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6章 帝国編
52話 希望
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「ぎああぁぁぁっ」
霧の濃い街に女の悲鳴が響き渡る。
駆けつけた帝国保安兵は残酷に切り刻まれた死体に絶句した。
全身が切り刻まれ服が血に染まる。
立て続けに起きている謎の殺人事件だ。
切り裂き魔の出現に人々は魔族崇拝者の仕業だと噂し、誰がと疑心暗鬼となっていた。
そんな事件が新聞を賑わす。
暇を持て余していたカミューラが食いつかないはずもなかった。
「この難事件、私が解決してみせます」
付き添いするメイド長サラは慣れた様子で直ぐに支度を整えた。
「奥様、私もご一緒させて下さい。
身体にもしものことがあれば、メイド達の首が飛びます」
風太がそんな事はしないのはお互いよく知っている。
だがメイドを雇用しているのは亡国の姫シャーオリだ。
彼女は狂人であり容易く命を奪う。
どうして風太がそんな狂人を妻として迎えているのか理解できないが……。
カミューラはシルクハットにタキシードにステッキと言う衣装に身を包む。
美男子を意識した男装だが、その女らしさは抜けきらず人目で性別が解る。
鏡を見ながら惚れ惚れとして、そのコスプレの完成度につい言葉が漏れる。
「実に格好良いとは思わないかい?
愛しいサラよ、私と共に移行では無いか」
「はい、とても美しゅうございます」
サラは日傘と革のトランクを手に付いて行く。
雰囲気から入り名探偵となった気分で、現地へ向かう。
霧の街は、近くに死者の沼が広がっている。
冷たい空気と沼地の温かい水温によって大量の蒸気が流れ込み濃い霧となる。
南側は第一王子が統治する王国へ通じる道があり最も王国に近い。
王国との交戦を避けるために沼地は放置され、今に至る。
湿気の多い土地で壁は苔に覆われ。
街灯の小さな光が昼間でも道を照らす。
「事件が起きたのは2日前。
現場に行っても何も残っていないでしょうね」
「死者に答えを聞くだけで宜しいのでは?
霊の言葉を聞く為の道具を持ってきています」
カミューラは額を抑え困ったように言う。
「結末を知った物語に興味はあるかい?」
「事件を解決するためにここに来たのでは?
直ぐに解決でききるならそれに越したことではないと思います」
「ちぃっちっちっ。
推理する楽しみを奪わないで欲しい」
「では私は先に確認させていただきますね」
もし魔族によって行われたなら、それは破壊工作だ。
推理している間に次の被害者が出る。
帝国……人類に取って不利益なのは間違いない。
事件現場には黄色のロープで囲われていた。
地面に白墨で人の型が記されている。
真っ直ぐな道に対して横向きに倒れていたのだろう。
中へと入るうとするカミューラを黒服の女が制した。
「こらっ!
現場に立ち入ってはいけない」
「私はカミューラです。
皇帝より保護を受けている客人と言えば理解して頂けるでしょうか?」
「悪名高い玉国の……。
これは失礼しました、私は保安隊長マーガットです」
保安兵を示す銀の羽飾りの着いた帽子を被っている。
護身用の細剣と警棒を腰に下げていた。
胸に勲章が着いており、それなりの成果を上げているのが解る。
「是非、協力したいです。
帝国に恩義を感じ、この様な卑劣な事か許せない」
「ここは私達に任せて頂きたい。
客人に……」
「失礼を働いた者が居たようですが、
今はどうしているのでしょうね」
冷ややかな言葉にマーガットは背筋が凍る。
何故か玉国の姫は皇帝のお気に入りらしく、手厚く保護されている。
軽い侮辱で処刑された者も少なくない。
機嫌を損ねれば命すら危うくなる。
「協力感謝します。
被害者は娼婦であり、怨恨による犯行だと思われます」
「それはどうして?」
「全身を切り裂いているからです。
切り傷は骨に届くほど深く、顔から足まで切りつけられています」
殺すのが目的ならば、そんなに斬りつける必要はない。
復讐心か怒り任せに過剰攻撃をしたと考えるているのだろう。
「悲鳴を聞いて駆けつけたと記事で見ました。
駆けつけたのは誰でしょうか?」
「私です。
見回り中に悲鳴を聞いてすぐに駆けつけたのでそれほど時間は経っていません」
顔が切られると言うことは正面を向いていた。
つまり姿を見て悲鳴を上げたのだろう。
「怨恨なら、どうして悲鳴を上げたのでしょう。
もし付きまとわれていたとしたら、眼の前に来たら助けを呼ぶと思います」
「悲鳴を上げるほうが直ぐに駆けつけてくれると思ったからでしょう」
「魔族に襲われているかも知れないのに、
だれが外に出るのですか?」
既に何度も事件が起きて魔族関与の噂も出ている。
そんな状況で悲鳴を聞いたらすぐに思いつくのは魔族の襲撃の方だろう。
被害に合わないように扉を閉ざしひっそりと隠れて脅威が去るのを待つのが普通。
街で悲鳴を上げるのは不意に襲われて驚いた時ぐらいだ。
「ぐぬぬぬ……。
仕方ありません、被害者は法術によって切り刻まれたようです」
マーガットは怨恨と言う推理をすれば納得して帰ってくれると予想していた。
それが外れて無駄に時間を取られることよりも正直に話したほうが得策と判断。
すぐに切り替え話し出す。
「法術と断定したのは、不正術書の痕跡があったためです。
使用すると、切り口付近に紫色のまだら模様が色濃く出ます」
正規品を街で使用すれば管理塔に記録が残る。
何時、誰が何処で何を使用したかまで詳細に記録され管理されていた。
だから暗殺には記録に残らない不正改造した術書が利用されている。
「犯人の目星は着いているの?」
「いいえ、部下が闇市へ情報収集を行っています。
どんな凶悪な人物か……」
「恐らく若い男、背丈は被害者と同じか少し高い程度。
左利きなことぐらいしか解らないです」
「犯人をでっち上げるつもりですか。
そんな事は許されません」
「安心しました。
不正を働くような方とは一緒に推理は出来ませんから」
カミューラは不敵な笑みを浮かべる。
パッチンと指を鳴らすと、石畳の記憶が呼び起こされた。
道に赤く光る足跡が浮かび上がる。
離れるほど光は弱く、痕跡も消えていた。
「再生術を使うなんて。
不正術式まで再生したら危険だと解らないのですか?!」
「貴女の推理は外れ、玉国で作られている術式を封じた秘薬が使われたのでしょう。
液を巻くだけで術式が発動しますから」
「……そんな情報は入ってない」
「極秘事項ですから、これは誰にも話していけません。
では犯人探しをしましょうか」
赤い爪商会創設者の孫娘であるジェーリアはお嬢様として育てられた。
他者を蹴落とし帝国一の商会へと発展した経緯がある。
その思想を色濃く受け継ぎ、利用できる者はこき使い敵対者は徹底的に排除した。
彼女は爪を噛みながら苛立つ。
「どうしてスパイが陰湿な新聞屋を使って我が商会の悪行を流すのです。
こんなっ屈辱……、明らかな利敵!」
懐柔されて寝返ったとしても、悪質な嘘を流すのはやり過ぎだ。
下手をすれば商会が潰れ、何十万もの社員が路頭に迷うことになる。
それだけではなく帝国の流通が破壊され混乱に陥る。
「お嬢様、落ち着いて下さい。
もみ消すように動いています」
いま帝国で話題となっているのは、連続切り裂き事件である。
小さな広告欄に書かれた赤い爪商会の闇を見るものは居ない。
「どんな手を使っても良い。
セフーを連れてきなさい」
死を願うような苦痛を与えなければ気がすまない。
それほどの大罪を犯した。
「既に確保しております。
古倉庫に捕らえ拷問している所です」
「直ぐに会いに行きます。
この手で鉄槌を下さねば気が収まりません」
町外れの古びた倉庫。
今は使われておらず、屋根の一部が崩れ落ちていた。
錆びついた鉄の引き戸をジェーリアは開く。
椅子に縛られた女の姿がある。
「どうしてこんな事をしでかしたのか。
説明してもらいましょうか」
「……」
彼女が近づくと直ぐにそれが人形だと気づく。
「あっはは……。
滑稽ですね、ついにこの時を待っていました」
下僕として付き従っていた青年アダンはゲラゲラと笑う。
「私に手を出せばどうなるか解っているでしょう。
お仕置きが必要かしら?」
「下僕の刻印は既に消してありますよ。
お前達一族に復讐が出来る時をどれだけ待ったか」
「まさか、デマを流したは貴方。
能力を高く買って居たのに、飼い犬に噛まれるなんて」
「そんな事はどうでもいいだろう。
このペンダントに謝ってくれ、これは親が作っていた商品」
ありふれた女神を模した銀のペンダントだ。
「そんなガラクタにどうして私が……」
「これは両親が丹精込めて作った代物。
職人の魂がこもっている」
「苦労したからと言って無駄に値を吊り上げ、
民から搾取しているだけの職人に価値はない」
「何だと」
「赤い爪が技術革新し大量に生産し価格を下げた。
それは多くの人達に装飾をつける楽しみを提供するという志が合ったから」
「上面だけの綺麗事、富を独占したいだけなのは解っている」
「魔族の戦略によって溶鉱炉が破壊され、
それに従事する人々が犠牲になった」
帝国の産業が衰退するきっかけとなった大厄災である。
数十年前の事にもかかわらず、未だに製鉄業が壊滅しているのは技術が失われたため。
技術者が他国へと逃げてしまった事が原因だ。
「だから精錬された金属を輸入し加工することで成り立っていた。
金属の加工は職人達の技術があって出来ること、それを失わせたのは悪ではないか」
アダンは帝国が更に金属加工の技術まで失う事を危惧していた。
生活が出来なければ、職業として成り立たず技術は継承できない。
「帝国から鉱石を提供していた頃は良かったかも知れない。
けど鉱山も魔獣が出現し廃坑となり、他国の鉱石を必要とした事を理解しているかしら?」
「何をそんな事、それで金属の価格が倍近くに跳ね上がったことぐらい知っている。
親が値段をどうするか悩んでいたのを見ていたからな」
「どうして価格が跳ね上がったのか。
それは帝国に資源が流出することを恐れたから加工用の延べ棒に高い関税を掛けたからよ」
「今度は隣国に責任転嫁するつもりか?
笑わせてくれる、誰が納得するものか」
「だから私達は現地で加工し製品を輸入することで関税の穴を突くことで価格の高騰を抑えたわ。
それを成し遂げた、お爺様の功績はとても素晴らしいとは思わない?」
「ははっ。
他国に技術を売り渡した売国奴ではないか」
「そうかしら。
分業化し専門技術が必要なところだけは職人が行い、誰でも出来ることは安い労働者に任せる。
そういった努力はしていたの?」
それは大商会だから出来ることだ。
個人規模の工房では、人を雇用する為の賃金を用意するのが困難だ。
人を雇えばそれだけ価格が高くなり、より買い手を遠ざける。
だから出来ることは一人で行い経費を削減するしか無かった。
「手抜きはしない。
すべての工程を職人の手で成し遂げる、それが最も優れた芸術的な商品となる秘訣だ」
「手抜きだって、片腹痛いわ。
そうやって非効率な事をしているから生産性が上がらず、
価格高騰の原因となっている事に気づかないなんて哀れ」
「ふざけるな、欲望のために追い込んだ悪党が。
職を奪われて命を絶たなければならなかった」
「それは無能だったから。
才があれば切り抜けられる、それを私の責任として押し付けているだけ」
「ならこの状況も切り抜けられるというのか?
もう話すことは何も無い」
その言葉にな隠れていた者達がぞろぞろと出てくる。
各々手に鈍器を持っいた。
痛めつけてから殺そうという腹づもりなのだろう。
ジューリアは術書を手に取り構える。
「連鎖する赤い電撃……」
手の先から放たれる赤い電撃が一網打尽にするはずだった。
男が投げた瓶に、電撃が吸い寄せられ砕く。
パリン!
緑の液が飛び散り電撃を吸い取る。
地面を伝いジューリアに電撃が襲う。
ビリリ、服が焦げる匂いを放つ。
手元から術書が落ち、手がだらんと下る。
痺れて力が入らない。
立っているだけで精一杯だった。
「お嬢様、この瓶は玉国から輸入したものです。
貴方に妨害されてこんなに在庫が、……御覧ください」
倉庫に置かれた木箱には防水布が被せられていた。
山のように詰まれた木箱。
過剰に買いすぎて、売りさばけなかったのだろう。
「思い出しましたわ。
買い占めして暴利を貪ろうとした哀れな転売人に制裁を加えたのを」
命の危機があるというのに、まだ威勢が良い。
強さを知らないのかとアダンは恐怖心を抱く。
身動きも取れず殴り倒すことなど容易い小娘に怯える必要はないと拳に力を込める。
「もう法術も使えないでしょう。
彼らの怒りを堪能して貰いましょうか」
コンコン
鉄の戸を叩く音が響く。
「やあ、諸君。
私はカミューラ、しがない探偵……」
探偵というのは異界人が記した書物に出てくる謎の職業だ。
どの様に利益を得て生計を立てているのか解らず。
当然、職として成り立たず、この世界には存在しない。
それでも探偵と名乗るのは変人でしか無い。
「ちょっと冗談を言っている場合ではないです。
保安隊長のマーガット、貴方達は包囲されている、武器を捨て投降しなさい」
部下は闇市の調査で居ない。
包囲しているというのは嘘だった。
サラが声を変えつつざわざわと騒いで見せたが、一人では無理があった。
「報復すると決意したのだろう。
成し遂げて散ろう!」
アダンの言葉に、動揺していた者達も拳を突き上げ唸り声を上げた。
どの道、彼らには先がない。
道連れの自殺、こそが彼らの企みであった。
「諸君に悲しいお知らせをしなくてはならない。
何故なら、その箱に入っている瓶は不正に複製された偽物なのです」
「それがどうしたという」
ステッキで床を三度突く。
すると液が変質し動き出す。
「うあっあぁぁっ」
集まっていた人々をに絡みつき襲いかかったのである。
「この通り私の意思通りに動くというわけです。
さて残ったのは貴方だけですがどうします?」
アダンは落ちている術書を手に取った。
学園の術書は共通の鍵で使用できる。
お嬢様の側にずっと居た彼はどんな術式があるのかよく知っていた。
「殺戮の漆黒剣」
すべてを切り裂く暗黒の刃が飛び出すはずだった。
だが術は液体に飲み込まれて消え去る。
「愚かな。
それは強欲な術喰いです」
法術に反応して食らいつき襲う。
術を喰えば肥大していく。
そんな代物だ。
本来なら特定の術にだけ反応し阻害するもの。
何でも反応してしまうのは欠陥品である証拠だ。
「なんて事をしてくれたのですか。
犯人を捕縛しなくてはならないのに……」
「動きを封じるだけで、無害です。
早く取られば良いだけですわ」
「いや……、あのネバネバに触るのはちょっと……。
あー最悪、早く誰か来てくれないの?」
そんな願いは虚しく、誰も来る様子はない。
カミューラはジェーリアに手を差し伸べ、癒やしの術を施す。
「ありがとう。
でもどうしてここに?」
「この瓶の情報を追っていたらここにたどり付きました。
廃業して大量の在庫を抱えているって」
単なる偶然、運のめぐり合わせ。
もし早くても、遅くてもジェーリアはボコボコにされていただろう。
「女神が微笑んだようね。
私は帰って宜しいかしら?」
マーガットは優しくジェーリアの手を握る。
「いえ、話を聞きたいので待って頂きます」
「彼らは私を殺そうとしました。
彼らの処遇はどうなるのです?」
「それは法廷が決めます。
私達は捕縛するだけです」
保安兵だからといって、無闇に命を奪うことは許されていない。
当然だが相手が魔族や明確な殺意を持って襲い掛かってくるような止む得ない時を除く。
その頃、風太はある秘密に感づいていた。
それを確かめるためにアマネルに会う。
「あの本を見せて欲しい」
「にひひひ、遂に風太も目覚めてしまったのかな?
でも、その態度で渡してあげるつもりはない、私の足を舐めて見せたら考えても良いけど、どうする?」
「演技は止めてほしい。
君がその本の裏に記されたモノに気づかないはずはない」
表向きは同人誌だが、隠された文書は全く違うものだろう。
それを独占し、異常な振る舞いをすることで危険なものだと周知させる。
興味本位に見たとしても、表に気を取られて気づきにくい。
「……知ってどうする?
私達にとって不利益をもたらすものばかり、知って後悔するだけの事です」
「それでも知りたい。
君が隠そうとした物が何なのか」
「不老不死の秘術。
でもそれは魔族、アンデット、亜人……様々な進化を促した。
どれにも欠陥があり完全な不死にはならない」
「どうしてだ?」
「人間に寿命があるのは、病の蔓延を防ぐため。
病は常に進化し身体を犯そうとする。
だから攻略される前に新しい命を生み出し古い個体は攻略情報を与えないように死ぬ」
見えない攻防が常に行われている。
もし単一の遺伝子しかなければ、病が蔓延し全滅してしまう。
種が生存するための戦略なのだ。
「俺は不老不死に興味はない。
ただ本当にそんな事が書かれているのか確認したいだけ」
「どうしても見たい?」
「いや、疑って済まない。
君を信じて良いのか迷った」
「この紐を引っ張ってくれる?」
……巫女服を止めている紐だ。
引っ張れば脱げてしまう。
「ちょっと油断すれば、破廉恥な事をさせようと。
君はそういう冗談を……」
「アマネルの趣味を知っても嫌いにならずに居てくれるって凄く素敵。
ご褒美をくれたって良いでしょう?」
「良いけど。
今じゃない、もう少し親身になってから……」
「あー、ヘタレのざーこ、ざーこ。
アマネルの魅惑に虜になるのが怖いだけの癖に」
アマネルは棚にあった本を投げつけた。
同人誌に偽装した不死計画書。
玉国こそが死者の書が告げた古代に滅びた国の生き残り。
遥か千年前から続く、壮大な計画の全貌が書かれていた。
病を防ぐために死者の肉体を使い魂を定着させる。
数多くの実験が必要だが、表に出すことは出来ない。
そこで死霊術の有益性を示し興味を持たせ虜にしていく。
その一方で害悪を認知させ、表立って研究出来ないように縛りを与えた。
それでも研究を進める者には断片的な情報を与える。
欠陥のある情報を復元させ、更に進歩させるように誘導するためだ。
風太は心当たりがあり、支配の仮面も命の危険がある欠陥品だったり。
ゾンビ化も暴走しグールとなって制御を離れる。
兵器としての魔骸骨は一つのゴール地点でもあった。
「俺は奴に利用されていたんだな。
禁書庫に封じられる事を選んだのも……」
死者の書が持っていたのは遠くを見る目だけではなかった。
手駒もあったのだろう。
だとすれば……、色々と辻褄が合う。
アマネルが手招きする。
「さあ、脱がして。
忘れさせてあげるから……、違う、ただ子供が欲しい……、その願いを叶えて」
目が潤み切実な願い。
それに心打たれそうに成り動揺する風太。
「ずるい。
不意打ちでそんな事をするなんて……」
アマネルは風太に抱きつき唇を重ねる。
舌が絡む。
「どうしてこんなに急ぐんだ。
焦らなくてもいいだろう」
「真実を知って、野放しには出来ないでしょう。
ケリを付けるために命を賭ける気がして、それが怖い」
「大丈夫、俺は君達を置いて行くつもりはない」
「うん。
けど余り待たせないで……」
「解った」
視線を感じ振り向くと、工房で働く四つ耳族の女達が扉を少し開き覗いていた。
「入ってきなさい。
貴方達も欲しているのは解っています」
「おい、待て勝手なことを言うな」
「相手してくれなかった罰です。
あーもしかして、やっぱりヘタレなのかな、まだ恥ずかしがるなんてウブもウブ」
「解った……」
それが余計な一言だった。
彼女達は群がるように風太に抱きつく。
獣耳には心惹かれるものがる。
触りたくなる欲望を駆り立てられてしまう。
それを愛情として受け取っているのだろう。
差別され蔑む対象である獣耳を愛してくれるものは一握りでしかない。
だからこそ彼女達は必死だった。
自分を精一杯アピールして、抱いてもらおうと。
「私の兎耳を触って下さい」
「きゃあぁぁー気持ちいい」
「私もーおねがい」
相手しないと解放してくれそうにない。
四つ耳族を守るために受け入れたのは風太である。
責任を果たすしか無い、愛情を持って接することで期待に応えよう。
風太が解放されたのはそれから数時間後のことだ。
ヘトヘトになってベットに倒れ込む。
次の日、メイド達が風太の元に押し寄せた。
「聞きましたよ。
ずるいじゃないですか」
「そうだ、私達も愛して下さい」
「ちょっと待て、何を聞いたんだ?」
というか、メイドもなんか増えている。
新顔も混じって、一体何に惹かれているんだろう。
話すらしたことがなくても愛せるものなのか?
学園にも若い男は居たのに。
一体どこから連れてきているんだろうか。
「抱いてくれるって聞きましたよ。
ムフフなことも、したいですし……」
「いや、ムフフって待てそんな話はした記憶がない。
とにかく落ち着いてくれ」
「助けてもらった事は感謝しています。
それにこうして働く先も提供して貰った事も、でも子が欲しいのは我慢出来ないんです」
「助けた?
何時のことだ」
身に覚えのないことだ。
平日は学業に夢中で殆ど学園で過ごしている。
人違いという訳でもなさそうだけど……。
困惑する風太だったが、それもその筈だ。
裏の組織アルファによって、救出作戦が実行されていたからである。
人身売買の拠点を破壊し、数多くの成果を上げていた。
その一部の者達は住む場所すら無く、こうしてメイドとして生活を提供されている。
「もう、とぼけなくとも。
どんなご奉仕でしますから」
「サラ、来てくれ!」
ハンドベルを鳴らすが、来る気配がない。
「メイド長はお出かけです。
今日は祝日ですから、たっぷりと楽しみましょう」
「待て待て、メイドなら家事が仕事だろう」
「てへへ……。
こういう事もお仕事の一環です」
「嘘を言うな。
解ったから時間が開いた時に……」
「その言葉を忘れないで下さいね」
約束をするとメイド達はさっさと仕事に戻り居なくなった。
ふぅー。
メイド長が居ないと暴走するのは困るな。
「大変困っておるようで実に愉快。
少し話をしてもよいか?」
そう言うと竜人ソニャームが部屋に入ってくる。
彼女は特になにかする訳でもなく居候みたいな感じでのんびりと屋敷で過ごすだけだ。
そんな彼女が珍しく声をかけてきたことに風太は驚く。
「君もまさか……」
「妻として迎えてもらったと思っておる。
ならば夫の勤めを果たしてもらわねばならない」
「急に、皆どうかしている。
一体どういう事だ」
「アハハハ……。
青楓に新しい命が宿っておる」
「んん? つまり俺の子?」
「恐らく。
彼女とはどんな夜を過ごしたのか知りたい」
「それは恥ずかしくて言えない。
それで皆、欲しくなったのか……」
いやそれより祝をしよう。
名前も考えないと……いや俺が考えたら変な名前になってしまう。
青楓に任せるか。
「わらわが監視の役目で側に居たことを察しているのであろう。
竜人の秘密に感づいてしまったと見ている」
「あの同人誌の裏に何が書かれていたのかは知らない。
興味はあるけど、それを知っても仕方ない」
「ふむ。知っての通り、竜人族は物を作れない。
奪うことで富を得てきた」
反物があったけど、それを利用して服を作っている感じはしない。
地下のトロッコも、色々な設備も奴隷に作らせたものらしいし。
「誰だって苦手なことぐらいあるから。
別にいいんじゃないのか?」
「それでは困る。
わらわの子孫に教育を施し、技術を覚えさせたい」
竜人と言うだけで恐怖の対象となる。
権威があり頭を下げる事を嫌う。
格下である人間に教えを請う事など許されないのだろう。
「それは良い夢かも知れない。
けど俺はレモプティも大切にしたいと思っている」
竜人の国に向かいれてくれ、知恵を授けてくれた感謝もある。
大金を騙し取ったような後ろめたさも……。
出来れば彼女を迎え入れたいが、帝国民を納得させるのは難しそうだ。
「ほお。
ならば転送門で繋げば良い」
「それが出来れば苦労はしない。
あの術式は解析できなくて……」
「魔素が集まる場所に魔狩場核を設置すれば良い。
ふふっ、魔将を討ち取った場所が汚染されていて設置できるやも知れぬな」
……学園もダンジョンを利用して創られていた。
管理すれば移動手段として利用できるのか。
「良い考えだけど、その核は何処から手に入れるんだ?」
「存在する場所を知っているであろう。
学園から奪えば良い」
「それは出来ない。
学びたいことも沢山あるし、恩義もある」
「異変の事は覗き見させてもらっています。
あれは恐らく核が2つあるから起きている」
管理されていない場所が維持できているのは不思議だった。
もう一つ核があれば、侵食する形で形成出来たのも頷ける。
んっ?
「待ってくれ。
覗き見って、何を見た?」
「全て、その目に映るものと言えば」
「って、夜も見ていたんだろう。
うわ恥ずかしい」
「そこまで無粋なことはしない。
あっはん……」
彼女の手の動きに違和感があったが、何も気づかなかった。
が、それの意味に気づいとき風太は顔を赤く染める。
「くっ……、俺にプライバシーは無いのか?
君も覗き見されていたら怒るだろう」
「惚れた男の全てを知りたいと思うのも乙女の心と許してくれぬか?
わらわも少しは悪いと思っている」
「……はぁ、まあ良い。
君の役目を果たしだけだ、そっと心に閉まって黙っていて欲しい」
ソニャームは風太の頬に口づけする。
誓い、それとも愛なのか。
調理場に青楓が立っていた。
るるる~♪と鼻歌。
じゃが芋の皮をナイフ一本で剥く。
手際よく、慣れた手つきにメイド達は感心する。
「奥様が、調理が出来るなんて素晴らしいです。
芋料理は初めてで……」
芋は家畜の餌として認識されるほど不味い代物だ。
それはどんな調理をしても美味しくならなかった為で人間の食べるものではないと結論が出いてた。
品種改良が行われても原種の印象が強く残っている為だ。
メイド達は不味いものを食べさせられる覚悟をしていた。
「うちが作れる料理の中でも一番美味しい。
覚えて作ってくれると嬉しい」
「はい、喜んで」
芋を蒸し器に入れ蒸す。
青楓の手作りで、四角い枠にすのこを置けるようにした簡単なものだ。
蒸気を逃さないように木の蓋を閉めて待つ。
「待っている間にパンを粉々にして……」
「あの、それはどういう意味でしょうか?
折角焼き上がっているパンをどうして粉にするのか解りません」
「うーん。
それはサクサクにするため、うん、多分あっている」
メイド達の顔色が真っ青になっていた。
本当に料理が出来るのか。
そもそもパンは小麦粉から作る。
粉を一度固めて、また粉に戻すと言う不可解な行動にしか見えない。
「小麦粉を使っては行けないのでしょうか?」
「小麦粉も使うけど、パン粉も必要。
前世では大好物でいっぱい作って食べたから是非味わって欲しい」
前世という言葉にメイド達は死の淵から戻ってきたような。
恐ろしい印象を抱く。
食べたら死ぬかも知れない。
「あはは……。
堪能させて頂きます」
芋が蒸し上がると、ボールに入れて潰し始める。
るるる~るる~♪
炒めたミンチを少し混ぜて、小判型に形を整えた。
「うちのは、ミンチ抜きの四角型。
間違わないように」
「はい」
用意したミンチは、残っていた肉をかき集めて作ったものだ。
失敗するだろうと思っての事だが、それがバレたのだとメイド達は肝を冷やす。
「いい感じ。
見て美味しそう」
「はい、美味しそうです」
そして、小麦粉をまぶして溶き卵につけてパン粉を付ける。
卵は生で食すなどありえないことで、食中毒となるために必ず加熱するのは常識だ。
鳥はうんこを出す場所から卵を生むのである。
卵の殻には雑菌が着いており、綺麗に洗浄する必要があった。
帝国には、そんな洗浄技術はない。
メイド達は、それを食べると思いどの様に動けば被害を抑えられるのかを考え始めていた。
胃薬……いや下剤、薬師を呼んだほうが……。
そんな取り越し苦労は直ぐに終わる。
熱した油で揚げ始めたからだ。
「サクサク、うまうま、るるる~♪
うちの愛情たっぷり」
ホッとしたメイド達だったが、出来上がった狐色の謎の物体に困惑を隠せない。
油であげるとしても、素揚げで衣を付けない。
初めて見る料理なのである。
これが完成形なのか、それともまだなのか。
それすら判断できない。
「あのこれで完成でしょうか?」
「うーん、まだ。
慌てるのは良くない」
既に形が整っていると言うのに、何をするというのだろうかとメイド達は想像する。
もしかしてまた、粉状に削るのでは?
薄い楕円形は持ちやすそうに見える。
けどそんな事をする意味は解らない。
「次は何をするのでしょうか?」
「うーん、野菜を切るのを手伝って欲しい」
レタスを手で引き裂いて皿に盛っていく。
その上にミニトマトを置く。
メイド達は困惑しか無かった。
このサラダとあれとどの様な関係があるのか。
飾るために楕円形をしている……でも、熱さでしなびてしまう。
いや、冷ましてから盛り付けるのでは。
そう考えていた時だ。
鍋にソースを入れて煮込み初めた。
甘酸っぱい香りが漂う。
「それは?」
ソースは青楓が数日前に作り置いたもので、保存できるように蒸留酒が混ぜてある。
アルコールを飛ばすために煮込んでいるのだが、
メイド達は困惑しか無かった。
折角カラッと揚げたものを煮込むのかと思ったのである。
これが異界の闇鍋……ダークマターと言う伝説の料理……とメイド達は絶句しか無かった。
「コロッケに掛けるソース。
野菜の旨味が凝縮した特性のタレで作った」
何も付けなくとも美味しいが、ソースが掛かっている方が好きだった。
更に盛り付けたコロッケにソースを素早く波線を書くように垂らす。
香ばしい香りにソースの香りが入り混じり美味しそうではあった。
メイドは一口。
「熱っ……、でもこの皮のサクサク感、中の甘みと肉汁がソースと絡み合い。
ああっなんて美味しいのでしょう」
「風太にも、食べさてあげよう。
きっと喜ぶ」
「こんな美味しいものが食べられるなんてとても幸せです。
この料理は代々受け継ぎます」
青楓が、皿を持って行こうとすると風太がやってくる。
「食べて、うちが作った」
「美味しい。
懐かしい味だ、でもどうして?」
風太は醤油派だが、ソースも悪くないと思った。
出来立てのサクサク感がとても美味しい。
「なんか食べたくなったから」
風太は青楓の首にペンダントを付けた。
安全の祈りを込めたものだ。
「新しい命を宿しったて聞いたから。
お守りにとお腹の子も守ってくれる筈」
「ありがとう。
大切にするから」
霧の街の闇はまだ晴れない。
「きゃああぁぁぁっ」
更なる被害者がでたのだった。
アダンは犯行の一部を認めたが、殺害については否定した。
そもそもジェーリアと学園生活をおくっていた彼にはアリバイがあり犯行は不可能だった。
「この謎を解き明かすには、まだピースが足りてないようね」
カミューラは朝の紅茶を飲みながら思案する。
闇市での術書の販売記録はない。
そもそも生産数が少ない術書を手に入れるのが困難となっている為だ。
倉庫にあったスライムは術を吸収する代物で攻撃用途には使えない。
殺害方法は一体……。
サラは冷たく言い放つ。
「ではヒントを出しましょうか?
そろそろ帰宅した方が宜しいかと思います」
「それは私が負けた気分になる。
推理で導き出したいとは貴女は思わないのかい?」
「はい、早く帰り。
風太殿を愛でたいと思っています」
「それは魅力的な提案。
しかしー、謎を解き明かさなければ愛する者に合わせる顔もないというもの」
「面倒なお方です。
この事件が解決しては困る人物がいるのとは思わないのですか?」
「不可解な。
事件が起きて喜ぶものなんて居るはずもない。
もし居るとしたらそれは異常者に違いない」
「いいえ。
奥様が裏で行っている件に関係します」
アルファ部隊を使い、誘拐された者達の解放を行っている。
赤い爪商会が裏で行っている人身売買の情報を掴んだことで出来たことだ。
「ふーん、赤い爪商会が裏で糸を引いていると。
それはまずありえない」
「それはどうしてです。
この小さな記事を御覧ください」
サラは、新聞に丸を書いておいた。
赤い爪商会が行った悪事が暴露されている。
「その情報は一体誰が記したと思う。
アダン、その商会の孫娘が手駒にしていた男」
「ええ、それをもみ消すために行っていると考えれば」
「アルファにコウモリが居るのだけど。
彼女は黙することを決め何も伝えなかった」
手駒に過ぎない男が裏の事情、それも遠く離れた北の地で起きていることをどうして知っていたのか。
ジェーリアが裏と関わっていたのなら、それを暴露されればジェーリアは終わる。
にも関わらず、アダンが捕らえられたことを気にもとめる様子はなかった。
「ではどの様にお考えなのですか?」
「王国の権力者、第一王子」
「それはありえません。
それは私が保証します」
サラは第一王子派の貴族達の魂の集まりである。
実際にあったこともあり、無意味な殺戮を指示するとは想像もできない。
「アダンがどうやって、あれだけの人材を集められたのか。
それは後ろ盾があってのこと」
「それなら赤い爪商会でも可能です」
「ちぃっちっちっ、私の直感が告げている。
玉国を滅ぼすように仕組んだのも恐らく彼」
「……ただの空想に付き合う気はないです。
犯人は仮面を付けたローブの女です」
……。
「なっ、答えを言ってはならないと言ったのに。
それはズルいと言うものだ」
「全て大外れでしたね。
どんな人物か、マーガットに伝えておきます」
「しかし、それを信じてもらえるとは思えない。
何故なら死霊術の証明が出来なからだよ」
「ご心配なく、そのために被害者となるものを予測し、
監視を付けていました」
「なら守れなかったは失態ではないか。
どうして見殺しに……」
「既に死んでいるものが2度殺されるなんてありえませんから。
被害者はゾンビです」
「貴女も……」
「ええ、傍でずっと見てきましたから。
それなりには使えます」
犯人の逮捕により、連続殺人は幕を閉じる。
娼婦は帝国の恥、根絶すべきと犯行を認め赤い爪商会との関わりは否定された。
寝取られた女の暴走として片付けられるのだった。
霧の濃い街に女の悲鳴が響き渡る。
駆けつけた帝国保安兵は残酷に切り刻まれた死体に絶句した。
全身が切り刻まれ服が血に染まる。
立て続けに起きている謎の殺人事件だ。
切り裂き魔の出現に人々は魔族崇拝者の仕業だと噂し、誰がと疑心暗鬼となっていた。
そんな事件が新聞を賑わす。
暇を持て余していたカミューラが食いつかないはずもなかった。
「この難事件、私が解決してみせます」
付き添いするメイド長サラは慣れた様子で直ぐに支度を整えた。
「奥様、私もご一緒させて下さい。
身体にもしものことがあれば、メイド達の首が飛びます」
風太がそんな事はしないのはお互いよく知っている。
だがメイドを雇用しているのは亡国の姫シャーオリだ。
彼女は狂人であり容易く命を奪う。
どうして風太がそんな狂人を妻として迎えているのか理解できないが……。
カミューラはシルクハットにタキシードにステッキと言う衣装に身を包む。
美男子を意識した男装だが、その女らしさは抜けきらず人目で性別が解る。
鏡を見ながら惚れ惚れとして、そのコスプレの完成度につい言葉が漏れる。
「実に格好良いとは思わないかい?
愛しいサラよ、私と共に移行では無いか」
「はい、とても美しゅうございます」
サラは日傘と革のトランクを手に付いて行く。
雰囲気から入り名探偵となった気分で、現地へ向かう。
霧の街は、近くに死者の沼が広がっている。
冷たい空気と沼地の温かい水温によって大量の蒸気が流れ込み濃い霧となる。
南側は第一王子が統治する王国へ通じる道があり最も王国に近い。
王国との交戦を避けるために沼地は放置され、今に至る。
湿気の多い土地で壁は苔に覆われ。
街灯の小さな光が昼間でも道を照らす。
「事件が起きたのは2日前。
現場に行っても何も残っていないでしょうね」
「死者に答えを聞くだけで宜しいのでは?
霊の言葉を聞く為の道具を持ってきています」
カミューラは額を抑え困ったように言う。
「結末を知った物語に興味はあるかい?」
「事件を解決するためにここに来たのでは?
直ぐに解決でききるならそれに越したことではないと思います」
「ちぃっちっちっ。
推理する楽しみを奪わないで欲しい」
「では私は先に確認させていただきますね」
もし魔族によって行われたなら、それは破壊工作だ。
推理している間に次の被害者が出る。
帝国……人類に取って不利益なのは間違いない。
事件現場には黄色のロープで囲われていた。
地面に白墨で人の型が記されている。
真っ直ぐな道に対して横向きに倒れていたのだろう。
中へと入るうとするカミューラを黒服の女が制した。
「こらっ!
現場に立ち入ってはいけない」
「私はカミューラです。
皇帝より保護を受けている客人と言えば理解して頂けるでしょうか?」
「悪名高い玉国の……。
これは失礼しました、私は保安隊長マーガットです」
保安兵を示す銀の羽飾りの着いた帽子を被っている。
護身用の細剣と警棒を腰に下げていた。
胸に勲章が着いており、それなりの成果を上げているのが解る。
「是非、協力したいです。
帝国に恩義を感じ、この様な卑劣な事か許せない」
「ここは私達に任せて頂きたい。
客人に……」
「失礼を働いた者が居たようですが、
今はどうしているのでしょうね」
冷ややかな言葉にマーガットは背筋が凍る。
何故か玉国の姫は皇帝のお気に入りらしく、手厚く保護されている。
軽い侮辱で処刑された者も少なくない。
機嫌を損ねれば命すら危うくなる。
「協力感謝します。
被害者は娼婦であり、怨恨による犯行だと思われます」
「それはどうして?」
「全身を切り裂いているからです。
切り傷は骨に届くほど深く、顔から足まで切りつけられています」
殺すのが目的ならば、そんなに斬りつける必要はない。
復讐心か怒り任せに過剰攻撃をしたと考えるているのだろう。
「悲鳴を聞いて駆けつけたと記事で見ました。
駆けつけたのは誰でしょうか?」
「私です。
見回り中に悲鳴を聞いてすぐに駆けつけたのでそれほど時間は経っていません」
顔が切られると言うことは正面を向いていた。
つまり姿を見て悲鳴を上げたのだろう。
「怨恨なら、どうして悲鳴を上げたのでしょう。
もし付きまとわれていたとしたら、眼の前に来たら助けを呼ぶと思います」
「悲鳴を上げるほうが直ぐに駆けつけてくれると思ったからでしょう」
「魔族に襲われているかも知れないのに、
だれが外に出るのですか?」
既に何度も事件が起きて魔族関与の噂も出ている。
そんな状況で悲鳴を聞いたらすぐに思いつくのは魔族の襲撃の方だろう。
被害に合わないように扉を閉ざしひっそりと隠れて脅威が去るのを待つのが普通。
街で悲鳴を上げるのは不意に襲われて驚いた時ぐらいだ。
「ぐぬぬぬ……。
仕方ありません、被害者は法術によって切り刻まれたようです」
マーガットは怨恨と言う推理をすれば納得して帰ってくれると予想していた。
それが外れて無駄に時間を取られることよりも正直に話したほうが得策と判断。
すぐに切り替え話し出す。
「法術と断定したのは、不正術書の痕跡があったためです。
使用すると、切り口付近に紫色のまだら模様が色濃く出ます」
正規品を街で使用すれば管理塔に記録が残る。
何時、誰が何処で何を使用したかまで詳細に記録され管理されていた。
だから暗殺には記録に残らない不正改造した術書が利用されている。
「犯人の目星は着いているの?」
「いいえ、部下が闇市へ情報収集を行っています。
どんな凶悪な人物か……」
「恐らく若い男、背丈は被害者と同じか少し高い程度。
左利きなことぐらいしか解らないです」
「犯人をでっち上げるつもりですか。
そんな事は許されません」
「安心しました。
不正を働くような方とは一緒に推理は出来ませんから」
カミューラは不敵な笑みを浮かべる。
パッチンと指を鳴らすと、石畳の記憶が呼び起こされた。
道に赤く光る足跡が浮かび上がる。
離れるほど光は弱く、痕跡も消えていた。
「再生術を使うなんて。
不正術式まで再生したら危険だと解らないのですか?!」
「貴女の推理は外れ、玉国で作られている術式を封じた秘薬が使われたのでしょう。
液を巻くだけで術式が発動しますから」
「……そんな情報は入ってない」
「極秘事項ですから、これは誰にも話していけません。
では犯人探しをしましょうか」
赤い爪商会創設者の孫娘であるジェーリアはお嬢様として育てられた。
他者を蹴落とし帝国一の商会へと発展した経緯がある。
その思想を色濃く受け継ぎ、利用できる者はこき使い敵対者は徹底的に排除した。
彼女は爪を噛みながら苛立つ。
「どうしてスパイが陰湿な新聞屋を使って我が商会の悪行を流すのです。
こんなっ屈辱……、明らかな利敵!」
懐柔されて寝返ったとしても、悪質な嘘を流すのはやり過ぎだ。
下手をすれば商会が潰れ、何十万もの社員が路頭に迷うことになる。
それだけではなく帝国の流通が破壊され混乱に陥る。
「お嬢様、落ち着いて下さい。
もみ消すように動いています」
いま帝国で話題となっているのは、連続切り裂き事件である。
小さな広告欄に書かれた赤い爪商会の闇を見るものは居ない。
「どんな手を使っても良い。
セフーを連れてきなさい」
死を願うような苦痛を与えなければ気がすまない。
それほどの大罪を犯した。
「既に確保しております。
古倉庫に捕らえ拷問している所です」
「直ぐに会いに行きます。
この手で鉄槌を下さねば気が収まりません」
町外れの古びた倉庫。
今は使われておらず、屋根の一部が崩れ落ちていた。
錆びついた鉄の引き戸をジェーリアは開く。
椅子に縛られた女の姿がある。
「どうしてこんな事をしでかしたのか。
説明してもらいましょうか」
「……」
彼女が近づくと直ぐにそれが人形だと気づく。
「あっはは……。
滑稽ですね、ついにこの時を待っていました」
下僕として付き従っていた青年アダンはゲラゲラと笑う。
「私に手を出せばどうなるか解っているでしょう。
お仕置きが必要かしら?」
「下僕の刻印は既に消してありますよ。
お前達一族に復讐が出来る時をどれだけ待ったか」
「まさか、デマを流したは貴方。
能力を高く買って居たのに、飼い犬に噛まれるなんて」
「そんな事はどうでもいいだろう。
このペンダントに謝ってくれ、これは親が作っていた商品」
ありふれた女神を模した銀のペンダントだ。
「そんなガラクタにどうして私が……」
「これは両親が丹精込めて作った代物。
職人の魂がこもっている」
「苦労したからと言って無駄に値を吊り上げ、
民から搾取しているだけの職人に価値はない」
「何だと」
「赤い爪が技術革新し大量に生産し価格を下げた。
それは多くの人達に装飾をつける楽しみを提供するという志が合ったから」
「上面だけの綺麗事、富を独占したいだけなのは解っている」
「魔族の戦略によって溶鉱炉が破壊され、
それに従事する人々が犠牲になった」
帝国の産業が衰退するきっかけとなった大厄災である。
数十年前の事にもかかわらず、未だに製鉄業が壊滅しているのは技術が失われたため。
技術者が他国へと逃げてしまった事が原因だ。
「だから精錬された金属を輸入し加工することで成り立っていた。
金属の加工は職人達の技術があって出来ること、それを失わせたのは悪ではないか」
アダンは帝国が更に金属加工の技術まで失う事を危惧していた。
生活が出来なければ、職業として成り立たず技術は継承できない。
「帝国から鉱石を提供していた頃は良かったかも知れない。
けど鉱山も魔獣が出現し廃坑となり、他国の鉱石を必要とした事を理解しているかしら?」
「何をそんな事、それで金属の価格が倍近くに跳ね上がったことぐらい知っている。
親が値段をどうするか悩んでいたのを見ていたからな」
「どうして価格が跳ね上がったのか。
それは帝国に資源が流出することを恐れたから加工用の延べ棒に高い関税を掛けたからよ」
「今度は隣国に責任転嫁するつもりか?
笑わせてくれる、誰が納得するものか」
「だから私達は現地で加工し製品を輸入することで関税の穴を突くことで価格の高騰を抑えたわ。
それを成し遂げた、お爺様の功績はとても素晴らしいとは思わない?」
「ははっ。
他国に技術を売り渡した売国奴ではないか」
「そうかしら。
分業化し専門技術が必要なところだけは職人が行い、誰でも出来ることは安い労働者に任せる。
そういった努力はしていたの?」
それは大商会だから出来ることだ。
個人規模の工房では、人を雇用する為の賃金を用意するのが困難だ。
人を雇えばそれだけ価格が高くなり、より買い手を遠ざける。
だから出来ることは一人で行い経費を削減するしか無かった。
「手抜きはしない。
すべての工程を職人の手で成し遂げる、それが最も優れた芸術的な商品となる秘訣だ」
「手抜きだって、片腹痛いわ。
そうやって非効率な事をしているから生産性が上がらず、
価格高騰の原因となっている事に気づかないなんて哀れ」
「ふざけるな、欲望のために追い込んだ悪党が。
職を奪われて命を絶たなければならなかった」
「それは無能だったから。
才があれば切り抜けられる、それを私の責任として押し付けているだけ」
「ならこの状況も切り抜けられるというのか?
もう話すことは何も無い」
その言葉にな隠れていた者達がぞろぞろと出てくる。
各々手に鈍器を持っいた。
痛めつけてから殺そうという腹づもりなのだろう。
ジューリアは術書を手に取り構える。
「連鎖する赤い電撃……」
手の先から放たれる赤い電撃が一網打尽にするはずだった。
男が投げた瓶に、電撃が吸い寄せられ砕く。
パリン!
緑の液が飛び散り電撃を吸い取る。
地面を伝いジューリアに電撃が襲う。
ビリリ、服が焦げる匂いを放つ。
手元から術書が落ち、手がだらんと下る。
痺れて力が入らない。
立っているだけで精一杯だった。
「お嬢様、この瓶は玉国から輸入したものです。
貴方に妨害されてこんなに在庫が、……御覧ください」
倉庫に置かれた木箱には防水布が被せられていた。
山のように詰まれた木箱。
過剰に買いすぎて、売りさばけなかったのだろう。
「思い出しましたわ。
買い占めして暴利を貪ろうとした哀れな転売人に制裁を加えたのを」
命の危機があるというのに、まだ威勢が良い。
強さを知らないのかとアダンは恐怖心を抱く。
身動きも取れず殴り倒すことなど容易い小娘に怯える必要はないと拳に力を込める。
「もう法術も使えないでしょう。
彼らの怒りを堪能して貰いましょうか」
コンコン
鉄の戸を叩く音が響く。
「やあ、諸君。
私はカミューラ、しがない探偵……」
探偵というのは異界人が記した書物に出てくる謎の職業だ。
どの様に利益を得て生計を立てているのか解らず。
当然、職として成り立たず、この世界には存在しない。
それでも探偵と名乗るのは変人でしか無い。
「ちょっと冗談を言っている場合ではないです。
保安隊長のマーガット、貴方達は包囲されている、武器を捨て投降しなさい」
部下は闇市の調査で居ない。
包囲しているというのは嘘だった。
サラが声を変えつつざわざわと騒いで見せたが、一人では無理があった。
「報復すると決意したのだろう。
成し遂げて散ろう!」
アダンの言葉に、動揺していた者達も拳を突き上げ唸り声を上げた。
どの道、彼らには先がない。
道連れの自殺、こそが彼らの企みであった。
「諸君に悲しいお知らせをしなくてはならない。
何故なら、その箱に入っている瓶は不正に複製された偽物なのです」
「それがどうしたという」
ステッキで床を三度突く。
すると液が変質し動き出す。
「うあっあぁぁっ」
集まっていた人々をに絡みつき襲いかかったのである。
「この通り私の意思通りに動くというわけです。
さて残ったのは貴方だけですがどうします?」
アダンは落ちている術書を手に取った。
学園の術書は共通の鍵で使用できる。
お嬢様の側にずっと居た彼はどんな術式があるのかよく知っていた。
「殺戮の漆黒剣」
すべてを切り裂く暗黒の刃が飛び出すはずだった。
だが術は液体に飲み込まれて消え去る。
「愚かな。
それは強欲な術喰いです」
法術に反応して食らいつき襲う。
術を喰えば肥大していく。
そんな代物だ。
本来なら特定の術にだけ反応し阻害するもの。
何でも反応してしまうのは欠陥品である証拠だ。
「なんて事をしてくれたのですか。
犯人を捕縛しなくてはならないのに……」
「動きを封じるだけで、無害です。
早く取られば良いだけですわ」
「いや……、あのネバネバに触るのはちょっと……。
あー最悪、早く誰か来てくれないの?」
そんな願いは虚しく、誰も来る様子はない。
カミューラはジェーリアに手を差し伸べ、癒やしの術を施す。
「ありがとう。
でもどうしてここに?」
「この瓶の情報を追っていたらここにたどり付きました。
廃業して大量の在庫を抱えているって」
単なる偶然、運のめぐり合わせ。
もし早くても、遅くてもジェーリアはボコボコにされていただろう。
「女神が微笑んだようね。
私は帰って宜しいかしら?」
マーガットは優しくジェーリアの手を握る。
「いえ、話を聞きたいので待って頂きます」
「彼らは私を殺そうとしました。
彼らの処遇はどうなるのです?」
「それは法廷が決めます。
私達は捕縛するだけです」
保安兵だからといって、無闇に命を奪うことは許されていない。
当然だが相手が魔族や明確な殺意を持って襲い掛かってくるような止む得ない時を除く。
その頃、風太はある秘密に感づいていた。
それを確かめるためにアマネルに会う。
「あの本を見せて欲しい」
「にひひひ、遂に風太も目覚めてしまったのかな?
でも、その態度で渡してあげるつもりはない、私の足を舐めて見せたら考えても良いけど、どうする?」
「演技は止めてほしい。
君がその本の裏に記されたモノに気づかないはずはない」
表向きは同人誌だが、隠された文書は全く違うものだろう。
それを独占し、異常な振る舞いをすることで危険なものだと周知させる。
興味本位に見たとしても、表に気を取られて気づきにくい。
「……知ってどうする?
私達にとって不利益をもたらすものばかり、知って後悔するだけの事です」
「それでも知りたい。
君が隠そうとした物が何なのか」
「不老不死の秘術。
でもそれは魔族、アンデット、亜人……様々な進化を促した。
どれにも欠陥があり完全な不死にはならない」
「どうしてだ?」
「人間に寿命があるのは、病の蔓延を防ぐため。
病は常に進化し身体を犯そうとする。
だから攻略される前に新しい命を生み出し古い個体は攻略情報を与えないように死ぬ」
見えない攻防が常に行われている。
もし単一の遺伝子しかなければ、病が蔓延し全滅してしまう。
種が生存するための戦略なのだ。
「俺は不老不死に興味はない。
ただ本当にそんな事が書かれているのか確認したいだけ」
「どうしても見たい?」
「いや、疑って済まない。
君を信じて良いのか迷った」
「この紐を引っ張ってくれる?」
……巫女服を止めている紐だ。
引っ張れば脱げてしまう。
「ちょっと油断すれば、破廉恥な事をさせようと。
君はそういう冗談を……」
「アマネルの趣味を知っても嫌いにならずに居てくれるって凄く素敵。
ご褒美をくれたって良いでしょう?」
「良いけど。
今じゃない、もう少し親身になってから……」
「あー、ヘタレのざーこ、ざーこ。
アマネルの魅惑に虜になるのが怖いだけの癖に」
アマネルは棚にあった本を投げつけた。
同人誌に偽装した不死計画書。
玉国こそが死者の書が告げた古代に滅びた国の生き残り。
遥か千年前から続く、壮大な計画の全貌が書かれていた。
病を防ぐために死者の肉体を使い魂を定着させる。
数多くの実験が必要だが、表に出すことは出来ない。
そこで死霊術の有益性を示し興味を持たせ虜にしていく。
その一方で害悪を認知させ、表立って研究出来ないように縛りを与えた。
それでも研究を進める者には断片的な情報を与える。
欠陥のある情報を復元させ、更に進歩させるように誘導するためだ。
風太は心当たりがあり、支配の仮面も命の危険がある欠陥品だったり。
ゾンビ化も暴走しグールとなって制御を離れる。
兵器としての魔骸骨は一つのゴール地点でもあった。
「俺は奴に利用されていたんだな。
禁書庫に封じられる事を選んだのも……」
死者の書が持っていたのは遠くを見る目だけではなかった。
手駒もあったのだろう。
だとすれば……、色々と辻褄が合う。
アマネルが手招きする。
「さあ、脱がして。
忘れさせてあげるから……、違う、ただ子供が欲しい……、その願いを叶えて」
目が潤み切実な願い。
それに心打たれそうに成り動揺する風太。
「ずるい。
不意打ちでそんな事をするなんて……」
アマネルは風太に抱きつき唇を重ねる。
舌が絡む。
「どうしてこんなに急ぐんだ。
焦らなくてもいいだろう」
「真実を知って、野放しには出来ないでしょう。
ケリを付けるために命を賭ける気がして、それが怖い」
「大丈夫、俺は君達を置いて行くつもりはない」
「うん。
けど余り待たせないで……」
「解った」
視線を感じ振り向くと、工房で働く四つ耳族の女達が扉を少し開き覗いていた。
「入ってきなさい。
貴方達も欲しているのは解っています」
「おい、待て勝手なことを言うな」
「相手してくれなかった罰です。
あーもしかして、やっぱりヘタレなのかな、まだ恥ずかしがるなんてウブもウブ」
「解った……」
それが余計な一言だった。
彼女達は群がるように風太に抱きつく。
獣耳には心惹かれるものがる。
触りたくなる欲望を駆り立てられてしまう。
それを愛情として受け取っているのだろう。
差別され蔑む対象である獣耳を愛してくれるものは一握りでしかない。
だからこそ彼女達は必死だった。
自分を精一杯アピールして、抱いてもらおうと。
「私の兎耳を触って下さい」
「きゃあぁぁー気持ちいい」
「私もーおねがい」
相手しないと解放してくれそうにない。
四つ耳族を守るために受け入れたのは風太である。
責任を果たすしか無い、愛情を持って接することで期待に応えよう。
風太が解放されたのはそれから数時間後のことだ。
ヘトヘトになってベットに倒れ込む。
次の日、メイド達が風太の元に押し寄せた。
「聞きましたよ。
ずるいじゃないですか」
「そうだ、私達も愛して下さい」
「ちょっと待て、何を聞いたんだ?」
というか、メイドもなんか増えている。
新顔も混じって、一体何に惹かれているんだろう。
話すらしたことがなくても愛せるものなのか?
学園にも若い男は居たのに。
一体どこから連れてきているんだろうか。
「抱いてくれるって聞きましたよ。
ムフフなことも、したいですし……」
「いや、ムフフって待てそんな話はした記憶がない。
とにかく落ち着いてくれ」
「助けてもらった事は感謝しています。
それにこうして働く先も提供して貰った事も、でも子が欲しいのは我慢出来ないんです」
「助けた?
何時のことだ」
身に覚えのないことだ。
平日は学業に夢中で殆ど学園で過ごしている。
人違いという訳でもなさそうだけど……。
困惑する風太だったが、それもその筈だ。
裏の組織アルファによって、救出作戦が実行されていたからである。
人身売買の拠点を破壊し、数多くの成果を上げていた。
その一部の者達は住む場所すら無く、こうしてメイドとして生活を提供されている。
「もう、とぼけなくとも。
どんなご奉仕でしますから」
「サラ、来てくれ!」
ハンドベルを鳴らすが、来る気配がない。
「メイド長はお出かけです。
今日は祝日ですから、たっぷりと楽しみましょう」
「待て待て、メイドなら家事が仕事だろう」
「てへへ……。
こういう事もお仕事の一環です」
「嘘を言うな。
解ったから時間が開いた時に……」
「その言葉を忘れないで下さいね」
約束をするとメイド達はさっさと仕事に戻り居なくなった。
ふぅー。
メイド長が居ないと暴走するのは困るな。
「大変困っておるようで実に愉快。
少し話をしてもよいか?」
そう言うと竜人ソニャームが部屋に入ってくる。
彼女は特になにかする訳でもなく居候みたいな感じでのんびりと屋敷で過ごすだけだ。
そんな彼女が珍しく声をかけてきたことに風太は驚く。
「君もまさか……」
「妻として迎えてもらったと思っておる。
ならば夫の勤めを果たしてもらわねばならない」
「急に、皆どうかしている。
一体どういう事だ」
「アハハハ……。
青楓に新しい命が宿っておる」
「んん? つまり俺の子?」
「恐らく。
彼女とはどんな夜を過ごしたのか知りたい」
「それは恥ずかしくて言えない。
それで皆、欲しくなったのか……」
いやそれより祝をしよう。
名前も考えないと……いや俺が考えたら変な名前になってしまう。
青楓に任せるか。
「わらわが監視の役目で側に居たことを察しているのであろう。
竜人の秘密に感づいてしまったと見ている」
「あの同人誌の裏に何が書かれていたのかは知らない。
興味はあるけど、それを知っても仕方ない」
「ふむ。知っての通り、竜人族は物を作れない。
奪うことで富を得てきた」
反物があったけど、それを利用して服を作っている感じはしない。
地下のトロッコも、色々な設備も奴隷に作らせたものらしいし。
「誰だって苦手なことぐらいあるから。
別にいいんじゃないのか?」
「それでは困る。
わらわの子孫に教育を施し、技術を覚えさせたい」
竜人と言うだけで恐怖の対象となる。
権威があり頭を下げる事を嫌う。
格下である人間に教えを請う事など許されないのだろう。
「それは良い夢かも知れない。
けど俺はレモプティも大切にしたいと思っている」
竜人の国に向かいれてくれ、知恵を授けてくれた感謝もある。
大金を騙し取ったような後ろめたさも……。
出来れば彼女を迎え入れたいが、帝国民を納得させるのは難しそうだ。
「ほお。
ならば転送門で繋げば良い」
「それが出来れば苦労はしない。
あの術式は解析できなくて……」
「魔素が集まる場所に魔狩場核を設置すれば良い。
ふふっ、魔将を討ち取った場所が汚染されていて設置できるやも知れぬな」
……学園もダンジョンを利用して創られていた。
管理すれば移動手段として利用できるのか。
「良い考えだけど、その核は何処から手に入れるんだ?」
「存在する場所を知っているであろう。
学園から奪えば良い」
「それは出来ない。
学びたいことも沢山あるし、恩義もある」
「異変の事は覗き見させてもらっています。
あれは恐らく核が2つあるから起きている」
管理されていない場所が維持できているのは不思議だった。
もう一つ核があれば、侵食する形で形成出来たのも頷ける。
んっ?
「待ってくれ。
覗き見って、何を見た?」
「全て、その目に映るものと言えば」
「って、夜も見ていたんだろう。
うわ恥ずかしい」
「そこまで無粋なことはしない。
あっはん……」
彼女の手の動きに違和感があったが、何も気づかなかった。
が、それの意味に気づいとき風太は顔を赤く染める。
「くっ……、俺にプライバシーは無いのか?
君も覗き見されていたら怒るだろう」
「惚れた男の全てを知りたいと思うのも乙女の心と許してくれぬか?
わらわも少しは悪いと思っている」
「……はぁ、まあ良い。
君の役目を果たしだけだ、そっと心に閉まって黙っていて欲しい」
ソニャームは風太の頬に口づけする。
誓い、それとも愛なのか。
調理場に青楓が立っていた。
るるる~♪と鼻歌。
じゃが芋の皮をナイフ一本で剥く。
手際よく、慣れた手つきにメイド達は感心する。
「奥様が、調理が出来るなんて素晴らしいです。
芋料理は初めてで……」
芋は家畜の餌として認識されるほど不味い代物だ。
それはどんな調理をしても美味しくならなかった為で人間の食べるものではないと結論が出いてた。
品種改良が行われても原種の印象が強く残っている為だ。
メイド達は不味いものを食べさせられる覚悟をしていた。
「うちが作れる料理の中でも一番美味しい。
覚えて作ってくれると嬉しい」
「はい、喜んで」
芋を蒸し器に入れ蒸す。
青楓の手作りで、四角い枠にすのこを置けるようにした簡単なものだ。
蒸気を逃さないように木の蓋を閉めて待つ。
「待っている間にパンを粉々にして……」
「あの、それはどういう意味でしょうか?
折角焼き上がっているパンをどうして粉にするのか解りません」
「うーん。
それはサクサクにするため、うん、多分あっている」
メイド達の顔色が真っ青になっていた。
本当に料理が出来るのか。
そもそもパンは小麦粉から作る。
粉を一度固めて、また粉に戻すと言う不可解な行動にしか見えない。
「小麦粉を使っては行けないのでしょうか?」
「小麦粉も使うけど、パン粉も必要。
前世では大好物でいっぱい作って食べたから是非味わって欲しい」
前世という言葉にメイド達は死の淵から戻ってきたような。
恐ろしい印象を抱く。
食べたら死ぬかも知れない。
「あはは……。
堪能させて頂きます」
芋が蒸し上がると、ボールに入れて潰し始める。
るるる~るる~♪
炒めたミンチを少し混ぜて、小判型に形を整えた。
「うちのは、ミンチ抜きの四角型。
間違わないように」
「はい」
用意したミンチは、残っていた肉をかき集めて作ったものだ。
失敗するだろうと思っての事だが、それがバレたのだとメイド達は肝を冷やす。
「いい感じ。
見て美味しそう」
「はい、美味しそうです」
そして、小麦粉をまぶして溶き卵につけてパン粉を付ける。
卵は生で食すなどありえないことで、食中毒となるために必ず加熱するのは常識だ。
鳥はうんこを出す場所から卵を生むのである。
卵の殻には雑菌が着いており、綺麗に洗浄する必要があった。
帝国には、そんな洗浄技術はない。
メイド達は、それを食べると思いどの様に動けば被害を抑えられるのかを考え始めていた。
胃薬……いや下剤、薬師を呼んだほうが……。
そんな取り越し苦労は直ぐに終わる。
熱した油で揚げ始めたからだ。
「サクサク、うまうま、るるる~♪
うちの愛情たっぷり」
ホッとしたメイド達だったが、出来上がった狐色の謎の物体に困惑を隠せない。
油であげるとしても、素揚げで衣を付けない。
初めて見る料理なのである。
これが完成形なのか、それともまだなのか。
それすら判断できない。
「あのこれで完成でしょうか?」
「うーん、まだ。
慌てるのは良くない」
既に形が整っていると言うのに、何をするというのだろうかとメイド達は想像する。
もしかしてまた、粉状に削るのでは?
薄い楕円形は持ちやすそうに見える。
けどそんな事をする意味は解らない。
「次は何をするのでしょうか?」
「うーん、野菜を切るのを手伝って欲しい」
レタスを手で引き裂いて皿に盛っていく。
その上にミニトマトを置く。
メイド達は困惑しか無かった。
このサラダとあれとどの様な関係があるのか。
飾るために楕円形をしている……でも、熱さでしなびてしまう。
いや、冷ましてから盛り付けるのでは。
そう考えていた時だ。
鍋にソースを入れて煮込み初めた。
甘酸っぱい香りが漂う。
「それは?」
ソースは青楓が数日前に作り置いたもので、保存できるように蒸留酒が混ぜてある。
アルコールを飛ばすために煮込んでいるのだが、
メイド達は困惑しか無かった。
折角カラッと揚げたものを煮込むのかと思ったのである。
これが異界の闇鍋……ダークマターと言う伝説の料理……とメイド達は絶句しか無かった。
「コロッケに掛けるソース。
野菜の旨味が凝縮した特性のタレで作った」
何も付けなくとも美味しいが、ソースが掛かっている方が好きだった。
更に盛り付けたコロッケにソースを素早く波線を書くように垂らす。
香ばしい香りにソースの香りが入り混じり美味しそうではあった。
メイドは一口。
「熱っ……、でもこの皮のサクサク感、中の甘みと肉汁がソースと絡み合い。
ああっなんて美味しいのでしょう」
「風太にも、食べさてあげよう。
きっと喜ぶ」
「こんな美味しいものが食べられるなんてとても幸せです。
この料理は代々受け継ぎます」
青楓が、皿を持って行こうとすると風太がやってくる。
「食べて、うちが作った」
「美味しい。
懐かしい味だ、でもどうして?」
風太は醤油派だが、ソースも悪くないと思った。
出来立てのサクサク感がとても美味しい。
「なんか食べたくなったから」
風太は青楓の首にペンダントを付けた。
安全の祈りを込めたものだ。
「新しい命を宿しったて聞いたから。
お守りにとお腹の子も守ってくれる筈」
「ありがとう。
大切にするから」
霧の街の闇はまだ晴れない。
「きゃああぁぁぁっ」
更なる被害者がでたのだった。
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「はい、早く帰り。
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「それは魅力的な提案。
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「いいえ。
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それはまずありえない」
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この小さな記事を御覧ください」
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