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2章 亡国編
11話 説得
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「俺は本物だ!」
それが無意味な言葉だと解っている。
何故なら、魂が入れ替わっても見た目は変化が無いからだ。
判別する方法はなく、証明も出来ない。
風太にナイフを向けゼラは疑うように間合いを取っている。
「骸骨の口から魂が抜けて入っていくところを見みました」
「魂って見えるものなのか?」
「いいえ。
恐らく床に描かれた法陣の副効果でしょう」
テーブルに掛けてあった布が燃え尽き、隠されていた龍の像が姿を表す。
それは風太の方を向き口を開いている。
調べれば恐らく体を乗っ取るための代物だと解るだろう。
それは風太にとっては不利な証拠である。
「実際に行ったのは初めてだったんだろう。
だから失敗したんだと思う」
床から声が響く。
『俺が本物の風太だ。
助けてくれ!』
本が床に転がっている。
「転生前に持っていた新刊だ。
何でこんなところに……」
『あの法術で体を乗っとているんだ。
そこにいるのは偽物!』
ゼラは風太を見てニコニコと微笑む。
「やはり貴方は、偽物です。
本物はこの書物に封印したのでしょう」
「待ってくれ、何か証明する方法がある筈だ」
自分から何かを提案しても信用されないだろう。
だから待つ。
「ニャヒヒ……。
この質問に答えられた信用します」
「解った言ってくれ」
「最初のゲームで私がゼロを引いたのは何回?」
『三回!』
圧倒的な速さだ。
魔法で覗き見ていたのなら容易く解る質問だろう。
迂闊だった。
先を越されてる事ぐらい予想できたはずだ。
「0回だ。
あの時はババ抜きをするために0はババとして扱っていた」
屁理屈に過ぎない。
もう同じ答えを答えても意味はないから、違う解を出すしかなかった。
「やっぱり、書物の方が本物です。
ニャヒッ」
ゼラは棚を物色し、縄を見つけると風太を椅子に固定するように縛った。
「護衛っていうのは嘘だったのか?」
「簒奪者は黙っていなさい」
彼女に武器を手渡した判断は間違いだった。
怪我をしていても身体能力は間違いなく彼女のほうが優れていた。
自分で使っても魔物相手に戦えるとは到底思えない。
鳥が襲ってきた時も、銃を向けられた時も体が動かなかった。
だから預けてしまった。
守ってもらおうと言う甘えが招いた結果だ。
「一つ聞きたい。
話していた時動かなかったのは、呪が辛くて動けなかったからか?」
「いいえ、交渉中に仕掛けるのは礼儀に反します。
だから大人しく見守っていました」
「相手は骸骨の化け物だ。
それと話す事に何の意味がある」
必死に攻撃でできる機会を作ろうと頑張っていたのが全くの無意味だった。
「もし攻撃を仕掛けていたら、
間違いなく私は即死でした」
「どういう事だ?」
「とぼけるのが上手いですね。
ライフドレインを警戒していました」
ゲームとかだと数%の命を吸い取って自分の物にするアレだろう。
「それぐらい避けて頭蓋骨を叩き割る位できただろう」
「それほど私は強くありません。
軽く手が触れただけで干からびて朽ちていたでしょう」
そういう情報を出してくれていれば、別の策を考えていただろう。
とはいえもう終わったことだ。
「それは済まなかった」
ゼラは棚にあった大きな布を手に取り、本を包み込み背負った。
両手を自由にしたかったのだろう。
とはいえ、なんかダサい。
ボロボロの服装が貧乏感を出しているのだろうか。
「この床は引きずった跡がある。
これって動かせるよね」
棚のすぐ横の床だ。
痕跡は、ここからでは見えない。
「外観は結構広いのに、一本道でこの部屋だけしか無いって不自然だ。
隠し部屋があっても不思議じゃない」
その可能性はずっと前から気づいていた。
ただ隠し部屋を探すように促せば、知っていたのでは勘ぐられ立場を悪くする気がしたのだ。
出来るだけ助けはしたいが、それが自分の首を締めることに成る事は避けたい。
信用されていれば色々と思うことはある。
今思えば入っての直ぐの玄関らしい場所も何か違和感があった。
戻って調べたいが開放してくれはしないだろう。
ズズズズ……
棚の後ろから、出入り口が見える。
「この奥に何が隠してあるのか教えてくれるかしら?」
ゼラは風太に近づくと、耳たぶを甘噛する。
「知らない。
一緒に連れて行ってくれないか?」
「ニャヒヒッ。
捕虜を拷問して情報を聞き出すなんて事を押し付けられることもあるのよね。
体をあまり傷つけずに痛みを与える事もできる」
「痛いのは嫌だ。
護衛に失敗したと思うなら、まずは君が責任を取ってくれ」
「じゃあ別の方法も試してみる?」
ゼラの手が頬を撫でる。
舌が反対の頬をペロリと。
不気味さと怪しい気配に興奮すら感じる。
「待って冷静になるんだ!」
「ランタンの明かりも心もとないし、
時間を無駄には出来ない」
ゼラはランタンを持って奥へと行ってしまう。
縄は縛られる時に力を入れて隙間を作って置けば、外れるらしいが全然取れない。
何故か逃げようとすると絞まって行くようで苦しい。
「無理だ。
簡単に抜けられると思っていたのに」
壁に掛けられたランタンは小さな光を放っているが、座った状態では手が届かない。
放った炎はすでに消え去り、骸骨は灰となっている。
連鎖的に布は燃やしたようだが、テーブルは焦げ一つ無い。
もし効果が残っていれば、縄を燃やせたかも知れない。
「打てる手は本当に何も無いのか?」
骸骨は騙して成り代わる準備をしていたはずだ。
ゼラの呪いを解いて助けたのも利用する為だろう。
「いやこの状況こそがやつの策略か。
まんまと騙されているだから。くっ!」
どれぐらいの時がたったのか、足音が近づいてくる。
「ニャヒッ。
待ってた?」
「色々と考えたけど、降参だ。
何でも言うことを聞くから許してくれ」
「じゃあ、彼を助ける方法を教えて」
「そこに暖炉があるだろう。
本をそこに入れて燃やすんだ」
「成る程、燃やせば良いのね。
じゃあ火を付けましょう」
『待て! 殺そうとしているに違いない』
ゼラは困った顔をして、風太の頭を撫でる。
「嘘だったら貴方を殺すけど、本当にその方法で間違っていない?」
「ああ、間違っていない。
燃やしてもとに戻らなかったら俺の首を掻っ切れば良い」
「ニャヒッ。
それって興奮します」
『どうして燃やせば戻れるって解るんだ?』
「それは俺の魔法だからな」
『だったら説明してみせろ』
「寝ている間、魂がどうなっているか知っているか」
『何を言っている?」
「魂は肉体を離れ枕で休む。
そして目覚める時、肉体に戻るんだ」
『はぁ?』
「肉体に入る魂は一つだ。
だから追い出して閉じ込める必要があった」
「ニャ?
どうして閉じ込める必要があるのか解らないです」
「聞いてなかったのか?
元の肉体に魂が帰ろうとするんだ。
すると入っている魂が追い出されて、元の持ち主に変える」
『そんな出鱈目を信じたりしないよな?
騙して俺を殺そうとしている』
「ではどうして、本の姿にされたのか説明できるかい。
それは取引の材料として脱出するためだ。
予想外だったのは君がこんな暴挙に出て身動きを封じたこと」
「うんうん、私って偉い。
ニャヒヒッ」
ゼラが暖炉に近づく。
ランタンの火で本を燃やそうとした時だ。
『よく考えてくれ。
敵の言葉が信じられるのか?』
「私の直感が真実を語っているてビンビン来ています。
もう試してみるしか無い」
『どう考えてもありえない話だ。
寝ると魂が抜けるなんて話を聞いたことがあるのか?』
「うーん。
ある気がする」
『くっ……。
嘘を付くな!』
「ニャヒヒッ」
本に火を近づけると声の質が枯れたような感じに変わる。
『待ってくれ。
私の負けだ、ここから脱出する方法を教える』
「風太よね?」
『違う……、奴が本物だ。
あの話は全部、出鱈目に過ぎない』
「つまり偽物って認めるって事?」
『ああ、転生の法陣には欠陥があって不純物が交じる。
この姿に成ったのは転生前に所持していたからだろう』
「確かに楽しみに持っていた。
これで本物だって解ったんだから解いてほしい」
『色々と協力するから助けてくれ』
「ニャハハハ……。
嫌よ」
「待って、俺達は包囲を突破しないといけない。
役立つのなら力を借りたほうが良い」
『おお、話しの解る相手で良かった。
しかし、これも運命か……』
開放された風太は安堵したが直ぐにゼラに羽交い締めにされた。
「どうして私を騙そうとしたのか説明してくれる?」
「なっ、俺を信じなかっただろう。
だから自爆してやろうって思ったんだ」
「私は初めから本物だって気づいていたのよ」
「えっ?」
「だって貴方は法術って言わないでしょう」
師匠も法術と言っているが、気にせずに魔法と言っていた。
それが間違っていたのなら、何かしらの指摘が入るはずだ。
「なんだよ。
だってあれは魔法だろう」
「……魔法は、魔族が扱うものです。
私達は法則に則って力を行使する術を扱います」
「そうなのか……。
それで判別出来たのなら運が良かった」
「話を逸らさないでください。
私を信じなかった罰です」
「うぐっ……、参った、もう離して」
どう考えても理不尽だ。
あの状況で信じるなんて出来るはずがない。
「ニャフフ……。
では私の言う事をしっかりと聴いてくださいね」
「解った。
聞く、聞くから」
「このまま暫くここに滞在します。
私達は死んだことにして、身を隠すのです」
「こんな敵だらけの場所に留まるって正気なのか。
……いや、まだ足が痛むのか?」
「足は大丈夫です。
このまま戻れば私は処刑されてしまいます」
「なんでだ?」
「呪薬を解除した時に、忠誠の印も消えてしまったのです。
四つ耳族に定められた掟があり、印がないと裏切ったと見なされ殺されます」
「あの解呪は罠だったのか?」
「はい、迂闊でした」
「でも何のために、そんな事をしたんだ?」
『今でこそ、沼地だがここに王国があった。
勿論、印を付ける方法ぐらいある』
「交渉のためか」
『そうだとも。
地下への通路を案内しよう。
そこに刻印が置いてある』
信用して良いものか怪しい気がした。
「動けない立場を利用して、罠にはめようとしているかも知れない」
「疑心暗鬼になっていたら何も出来ない。
考えを変えるつもりはないです」
「印を付けたくないのか?」
「忠誠の印はある意味で呪いです。
それから開放された今を気楽に過ごしたい」
「俺はこんなところはさっさと出たいけど。
一人で抜けられる自信はない」
この瞬間、序列が決まりゼラが上位に居ることに気づいた。
彼女に逆らうことは出来ない。
一人でも大丈夫である風に振る舞うべきだった。
すでに彼女は護衛ではなく支配者なのだ。
「私は恩人は大切にしようと思っているの。
カードを投げて敵の動きを止めてくれたことは感謝しています」
「良かった」
「仲良くしましょう」
ゼラは風太の顎を掴むと、引き寄せ唇を重ねた。
「えっ……、いきなりビックリした」
「ニャヒッヒヒ。
貴方が足をジロジロ見ているのは知っています」
「怪我を心配していたんだ」
「私に惚れても良いんですよ。
ニャフフフ」
「えっえっ……、なんか変なものでも口にしたのか?」
『猫耳族の悪い癖が出たのだろう。
気に入った者をおちょくって遊ぶ性質がある』
「なんだそれは」
それが無意味な言葉だと解っている。
何故なら、魂が入れ替わっても見た目は変化が無いからだ。
判別する方法はなく、証明も出来ない。
風太にナイフを向けゼラは疑うように間合いを取っている。
「骸骨の口から魂が抜けて入っていくところを見みました」
「魂って見えるものなのか?」
「いいえ。
恐らく床に描かれた法陣の副効果でしょう」
テーブルに掛けてあった布が燃え尽き、隠されていた龍の像が姿を表す。
それは風太の方を向き口を開いている。
調べれば恐らく体を乗っ取るための代物だと解るだろう。
それは風太にとっては不利な証拠である。
「実際に行ったのは初めてだったんだろう。
だから失敗したんだと思う」
床から声が響く。
『俺が本物の風太だ。
助けてくれ!』
本が床に転がっている。
「転生前に持っていた新刊だ。
何でこんなところに……」
『あの法術で体を乗っとているんだ。
そこにいるのは偽物!』
ゼラは風太を見てニコニコと微笑む。
「やはり貴方は、偽物です。
本物はこの書物に封印したのでしょう」
「待ってくれ、何か証明する方法がある筈だ」
自分から何かを提案しても信用されないだろう。
だから待つ。
「ニャヒヒ……。
この質問に答えられた信用します」
「解った言ってくれ」
「最初のゲームで私がゼロを引いたのは何回?」
『三回!』
圧倒的な速さだ。
魔法で覗き見ていたのなら容易く解る質問だろう。
迂闊だった。
先を越されてる事ぐらい予想できたはずだ。
「0回だ。
あの時はババ抜きをするために0はババとして扱っていた」
屁理屈に過ぎない。
もう同じ答えを答えても意味はないから、違う解を出すしかなかった。
「やっぱり、書物の方が本物です。
ニャヒッ」
ゼラは棚を物色し、縄を見つけると風太を椅子に固定するように縛った。
「護衛っていうのは嘘だったのか?」
「簒奪者は黙っていなさい」
彼女に武器を手渡した判断は間違いだった。
怪我をしていても身体能力は間違いなく彼女のほうが優れていた。
自分で使っても魔物相手に戦えるとは到底思えない。
鳥が襲ってきた時も、銃を向けられた時も体が動かなかった。
だから預けてしまった。
守ってもらおうと言う甘えが招いた結果だ。
「一つ聞きたい。
話していた時動かなかったのは、呪が辛くて動けなかったからか?」
「いいえ、交渉中に仕掛けるのは礼儀に反します。
だから大人しく見守っていました」
「相手は骸骨の化け物だ。
それと話す事に何の意味がある」
必死に攻撃でできる機会を作ろうと頑張っていたのが全くの無意味だった。
「もし攻撃を仕掛けていたら、
間違いなく私は即死でした」
「どういう事だ?」
「とぼけるのが上手いですね。
ライフドレインを警戒していました」
ゲームとかだと数%の命を吸い取って自分の物にするアレだろう。
「それぐらい避けて頭蓋骨を叩き割る位できただろう」
「それほど私は強くありません。
軽く手が触れただけで干からびて朽ちていたでしょう」
そういう情報を出してくれていれば、別の策を考えていただろう。
とはいえもう終わったことだ。
「それは済まなかった」
ゼラは棚にあった大きな布を手に取り、本を包み込み背負った。
両手を自由にしたかったのだろう。
とはいえ、なんかダサい。
ボロボロの服装が貧乏感を出しているのだろうか。
「この床は引きずった跡がある。
これって動かせるよね」
棚のすぐ横の床だ。
痕跡は、ここからでは見えない。
「外観は結構広いのに、一本道でこの部屋だけしか無いって不自然だ。
隠し部屋があっても不思議じゃない」
その可能性はずっと前から気づいていた。
ただ隠し部屋を探すように促せば、知っていたのでは勘ぐられ立場を悪くする気がしたのだ。
出来るだけ助けはしたいが、それが自分の首を締めることに成る事は避けたい。
信用されていれば色々と思うことはある。
今思えば入っての直ぐの玄関らしい場所も何か違和感があった。
戻って調べたいが開放してくれはしないだろう。
ズズズズ……
棚の後ろから、出入り口が見える。
「この奥に何が隠してあるのか教えてくれるかしら?」
ゼラは風太に近づくと、耳たぶを甘噛する。
「知らない。
一緒に連れて行ってくれないか?」
「ニャヒヒッ。
捕虜を拷問して情報を聞き出すなんて事を押し付けられることもあるのよね。
体をあまり傷つけずに痛みを与える事もできる」
「痛いのは嫌だ。
護衛に失敗したと思うなら、まずは君が責任を取ってくれ」
「じゃあ別の方法も試してみる?」
ゼラの手が頬を撫でる。
舌が反対の頬をペロリと。
不気味さと怪しい気配に興奮すら感じる。
「待って冷静になるんだ!」
「ランタンの明かりも心もとないし、
時間を無駄には出来ない」
ゼラはランタンを持って奥へと行ってしまう。
縄は縛られる時に力を入れて隙間を作って置けば、外れるらしいが全然取れない。
何故か逃げようとすると絞まって行くようで苦しい。
「無理だ。
簡単に抜けられると思っていたのに」
壁に掛けられたランタンは小さな光を放っているが、座った状態では手が届かない。
放った炎はすでに消え去り、骸骨は灰となっている。
連鎖的に布は燃やしたようだが、テーブルは焦げ一つ無い。
もし効果が残っていれば、縄を燃やせたかも知れない。
「打てる手は本当に何も無いのか?」
骸骨は騙して成り代わる準備をしていたはずだ。
ゼラの呪いを解いて助けたのも利用する為だろう。
「いやこの状況こそがやつの策略か。
まんまと騙されているだから。くっ!」
どれぐらいの時がたったのか、足音が近づいてくる。
「ニャヒッ。
待ってた?」
「色々と考えたけど、降参だ。
何でも言うことを聞くから許してくれ」
「じゃあ、彼を助ける方法を教えて」
「そこに暖炉があるだろう。
本をそこに入れて燃やすんだ」
「成る程、燃やせば良いのね。
じゃあ火を付けましょう」
『待て! 殺そうとしているに違いない』
ゼラは困った顔をして、風太の頭を撫でる。
「嘘だったら貴方を殺すけど、本当にその方法で間違っていない?」
「ああ、間違っていない。
燃やしてもとに戻らなかったら俺の首を掻っ切れば良い」
「ニャヒッ。
それって興奮します」
『どうして燃やせば戻れるって解るんだ?』
「それは俺の魔法だからな」
『だったら説明してみせろ』
「寝ている間、魂がどうなっているか知っているか」
『何を言っている?」
「魂は肉体を離れ枕で休む。
そして目覚める時、肉体に戻るんだ」
『はぁ?』
「肉体に入る魂は一つだ。
だから追い出して閉じ込める必要があった」
「ニャ?
どうして閉じ込める必要があるのか解らないです」
「聞いてなかったのか?
元の肉体に魂が帰ろうとするんだ。
すると入っている魂が追い出されて、元の持ち主に変える」
『そんな出鱈目を信じたりしないよな?
騙して俺を殺そうとしている』
「ではどうして、本の姿にされたのか説明できるかい。
それは取引の材料として脱出するためだ。
予想外だったのは君がこんな暴挙に出て身動きを封じたこと」
「うんうん、私って偉い。
ニャヒヒッ」
ゼラが暖炉に近づく。
ランタンの火で本を燃やそうとした時だ。
『よく考えてくれ。
敵の言葉が信じられるのか?』
「私の直感が真実を語っているてビンビン来ています。
もう試してみるしか無い」
『どう考えてもありえない話だ。
寝ると魂が抜けるなんて話を聞いたことがあるのか?』
「うーん。
ある気がする」
『くっ……。
嘘を付くな!』
「ニャヒヒッ」
本に火を近づけると声の質が枯れたような感じに変わる。
『待ってくれ。
私の負けだ、ここから脱出する方法を教える』
「風太よね?」
『違う……、奴が本物だ。
あの話は全部、出鱈目に過ぎない』
「つまり偽物って認めるって事?」
『ああ、転生の法陣には欠陥があって不純物が交じる。
この姿に成ったのは転生前に所持していたからだろう』
「確かに楽しみに持っていた。
これで本物だって解ったんだから解いてほしい」
『色々と協力するから助けてくれ』
「ニャハハハ……。
嫌よ」
「待って、俺達は包囲を突破しないといけない。
役立つのなら力を借りたほうが良い」
『おお、話しの解る相手で良かった。
しかし、これも運命か……』
開放された風太は安堵したが直ぐにゼラに羽交い締めにされた。
「どうして私を騙そうとしたのか説明してくれる?」
「なっ、俺を信じなかっただろう。
だから自爆してやろうって思ったんだ」
「私は初めから本物だって気づいていたのよ」
「えっ?」
「だって貴方は法術って言わないでしょう」
師匠も法術と言っているが、気にせずに魔法と言っていた。
それが間違っていたのなら、何かしらの指摘が入るはずだ。
「なんだよ。
だってあれは魔法だろう」
「……魔法は、魔族が扱うものです。
私達は法則に則って力を行使する術を扱います」
「そうなのか……。
それで判別出来たのなら運が良かった」
「話を逸らさないでください。
私を信じなかった罰です」
「うぐっ……、参った、もう離して」
どう考えても理不尽だ。
あの状況で信じるなんて出来るはずがない。
「ニャフフ……。
では私の言う事をしっかりと聴いてくださいね」
「解った。
聞く、聞くから」
「このまま暫くここに滞在します。
私達は死んだことにして、身を隠すのです」
「こんな敵だらけの場所に留まるって正気なのか。
……いや、まだ足が痛むのか?」
「足は大丈夫です。
このまま戻れば私は処刑されてしまいます」
「なんでだ?」
「呪薬を解除した時に、忠誠の印も消えてしまったのです。
四つ耳族に定められた掟があり、印がないと裏切ったと見なされ殺されます」
「あの解呪は罠だったのか?」
「はい、迂闊でした」
「でも何のために、そんな事をしたんだ?」
『今でこそ、沼地だがここに王国があった。
勿論、印を付ける方法ぐらいある』
「交渉のためか」
『そうだとも。
地下への通路を案内しよう。
そこに刻印が置いてある』
信用して良いものか怪しい気がした。
「動けない立場を利用して、罠にはめようとしているかも知れない」
「疑心暗鬼になっていたら何も出来ない。
考えを変えるつもりはないです」
「印を付けたくないのか?」
「忠誠の印はある意味で呪いです。
それから開放された今を気楽に過ごしたい」
「俺はこんなところはさっさと出たいけど。
一人で抜けられる自信はない」
この瞬間、序列が決まりゼラが上位に居ることに気づいた。
彼女に逆らうことは出来ない。
一人でも大丈夫である風に振る舞うべきだった。
すでに彼女は護衛ではなく支配者なのだ。
「私は恩人は大切にしようと思っているの。
カードを投げて敵の動きを止めてくれたことは感謝しています」
「良かった」
「仲良くしましょう」
ゼラは風太の顎を掴むと、引き寄せ唇を重ねた。
「えっ……、いきなりビックリした」
「ニャヒッヒヒ。
貴方が足をジロジロ見ているのは知っています」
「怪我を心配していたんだ」
「私に惚れても良いんですよ。
ニャフフフ」
「えっえっ……、なんか変なものでも口にしたのか?」
『猫耳族の悪い癖が出たのだろう。
気に入った者をおちょくって遊ぶ性質がある』
「なんだそれは」
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