第三王妃

otaka

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破の国

王の死

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 この物語は僕らが住んでる、この国が三つに別れていた時代だから、もう五百年以上も前の物語になる。そして、これは君も知っている、かの英雄カーヤが愛した女性の物語なのだ。
 
 当時は「礎」「破」「確」の三国に別れていた。
 礎の国は南西部に肥沃な広大な大地を持つ農業大国で、南東部にある確の国は、貿易が盛んな経済大国であった。
 そして、最も貧しい破の国は山岳地帯が八割あり、平地は二割しかない。だから、牧畜が主たる産業で、他にはマークサと言う鉱物が取れる位だった。
 マークサは海の向こうの国では貴重なみたいだが、それは海と港があり、貿易の盛んな確の国の商人たちが取引を牛耳っていた。

「コンタ王、最近は遊牧民たちが山賊に襲われ食料を奪われるケースが増えております。我々も戦える軍隊を持ち、山賊たちに対抗すべきです」
「そうだな……サキタ大臣……でも、それに適任者とかいるのか? 我々は戦争なんかした事はないんだぞ……」
「それには適任者がおります。白龍の息子と呼ばれる男……クンタでございます……」

 コンタ王は思い出した。元々、この破の国は白龍の血を継ぐ者が作り、白龍の加護の元で栄えたと言う。
 だから生まれつき白龍の痣を持つ男……クンタは白龍の血を継ぐ「白龍の息子」と呼ばれ、人々から尊ばれていた。

「しかし、あの獰猛な白龍は今の世界には必要ない……だから玄武の力で眠らせているのだ……しかし、息子なら人間だ。適任者かもしれんな」
「左様でございます。コンタ王、軍隊を作り、攻撃出来る武器を持たせれば山賊どもは一掃出来ます。ご決断を……」
「分かったよ。サキタ……お前の好きにするが良い。おっと忘れていた……」

 そう言うとコンタ王は馬に鞭をいれた。サキタも鞭を入れるが追いつくはずもない。
 コンタ王は忘れていたのを思い出した。そう今日は息子である先月結婚したコニタの嫁、十九歳のシータが国王の誕生パーティーを企画しているのだ。彼は慌てた。
 サキタは必死で追いつき、息を切らしながら、ほくそ笑んでいた。これで一歩自分の時代が近づくのを感じた。

「コンタ王、山賊たちは大人しくなりました。今月は被害ゼロです……」

 クンタ将軍の報告にコンタ王は満足していた。たったの三ヶ月で山賊どもを大人しくさせた器量には感服するしかない。

「クンタ将軍、ご苦労であった。何か褒美をやろう。何が欲しい?」
「いえ私は、この国が安泰であれば、それだけで大丈夫です」
「欲が無いの……では、サキタ大臣は?」
「なら、神殿を作り直して頂けますか。私は元々神官でございます。神を祀るのが私の使命です」
「分かった。作り直そう」

 もう神殿なんか不要だと感じていたコンタ王は、その言葉に驚いた。でもサキタも、その方が落ち着くのだろう。

「とにかく、来月も頑張ってくれ……私は、もう休むよ……」
「分かりました……おやすみなさい」

 クンタ将軍はコンタ王に言う。コンタ王は王座から下りると寝室へ向かった。

「神殿が完成したら……実行だな……」

 サキタの言葉に頷いたのはクンタ将軍だ。将軍はニヤリと笑った。

「欲しいのは、お前の国だよ……」

 バン……
 そう呟くと脇の刀を抜くと、床に思い切り刺した。刀が立って、牙を輝かせている。

 シータは目を覚ました。裸で抱き合って寝ていたはずの夫は、もうチュニックを着ていた。シータは眠い。ベッドの上、布団の中から出る気にもならない。夫のコニタ王子は、シータにそっとキスをした。

「お姫様……おはよう、もう狩りに出かけるよ……」
「お父様がいらっしゃってるのよ……それでも行くの?」
「だから行くんだよ。朝から煩い説教は嫌だからな……」

 そんな言葉を聴きながら、シータは又、眠りに落ちていった。

 シータはぼんやりと目を開いた。目の前に椅子に腰掛けた男がいる。夫は出かけたはずだ。もう帰って来たのかとも思った。寝室は鍵を掛け、夫以外の者は入れないはずだったから……
 しかし、それは夫とは違う。クンタ将軍……シータは慌てて布団を掴むと身体が隠れている事を確かめた。普通なら叫び声を上げていただろう。しかし気品あるシータは、そんな事はしなかった。

「クンタ将軍、どうされたのですか?」
「起きられたのですね。良かった。貴女の寝顔を見ていたのです」

 クンタはベッドや上で布団を抑え、顔だけ出すシータを見た。黒髪で少し浅黒い肌、それは大陸の遊牧民特有のものだろう。押さえ隠した胸が豊満である事は誰でも分かった。さすが遊牧民の長キルマグの娘である。破の国で並ぶ者などいない美しさを湛えていた。

「実は悲しい、お知らせがあるのです。バストロイ城で今朝、コンタ王が、お亡くなりになられました」
「えっ……あんなに元気だったのに……」
「いえ、元気でも亡くなる時は亡くなるのです。刃物で私に何回も刺されれば、否が応でも亡くなります」

 シータは言葉を詰まらせた。正直に、余りにも冷たく、そして淡々と話すクンタ将軍に恐怖を抱いたのだ。

「ところで、コニタ王子は何処ですか? 貴女と一緒に眠っているとばかり思っておりました」

 シータは答えない。答えてはダメだと言う気がした。コニタ王子は唯一の破の国王の後継者……クンタ将軍は、彼を亡き者にしようと考えているのは間違いなかった。

「答えられないのなら仕方ありませんね。先ずは直ぐに布団から出てきてください」

 そんな命令に聞く事など出来ない。なぜならシータは裸なのだ。夫以外の男に見せられるはずもなかった。

「分かったわ。ならクンタ将軍……侍女のマーラを呼んで……寝室から出て下さるかしら……」
「それは出来ません。貴女に逃げられたら困りますから……」
「私、裸なんですよ……」
「知ってます。一度、貴女の裸を見たいと思っておりまして、良い機会かと……」

 サーベルを片手にクンタ将軍は言う。そして、立ち上がりサーベルをシータの顔に近づけた。シータは観念するしかなかった。
 布団を捲りあげる。その布団がクンタ将軍のサーベルに巻きついた。サーベルが落ちる。シータ裸のまま起き上がってクンタ将軍に殴りかかった。シータの拳を、しっかりとクンタは掴んだ。そのまま抱き寄せ唇を奪う。足掻いたシータはクンタを突き飛ばした。しかしクンタは直立不動のままだ。倒れたのはシータの方だった。

「中々、お転婆なお姫様だ。次にしたら、殺しますよ」

 クンタはサーベルを取ると倒れたシータに突きつける。

「立ち上がって……」

 シータはヨロヨロと立ち上がった。未だ十九歳の張りのある身体にクンタは目がいった。股間の毛が脱毛してあるのは破の国の風習である。

「ほぉ、素敵な身体だ。これで黒髪を束ねて貰えないかな」

 シータは直立したまま、クンタから渡された紐で黒髪を後ろに束ねた。

「背が高いねぇ……僕と同じくらいある。顔は半分くらいか……」

 クンタはシータの首を両手で触ると、撫でながら頬を包んだ。手を離し、少し後ろにクンタは下がると視線はシータの胸に移った。いきなりシータの左乳房を掴む。シータは背を屈めた。抵抗する事も出来ない。

「ああ柔らかい。なんと豊満な乳房なんだ。これならコニタ王子も喜ぶよな……」

 クンタは乳房を掴み、その先の小さな乳首を舐めた。その感触に、まるで酔っているようだ。シータは顔を背けた。手は腰に動いている。

「細いくびれ……妊娠はしていないようだな……アソコは、どうだい。昨日も使ったんだろう……」

 そう言うとシータの股間の割れ目にクンタが指を入れようとした。その手をシータが掴んだ。

「やめてください……」
「分かった。ならコニタの居場所を言え……」

 クンタがシータを睨んだ。シータは黙っている。

「言えないんなら、大人しくしろ……リスラ、入ってこい」

 そう言うと屈強そうな男が入ってきた。全裸のシータを見るなり、涎を垂らした。

「この女、やっても良いんですか?」
「ダメだ。コイツを後ろ手に縛り……バストロイ城まで連れて行くんだ」
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