【R15】ネクロマンサー風太 ~異世界転生 死霊術師のチート~

ぺまぺ

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3章 玉国編

21話 復讐者

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「パフパフ……、フフフ……」
 魔女達がムフフな感じで出迎えてくれる。
 風船を入れているのかと思うようなボインボインと揺れる胸。
 ローブは筒状で平らな構造だ。
 魔女のローブは体に合わせて膨らみがあり、強調されて存在感をまざまざと見せつけられる。
「……こんな所に本当にいるのか?」
 隔離された区画で、入るには身分証明が必要で未成年ーーこの国では15才以下は立ち入り禁止という場所だ。
 魔女の館と看板が掲げられている宿に来ている。
 非合法そうな怪しい店が並ぶ中、デカデカと中央に存在する巨大な建物である。
 ここでの魔女は遊女の隠語であり、堂々と魔女を名乗っているぐらいだ。
「そんなわけ無いでしょう。
お持ち帰りしてもらうわ」
「えっえぇぇぇぇ?」
 どうしてこうなったのか。
 リアハに会いに行く筈だった。
 なのにこんな破廉恥な店に来ていた。
「優しくしてあげるから、パフパフしましょう」
「待って、いや違うんだ!」

 シャオーリが仮面を外すと、魔女達は真っ青になり絶句した。
 しばしの硬直の後にドタバタと整列し跪く。
「視察に来るのであれば、ご連絡いただければお迎えを……」
「彼を例の場所へ連れて行ってくれるかしら?」
「はい、すぐに手配します」
「随分と羽目を外しているようね。
研究の進捗を聞きたいわ」
「ひぃぃ……、それはあの……、まったく進展は……」
 表向きは遊館だが、実際は魔素を研究する機関である。
「この玄関は淋しいと思わないかしら?
剥製を並べても良さそうね」
 魔女達は意図に気づきガクガクと震え上がる。
 異界人に手を出したら、自分たちが剥製にされて晒されるのだと。
 この狂姫ばけものはやりかねない。
「術書の表紙は、ご自慢の艷やかな皮でも良いわ。
とっても肌触りが良さそう」
「話は後にしてくれ、早く会いに行きたい」

 後ろに隠れてていた地味な魔女が風太の前に出る。
 円縁メガネ、短めの緑髪で起伏がない平らな体つき。
 最大の特徴が兎耳が生えている四つ耳族と言うことだ。
「案内をさせて頂きます、セウファです」
「君も魔女なのか?」
「雑用係が主です。
安心して下さい、魔女のお仕事はしていません」
「ふぅー……良かった。案内を頼む」
 ドラマみたいに、服にキスマークを付けられてアタフタしたくはない。
 感動の再開に喜びたい気持ちで、お見舞いの果物を一緒に食べようと抱えている。
 シャオーリと別れ、セウファと一緒に奥へと進んでいく。
「あの少し時間割下さい。
意見を聞きたいものがあります」
「本当に少しか?
俺は3分も待つ気はない」
 組合での少しにはうんざりするほど待たされた。
 雀剣の登録で深夜まで待たせて、明日の朝に来て下さいの一言で済ますぐらいだ。
 ここの時間感覚は狂っている。
 だから拒否したい。
「魔素に付いて研究をしているのですが、
行き詰まっていて、このままでは剥製にされてしまいます」
「アレは冗談だろう?
……って思いたいが、やりかねない気もする」
「人助けだと思ってお願いします」
 魔女の剥製が並ぶ様子を少し想像しだけで気持ち悪い。
 そんな悪魔のような所業を見せらて普通の日常を送れるだろうか?
 悪夢で永遠に苦しめられて、どうして助けなかったと苦悩する日々になるだろう。
「解った、少しだけな」
 キラリと眼鏡が輝いたような錯覚。
 これは判断ミスだったか?
 
 筋肉ムキムキマッチョな強面の大男が阻む通路へと到達した。
「認証手形の提示を」
「はい、いつもご苦労さまです」
「彼は特上様ですか?」
「極上です。
私が案内するので通して下さい」
 すごい警戒しているのが解るが、暗闇で出会ったら鬼と思って反射的に攻撃していたかも知れない。
 いかにも秘密を守ってます感が強くて逆にバレバレなのが微妙。
「雰囲気にあってない気がするだけど」
「解りましたか。
傀儡人形ドローンは小型化しようとしても、あの体格になってしまうです」
 支配の仮面と同じ類のものだ。
 強そうな男を魔女が手籠めにしないはずがない。
 それで偽物と気づけた……訳ないか。
 無理、無理、人間と遜色ない肌の焼け、照りや質感……。
 偽物だと、言われてもまだ信じられないぐらいだ。
呪骸骨スケルトンは霊の記憶を元に再現していたんだったな。
だったら骨格だけで動かせるんじゃないのか?」
「えっと、何を仰っているのか解りません。
骨格を動かすために筋肉があるんです」
「それは必要なのか?」
「……私は骨格だけで動かす方法を知りません」
 死靈術と魔法との違いなのか、根本的な考え方の違いなのか解らない。
 同じような事が出来るなら、霊を憑依させて動かすなんて事をしないだろう。
「気にしないで忘れて。
俺の勘違い」
「異界の知識の断片に触れられ実に興味深いです。
興奮してきました」
「ここで知ったことなんだけど……」
「えっえぇぇ、私が未熟でした。
なんと恥ずかしい、王国の技術は我が国より劣っていると思っていたので……」
 話が噛み合わなさそうなので受け流す。
 無駄に理解させようとすると、沼へと引きずり込まれて時間が奪われる。
「それで意見を聞きたいものって?」
 
「何でも溶かす液体は激怒されまして、他に色々と作ったのですが、
どれもお気に召さなかったようです」
 あの服だけ溶かす、破廉恥スライムか。
 欠陥品づくりの素質がプンプン臭ってくる。

 そしてセウファは扉の前で誇らしげにペタンコな胸を張る。
 開かれたその先ーー物置部屋かと思うような棚だらけ。
 棚に並んだ怪しげな瓶に恐怖を感じる。
「……嫌な予感しか無い」
「これなんて可愛いクマの瓶に入った巨人化薬。
飲むと巨大な肉体に早変わり」
「怪しいな、なにか抜けているとしたら、そのまま巨大になる訳無いよな……。
ブクブクと太る」
「うっ……、そうとも言えますね」
「うーん、……玄関の魔女は、それを飲んでいる」
「正解、あはは……」
「何が巨人化だ。
全然違うだろう」
「す、すみません……。
次は、恋する者達の救世主、ラプラプ薬です」
 2つの瓶に入った赤と青の液体、よく見るとお互いの方に寄っている。
「これは一つの瓶じゃないよな?
なんで分かれないんだ」
「強力に引き合うので、ピッタリと引っいて離れなくなります。
なので二人で飲む感じで……」
「そんな事したら、べったり引っ付いて困る。
それ以前にこれを飲む状況がないだろう」
「どうしてです?」
「一緒に居たいと思うなら、飲まなくても既にラブラブだろう」
「はっ! 確かに、その着眼点には気づきませんでした」
「心動かされる凄い物はないのか?」
「ありますとも、背がのび~る薬です。
あと少し背があればと思う事がありますよね?
そんな要求に答えてくれる一品です」
「飲んでみてくれ。
背が伸びたところを見たい」
 ゴクゴク……。
「見て驚かないで下さいね」
 セウファは靴を靴下を脱ぎ始めた。
 足首から先が強調されたように、でっかくなったのである。
 その歪さがなんとも奇妙。
 縫いぐるみなら可愛いのかも知れないが、生身では気味が悪いだけだ。

 ろくでもない代物ばかり、どれもこれも少し考えれば変な事がすぐに分かる。
 なのに自慢げに、良いものだと自信を持っている所が痛い。
「もう全部廃棄したら良いと思う」
「そんな殺生な……」
「うーん、どれもこれも期待外に思えるのは名称と効果のズレがあるから。
つまり改名すれば良い」
「開発目的と違う名所にする事は、開発長が許してくれないです」
「考えを変える気がないのなら、意見を聞くな。
早くリアハの所へ連れて行ってくれ」
 時間に余裕があれば、色々と見てみたいが今は余裕はない。
 瓶に入った液体が並んでいるだけで、ヤバそう感があるだけ。
 ロマンというか、ビビッと来る刺激的な物があったら夢中になったかも。
「長の説得をお願いします」
 後は君たちの努力と、ここで切り捨てるのは冷たすぎるか。
「わか……」
 嫌な予感に言葉が詰まる。
 足が巨大化しただけで済む訳ないよな。
 その先……、歩きづらさ。
 転んで棚が倒れて大惨事という未来が見える。
「一歩も動くな」
「はい?」
「その足でまともに歩けるとは思えない。
おんぶする」
「子供みたいで恥ずかしいです」
「俺に従わないなら、交渉はしない」
 混ぜるな危険な物を簡単に割れる瓶なんかで保管しているのも、大量に並べているのも前振りに見えてくる。
 緩衝材で覆ったりして割れないような対策が必要だ。
 そういう危機意識が抜けているから、欠陥品が出来上がるんだろう。

 風太が背を向けると彼女は抱きつく。
 ……いつものムニッとした感触もなく物足りない。
 いつの間にか毒されて、いやいや……。
 そんなことより脱出だ。

 部屋から出て通路に出たところで下ろす。
 これで悲劇が回避されたはず。
「重かったのでしょうか?」
「いや、転んで薬品まみれの大惨事にならないかと。
ここなら大丈夫だろう?」
「そういうことでしたか。
そういう趣味があるのかと勘ぐってしまいました」
「どういう趣味だそれ。
早く案内してくれ」
「はい」
 いつもと違う足の幅、絡まり転ぶのはお約束。
 すっと受け止め支えた。
「歩けないなら、背負っていくしか無いな」
「ううぅぅ、こんなにも優しい人がいるなんて」
「ええ?」
「石を投げつけられたりと忌み嫌われて……」
 不味いなんか変なスイッチが入ったみたいだ。
「……その兎耳は可愛いと思う」
 シューンと言う感じで背が下がる。
 薬の効果が切れ足がもとに戻った。
「もしかして私に惚れている?」
 否定しすれば四つ耳に産まれた事を恨むだろう。
 しかし肯定は出来ない。
「出会う時が違ったなら」
「うふふふ……。
長の見た目に関することは禁句ですから注意して下さい」
 
 厳重な警備に守られた最下層。
 薄い桃色髪は2つに束ねられ螺旋らせん状に。
 小学生かと思うよな小柄な体型に童顔。
 何故か巫女服……。
「私はここの管理責任者のアマルネ。
最も偉いのである、えっへん」
「研究に失敗続きらしいな。
考え方一つで失敗も成功になるとは思わないか?」
「何を偉そうに。
良かろう、知恵比べと行こうじゃないか。
私が負けたら、考えを改めることもやぶさかではない」
「緑髪は大地の精霊の加護を受けていた。
桃色ということは……火、いや風だろうな」
「くーすくすく。
精霊の加護を受けた月によって色が変わることはじょーしき。
そんな事も知らないなんて、へっぽこすぎ」
 すぐに調子に乗って浮かれる感じか。
 これは下手に勝ったらへそを曲げる。
 有頂天にすれば気が大きくなってガバガバになるな。
「知識の量で比べられたら、勝てる気がしない。
これは俺の負けだな」

「まあそう慌てなくとも、古来より伝わるゲームがある。
その名も蜂の巣並べ」
「知らないな……」
「ここに蜂の巣に見立てた六角の駒がある。
これを交互に置い行き4つ揃えば勝ちとなる。
ただし、3つ並べたら負け」
 白と黒の駒があり、中に蜂が描かれている。
 モチーフは蜂だが、結局は五目ならべと大差ない。
「ヒントは無いのか?」
「一升開けて飛び3の形から4へと並べるのがコツ。
これで公平な勝負、さあさあ始めよう」
 ただ遊びたいだけの予感。
 なんだかんだ理由をつけてはゲームに誘ってくる奴がいた。
 そんな香りがする。
「一回で勝敗が決まるのか?」
「本当なら3回と言いたいけど、慣れるために先に5回勝利する。
感謝しなさい、アマネル可愛いって褒め称えなさい」

 自分を可愛いって、どんなに自己愛が強いんだ。
 逆にこっちが恥ずかしくなるぐらいだ。
「可愛い……」

 勝負が始まると適当に置いて様子を見るが、想像以上のポンコツ。
 勝ちが何度もあるのに気づけない。
 そんな彼女に勝ちを譲るのに、38ターンを要した。
「負けました」
「なかなかの激戦、これほどに手こずったのは初めて。
しかし、それは手加減してあげたから」
 もう兎に角、戦力で負けて早く終わらせる。
 そう専念するが……。
「へっぽこ、やーいやーい、連敗した気持ち知りたいなぁー」
「ざーこざこ、こんなにざこで、へっぽこなめくじ。
ねぇねぇ、今どんな気持ち」
「ざこオブざこざこナメナメ、勝ったらアマネルの足先をなめさしてあげる。
あー弱すぎて、ふぁーってあくびが出るわ」
 4連敗、後一回負ければ目的を達する。
 だが限界だった。
 あまりに煽ってくる態度と言葉に風太は切れた。
「次勝てるか解らない。
負けたら俺は君の為に何でもすることになるのか……」
 そんな約束はしていない。
 彼女だけが負けた時の条件を提示していただけだ。
「そうそう、アマネルの奴隷となりなさい。
手取り足取りと教育して、ざこなめくじ君から更生させてあげる」
 次の勝負は直ぐに終わる。
 風太の勝ちだ。
「ふぅー運が良かった」
「負けてあげただけ、感謝しなさい」
「……それぐらいハンデ、右手を使わなかったし。
まあ、ざこ君にも夢を見せてあげないとね」
「んん、ラッキーだったね。
何時まで、その運が続くのか、見ものね」
「くーっ悔しい、ざこざこのクセに、なんでなんで、勝つの!
なにか不正している、絶対そうよ」
 反撃の4勝、この程度楽勝だ。
 このまま勝ち越すのも楽だろう。
 屈服させて用件を飲ませても、いつかはひっくり返される。
 いやいや従わされたと負の感情が溜まり爆発するからだ。
 その場しのぎなら別に構わないのだが、セウファに怒りの対象が向かうのは避けたい。

「丁度4勝4敗だ。
引き分けで手打ちにしないか?」
「あり得ない、単なる運が重なっただけで、もう勝った気でいるの?
もうグッチャグチャにしてあげるから、早く指しなさい。
あー、怖くなっちゃったのかな?
やっぱり、ざこなめくじ君はよわーよわーだから」
「聞いておくけど、これを何時遊んだんだ?」
「半年前ぐらい……
でも6才の頃から初めたし、13年目も勝ち続けてる」
 娯楽に溢れた前世、少し時間があれば何時でも遊べる。
 ネットに繋がった相手やAIが対戦相手となってくれる。
 1プレーが短い時間でも気がつけば累計なら数千時間を超える。
 そんな奴らがごろごろ居て凡人でしかない。
 極めずとも経験と実力の差は歴然だった。 
「俺はさっき知ったばかりだ」
「負けた時の保険なんて見苦しい」
 勝負はあっさりと付く、2つ並んでいると3つ目が置けない。
 つまり弱点となる。
 一つ飛んでも2つ並んでいるのと同じ。
 その間に飛3を作るよう2つ開けて挟むように置くのがコツだ。
 次に飛3ができて、その間に置けば相手は3になるので置けず詰む。
 そんな初歩的な方法で締めたのである。
「一生奴隷として働くだったかな?」
「そ、そんな事言ってない……。
えっと……、セウファ全部見ていたよね。
言って、違うって」
「勝ったらアマネルの足先をなめさしてあげる。
更に奴隷になるみたいな事を言ってた気もします」
「ええ、ウソウソ、なんかーの間違い。
言葉の綾、だから、勘違い、ね、ね、ね」
 アマネルは慌てて大袈裟に手をバタバタと動かす。
 手を動かしても何の解決もしないのに。
 それ程、動揺しているのだろう。
「提案なんだが、失敗品なんだがリネームしてくれ。
効果にあった名前にするだけで良いんだ」
「失敗品って言うな。
我が子同然の可愛い子達よ、愛情を注いで与えた名前を変えるなんて出来ない」
「だったら奴隷になるか?
足を出せ」
「ひーっ、なんて変態、ざこざこのナメクジの癖に。
なんで偉そうに、あんなお遊び、……でアマネルを奴隷に出来ると思っているの」
 風太がアマネルの顎を掴む。
 彼女は目をぐるぐる回し、顔が真っ赤に沸騰。
「約束は守ってもらう。
良いか?」
「はい、しゅるしゅる……」
 開放してもアマネルの熱は下がらずクラクラと混乱しているようだ。
「行こうか。
これで約束も取り付けたし、問題も解決しただろう?」
「はい。
長も反省してくれると思います」
「待て!」
 アマネルは風太の仮面を剥ぎ取る。
 目が合うとブハッと鼻血を撒き散らし倒れた。
 殺人事件現場みたいな……。
 いや俺が悪いのか?

「うーん」
「目が覚める前に行きましょう。
長は惚れやすくて、顔がど真ん中を射抜いたのです」
「自分で言うのもなんだが、平凡だと思う。
そんなにイケメンに見えるのか?」
「私はイケると思います。
まあ好みは人それぞれですし……、恋は盲目とも」
「確かに混乱している感じだったからな」
 流石に床に放ったらかしにするのは可哀想だ。
 鼻血を拭き取り、彼女をソファーに寝かせる。

 行こうとした時、ググッと衣を掴まれた。
「勝ち逃げは許さない。
もう本気なったし、きっちりと見せてあげる」
 セウファが一冊持ってくる。
 表紙にマル秘と書かれている。
「ああぁぁっ、見るなぁぁ。
返して!」
 この慌てよう……。
 ピラピラ……とめくると漫画だった。
 台詞はあの罵倒……漫画風の台本なのか?
 もっと先をとーー変顔でブヒブヒ言っている。
 何だこれは?
 バシッと、アマネルは本を奪い返す。
「まじまじと見て、変態さんだったのですね」
「どういう事?」

 セウファがメガネを輝かせ、説明口調で淡々と告げる。
「これは異界人が記したドージンです」
「何だそれ?」
 ゴニョゴニョ……。
 つまりエロ本だ。
 髪型も背丈もアマネルにそっくりだ。
 つまりあの展開を望んで、仕掛けていたということなのか?
 いやそんな事より女の子の前でエロ本をまじまじと見ているなんてヤバい奴じゃないか。
「違うんだ、知らなかったんだ。
そんなヤバい本だって」
「にひひひ、もしかして動揺しちゃった?
アマネルなんて、これぐらいへーきーだし、もっと凄いことしているから」
「そっかここは、そういうところだった。
早く出よう」
 風太は冷静を装っていたが、心臓がバクバクいって動揺していた。
 ハニートラップに掛かったらアレだけ教育したのに駄目な男とリアハに嫌われてしまう。
「逃げるって、本当ざこざこすぎ」
「ここに遊びに来たと思っているなら勘違いだ」
「そのバナナを食べて上げようか?」
 アマネルは目がぐるぐるまわり、沸騰しまくりだ。
 まともな思考が出来る状態ではなさそう。
「これはお見舞いに持ってきたんだ。
渡すつもりはない」
 フルーツ盛りを守るようにセウファに預ける。
「にひっ……、とぼけちゃって」
 深呼吸すると冷静になれた。
 あの本を見てからの反応は明らかに違う。
 何かを隠そうとしているのか?
 あのエロ本にそんな怪しい事が書かれていたとしても俺には解らない。
 うーん、なにか違和感が……。
「内容の再現で作ったとバレないようにあえて名称を変えたんだな?」
「違うよ。天才なアマネルの頭脳を持ってすれば、
そんな怪しげな薬ぐらい既に完成させているから」
「漫画にマル秘って極秘資料みたいな印は不自然だな。
研究をサボって楽しんでいたとしても、それって良いのか?」
「ざこなのに、そこに気づくなんて。
それは閲覧禁止だから、こっそり持ってきたからで……」
「それはそれで不味いよな。
シャオーリが知ったらどうなるか」

「死よりも怖い、あんな事やこんな事を平然とする、あの狂姫よね。
どうか黙っていて下さい、なんでします」
「参考に読むのならSFなんか良いかもな」
「それって……、どんな破廉恥な事が……うひひひ」
「いや真面目な話で、そんな如何わしい物と一緒にしないで欲しい。
ショートショートとか良い。
短い中にピリピリと辛口と絶妙な笑いがあって」
「ふむふむ、異界人の残した文献から探してみる」
「じゃあ、もう良いか?」
「礼をしたい」
 悪寒、背筋が凍てつくような。
 セウファからだ。
 
 ここに来たのも彼女が連れてきたからだ。
 俺に助け舟をだしてくれているようで、アマネルにとっては致命的な事ばかりだ。
 雑用みたいなどうでもいいような役割、それに迫害されていた過去。
 それを恨んで……。
 彼女が兎だとすれば、アマネルは狸だろうか。
 カチカチと背が燃えていることに気づかず追い詰められている。
 復讐の道具にされるはごめんだ。
「ありがとう」


 アマネルは透明な液体が入った瓶を見せる。
「ふふーん、これはある樹液で、これに固形化液を混ぜると固まる。
法術杖の核となる部分をこれで作っていて……、すっごく可愛いのが、見て見て」
 キラキラした粉が入った様々な瓶が並んでいる。
 それを手当たり次第に容器に入れて混ぜ合わせていく。
 そして半透明な型へと流し込む。
「風の精霊よ。無空を想像せよ!
汝は消失し閉じた世界となれ、……空失法術ヴァキューム!」
 液がグツグツと泡立つ。
「沸騰しているのか?」
「あらら、空気を抜いていることも解らないのかな?
にひひ……」
 真空が解かれてるとゆっくりと空気が吸い込まれていく音が響く。
 泡が消えさる。
「でもな、俺は魔法の道具に嫌われているから、ビリビリ来て持てない」
「1日で完全に固まるけど、そんなに待てないよね。
そこで作っておいたものがここにある」
 型は半分に割れて、球体が出てくる。
 星空を閉じ込めたような暗くも夜空に流れる大河のような神秘的さ。
 つなぎ目や注ぎ口で固まった余分な部分を取り除けば完成なのだろう。
「宝石を削って作っていると思っていた。
まさか液体だったなんて」
「これも異界人の知識なのに、知らないなんて。
ぺっぼこも良いところ、やっぱりざこナメクジね」
「そう言えば、ドローンだっけ?
これで骨組みを作って小型化出来るんじゃないのか?」
「はぁ? そんなこと試しているに決まってるのに。
それで出来ないから、あの大きさなの、ざこざこは黙ってれば良いの」
「ゾンビパウダーあるんだろう?
それを混ぜて骨格を作れば良い」
「はいはい、もう良い、新しい発見があるかと期待したのに。
全然使えない、もう帰っていいわ」
「……泥舟に乗るな」
「なにそれ……。
これもあげるわ、アマネルの顔絵入りよ。
ムカついても割ったりしないでね」
 紙に書かれた絵が入っている球体だ。
「だったら、悪口をやめてくれ」
「ざーこ」
 
 この場で叩き割ってやろうか。
 だがそんな事をしてもなにか好転するわけでもない。
 空飛ぶ箒に乗せてもらい、リアハの元へと飛んでいく。
 やっとだ。
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