、特に変わったことをしたつもりはない。
他の人が30記録する所を150近く記録しているけど。
だからといって常識が変わるとは思えない。
「複数の精霊による並列化で効率が段違い。
今までとは段違いです」
精霊の伝達は波紋状に広がり、伝わった順に実行していく。
魔法陣が円形なのはそういう理由で、精霊の配置と指示の組み合わせで形成されている。
指示が増えれば魔法陣も巨大化し、伝達順を意識しなければ順番飛ばしが起きて術が失敗する。
ワイワイ騒ぐ中で伝言ゲームをするようなもの。
規模が大きくなればそれだけ騒がしくなり、伝達に混乱が生じる。
それが従来の法術の基礎である。
「沢山術式を記録すると、精霊が探すのに手間取って発動に遅延が起きたんだ。
それで早く発動できるように色々と試していたら偶然出来た」
「並列化を提唱した賢者も居ましたが、それをどうすれば精霊に伝えられるのか。
ここが課題となって実現できなかったのです」
竜人が示した線で結ぶ方法が知られていなかった。
波紋状に広がっては、余計な指示が精霊に届いてしまう。
それを糸電話で繋ぐような感覚で、伝達する精霊を選ぶのである。
精霊の大きさ、能力、全てを揃えれば理論上は波紋状でも並列処理ができると考えられていた。
しかし、その条件では融合が起きて一つの精霊となって変質してしまう。
それが長年の課題となりバラバラで釣り合う精霊の組み合わせを見つけるのが並列化の道とされた。
そんな難しい話を風太は理解できるはずもなく。
フルムが長々と早口で歴史的背景を説明する。
「……ということで、幾多の賢者が到達できなかった事なんです。
これを発表するだけでも、学園がひっくり返るかも知れない発見です。
ああ、なんて素晴らしくてこの感動……」
ボーと見つめる風太に気づき、フルムは顔を赤く染めた。
本人を眼の前に素晴らしさを解くというのは、神に説法を解くようなものだ。
「君ならもっと効率良く出来そう。
何処を直せばいいか知りたい」
「ええっ、えーとですね。
そう言われると、こうして……、いや、違う、もっと……」
フリムは考え始めると回りが見えなくなり、完全に一人の世界に入ってしまっていた。
こうなると話しかけても聞こえない。
脳が全力を出すために、聞く事を止め視界も狭まる。
風太はその間、用意された文献を読む。
呪術に関する内容なのだが真偽は不明だ。
研究を盗まれないように偽書を紛れ込ませている為だ。
研究者が途中で息絶えた事により失われた情報も多く不完全な物となる。
そんな識別を行い、修復する作業も学びであった。
「時代ごとに、書き方や文字とかの流行りがあって違うように見えるけど、
結局同じ内容だったりとややこしいな」
学園から持ち立ち禁止の文献ばかり。
持ち帰って調べることは出来ず、この教室の本棚に置くのが妥協点である。
ここにあるのは複製で原本は保管庫にあるのに持ち帰れないのは、他国に流出することを恐れての事だろう。
一つ一つ解読して情報の整理するのは大変で時間の掛かる作業だ。
こんな事をしていたら幾ら時間があっても足りない。
楽できないのか?
解読は精霊が行って文字に出力するのだから、それを皆でやったら……。
同じ精霊を並列で動かして、一致する物を半部してと……。
有用性を精査して評価を付けて、順番に並び替えて。
一つ一つは簡単な命令で精霊を動かす。
組み立てが終われば試しに発動する。
フリムはハッと成って風太の方を見た。
「あはっ、夢中になって……、あわわ……色々と改変して原型が崩れてしまいました。
あの、確認して頂けないでしょうか?」
「ありがとう」
術書の機能が格段に向上して、空きが倍に増えていた。
格納方法を変更したようで、冗長な部分が無くなりスリムになって処理自体が削減されている。
ゴリ押しだった所が、初めて見る術式に置き換わり加速する要因になっていた。
「私の知識では、これで精一杯です。
まだ改善できる余地があると思いますが如何でしょうか……あわわっ、差し出がましいことを……」
「凄く良い、検索も付けてくれたんだ。
それによく使うものを優先するように改良まで、そこまで気が回らなくて」
「あっ、それはほんの性能を生かすには、術が多すぎるので優先度を付けたんです。
戦闘だと急ぐし、別に急がないものはじっくりと発動しても良いので、
そういう工夫が生きるほどの術書が無くて……」
必要な分だけ記録して置けば良くて、無駄に数多くの術式を記録する必要性がない。
本来なら必要のない機能だ。
「でも知っているのは凄い。
こんなに素晴らしいものに改善しくれて良かった」
「あっ、そうそうまだ話は終わってないです。
命令のカプセル化、大規模開発には必要だと提唱されていたのに誰も成し遂げられなかったのに。
精霊は意義同音を解釈できず、同じものとして扱う為に命名の競合によって混乱が起きて暴走する……」
うわっ、早口で意味不明なことを言っている。
そんな事を言われても、何のことかわからない。
「えっと、ゆっくり落ち着いて」
「あわわっ……ごめん。
同じ名前を付けているのに、別の法術として扱っているでしょう?」
「小さな火と荒れ狂い増殖せし暗黒の火炎みたいな事?
同じファイアボルトだけど違う効果みたいな」
「うん、うん、そう。
精霊が聞いたら同じだから、どっちて困る筈なのに……、どうして」
風太の場合は、精霊は感情を読み取り術を使ってほしいか判断し心を読むことで解釈をしていた。
言葉は気持ちを整理するための自己暗示と解釈され、精霊は呪文を無視している。
名前の重複は問題と成らなかった。
しかし術書に記すとどっちも同じ名前になってしまう。
当然、術書を使ったら直ぐにその問題に直面した。
「実は翻訳に手を加えて、術式事に特別な割当の名前を前につけることで解決した。
1番の、2番の……って感じで」
術式が発動するためには、精霊に命令が必要だ。
しかし、人の言葉を全ての精霊が理解しているのではない。
翻訳精霊を介して、他の精霊に伝えているのである。
どう翻訳してい良いのか規則をつけるだけで良かったのだ。
「そんな簡単な方法で……、盲点です。
部品化、それに大規模開発を複数人で行える。
ああっなんて、凄い発見なんでしょうか」
「そうなのか。
誰でも思いつきそうな気がするけど」
「全ての方法を試すことは出来ないので、仮説を立てて実証しようとします。
なので仮説が間違っていると、盲点となりがちだと賢人も言っています」
「ふーん。
青い鳥みたいに実は近くに答えがあったみたいな事か」
「ああぁなんて幸せなんでしょう。
賢人達にも認めてもらえる、風太、素敵です、大好き!」
フリムは思わず風太に抱きつき、軽く頬に口づけする。
「どさくさに紛れて……」
「あわわっ……、あっ……違うんです。
いや、違わないんですけど……あの、その……」
フリムは賢人に選ばれることを夢見て学園に入った。
その賢人に認めてもらえるかも知れないと喜びの余りについつい本音を漏らし顔を赤らめ俯く。
「そう言えば、シェヌサが一緒に学びたいって言っていたけど。
どうなったのかな?」
無口な彼女が一緒に学びたいと言ってきたのは驚いたが、一緒に勝利を掴んだ仲。
それを拒む理由もなかった。
「えっあっ……えーと。彼女の申請は承認されています。
あくまで風太の専属なので、おまけ程度の扱いになるんですけど受け入れてくれたようです」
補佐役という扱いで、連携と言った一人では出来ない事を学ぶ為に許されている。
「ありがとう」
フリムは資料を記録している術書に気づき手に取り確認する。
恥ずかしいのを隠すために思いっきり持ち上げて、読んでいる風に書を開いていた。
術書は基本的に白紙で何も記載がない。
精霊の寿命が尽きる時、命令を書き残して引き継ぐためにある。
「はうぁ……、これは……まさか!
ふ、ふうーたー、なんてことをしてくれたんですか!」
「えっ何?
まだ試しただけで、これから調整しようと……」
「違います。
また大発見して、レポートを山積みになってしまいます、こんなに知らないことが多いなんて。
……ああ幸せ」
「ただ資料をまとめただけで、特に珍しい事はしてないのに。
うーん、何が大発見なんだ?」
「んん?
隠し文を見つけて纏めてくれたのかと、この内容は明らかに呪術とは違います」
別の文献に擬態し鍵となる術によって復元させる隠匿方法によって研究を隠すことがある。
高度に隠匿されたものは発見することが難しく著者しか解除できない。
その著者が死亡し存在を知られること無く眠り続ける物も多い。
そんな隠匿も精霊の目には明確に見えていた。
整列させる時に今まで一つ物としていたのを別物と認識し区別して扱ったのである。
「どの書物か調べるから返して。
文献を探知して光るようにすれば……、不思議な精霊の探し物」
半透明な蝶の姿をした精霊が大量にひらひらと飛び回る。
一瞬でそれは消え去り、文献がキラキラが輝き光る。
探知が終わったのだろう。
違うものは退ければ良いだけで、それだけを纏めてフリムに渡す。
するとフリムはにっこり笑い、読むように指示を出した。
呪術について書かれている。
どういう事だ?
違う内容を探知した筈なのに、内容が間違っていない。
どの部分が間違ったんだ?
風太は術式に問題が有ったのかと考え始める。
「術式は合っているはずだけど……」
「あわわわっ……、えっあっ……合ってます。
裏文が書かれていて、表文が見えている間は見えないんです」
風太は見たいと思ってパチッンと指を鳴らす。
すると隠れていた文面が現れた。
「本当だ。
でもこれは……」
強力な攻撃の術の構想が殆どだったが、一つ死霊術に関する内容があった。
それはかなりの間違いがあり不完全なものだ。
霊に関することが一切書かれておらず、新鮮な心臓が重要とされていた。
生者では死霊術の研究に行き詰まり失敗の記録だけが積み上がる。
「これは処分したほうが良さそう。
表の内容も偽りで信頼に足るものではないです」
フリムは廃棄の印を押す。
「でもそれは複製だろう?
廃棄しても原本が残って……」
「管理者達に渡すと審査が入り廃棄されます。
だから安心して下さい」
安心すると改めて隠されていた文書が気になった。
古代の超テクノロジーみたいなものはないのだろうか?
ピラピラ……と見ていく。
ん?
「これは精霊獣を利用した遠隔攻撃について書かれているけど。
召喚とは違うのか?」
「旧時代に使われていた戦術です。
精霊を実体化させて移動させるので、攻撃が読まれやすく防がれたために廃れていきました。
あわわわっ……なんですか、じっと見ないで下さい、恥ずかしい……です」
「いや、相変わらず説明している時は割と落ち着いて話すと思って。
ずっと同じ感じで……」
「むっ、無理……」
親しくなるとより恥ずかしい気がして余計に動揺してしまう。
特に相手が好きな相手だとフリムは顔を赤くしてそう思った。
時が流れるのは早くチャイムが鳴り、授業の時間が終わる。
予定が詰まっていて、直ぐに移動しなければ遅刻してしまう。
「じゃあ行きます。
後でちゃんとするから、置いといて」
「ああっ、……待って欲しかったのに……んー」
転移門を通ると、翼人エルニアが待っていた。
彼女は施設の管理を任されていて教師ではない。
「ようこそ、風太」
「どう言うつもりだ。
これから実技試験を受ける事になっているのに」
「学園は迷宮を改造し利用しているって教えたでしょ?
初めての受験者は説明を受けることになっているの」
「はい、これも試験なのか。
私用で転送されたのかと思った」
実際、何度か彼女によって転送されたことがある。
その理由がただ会いたいだけだったりと身勝手だった。
「あはっ。
試験区画は魔獣が自然発生するとても危険な場所です」
エルニアは風太に近づくと抱擁しニヤニヤし始める。
髪を梳くように撫でながら匂いを嗅ぐ。
「ちょっと、なんだ」
「加護を授けるための儀式です。
大人しーく、じっとしていなさい」
嘘なのか本当なのか怪しい。
事実だとしも抱擁する必要はなかったりするのではないか?
判別する方法は無く言われるがままに従うしか無い。
この試験に合格しなければ、受けられない授業も多い。
だが絶対に違う、ただ彼女の嗜好だろう。
こんなねっちりと抱きしめられたら、……恥ずかしいし。
健全じゃない。
「皆にこんな事をしているのか?」
「そんな変態みたいに言わないで。
風太だけのサービスです」
その振る舞いが既に変態の域に達している気がするけど……。
「いやいや、それは贔屓が過ぎる。
ほかの人と同じにしてくれ」
彼女は耳元で小声で伝える。
「学園生の失踪が起きています。
学園から出た記録がなく、そのまま行方不明となっているのです」
ここで態度を豹変させた彼女の振る舞いが台無しになる。
だからここは、無視の一択。
「……だから離してくれ」
彼女は離れると少し顔を膨らませて怒る。
「もう、恥ずかしがり屋なんだから。
この加護が無いと致命傷を受けた時に離脱出来ないのよ」
学園生の命に関わる事があれば、強制的に離脱させられる。
魔獣、罠、学園生の誤射による事故……。
試験前に確認できる内容だ。
けど彼女の加護を受けるなんて事は記してなかった。
それぐらい前もって教えてくれても良さそうだが……。
毎回丁寧に説明して確認するためなのだろうと解釈しておこう。
「魔獣には特殊な力を持つ者も居るだろう。
意識を失ったり眠らされたりしても離脱するのか?」
「意識を失った場合は、時間ぎれとなった時に離脱させられます。
組んで行動することも認められていて救出する事も想定して居るからです」
「本当に加護は大丈夫なのか?
打ち消さたりして無力化されたり」
「安心して、そんな魔獣は確認されていないです。
管理権限のある私に与えられた特殊な力で解除されることは絶対にありません」
試そうかと思ったが、そんな事をして強制離脱させられたら最悪だ。
その言葉を信じるしか無い。
そけだと、ここで行方不明になる事はない。
時間が来れば強制退場させられて、天使の間に飛ばされるのだから。
ん? 待てよ。
変だな。
「決闘の時は何もされてなかったけど。
あの時は何だったんだ?」
「この学園は侵入者を防ぐ為に常に拡張……成長し続けているのです。
その代償として支配の及ばない区画が出来て、その場所には加護が必要となっています」
この試験区画は支配の及ばない場所なのだろう。
そんな場所を試験場所を選ぶ理由があるとすれば、魔獣との戦闘経験が出来るからか。
試験の地図は受け取っている。
道が別れている所もあるが、合流し迷うこともない単純な道だ。
「ありがとう。
話は終わりで良いよな?」
彼女は風太に聞こえる程度の小声で言う。
「お土産は嬉しかった。
応援しています」
彼女が欲しがっていた何に使うのか謎の安らぎの木と言う枝を贈った。
術杖によく使われている代物らしく、それでここから出られるらしい。
特に特別な力を持っているわけでもないのにどういう理屈なのだろうか。
でも喜んでくれたのなら良かった。
出発地点に転送される。
地面に六角の魔法陣風の絵が書かれていた。
ただの雰囲気作りでしかなく、何の力も効力もない。
疫病女のラカーユは風太を見つけると腕を掴む。
これは女難の相が出ているのかも……。
「一緒にチームを組みましょう。
ねぇ良いよね?」
「旗を取りに行くぐらい一人で十分だけど。
もしかして君は不安なのか?」
試験は最終地点に立てられた旗を手にしたら終わりだ。
全力を出せば直ぐに取れる距離だが、楽しむために自らに制限を掛けている。
ラカーユは決闘での失態を取り戻したいと考えていた。
少しでも風太の役に立ちたいと。
だから近く居たい。
「そんな事は無い。
私達、良いコンビに成れると思うし難関ルートで最速目指せる筈よ」
やんわり断ったつもりなんだけど気づいてくれなかったみたいだ。
あからさまに拒否しないと駄目か。
「残念だけど、その期待には答えられない。
初級ルートを通って中級から戻り、上級を通ってゴールを目指すつもりだ」
「全ルートを踏破する意味はないのに。
旗を取れば、それで終わるのにどうして?」
下手にウロウロすれば脱落するリスクが高まるだけだ。
全く利益のない行動でしかない。
「その方が楽しめそうだから。
色々と魔獣を見たり素材を集めたりと……」
覚えた魔法を使ってみたいのが一番の理由だが。
おまけで抜け道を探してみようかと思っているぐらいだ。
「そういうのなら、全攻略して最速でゴールする。
それで行きましょう」
いやのんびり一人で行こうと……。
話を聞いてくれそうもない。
周りにいる誰よりも早く出発しようとグイグイ引っ張って歩き始める。
他の人達はチームや役割分担を決めるのに慎重な様子で、即断できたのは大きい。
遺跡みたいな崩れた柱等の雰囲気を出すための装飾。
光を放つ大きな茸、光る羽虫……。
そんな学園内とは思えない、本来の姿が垣間見える。
「まずは魔獣の位置を確認するか。
鋭い目の索敵……」
景色が灰色に成って見える。
その中に赤く光る姿がちらほら。
巨大な芋虫……大型犬ぐらいの巨大さがある。
尺を取るような動きで進むようだ。
動きはゆっくりとしている様に見える。
「ここは私に任せて。
遠距離赤い火の矢」
火の矢が飛んでいく。
上級生が使っていた術式はまだらしくゴリ押しで遠くに飛ばしているだけだ。
速度はボルト系の倍近く早い。
命中すると、表皮が燃え上がり瞬く間に灰と化す。
初級に出てくる魔獣だからか、簡単に撃退出来た。
そこら辺の森に出てくる魔獣の方が圧倒的に強く脅威だ。
そんな場所で魔法の制御練習をしていた風太には、ここの魔獣は雑魚でしかない。
「凄い。
君も上達していて、とっても良かった」
「えっへん。
私でもこれぐらいは……」
ラカーユはフラッと倒れそうになる。
風太は彼女を抱きしめて支えた。
術の使いすぎによって引き起こされる現象だ。
帝国の魔法は消耗量も術式の中に組み込まれている。
使う回数を意識すれば、そういう使いすぎに陥る事はない。
決闘で何も出来ずに退場させられたのが余程悔しかったのだろう。
こんなに消耗するということは射程を伸ばすために無茶をした筈だ。
「少し力みすぎ。
一気に力を使わずに小分けにしたほうが消耗は抑えられる」
「参考にするわ。
ダイエットで朝食を抜いたから貧血に成っただけ」
この調子では、彼女は脱落する。
力を分け与える魔法をこっそり彼女に使う。
すると直ぐに元気を取り戻す。
「どちらかと言えば痩せすぎ無きがする。
食事を抜くのは止めたほうが良い」
「ブクブク太っている方が好きなら。
でもそういうのはモテないよね」
どうして極端な例で否定するんだろう。
1~2増やせば良い程度なのに10~20みたいな感じで、それなら極端にずれるから元の方が良いとなってしまう。
そういうズルい提案は嫌なものを感じる。
「なんで過ぎれば良くない。
程々の加減があるだろう」
「それが難しいの。
でもありがとう、無理はしないから」
理力充填を彼女にこっそり付与する。
蓄電池のように魔力を貯めて切り崩しながら使える。
強力な魔法を使っても補填されて消耗で気を失うことは無くなる。
試そうにも気絶するほどの消費が出来なくなっていた。
低消費のコスパ重視の魔法が殆どだからだ。
王国の魔法がどれだけ効率が悪くて消耗が激しいのかよく解る。
だからといって王国式で消耗すると、この学園が消滅するだろう。
結局加減するしか無く、消耗し切る前に一日が終わってしまう。
食事も取らず寝ずに使い続けるのは体力の方が持たない。
「さっきの魔獣なら、中距離の術でも届くと思う。
適切な選択をして進んでいこう」
「この法術しか記してないから、
他のはちょっと……」
いやいや、火の矢だけで挑戦しようって気になるのは流石に……。
火に耐性のある魔獣が居たら詰む。
「それなら書き換えて調整すれば良い」
「それが難しくて丸写ししてきただけなの。
強力な一発があれば十分でしょう?」
臨機応変に対応出来るのが良いところなのに……。
使う専門で行くつもりなのだろう。
「俺の後を……」
「いいえ、初級位は私に任せて。
絶対にクリアできるから」
何処から湧いてくるのだろう。
何も考えてないだけなのは解っているけど。
彼女の成長には、失敗が必要かもしれない。
「解った。
君に任せる」
初級の道だけあって、魔獣は殆ど見当たらず半場あたりまで何事もなくたどり着く。
『助けて……』
何処からか女の声が聞こえてくる。
「誰が助けを呼んでいるわ。
今行くから安心て!」
「待って、さっきのは声じゃない。
念話のような脳に直接響く感じだった」
「それがどうしたっていうの?
助けを求めているのに放って行くつもり」
ラカーユは、飛び出そうとしたが、失態を思い出し止まった。
(あの時みたいにまた迷惑をかけるかも知れない。
……話だけも聞くべき)
彼女が踏みとどまった事にに風太はホッとする。
試験会場だ、無関係な者が居たりはしない。
罠の可能性が最も高い。
「よく考えてみてくれ。
一体誰が助けを求めているんだ?」
「それは……解らない。
同じ試験を受けている同級生?」
「君は一番を目指して急いできたんだろう。
なんで前に人が居るんだ」
「それは確かに……。
一足先に出発したから皆は後ろに居るよね。
んー、どういう事?」
「そこまで解って、どうして罠の可能性を考えないんだ?」
「確かに罠かもしれない。
けど確かめないことには気になるし……」
理解は出来ても感情を優先してしまう。
それは危険なことだ。
「君が調べたいなら、もう止めない。
先に進めば君が目指した最速が狙えるかも知れないのに」
「……解ってる。
でも見捨てることは出来ない」
『暗くて怖い……』
ラカーユは自分が正しいと思うことを全力で突き進みたい。
幼き頃に親友が居たのだが、虐められている所を見たのに怖くて何も出来なかった。
その時動いていれば助けられたかも知れない。
(もう二度と見捨てたりはしない)
決意した彼女は素早く動いた。
罠を警戒しつつ、何時でも攻撃できる体制を取りながら走る。
声のする方向へと近づいていく。
風太は後を追う。
ただ嫌な気配に寒気が襲い、霊的な存在を感じていた。
壁から白い手が招いている。
ラカーユは気づかずに通り過ぎていく。
「待って、通り過ぎた。
こっちだ」
「そこは壁よ。
地図にも書いてないし」
風太が壁に触れるとすり抜けた。
隠し通路なのだろうか。
幻影で隠匿されて実際に存在しない壁。
魔法では反応せず、実際に触れるまでは気づくこともなかった。
呼ばずに一人で向かっても良かったか。
いや……。
「初級の道なのに、こんな隠し要素があるのは不自然。
もしかすると危険かもしれない」
「ここで待てと言うつもり?
たとえどんな危険があっても私は助けに行く」
「そういうと思った」
明るい通路と違って、そこは暗く殆ど何も見えない。
舞い踊る光り蝶の魔法を使い、光る蝶を飛ばした。
鱗粉をちらしながら飛んでいく。
地面が薄っすらと光り、異質な壁の模様が見えてくる。
魂が抜けて閉じ込められた様な人の顔。
血しぶきのような赤と黒。
「何、気味が悪い。
ひぃー、こういうのは苦手……」
これはもしかすると死霊術の研究をしていた場所なのか?
試験を受けに来たものを連れ去っていたとしたら。
でもあの研究は随分前で記録が止まっていた。
「別に引き返しても良いけど。
どうする?」
「意地悪、行きます。
というか手を離さないで」
「いや、術を使うには手は自由な方が良いだろう」
ラカーユは不満げな顔をするが、言い分はわかる。
足元には何か蠢くものがある。
チューチュー……。
ネズミが足元を走り抜ける。
「ひいぃぃぃっ」
シェーリアは風太に飛びついていた。
その一瞬、片腕が使えなく片手で攻撃を防ぐしかない。
「不動な円錐の盾」
幾つもの闇に紛れた黒い矢が飛んでくる。
予想した通りの罠だ。
魔法の盾によって弾かれ矢は壁や床へと刺さる。
刺さった矢が霧状になり周囲に異臭を放つ。
防御されることを想定した二段階の仕掛けだと気づく。
屋の攻撃が収まる様子はなく直ぐに風で匂いを飛ばしたいが、彼女が抱きついていて離れてくれない。
ギュッ!
よりきつく身体を締め付けてくる。
なんだ。
ネズミがそんなに怖いのか、いい加減離れてくれないと邪魔だ。
霧が徐々に上がってくるのが見える。
「離してくれ。
恐怖があるかも知れない、俺が居るだろう勇気を持て!」
「あっ、はい。
どうして抱きついていたのか解らない」
彼女は意識を半分操られていた。
それが解けたのは声が聞こえたからだ。
(あのネズミは精霊、だとしたら……)
ラカーユは火矢の術を放っていた。
近距離で長距離用に調整された魔法を放ったのだ。
ドンッ!
小さな爆発のような炎が上がる。
ドンッ! ドンッ! ドンッと連発するも中々当たらない。
それもその筈、一定距離進んでから軌道補正するのである。
近すぎればその補正が効かずに直進してしまう。
ただでさえ小さくちょこまか動き回る相手を狙うには適さない。
あまりにも近くで爆発が起きて火花が散る。
「あちっ。
いくら苦手だからって、ネズミにそんな八つ当たりは……」
「違うの。
あれが術を使っていた精霊の筈」
命中精度を上げるには、移動先を予測すれば良い。
「狩猟者の予知目……。
青い影を狙って」
青い影の後をネズミが進んでいるように見えた。
「行ける!
恋する二人の矢……当たっれぇぇぇ!」
ネズミを火の矢が貫く。
ジュポッー……、シュルシュルと解けて消える。
続いていた屋の攻撃が収まり、霧も消えていた。
信用して良いのか判断に困る。
勘違いや偶然止まっただけかも知れない。
それで術を解いたら次の攻撃を受けてしまう。
「攻撃は君に任せて良いか?
少し奥を見ておきたい」
ネズミ一匹であれだけ抱きつくほど怖がったんだ、嫌がるはず。
まだまだ奥にいる可能性が高いし、それで少しでも嫌がったら引き返せる。
「ええ、勿論。
不意打ちで精神干渉を受けたから、今度はそんな失態はしない」
引いて駄目なら押してみたら、余計に駄目だった感が強い。
えっ怖い、やっぱり戻ろうなんて言葉をほんの少しでも期待したのが間違いだった。
奥へ進むと、監獄のような鉄格子が嵌められた部屋が幾つもある。
屍となった者達が転がっているだけだ。
飢えと渇きに苦しむ悪霊が飛び回り、苦しみを伝えてくる。
「白骨化している。
かなり前に死んだんだろう、生存者が居るとは思えない」
『助けて……』
あの声が聞こえてくる。
引き返そうと考えた瞬間に聞こえるのは流石に都合が良すぎる。
恐らく感情に反応して声を発する術式が組まれているのだろうか。
だとしたら、この先に進む意味はない。
報告して対処は任せるべきだ。
「風太の言いたいことは解る。
でもここまで来たのに何もせずに戻るのは違う、被害を出さないためにも何かの処置はしたい」
それでも強引に引き返して彼女が納得するとは思えない。
しかし危険に晒すのは、愚かなことだろう。
なら、解禁するしか無い。
「今から見たことは秘密にして欲しい。
それが出来るなら俺も本気を出そう」
「はい、絶対に言わない」
パチッン!
指を鳴らすと、地面に魔法陣が浮かび上がる。
そこから骨の手が出て、魔骸骨が姿を表した。
「案内を頼む」
敵を見せるなら、即壊す。
従うかどうか……。
吸血龍ラビリスの反逆のような事が起きないか不安はあった。
だがあえて死霊術を使ったのは、この場所にも同じく死霊術の気配がしたからだ。
怨念に取り憑かれると正気を失うこともある。
ラカーユはほぼ無防備で守るには、風太にはこれしか無かった。
『……お任せ下さい』
礼儀正しく礼をする骸骨の姿はなんとも奇妙だ。
魔骸骨は悪霊をつまみ、喰らいながらゆっくりと奥へと進む。
これで悪霊に体を乗っ取られたりする心配はない。
それに取り込むことで強化されていく。
凶悪なアンデットが出てきたとしても撃退できるだろう。
ラカーユは困惑しつつも風太の側を付かず離れずの所を歩く。
聞いて良いのか解らず、戸惑っていたが意を決して尋ねた。
「えっとこの術は何なの?」
「俺は異界人らしい。
これはその力で俺自身も良く解っていない」
全くの嘘だ。
死者の書から教わったものを独自に改良して使いやすくした魔法だ。
メーメル師匠が最後に残した魔法が仕掛けてあって、役目を終えた時に崩れて花を開かせる。
死で終わりではなく、新たな生命を芽吹かせ広がっていく。
利用する罪滅ぼし、いや自己満足かも知れない。
そんな死霊術である。
「異界人の子孫なら知っているけど、
今度合わせてあげるね」
「なんでだろう結構、異界人の子孫って多い気がする」
「それはそうよ。
最初に召喚された異界人は500年前ぐらい、それから何代も世代を引き継げば数も多くなっていくわ」
「確かに……」
ビル群の痕跡から、そんなに時代の差がない時代から召喚されていたのかと思っていた。
前世の世界が急激な発展をしたのが受け入れられず。
色々と禁忌にして封印したのかも知れない。
魔骸骨が木の扉の前で止まる。
『この先、怖い……』
邪悪な気配が扉の隙間から漏れている。
引き返す選択肢は無いようだ。
ラカーユが扉を開こうと手を伸ばす。
『駄目……、触れてはならない』
魔骸骨が彼女を静止する。
触れてもなく木の扉が、ギギギィと音を立て開く。
鎖に繋がれた女が立っている。
開いた口は裂け鋭い牙が見える。
襲おうと走るが首に繋がった鎖がそれを止めていた。
手を振り回し、狂犬を思わす噛みつき。
鎖を何度も引っ張り倒れるさまは理性を感じる事はできない。
そんな光景に違和感があった。
だがラカーユは直ぐに攻撃態勢に入る。
「いま楽にしてあげるから……。
ファイア……」
風太はラカーユの口を抑えて止めた。
「うぐぐっ……、なんで止めるの?」
眼の前の繋がれた女は激しく暴れている。
今にも鎖が切りそうな程だ。
なのに鎖のジャラジャラ音が聞こえない。
静寂が包んでいる。
「冷静になれ。
君なら気付ける」
「幻……」
風太はパチッンと指を鳴らすと同時に新たに光る蝶を放つ。
幻影を消す力を付与した光の粒子が真実を見せる。
術式を脳内で改変し改定したのだ。
『後少しだったのに……』
あの女声だ。
幻影が消えると、ただボーと学園生の女が立っていた。
もし火の矢を放っていたら、直撃して居ただろう。
どうやら、この場所では加護が届かないらしく比較的新しい死体が転がっている。
悪霊の仕業なら、回りくどく幻影を見せて殺させない。
だとしたら、この殺人は生存した彼女なのだろうか?
真実を知るのは黒幕の悪霊だけ。
恐らく彼女は幻影を見せられて、人殺しをした記憶はない筈。
なら被害者として救うだけだ。
「鎖を切ってくれ」
『はい……』
魔骸骨は、鎖を引きちぎり解放する。
すると魔骸骨は砂のように崩れ落ちた。
「時間切れなの?
崩れてしまったけど……」
「役目を終えたんだ。
それより早く脱出しよう」
解放した女を抱きかかえると外を目指す。
『待って、まだ居るの……』
悪霊が動揺して追いかけようとした時、砂となっていた魔骸骨が手を再生し掴む。
一芝居打ったのだ。
まだ、何も解決していない。
元凶の悪霊を撃退するという大切な役目を。
その悪霊は死霊術師の魅力に取りつかれた女だった。
実験のために幾多の人間が犠牲になったか。
『ぎああぁぁっ』
魔骸骨に宿った霊は、そんな女に魅了されていた。
彼にとっては表の顔である教師に憧れ。
裏の顔を知ってなお、その生命を奪われても諦められなかった。
美しかったはるか昔の姿を思い浮かべ抱きしめる。
『共に消えよう……』
後に調査が入るが、そこには綺麗な花が咲き乱れていた。
死霊術を研究した者の成れの果て。
それが悪霊の正体だった。
その研究も何もかも禁忌として処理されることになる。
風太は旗を手にする。
他の所を巡りたかったけど、被害者を放置はできない。
エルニアの部屋に転送される。
被害者の姿がは無く別の所に転送されたのだろう。
同じくラカーユも居ない。
「見つけてくれてありがとう。
でもコースから一度出たからやり直しです」
エルニアは意地悪を言えば、何かしらの交渉をしてくると予想。
そうなれば妥協案として、一日デートとか、ムフフな事を企んでいた。
それを悟られないように真面目顔で言った。
「失格ってことなのか?」
「まだ時間は残っています。
スタート地点から、もう一度」
帝国の人々は規則を重視する。
多民族が暮らすための知恵だ。
交渉するだけ時間を失うだけと、気持ちを切り替えた。
「次は上級を通ろう。
時間がないから早く」
「もう少し時間を伸ばして欲しいみたいな要望は無いのですか?」
「規則は守らないと。
君にも立場があるだろう」
「それはそうですけど。
融通を聞かせても良いと思っていて」
んっ?
なんか怪しいな、親切で言っている気もするけど。
これまでの振る舞いが……。
「いや別にいい」
「借りを作りたくないのです。
ですから……」
「だから必要ないって言っているだろう。
君が何かを企んでいるのは何となく解る」
「そんな事はないです。
……はぁ、少しばかりデートをして欲しくて。それぐらい良いでしょう?」
「別にいいけど」
「やっぱり駄目ですよね。
ええっ、本当に……、では放課後に……」
エルニアは学園の外には出られない。
だが内部を、デートスポットに作り変えることは出来る。
早速、どう言う風に改装しようかとニタニタ初めた。
「その代わり、色々と試すことを見て見ぬふりをして欲しい」
「ええ、解りました。
けど学園を破壊しないで下さい」
スタート地点に転送されると風太は気合を入れた。
「全魔法起動」
術書に記載してある全ての魔法が順番に発動していく。
風太はふんわりと浮かび上がり、全ての能力が飛躍する。
「そうだ、覚えたばかりのを試してみるか。
昆虫型爆撃」
トンボの形をした精霊が無数飛び立つ。
魔獣を見つけると、拘束術式を発動し動きを封じ片っ端から攻撃術式を発動し撃退していく。
「おっと素材の回収も忘れずにと……。
食いしん坊の子栗鼠」
リスの姿の精霊がブワッと大量に現れ走り出す。
これで後はゴールするだけか。
高速で飛行し旗を取るまでに対して時間はかからなかった。
エルニアは驚愕して、監視の水晶玉を落として割ってしまう。
「凶悪魔獣をいとも容易く……。
再生成されまで試験は中止になりそう」
再び風太が彼女の前に転送される。
今度は……。
その頃アリアは、不思議な空間に迷い込んでいた。
「私が生徒会の一員に成れるなんてとっても嬉しいです」
美男子達に囲まれ、優しく接してくれる事に喜びを感じる日々。
様々な錬金術の研究が進んでいく。
調合釜に薬草や鉱石を放り込むことで、ポーションが作られる。
そんなことに何の疑問を持たなくなっていた。
彼女はこの迷宮に取り込まれて一部となりつつある。
与えられた役目を果たす為に記憶を刷り込まれていく。
気がつけば、前世の記憶が消え去りかけていた。
それどころか、風太との記憶も薄れつつある。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
構造理解で始めるゼロからの文明開拓
TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。
適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。
だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――!
――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる