【R15】ネクロマンサー風太 ~異世界転生 死霊術師のチート~

ぺまぺ

文字の大きさ
4 / 48
1章 王国編

四話 ひとときの食事

しおりを挟む
「私はリアハです。
今日から、食事の習慣を学んでいただきます」
 第一印象は賢そうな女講師、眼鏡に黒髪のロング。
 服装は黒のワンピースにフリルの付いた白いエプロン、カチューシャ。
 そして胸元に薔薇の勲章が輝いている。
 精鋭騎士に与えられるとても名誉あるもので、幾度も戦地に赴き武勲を挙げている猛者である。
 優雅にそして無駄のない動きには惹きつけられる。
 風太も例外ではなかった。
「はい、よろしくお願いします」
 緊張した面持ちでしっかりと学ぼうという意思が背筋をピンと張らせた。
 可愛い彼女に好感を持って貰えればワンチャンあるかもしれない。
 好感を持ってくれる人達が周りにいることで、自分が王様にでもなった気分になっていた。
 いわゆる天狗状態だ。
 
 そんな浮ついた気持ちを正すかのようにリアハは真剣な眼差しで冷たく言い放つ。
「我々は常に危機感を持たなくてはなりません。
毒見を選んで下さい」
 数人のメイドが並ぶ。
 ニコッと愛らしく微笑む短髪の娘。
 真面目そうで少し目つきがキツイ所が可愛い波打つ髪の娘。
 意地悪そうだけど背が低く幼く見える娘。
 もし毒がアレば最悪死ぬということだ。
 選ぶと言うことは死の宣告と同じだろう。
「どうしても彼女達から選ばいのいけないのか?」
「男性の毒見を用意出来ますが。
毒見が舐めたスプーンを使用することになります」
 つまり間接キスみたいなものだ。
 タダでさえ人の舐めたスプーンは気持ち悪い。
 それがキモい男だったら、更にトン引きだ。
 風太はスプーンが銀製だと気づく。

 ラノベの中で、銀は毒物に反応して色が変色すると言うのを見た気がする。
 なら答えはスープを良くかき混ぜて飲むだ。
「これは銀のスプーンだよな?」
「はい」
「こうしてかき混ぜれば、毒があれば変色するはず。
これで見分けられるから毒見は必要は無いだろう」
 科学の発展には数多くの犠牲が出たらしい、毒物かどうかを舐めて確かめるなんてことをしていたからだ。
 そんなことしなくても検査薬を使うことで識別できる様になったのだから知識は偉大だ。
 銀のスープンは、そんな検査薬と同じものなのだろう。
 これで無駄に怯えたり、毒見は必要ないはずだ。
 そう訴えかけるように風太はリアハは笑みを送る。
 だが、リアハはガッカリするような様子を見せる。
「いいえ、不十分です。
銀に反応しない毒や呪薬のろいくすりには無意味です」
 魔法があるなら呪があっても不思議じゃない。
 そんな簡単な事を考えられなかったと恥ずかしくなり風太は顔を赤くした。
 すぐに思考を切り替えられるほど打たれ強くはない。
 即白旗を上げてしまった。
 それが風太の欠点でもあった。
「すみません。軽率でした」
 
 リアハはドクロの模様が入った瓶を持ってくると水の入ったグラスに中の液を垂らす。
 銀のスプーンでかき混ぜるが反応もない。
「睡眠の呪が掛けられています。
夜にぐっすり眠り目覚めることはないです」
 差し出されたグラスを手に取り風太は匂いを嗅いだり、色合いを見るが特に変化は解らない。
 知らされずに出されたら飲んでしまうだろう。
「味で解るのか?」
「いいえ、お試しになれば解ります」
 死のリスクがあるものでもないし、試す事は出来そうな所だ。
 だが呪いなんて、気味の悪い言葉が引っかかり躊躇わせた。
 もし、お薬睡眠ネムネムちゃんみたいな名称だったら何も考えず試した。
 それぐらい名前の印象は大きい。
「えっ。大丈夫なのか?」
「不安なら毒見に飲ませれば良いのです」
 自分が助かるために他人を犠牲にすると言うのは何だか悪人のように思える。
 しかしこの世界ではごく普通のことなのだろう。
 危険なものは出さないと心のなかで思いつつも飲むことは怖い。
 眠り姫のように延々と呪が解けるまで眠り続けるとしたら……。
 キスで目覚めさせると言う展開になるのだろうか?
 まあ普通に考えればありえない。
 何かしらの方法で目覚めさせるのだろう。
 楽観的に考えなければ何事も選ぶことは出来ない。
 覚悟を決めた風太はメイド達を見る。

 すると短髪の娘が微笑む。
 彼女なら許してくれそう、いや選んでも良いよと言う合図に違いない。
 だから彼女にグラスを差し出す。
「毒見をお願いします」
 見た目の雰囲気も彼女なら許してくれそうと思えたのだ。
 優しそうな人を毒見として選んでしまったのは愚かな気もしたが、死んで良い人は居ない。
 だったら彼女が許したと思うことで自分の心が壊れないように守ったのである。
「はい、私はオッセアです」
 いきなり名乗った事に風太はドン引きした。
 罰ゲームみたいな事をさせているのだ。
 せめて飲み終わり無事なのを確認してから名乗って欲しい。
 そんな我儘なことを考え少し風太は怒っている。
 名も知らない相手なら幾らかの心の負担を減らせた気がしたのだ。
 実際はそんな事はないのだが、状況に飲まれ思考が狭くなっていた。
 
 オッセアは軽く水を口に含むと微笑む。
 そしてゆっくりと飲み込む。
「毒は無いようです……」
 彼女の喉元が青く光る。
 喉に法術が施され、呪いに反応していた。
 本物の睡眠の呪を使用した証でもある。
 ただの水を呪だと言っていた可能性もあった。
 そうではなく、本物を用意し使った事が真剣さを物語っている。
 
 風太は嫌な緊張感に汗が溢れる。
 リアハは風太の耳元で囁く。
「気分は如何でしょう」
「良いはずないだろう。
こんな事させて……」
 前世なら、まず故意に毒を入れるなんて事は起きない。
 0とは言い切れないが……、基本的にそんな事は考える必要はないぐらい治安は良かった。
 誰が命を狙って毒をいれるかも知れないなんて、気にしながら過ごすなんて居心地が悪すぎる。
「自分で選んだことを、私の責任にするというのですか?
クフフ……ご安心を不眠で困った時に使われる物です」
「意外と意地悪だな」
 リアハは体を押し当てるように風太に近づく。
 胸の膨らみから、薄い布を通して温かみが伝わる。
 急な展開に驚かずに居られない。
 逃げるべきか。
 男なら逆に食いつく覚悟で触りに行くか。
 いやそんな事はできないと風太は理性と本能で混乱し、今までのことを一瞬で忘れた。
「貴方を誘惑しようとする者が現れるかも知れないです。
それを未然に防ぐ事も任務に含まれています」
「えっ、あっ……、ちょっと離れて」
「オッセア、舌を見せなさい」
 
 オッセアは舌を見せる。
 そこには青く魔法陣が浮かんでいる。
「よく見て下さい。
紋様によって掛けられた呪の種類を調べる事ができます」
「あっ、はい」
「毒見には、検出系の補助術が掛けられています。
それに幼少から少量の毒を飲み耐性があります」
「それを始めに教えてくれたら後ろめたい思いはしなくて済んだのに」
「毒見を道具としてしか見ない者であれば、
冷徹に対応しようと思っていました」
「つまり今までは試していたということなのか?」
「さあどうでしょう。
オッセア、早く毒見をしなさい」
「はい」

 ピンクの唇にスプーンが……。
 彼女が舐めた後拭くこともない。
 風太は、そのスプーンを受け取る。
 テーブルには、8本スプーンが並んでいる。
 新しいスプーンに変えようとすると、手首を掴まれる。
「スプーンに毒が塗ってあったら、毒見した意味がないです。
オッセアの技能に疑問があるのでしょうか?」
 無意識に失礼なことをしていた事に気づき風太は驚く。
 習慣も違えは常識も違う、そんなあたり前のことを理解せずに自分の常識で物事を考えていた。
 だから否定的に物事を考えてしまう。
 でも解って欲しい。
「違う、俺がいた世界では恥ずかしいことなんだ」
「その地域の風習に従うのが礼儀だと思うのです。
貴方の世界では違うのですか?」
「……解った従う」
 食事だけでも大変だと、風太は思うのだった。
 
 


















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...