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3章 玉国編
23話 血塗られた英雄
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「さあ、首を跳ねるのです!」
次の依頼を受けるために、依頼主である貴族ラベーオの元にやってきたのだが……。
条件として、極悪人の処刑を行うことになった。
ラベーオは漫画で出来そうな美青年な貴族に見えた。
金銀の装飾が付いた将校の軍服を着ている。
その補正もあるのだろう、整った中性的な顔つきに金髪も高得点で可愛い。
なんというかペット的な愛くるしさを感じてしまうのは、四つ耳族だからピョコッと生えた狐耳があるからだろう。
貴族は軍や警察等の役割を担っているらしく、現場の判断で罪人の処刑も役目の一つだ。
「……どうして俺に?」
「相手は山賊です。
人間を斬る覚悟が無ければ、任せることは出来ない」
拘束されている男は無精髭が生え身なりも汚らしく異臭を放っている。
無抵抗な相手を剣で切り裂くで良いと言う簡単にできる事だ。
だが人の命を奪うことを否定してきた風太は葛藤していた。
「この極悪人は、領内の村に侵入し女に暴行を加えた挙げ句、殺害をした。
現場で取り押さえた時、既に3人が殺されていた」
「話をしていいか?」
「構わないが、あまりお勧めはしない」
「なんでそんな事をしたんだ?」
猿ぐつわを外す。
「皆殺しにしてやるクソ!」
「事情を話してくれ……」
「殺してやる、温情だとかクソ喰らえ! クソども皆殺しに……」
黙って見ていたラベーオだったが、流石に「黙れ!」と制す。
しかし、その後も出てくる言葉は暴言、暴言、暴言……と何にも情報は得られない。
あまりに酷さにラベーオの鉄拳が炸裂しふっ飛ばされたくらいだ。
「難民風情が……助けた恩を仇で返すとは、恥を知れ!」
風太は剣を振るった。
剣先が首筋に当たる直前で手が止まる。
怒りに任せて殺して良いのか?
なんで命を奪わなくてはならないんだ?
確かにむかつくし、殺してやりたいと憎悪も湧く。
でもそれをしたら人殺しになってしまう。
魔族や魔物を散々殺してきたのに?
知らなかったとは言え人を焼死させたこともあったのに?
矛盾している、なのに。
剣が手から離れていた。
「残念です。
では私が処分をしましょう」
「待って欲しい」
風太は極悪人に軽く触れる。
数人の女の霊が取り憑いていた。
母子なのだろう、明らかに年齢が離れた姿が見えた。
「12人も殺したのか!」
風太に霊の記憶がなだれ込んでいた。
慈愛に満ちた母、幸せに暮らす娘の思い出それが徐々に消えて憎しみと憎悪を渦巻く悪意へと変わっていく。
写真にインクを落とすようにポタポタと侵食し蝕む。
涙がこぼれ落ちていた。
「クソ、気持ち悪いグズが!」
その言葉は風太には届いていない。
魂の声だけが心に響いていた。
『悪霊に触れすぎると魂が朽ちる。
やめておけ』
「受けた痛みや屈辱を体験させたい」
『精霊に命ずるように、悪霊に命じれば良い。
魂の回想劇』
「霊よ、汝の過去へ誘い刻み込み……。
ハハハハッ……」
呪文は自然と浮かんでくる言葉を唱えているだけで意味はわからない。
世界の理が教えてくれるのだが、途中で変化した。
それは意識が乗っ取られていたからに他ならない。
当の風太は、それに気づいてはいなかった。
何故なら意識があるからだ。
「赤く煮えたぎる地の底より目覚めし、紅目を持つ地獄の使者よ。
裁きを! 罪の烙印を! そして、魂へ刻み込め!
魂の回想劇!」
白い大蛇が地面から現れ極悪人の身体に巻き付く。
ガブッと頭に齧り付き、スッーと蛇は消える。
この時、女達が受けた痛みを極悪人は受けていた。
手足を刃が貫き、身体が割かれていく……、酷く長い痛みが襲っているのだ。
「ぐあぁぁっ……やめてくれ……」
もがき苦しみのたうち回る姿は哀れであった。
「解った。
無駄に苦しめるのは止めよう」
霊の食事。
風太にはリアハに取り憑いていた霊達が体に宿っている。
命の源を与えることで霊は維持出来る。
極悪人の肉体はやせ細り骨と皮のようになり、毛が抜け落ちる。
拘束していた縄が緩み、逃げ出そうと立ち上がろうとした。
ボキッと足の骨が折れ倒れる。
大人しくしていれば、怪我をすることもなかったのだが。
絶望の声を漏らしながら這いずる見苦しくも生き延びようとする逞しさは見習う所だろうか。
もう無駄に苦しめる必要はないだろう。
剣で極悪人の首を跳ねた。
これで罪は消える。
そして恨みを晴らした霊も成仏して消え去るだろう。
「その法術は一体……」
素直に答えたいが、流石に死靈術と明かすのは問題だ。
体内からではなく、霊を通じて周りから力を取り出す。
環境依存なのは精霊を扱うのと同じだ。
違いは憑依している相手からも強制的に奪って使う点が違う。
「忘れてくれ」
「領民の為に涙を流してくれて礼を言う。
王国から来た訳ありと聞いていたので疑っていた」
「いつの間に……、泣き虫みたいで恥ずかしいな」
涙を拭き取り笑みを浮かべる。
「話しは部屋でしよう」
メイドが並んで待っていた。
年齢も老婆から青年と幅広い、恐らく年長者が長で統括しているのだろう。
笑顔で出迎えてくれるのは心地よい。
玉国の貴族はお茶と菓子に目がないようだ。
大皿にでっかいケーキが3つ並んでいる。
「この依頼を失敗すれば納品期日に間に合わず帝国との関係が悪化する事になる。
極めて重要な任務だと言うことを理解して欲しい」
「山賊を撃退するだけだろう?
任せてくれ」
今は共に戦ってくれる守護霊のような存在もいる。
法術に劣るが今までの非力な状態ではない。
「前任者も自信満々に勝利宣言していたよ」
国家の危機にもなりうる重大な任務を託して良いのかと不安に感じるのは当然だろう。
一度失敗しているなら尚更臆病になるのも理解できる。
だがそれでは困る。
シャオーリとの約束を果たせない。
だから絶対に説得して依頼を貰う。
「赤の月を生き残れるだけの実力はあったのか?」
「生き残れるとは思えない」
「だったら俺のほうが強い。
数々の修羅場をくぐり抜けてきたから彼女からの推薦があっただろう?」
あの狂姫なら、間違いなく根回しはしていると読んでのことで打ち合わせはしていない。
外したなら、ここで詰む。
ラベーオはお茶を少し口に含む。
「このケーキを一人で食べるのは少々強欲ではないかと思う。
前任は3人で分けて食べ、余ったのを部下の兵士に6等分して与えていた」
この苺の乗ったケーキはクリームたっぷりで、一人で食べるには多すぎる。
それを3つも食べるのは腹が破裂するほど膨れるだろう。
素直にそんな話なら良いのだが裏を読むのが流儀なのだろう。
法術士組合から派遣されたのなら前任の3人は法術士のことだろう。
試されたのは覚悟だけで魔法の実力は一切気にしていない様子だ。、
つまり相手に魔法が使える者が居ないと言うこと。
「3人分でも大丈夫。
それぐらい平らげてもう一つ食べられる」
「ではロールケーキをお持ちします」
年長のメイドがすぐに持ってきて置く。
どうしてこうなった。
本当に食べないといけないのか?
まさか、本当に食べる量を聞いていただけなのか?
あの姫様と一緒にいると裏を読まないと、不機嫌になって殺されそうになったから……。
いやまて、冗談でドッキリとか……。
余裕って言ったし、残したら怒る。
ニコニコしているのがより一層怖い。
「どうしました。
毒見をして欲しいのでしたら、私の妻にさせましょうか?」
「いやいや、なんで奥さんを……」
「私で良ければ行いますが」と、あの老いたメイドが言う。
「もしかして?」
「はい、彼女も私の妻です」
「並んでいるのは、もしかして全員?」
「はい。異国では珍しいようですが、
富を持つ者の義務のようなものです」
「お婆さんを妻に迎えるって、守備範囲の広さはビックリした。
騙そうとしていないか疑いたくなる」
「残念ながら全ての人を平等に助けることは出来ない。
なら身近な人達だけでも幸せになって欲しいと、考えた結果決まったことです」
「独身が不幸ってことなのか?」
「いいえ、生活費等を援助するためです。
こういう形にしなければ、民はどうして自分には援助がないのかと不満を漏らし暴動に発展したらしいです」
話をずらしても、ケーキが無くなったりはしない。
これを食べないで済ます話題はないだろうか?
考えても全く思いつかない。
いや……。
「所で前任者はどうして山賊を見逃したんだ?」
「残念ながら全員死亡し、山賊は無傷です」
魔法の前には、山賊は無力の筈。
つまり想定外の何かがあったということだろう。
「裏切り者が居たのか?」
王国派の者が妨害工作を企てても不思議出来ない。
実際、風太も妨害を受けている。
「恐らく毒殺だと思われる。
護衛の兵士が警戒地点に差し掛かった時、法術士を呼んでも返事がなかったらしい。
寝ていると思い起こそうとすると死んでいたという」
「……もしかして、このケーキに?」
「最愛の妻が作ってくれたものです」
ラベーオは少しケーキを口にする。
とても嬉しそうな笑みを浮かべているが、惚気か美味しいのか判断がつかない。
ここで食べないのは失礼だろう。
ええい、一口だけ。
濃縮したような圧倒的な甘さが押し寄せる。
ありったけの砂糖をドカドカと入れたような存在感。
もうお腹いっぱいで、これ以上は身体が拒絶しそうだ。
「持って帰るので包んで下さい」
「アハハハハハ……。
逃げられると思うのかい?」
「いや、……考えが甘かった。
護衛として使うのは新型のドローン。
指示役の俺が居れば良いだけだ」
それは嘘だが、霊の舞いを死者の書から教えてもらっている。
メイドの霊に頼ることになるが、ナイフなら操れるだろう。
レイスにまで成長させれば霊となったメーメル師匠が魔法で手伝ってくれるが、それは転生の道を断念するということだ。
つまり恩義に反し呪縛で現世に留めるという非道な行いでしか無い。
協力的なのは売り込みの為の宣伝に利用するためだろう。
アマネルのような、禁書でハァハァするような奴には意味がないが、欲深い者が手にすれば活躍を知り手放さなくなることは間違いない。
「では皆で分けよう。
貴公にはロールケーキを」
甘さが抑えられ食べやすい。
ふかふかの生地にほんのりと甘い香りがする。
「美味しい、持って帰ってリアハに食べさせたいな」
「忘れていましたが、令嬢から贈り物が届いています。
こちらへ」
犬がやってきて、風太の足にすり寄る。
魔法の犬なのだろうと、頭を撫でる。
ボワ~ンと、風呂敷に変わり中から色々と出てくる。
支配の仮面に、白骨化した手、白い粉の入った瓶……。
この手の骨を手に入れられるのは姫様しかいない。
怨念を放つ木の根本に突き刺した杭が変化したものだからだ。
「嬉しいな、師匠が俺のことを認めてくれた。
新しい仮面だ」
この中に裏切り者がいても、仮面の秘密は解らないだろう。
宣言しても良い勝利確定。
「骨……、そう言えば死亡した前任者の死体がまだ見つかっていない。
我々が到着したときには、略奪され空になった馬車だけが残っていただけです」
奇妙な話しだ。
山賊がわざわざ死体を持って帰るわけはない。
なら前任は生きていて逃げ出したのではないか?
うーん、情報が足りない。
「気になっていた事だけど、どうして貴方が護衛をしないんですか?」
「兵を動かすには議会の承認が必要なのだが拒否されている。
それに難民が不穏な動きをしているようで手足が封じられている状況です」
王族は飾りで、貴族は軍事を行い、政治は議会なのか。
独裁している王国の方が、自由に動けるみたいで良い気がするのはなんだか不思議な感じ。
まあ王子の気分次第で、命を奪われるのは酷いが……。
「難民の盗賊に襲われたこともあったな」
「彼らは以前の暮らしが出来ないことに不満を漏らしています。
兵士や農民になりたくないと働かず、食事が物足りない、住む場所が悪いと……」
……着眼点が違ったか、わざわざ死体の事を告げたのはどうしてだろうか?
見ず知らずの者にケーキをご馳走したりはしないよな?
彼の妻がお菓子作りが好きで誰でも振る舞ったかも知れないが……。
前任者は恐らく、彼の部下だったのかも知れない。
だとしたら……。
「死体を入れる為の木箱を追加してくれ。
山賊から聞き出して取り返すぐらいしても良いだろう?」
「無事戻って来てくれ。
次は親友として迎えよう」
獣耳はどうして魅力的なんだろうか。
感情でよく動いてわかりやすい。
撫でてたくなる愛らしさ。
彼に触れたら怒るだろうとずっと我慢している。
親友となったら撫でても許してくれるだろうか?
「ああ、任せてくれ」
罪人には罰を。
覚悟を決めた風太は誓いを立てていた。
山賊の皆殺しである。
それは裁きを与えるためではない、死霊術の存在を隠匿するため。
死霊を維持するための餌にするためでもある。
現状でも、体力が著しく落ち軽い運動で息切れするぐらいだ。
「……また命を奪うのか」
『悔やむ事はない。
相手は人殺しを平気で行う、野放しにすれば被害が増える』
「この怖さを感じられなくなったらと思うと恐ろしい」
用意された馬車に乗り込むと木箱を開く。
リアハが寝ており、その隣に入る。
「王家の伝説に、異界人の勇者が登場します。
彼は真面目に戦っていたのですが、ある時気がついたのです」
「いきなり昔話なんてどうしたんだ?」
「自分に逆らえる者は居ないと。
その時から好き勝手に振る舞うようになり、民は苦しめられました」
「もし俺が、そうなったら君の手で止めてくれ」
「はい。
では、私を妻に迎えて下さい」
「んん……?、らしくない」
「勇者は妻に殺され、彼の子が王家の血筋として残ります。
私に与えられた任務に貴方との子を作り、いざという時の抑止があります」
「だから一緒に過ごしたのか」
「はい。
すべてを捨てて帝国で暮らす事を選んでくれるなら、
私は任務を忘れ貴方と共に暮らしたい」
これからリアハは帝国に亡命し、用意された場所で生活を送る。
王国に裏切られ、故郷へ戻ることが出来なくなった悲しみはあるのだろうか?
俺には解らない。
そっとリアハの手を握る。
「それも良いかも知れない。
けど約束は果たしたい、終わるまで待っていて欲しい」
上から気配がしてゾッとする二人。
覗き込む桃色髪の女がニタニタと笑みを浮かべてる。
「アマネルも混ざりたいなー。
一緒にムフフな事、いっぱい、いっぱいーしたいなー」
「なんで君が……」
「納品する法術具は全部、アマネルが制作し管理してます。
何度も奪われるのは勘弁して欲しいから来たの」
アマネルの表情が一瞬濁った。
嘘は真実を混ぜるとバレにくいらしい。
おそらく制作したのは本当だろう。
実際、お土産として作ってくれた。
だとしたら理由が違うのだろう。
「禁書の持ち出しがバレて、処分が怖くて逃げたしたって所か?」
「ううぅぅっ。
どーかな、そーうかなー、いやー、……見逃してほしいです」
「解ったから、隠れて……」
「ではお邪魔します」
「他の箱が空いている。
狭くてもう入れないだろう」
「二人でムフフフってするんでしょう?
あーあーあー、その隣で、聞かさせれる身になって欲しい」
「えっ、違う違う……、いや違わないのか?
ともかく、君には関係ない」
「任務中にそういうのは駄目だし。
私と場所変えして」
仕事中にエロ本を読んでいる彼女には言われたくない。
だったら君も駄目なことしているだろって反論したいが、どうして知っているのかと問われるのは怖い。
中身を見たって思われる。
いや見たけど、知らなかっただけだからセーフの筈。
「嫌だ」
「このスライム君を入れちゃおっかな?
ネチャネチャドロドロ服を溶かしてくれるし、お望みのムフフが楽しめるでしょう?」
「止めろ!
解ったから……」
隣の空箱に移るしか無い。
エロ女がリアハに何を吹き込むのか心配で仕方がない。
HP0になって運ばる棺桶の気分だ。
馬車の振動がガタガタとして寝心地が最悪、死体じゃなければじっとしてられない。
クッションが敷いてある隣と違って、何も無い木の板だ。
痛い……。
4台の馬車が峠に差し掛かる。
襲撃があった付近だ。
昼間だと言うのに、濃い霧が覆い薄暗く明かりすら白いカーテンに阻まれる。
カランカランと、先頭の馬車が鳴らす鐘の音を頼りに後続の馬車が続く。
ボッボッボッと青い火の玉が現れ、馬車の周囲を飛び回る。
「気味の悪い馬車だ……、おい準備はいいか?」
山賊は丸太を道に転がし、進路を塞ぐ。
馬は丸太を乗り越えられても車輪は超えられず止まる。
なのに馬車は減速する気配はなく、突き進む。
「見えてないのか?
まあ良い止まったら一斉に行くぞ」
バキッ! ズズズ……と、丸太をへし折り、そのまま馬車は駆け抜ける。
「てめーら、使いまわしたのか?
腐ってたら意味がないだろうがー」
「今朝切り倒した、丈夫な丸太です」
「じゃあなんで止まらない」
理由がわからないが最後尾の馬車が止まった。
「一匹掛かりました!」
「野郎ども行くぞ!」
意気揚々と馬車に向かう山賊達は、御者を狙い迫った。
白い顔……いや、それは骸骨だった。
「死体……、どういう事だ?
まあいい、荷台を調べるぞ」
背後に回ると、革の全身鎧を纏った大柄な戦士が出てくる。
「一人か?
情報にない男だ」
戦士は荷台から降りようとすると、片方の革靴が脱げる。
足ではなく木の棒が見え、それが人間ではないと悟った。
「新型のドローンか?
だとしたらポンコツだな」
木々に隠れていた山賊達が一斉に矢を放つ。
人間なら、それで串刺しにされ絶命していただろう。
だがそれは針千本になっても動きを止めることはなかった。
何故なら、本体は剣を持つ手の部分だけであり、他はただのハリボテに過ぎなかった。
ブンッ! と斬撃の音と共に山賊の胴体が切断された。
「ぎあぁぁぁぁ」
山賊の悲鳴が響く。
「矢は意味がない。叩き壊せ!」
彼らは見誤った。
相手が呪骸骨だと知らずに、玩具の人形だと……。
無駄な動きは一切しない、ただ呆然と経っているだけの案山子。
そんな印象が無防備にも武器を振り上げて無防備な胴体を晒すと言う失態を犯した。
斬撃音がしたと思えば、木々の葉が見え倒れていた。
一度に5人の山賊が引き裂かれた。
「化け物だ!」
数は圧倒的に勝っているにも関わらず、山賊達は恐怖に支配され逃げだす。
もはや戦意は薄れ、我先にと走った。
底に剣が空中を舞い、切りかかって来る。
それも複数の剣が、明確に殺意を持って襲ってくる。
重装とは言わないまでも、それなりの装備はしている。
鎖帷子や兜に盾と……。
にも関わらず、山賊達は倒れていく。
山賊の悲鳴だけが木霊する。
哀れだろうか?
美しいメイドによる剣の舞を自らの肉体でしっかりと受け止めたのである。
ご褒美だろう。
30人近くいた山賊は、瞬く間に殲滅された。
「さて、拠点に案内してもらおうか」
風太は死体に白い粉を掛ける。
大さじ一杯、ぱらぱらとまんべんなく。
実験しているみたいで楽しい、早く動き出さないかな。
ムクッと起き上がる死体。
「仕事は終わった。
早く荷物を運ぶんだ」
「うぅぅぅううぅぅぅ……」
空気が抜けて言葉が上手く聞き取れない。
首を切られた際に喉をやられた死体のようだ。
ゾンビにする死体はよく調べないとな。
「ニャヒ……。
拠点に攻め込まなくても、任務は成功でしょう?」
最前列の馬車に乗っていた筈のゼラがどうしてかいる。
「馬車はどうしたんだ?
君が最後まで護衛する約束だろう」
「だってずるい。
リアハばかり相手して、私も一緒にいたい」
猫は寂しがり屋なのか相手をしないと怒るみたいだ。
四つ耳賊も、そんな傾向があるのかも知れない。
「よしよし」
頭を撫でてご機嫌を取っておこう。
ゴロゴロ……。
「って、猫みたいな扱いをしないで。
でも抱きしめながら撫でるならしてもいいけど、ニャフフフ」
要望に応え抱きしめて撫でる。
猫耳が気持ちいい、なんかペット感がすごい。
「ここで待っていてくれ、俺は拠点に行く」
「私も付いていく。
少し顔色が悪いし、体調が悪いことに気づかないと思っている?」
リアハも気づいていたのだろう。
だから一緒にと誘って休養を取らせたかったのかも知れない。
「ありがとう。
俺の剣を使ってくれ」
雀剣を貸す、あくまで貸すだけであげたわけではない。
だがゼラは勘違いし、貰ったと喜んだ。
騎士が剣を授かるということは、主従関係を意味する。
つまり配下として認められたと感じたのだ。
主との恋路もまた一興なのである。
「ニャハハハ……照れる。
一生大事にいたします」
「……まあ良いか」
動き出す死体の群れに案内され、古い砦にたどり着く。
「ここは王国が廃棄した砦です。
帝国との衝突を回避するために緩衝地として廃棄した空白地帯がこの山」
「何処も支配してないから、山賊の拠点になっているというわけか。
でも何処からやって来たんだ?」
「……私の推測ですが王国からです。
鍛え上げらた肉体にそれなりの装備をしていますし、練度もそれなりに……」
帝国との交流を経てば、王国との友好を深めていくしか無い。
状況からも、王国が仕掛けていると思えてしまう。
だが本当にそうか?
ここにはバレなければの話しであって、発覚すれば関係は一気に悪くなる。
砦の方で騒ぎが起き、敵襲のを知らせる鐘が鳴り響く。
そろそろ戦闘が始まる頃合いだ。
「俺は身動きが取れなくなる。
その間、護衛を頼む」
戻ってきた山賊がグール化しているとは誰も思わず、迎い入れて初めて気づいたのである。
開かれた扉は棺桶によって閉ざすことが出来ず空いたまま。
もはや侵入を止める障害はない。
棺桶の蓋をのけ、風太の操る呪骸骨が姿を表す。
兜が落ち、藁の顔が顕になる。
「……食わせてもらう!」
剣を振るい、グールを切り裂くと霧状になり吸収されていく。
木の部分を侵食し骨が形成される。
生きた山賊も心臓を串刺しにすることで、ゾンビ化させそのまま吸収という流れで行ける。
山賊から見れば藁の化け物が、筋肉ムキムキの男をくじ刺しにして持ち上げ見せびらかしているようにしか見えない。
テメーも死にたいなら来いよと挑発されているようだが、怖くて近づけない。
そんな緊張感で動けずにいる山賊をグサッと指して静止するだけの繰り返しだ。
どうして逃げないのか?
首輪をかしげる仕草が、やはり挑発に見えていた。
煽り散らかす強敵に動けば死という状況。
それがどれだけ絶望的だったか風太には想像もつかない。
「武器を捨て降伏すれば見逃してもいいのに……。
なんで向かってくるんだろう」
藁が裂け頭蓋骨の形成が終わる。
全身が完全に復元されたのである。
自由に動けるし、暗闇ですら明るく見える。
奥から全身金属の鎧に覆われた山賊が出てくる。
肩には見覚えのある文様が描かれている。
それはゼラが大切にしていたハンカチに記されていた物だ。
やはり王国騎士が関わっていたのだ。
「騎士のくせに、山賊をするのか!」
風太の声は届く事はない。
騎士は指先を向ける。
魔法を使うと思った瞬間に動き回避する。
電撃が迸った瞬間、バシュッと壁に穴が開く。
直撃していれば破壊される威力はあるだろう。
一気に間合いを詰めたいと駆ける。
だが直ぐ様、電撃が放たれる。
バシュ! バシュッ! バシュ!
白黒の世界となり激遅な動きとなっても、それを躱すのはギリギリだ。
だが間合いに入る。
お互いに剣を振る。
キンッ! 火花が散り、剣が弾かれ後ろ飛びで離れる。
今までとは実力が違いすぎる。
いきなり裏ボスに出会ったような衝撃だ。
鉄球にビー玉をぶつけるようなもので、相手の剣が遥かに重いのだ。
だから衝撃で弾かれてしまう。
最悪、腕を持っていかれて、そのまま一気に切り刻まれる展開もありそうだ。
相打ち覚悟で行こうか?
バシュ!
一瞬思考し動きを止めた隙が回避を遅らせた。
直撃だけはと、剣を盾にした。
パリンッと剣は砕け刃が肩の骨を削り飛んでいく。
肩に激痛が走る。
「ああっ痛い……、なんだ?」
自分の魂の一部をあの骸骨に宿らせて動かしているんだ。
だから損傷すれば自分にも痛みが来る。
だとしたら、直撃を受ければ……。
一方的に有利だと思っていたのに、いきなり自分も闘技場に立たされている感じだ。
待ってくれ……、いや、もう勝つしか無い!
命を賭けた真剣勝負。
「行くぞ!」
全力で逃げる。
騎士は追うが直ぐに立ち止まり、狙いを定める。
支配の仮面を外す。
制御を失った呪骸骨は立ち止まり頭部を電撃で貫かれ倒れた。
騎士は用心深く、手足の骨を砕き身動きができなくし近づく。
勝利を確信し被害状況を確認しようと目を逸らした時だ。
風太と目が合う。
逃げたのは視線を門から逸らすためだ。
仮面を着けると呪骸骨が復元し騎士の足を掴む。
「俺の勝ちだ」
「ぐああぁぁぁぁっ……」
魂の回想劇。
騎士は山賊達が受けた痛みを全身に受けていた。
即死する程の痛みを耐えられるはずもなく絶命していた。
ログアウトして攻撃を回避する行為はゲームなら卑怯者として批判されただろう。
だがこれは真剣勝負だ。
それだけ追い詰められる程の強敵だった。
「君のお陰で安心して近づけた」
「ニャフフフフ……。
大好き」
次の依頼を受けるために、依頼主である貴族ラベーオの元にやってきたのだが……。
条件として、極悪人の処刑を行うことになった。
ラベーオは漫画で出来そうな美青年な貴族に見えた。
金銀の装飾が付いた将校の軍服を着ている。
その補正もあるのだろう、整った中性的な顔つきに金髪も高得点で可愛い。
なんというかペット的な愛くるしさを感じてしまうのは、四つ耳族だからピョコッと生えた狐耳があるからだろう。
貴族は軍や警察等の役割を担っているらしく、現場の判断で罪人の処刑も役目の一つだ。
「……どうして俺に?」
「相手は山賊です。
人間を斬る覚悟が無ければ、任せることは出来ない」
拘束されている男は無精髭が生え身なりも汚らしく異臭を放っている。
無抵抗な相手を剣で切り裂くで良いと言う簡単にできる事だ。
だが人の命を奪うことを否定してきた風太は葛藤していた。
「この極悪人は、領内の村に侵入し女に暴行を加えた挙げ句、殺害をした。
現場で取り押さえた時、既に3人が殺されていた」
「話をしていいか?」
「構わないが、あまりお勧めはしない」
「なんでそんな事をしたんだ?」
猿ぐつわを外す。
「皆殺しにしてやるクソ!」
「事情を話してくれ……」
「殺してやる、温情だとかクソ喰らえ! クソども皆殺しに……」
黙って見ていたラベーオだったが、流石に「黙れ!」と制す。
しかし、その後も出てくる言葉は暴言、暴言、暴言……と何にも情報は得られない。
あまりに酷さにラベーオの鉄拳が炸裂しふっ飛ばされたくらいだ。
「難民風情が……助けた恩を仇で返すとは、恥を知れ!」
風太は剣を振るった。
剣先が首筋に当たる直前で手が止まる。
怒りに任せて殺して良いのか?
なんで命を奪わなくてはならないんだ?
確かにむかつくし、殺してやりたいと憎悪も湧く。
でもそれをしたら人殺しになってしまう。
魔族や魔物を散々殺してきたのに?
知らなかったとは言え人を焼死させたこともあったのに?
矛盾している、なのに。
剣が手から離れていた。
「残念です。
では私が処分をしましょう」
「待って欲しい」
風太は極悪人に軽く触れる。
数人の女の霊が取り憑いていた。
母子なのだろう、明らかに年齢が離れた姿が見えた。
「12人も殺したのか!」
風太に霊の記憶がなだれ込んでいた。
慈愛に満ちた母、幸せに暮らす娘の思い出それが徐々に消えて憎しみと憎悪を渦巻く悪意へと変わっていく。
写真にインクを落とすようにポタポタと侵食し蝕む。
涙がこぼれ落ちていた。
「クソ、気持ち悪いグズが!」
その言葉は風太には届いていない。
魂の声だけが心に響いていた。
『悪霊に触れすぎると魂が朽ちる。
やめておけ』
「受けた痛みや屈辱を体験させたい」
『精霊に命ずるように、悪霊に命じれば良い。
魂の回想劇』
「霊よ、汝の過去へ誘い刻み込み……。
ハハハハッ……」
呪文は自然と浮かんでくる言葉を唱えているだけで意味はわからない。
世界の理が教えてくれるのだが、途中で変化した。
それは意識が乗っ取られていたからに他ならない。
当の風太は、それに気づいてはいなかった。
何故なら意識があるからだ。
「赤く煮えたぎる地の底より目覚めし、紅目を持つ地獄の使者よ。
裁きを! 罪の烙印を! そして、魂へ刻み込め!
魂の回想劇!」
白い大蛇が地面から現れ極悪人の身体に巻き付く。
ガブッと頭に齧り付き、スッーと蛇は消える。
この時、女達が受けた痛みを極悪人は受けていた。
手足を刃が貫き、身体が割かれていく……、酷く長い痛みが襲っているのだ。
「ぐあぁぁっ……やめてくれ……」
もがき苦しみのたうち回る姿は哀れであった。
「解った。
無駄に苦しめるのは止めよう」
霊の食事。
風太にはリアハに取り憑いていた霊達が体に宿っている。
命の源を与えることで霊は維持出来る。
極悪人の肉体はやせ細り骨と皮のようになり、毛が抜け落ちる。
拘束していた縄が緩み、逃げ出そうと立ち上がろうとした。
ボキッと足の骨が折れ倒れる。
大人しくしていれば、怪我をすることもなかったのだが。
絶望の声を漏らしながら這いずる見苦しくも生き延びようとする逞しさは見習う所だろうか。
もう無駄に苦しめる必要はないだろう。
剣で極悪人の首を跳ねた。
これで罪は消える。
そして恨みを晴らした霊も成仏して消え去るだろう。
「その法術は一体……」
素直に答えたいが、流石に死靈術と明かすのは問題だ。
体内からではなく、霊を通じて周りから力を取り出す。
環境依存なのは精霊を扱うのと同じだ。
違いは憑依している相手からも強制的に奪って使う点が違う。
「忘れてくれ」
「領民の為に涙を流してくれて礼を言う。
王国から来た訳ありと聞いていたので疑っていた」
「いつの間に……、泣き虫みたいで恥ずかしいな」
涙を拭き取り笑みを浮かべる。
「話しは部屋でしよう」
メイドが並んで待っていた。
年齢も老婆から青年と幅広い、恐らく年長者が長で統括しているのだろう。
笑顔で出迎えてくれるのは心地よい。
玉国の貴族はお茶と菓子に目がないようだ。
大皿にでっかいケーキが3つ並んでいる。
「この依頼を失敗すれば納品期日に間に合わず帝国との関係が悪化する事になる。
極めて重要な任務だと言うことを理解して欲しい」
「山賊を撃退するだけだろう?
任せてくれ」
今は共に戦ってくれる守護霊のような存在もいる。
法術に劣るが今までの非力な状態ではない。
「前任者も自信満々に勝利宣言していたよ」
国家の危機にもなりうる重大な任務を託して良いのかと不安に感じるのは当然だろう。
一度失敗しているなら尚更臆病になるのも理解できる。
だがそれでは困る。
シャオーリとの約束を果たせない。
だから絶対に説得して依頼を貰う。
「赤の月を生き残れるだけの実力はあったのか?」
「生き残れるとは思えない」
「だったら俺のほうが強い。
数々の修羅場をくぐり抜けてきたから彼女からの推薦があっただろう?」
あの狂姫なら、間違いなく根回しはしていると読んでのことで打ち合わせはしていない。
外したなら、ここで詰む。
ラベーオはお茶を少し口に含む。
「このケーキを一人で食べるのは少々強欲ではないかと思う。
前任は3人で分けて食べ、余ったのを部下の兵士に6等分して与えていた」
この苺の乗ったケーキはクリームたっぷりで、一人で食べるには多すぎる。
それを3つも食べるのは腹が破裂するほど膨れるだろう。
素直にそんな話なら良いのだが裏を読むのが流儀なのだろう。
法術士組合から派遣されたのなら前任の3人は法術士のことだろう。
試されたのは覚悟だけで魔法の実力は一切気にしていない様子だ。、
つまり相手に魔法が使える者が居ないと言うこと。
「3人分でも大丈夫。
それぐらい平らげてもう一つ食べられる」
「ではロールケーキをお持ちします」
年長のメイドがすぐに持ってきて置く。
どうしてこうなった。
本当に食べないといけないのか?
まさか、本当に食べる量を聞いていただけなのか?
あの姫様と一緒にいると裏を読まないと、不機嫌になって殺されそうになったから……。
いやまて、冗談でドッキリとか……。
余裕って言ったし、残したら怒る。
ニコニコしているのがより一層怖い。
「どうしました。
毒見をして欲しいのでしたら、私の妻にさせましょうか?」
「いやいや、なんで奥さんを……」
「私で良ければ行いますが」と、あの老いたメイドが言う。
「もしかして?」
「はい、彼女も私の妻です」
「並んでいるのは、もしかして全員?」
「はい。異国では珍しいようですが、
富を持つ者の義務のようなものです」
「お婆さんを妻に迎えるって、守備範囲の広さはビックリした。
騙そうとしていないか疑いたくなる」
「残念ながら全ての人を平等に助けることは出来ない。
なら身近な人達だけでも幸せになって欲しいと、考えた結果決まったことです」
「独身が不幸ってことなのか?」
「いいえ、生活費等を援助するためです。
こういう形にしなければ、民はどうして自分には援助がないのかと不満を漏らし暴動に発展したらしいです」
話をずらしても、ケーキが無くなったりはしない。
これを食べないで済ます話題はないだろうか?
考えても全く思いつかない。
いや……。
「所で前任者はどうして山賊を見逃したんだ?」
「残念ながら全員死亡し、山賊は無傷です」
魔法の前には、山賊は無力の筈。
つまり想定外の何かがあったということだろう。
「裏切り者が居たのか?」
王国派の者が妨害工作を企てても不思議出来ない。
実際、風太も妨害を受けている。
「恐らく毒殺だと思われる。
護衛の兵士が警戒地点に差し掛かった時、法術士を呼んでも返事がなかったらしい。
寝ていると思い起こそうとすると死んでいたという」
「……もしかして、このケーキに?」
「最愛の妻が作ってくれたものです」
ラベーオは少しケーキを口にする。
とても嬉しそうな笑みを浮かべているが、惚気か美味しいのか判断がつかない。
ここで食べないのは失礼だろう。
ええい、一口だけ。
濃縮したような圧倒的な甘さが押し寄せる。
ありったけの砂糖をドカドカと入れたような存在感。
もうお腹いっぱいで、これ以上は身体が拒絶しそうだ。
「持って帰るので包んで下さい」
「アハハハハハ……。
逃げられると思うのかい?」
「いや、……考えが甘かった。
護衛として使うのは新型のドローン。
指示役の俺が居れば良いだけだ」
それは嘘だが、霊の舞いを死者の書から教えてもらっている。
メイドの霊に頼ることになるが、ナイフなら操れるだろう。
レイスにまで成長させれば霊となったメーメル師匠が魔法で手伝ってくれるが、それは転生の道を断念するということだ。
つまり恩義に反し呪縛で現世に留めるという非道な行いでしか無い。
協力的なのは売り込みの為の宣伝に利用するためだろう。
アマネルのような、禁書でハァハァするような奴には意味がないが、欲深い者が手にすれば活躍を知り手放さなくなることは間違いない。
「では皆で分けよう。
貴公にはロールケーキを」
甘さが抑えられ食べやすい。
ふかふかの生地にほんのりと甘い香りがする。
「美味しい、持って帰ってリアハに食べさせたいな」
「忘れていましたが、令嬢から贈り物が届いています。
こちらへ」
犬がやってきて、風太の足にすり寄る。
魔法の犬なのだろうと、頭を撫でる。
ボワ~ンと、風呂敷に変わり中から色々と出てくる。
支配の仮面に、白骨化した手、白い粉の入った瓶……。
この手の骨を手に入れられるのは姫様しかいない。
怨念を放つ木の根本に突き刺した杭が変化したものだからだ。
「嬉しいな、師匠が俺のことを認めてくれた。
新しい仮面だ」
この中に裏切り者がいても、仮面の秘密は解らないだろう。
宣言しても良い勝利確定。
「骨……、そう言えば死亡した前任者の死体がまだ見つかっていない。
我々が到着したときには、略奪され空になった馬車だけが残っていただけです」
奇妙な話しだ。
山賊がわざわざ死体を持って帰るわけはない。
なら前任は生きていて逃げ出したのではないか?
うーん、情報が足りない。
「気になっていた事だけど、どうして貴方が護衛をしないんですか?」
「兵を動かすには議会の承認が必要なのだが拒否されている。
それに難民が不穏な動きをしているようで手足が封じられている状況です」
王族は飾りで、貴族は軍事を行い、政治は議会なのか。
独裁している王国の方が、自由に動けるみたいで良い気がするのはなんだか不思議な感じ。
まあ王子の気分次第で、命を奪われるのは酷いが……。
「難民の盗賊に襲われたこともあったな」
「彼らは以前の暮らしが出来ないことに不満を漏らしています。
兵士や農民になりたくないと働かず、食事が物足りない、住む場所が悪いと……」
……着眼点が違ったか、わざわざ死体の事を告げたのはどうしてだろうか?
見ず知らずの者にケーキをご馳走したりはしないよな?
彼の妻がお菓子作りが好きで誰でも振る舞ったかも知れないが……。
前任者は恐らく、彼の部下だったのかも知れない。
だとしたら……。
「死体を入れる為の木箱を追加してくれ。
山賊から聞き出して取り返すぐらいしても良いだろう?」
「無事戻って来てくれ。
次は親友として迎えよう」
獣耳はどうして魅力的なんだろうか。
感情でよく動いてわかりやすい。
撫でてたくなる愛らしさ。
彼に触れたら怒るだろうとずっと我慢している。
親友となったら撫でても許してくれるだろうか?
「ああ、任せてくれ」
罪人には罰を。
覚悟を決めた風太は誓いを立てていた。
山賊の皆殺しである。
それは裁きを与えるためではない、死霊術の存在を隠匿するため。
死霊を維持するための餌にするためでもある。
現状でも、体力が著しく落ち軽い運動で息切れするぐらいだ。
「……また命を奪うのか」
『悔やむ事はない。
相手は人殺しを平気で行う、野放しにすれば被害が増える』
「この怖さを感じられなくなったらと思うと恐ろしい」
用意された馬車に乗り込むと木箱を開く。
リアハが寝ており、その隣に入る。
「王家の伝説に、異界人の勇者が登場します。
彼は真面目に戦っていたのですが、ある時気がついたのです」
「いきなり昔話なんてどうしたんだ?」
「自分に逆らえる者は居ないと。
その時から好き勝手に振る舞うようになり、民は苦しめられました」
「もし俺が、そうなったら君の手で止めてくれ」
「はい。
では、私を妻に迎えて下さい」
「んん……?、らしくない」
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私に与えられた任務に貴方との子を作り、いざという時の抑止があります」
「だから一緒に過ごしたのか」
「はい。
すべてを捨てて帝国で暮らす事を選んでくれるなら、
私は任務を忘れ貴方と共に暮らしたい」
これからリアハは帝国に亡命し、用意された場所で生活を送る。
王国に裏切られ、故郷へ戻ることが出来なくなった悲しみはあるのだろうか?
俺には解らない。
そっとリアハの手を握る。
「それも良いかも知れない。
けど約束は果たしたい、終わるまで待っていて欲しい」
上から気配がしてゾッとする二人。
覗き込む桃色髪の女がニタニタと笑みを浮かべてる。
「アマネルも混ざりたいなー。
一緒にムフフな事、いっぱい、いっぱいーしたいなー」
「なんで君が……」
「納品する法術具は全部、アマネルが制作し管理してます。
何度も奪われるのは勘弁して欲しいから来たの」
アマネルの表情が一瞬濁った。
嘘は真実を混ぜるとバレにくいらしい。
おそらく制作したのは本当だろう。
実際、お土産として作ってくれた。
だとしたら理由が違うのだろう。
「禁書の持ち出しがバレて、処分が怖くて逃げたしたって所か?」
「ううぅぅっ。
どーかな、そーうかなー、いやー、……見逃してほしいです」
「解ったから、隠れて……」
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「えっ、違う違う……、いや違わないのか?
ともかく、君には関係ない」
「任務中にそういうのは駄目だし。
私と場所変えして」
仕事中にエロ本を読んでいる彼女には言われたくない。
だったら君も駄目なことしているだろって反論したいが、どうして知っているのかと問われるのは怖い。
中身を見たって思われる。
いや見たけど、知らなかっただけだからセーフの筈。
「嫌だ」
「このスライム君を入れちゃおっかな?
ネチャネチャドロドロ服を溶かしてくれるし、お望みのムフフが楽しめるでしょう?」
「止めろ!
解ったから……」
隣の空箱に移るしか無い。
エロ女がリアハに何を吹き込むのか心配で仕方がない。
HP0になって運ばる棺桶の気分だ。
馬車の振動がガタガタとして寝心地が最悪、死体じゃなければじっとしてられない。
クッションが敷いてある隣と違って、何も無い木の板だ。
痛い……。
4台の馬車が峠に差し掛かる。
襲撃があった付近だ。
昼間だと言うのに、濃い霧が覆い薄暗く明かりすら白いカーテンに阻まれる。
カランカランと、先頭の馬車が鳴らす鐘の音を頼りに後続の馬車が続く。
ボッボッボッと青い火の玉が現れ、馬車の周囲を飛び回る。
「気味の悪い馬車だ……、おい準備はいいか?」
山賊は丸太を道に転がし、進路を塞ぐ。
馬は丸太を乗り越えられても車輪は超えられず止まる。
なのに馬車は減速する気配はなく、突き進む。
「見えてないのか?
まあ良い止まったら一斉に行くぞ」
バキッ! ズズズ……と、丸太をへし折り、そのまま馬車は駆け抜ける。
「てめーら、使いまわしたのか?
腐ってたら意味がないだろうがー」
「今朝切り倒した、丈夫な丸太です」
「じゃあなんで止まらない」
理由がわからないが最後尾の馬車が止まった。
「一匹掛かりました!」
「野郎ども行くぞ!」
意気揚々と馬車に向かう山賊達は、御者を狙い迫った。
白い顔……いや、それは骸骨だった。
「死体……、どういう事だ?
まあいい、荷台を調べるぞ」
背後に回ると、革の全身鎧を纏った大柄な戦士が出てくる。
「一人か?
情報にない男だ」
戦士は荷台から降りようとすると、片方の革靴が脱げる。
足ではなく木の棒が見え、それが人間ではないと悟った。
「新型のドローンか?
だとしたらポンコツだな」
木々に隠れていた山賊達が一斉に矢を放つ。
人間なら、それで串刺しにされ絶命していただろう。
だがそれは針千本になっても動きを止めることはなかった。
何故なら、本体は剣を持つ手の部分だけであり、他はただのハリボテに過ぎなかった。
ブンッ! と斬撃の音と共に山賊の胴体が切断された。
「ぎあぁぁぁぁ」
山賊の悲鳴が響く。
「矢は意味がない。叩き壊せ!」
彼らは見誤った。
相手が呪骸骨だと知らずに、玩具の人形だと……。
無駄な動きは一切しない、ただ呆然と経っているだけの案山子。
そんな印象が無防備にも武器を振り上げて無防備な胴体を晒すと言う失態を犯した。
斬撃音がしたと思えば、木々の葉が見え倒れていた。
一度に5人の山賊が引き裂かれた。
「化け物だ!」
数は圧倒的に勝っているにも関わらず、山賊達は恐怖に支配され逃げだす。
もはや戦意は薄れ、我先にと走った。
底に剣が空中を舞い、切りかかって来る。
それも複数の剣が、明確に殺意を持って襲ってくる。
重装とは言わないまでも、それなりの装備はしている。
鎖帷子や兜に盾と……。
にも関わらず、山賊達は倒れていく。
山賊の悲鳴だけが木霊する。
哀れだろうか?
美しいメイドによる剣の舞を自らの肉体でしっかりと受け止めたのである。
ご褒美だろう。
30人近くいた山賊は、瞬く間に殲滅された。
「さて、拠点に案内してもらおうか」
風太は死体に白い粉を掛ける。
大さじ一杯、ぱらぱらとまんべんなく。
実験しているみたいで楽しい、早く動き出さないかな。
ムクッと起き上がる死体。
「仕事は終わった。
早く荷物を運ぶんだ」
「うぅぅぅううぅぅぅ……」
空気が抜けて言葉が上手く聞き取れない。
首を切られた際に喉をやられた死体のようだ。
ゾンビにする死体はよく調べないとな。
「ニャヒ……。
拠点に攻め込まなくても、任務は成功でしょう?」
最前列の馬車に乗っていた筈のゼラがどうしてかいる。
「馬車はどうしたんだ?
君が最後まで護衛する約束だろう」
「だってずるい。
リアハばかり相手して、私も一緒にいたい」
猫は寂しがり屋なのか相手をしないと怒るみたいだ。
四つ耳賊も、そんな傾向があるのかも知れない。
「よしよし」
頭を撫でてご機嫌を取っておこう。
ゴロゴロ……。
「って、猫みたいな扱いをしないで。
でも抱きしめながら撫でるならしてもいいけど、ニャフフフ」
要望に応え抱きしめて撫でる。
猫耳が気持ちいい、なんかペット感がすごい。
「ここで待っていてくれ、俺は拠点に行く」
「私も付いていく。
少し顔色が悪いし、体調が悪いことに気づかないと思っている?」
リアハも気づいていたのだろう。
だから一緒にと誘って休養を取らせたかったのかも知れない。
「ありがとう。
俺の剣を使ってくれ」
雀剣を貸す、あくまで貸すだけであげたわけではない。
だがゼラは勘違いし、貰ったと喜んだ。
騎士が剣を授かるということは、主従関係を意味する。
つまり配下として認められたと感じたのだ。
主との恋路もまた一興なのである。
「ニャハハハ……照れる。
一生大事にいたします」
「……まあ良いか」
動き出す死体の群れに案内され、古い砦にたどり着く。
「ここは王国が廃棄した砦です。
帝国との衝突を回避するために緩衝地として廃棄した空白地帯がこの山」
「何処も支配してないから、山賊の拠点になっているというわけか。
でも何処からやって来たんだ?」
「……私の推測ですが王国からです。
鍛え上げらた肉体にそれなりの装備をしていますし、練度もそれなりに……」
帝国との交流を経てば、王国との友好を深めていくしか無い。
状況からも、王国が仕掛けていると思えてしまう。
だが本当にそうか?
ここにはバレなければの話しであって、発覚すれば関係は一気に悪くなる。
砦の方で騒ぎが起き、敵襲のを知らせる鐘が鳴り響く。
そろそろ戦闘が始まる頃合いだ。
「俺は身動きが取れなくなる。
その間、護衛を頼む」
戻ってきた山賊がグール化しているとは誰も思わず、迎い入れて初めて気づいたのである。
開かれた扉は棺桶によって閉ざすことが出来ず空いたまま。
もはや侵入を止める障害はない。
棺桶の蓋をのけ、風太の操る呪骸骨が姿を表す。
兜が落ち、藁の顔が顕になる。
「……食わせてもらう!」
剣を振るい、グールを切り裂くと霧状になり吸収されていく。
木の部分を侵食し骨が形成される。
生きた山賊も心臓を串刺しにすることで、ゾンビ化させそのまま吸収という流れで行ける。
山賊から見れば藁の化け物が、筋肉ムキムキの男をくじ刺しにして持ち上げ見せびらかしているようにしか見えない。
テメーも死にたいなら来いよと挑発されているようだが、怖くて近づけない。
そんな緊張感で動けずにいる山賊をグサッと指して静止するだけの繰り返しだ。
どうして逃げないのか?
首輪をかしげる仕草が、やはり挑発に見えていた。
煽り散らかす強敵に動けば死という状況。
それがどれだけ絶望的だったか風太には想像もつかない。
「武器を捨て降伏すれば見逃してもいいのに……。
なんで向かってくるんだろう」
藁が裂け頭蓋骨の形成が終わる。
全身が完全に復元されたのである。
自由に動けるし、暗闇ですら明るく見える。
奥から全身金属の鎧に覆われた山賊が出てくる。
肩には見覚えのある文様が描かれている。
それはゼラが大切にしていたハンカチに記されていた物だ。
やはり王国騎士が関わっていたのだ。
「騎士のくせに、山賊をするのか!」
風太の声は届く事はない。
騎士は指先を向ける。
魔法を使うと思った瞬間に動き回避する。
電撃が迸った瞬間、バシュッと壁に穴が開く。
直撃していれば破壊される威力はあるだろう。
一気に間合いを詰めたいと駆ける。
だが直ぐ様、電撃が放たれる。
バシュ! バシュッ! バシュ!
白黒の世界となり激遅な動きとなっても、それを躱すのはギリギリだ。
だが間合いに入る。
お互いに剣を振る。
キンッ! 火花が散り、剣が弾かれ後ろ飛びで離れる。
今までとは実力が違いすぎる。
いきなり裏ボスに出会ったような衝撃だ。
鉄球にビー玉をぶつけるようなもので、相手の剣が遥かに重いのだ。
だから衝撃で弾かれてしまう。
最悪、腕を持っていかれて、そのまま一気に切り刻まれる展開もありそうだ。
相打ち覚悟で行こうか?
バシュ!
一瞬思考し動きを止めた隙が回避を遅らせた。
直撃だけはと、剣を盾にした。
パリンッと剣は砕け刃が肩の骨を削り飛んでいく。
肩に激痛が走る。
「ああっ痛い……、なんだ?」
自分の魂の一部をあの骸骨に宿らせて動かしているんだ。
だから損傷すれば自分にも痛みが来る。
だとしたら、直撃を受ければ……。
一方的に有利だと思っていたのに、いきなり自分も闘技場に立たされている感じだ。
待ってくれ……、いや、もう勝つしか無い!
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「行くぞ!」
全力で逃げる。
騎士は追うが直ぐに立ち止まり、狙いを定める。
支配の仮面を外す。
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騎士は用心深く、手足の骨を砕き身動きができなくし近づく。
勝利を確信し被害状況を確認しようと目を逸らした時だ。
風太と目が合う。
逃げたのは視線を門から逸らすためだ。
仮面を着けると呪骸骨が復元し騎士の足を掴む。
「俺の勝ちだ」
「ぐああぁぁぁぁっ……」
魂の回想劇。
騎士は山賊達が受けた痛みを全身に受けていた。
即死する程の痛みを耐えられるはずもなく絶命していた。
ログアウトして攻撃を回避する行為はゲームなら卑怯者として批判されただろう。
だがこれは真剣勝負だ。
それだけ追い詰められる程の強敵だった。
「君のお陰で安心して近づけた」
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