15 / 17
第四幕-2
しおりを挟む
幾ら考えを強制しても、心への命令は出来ない筈で。
なのに命令が上手くいき、捏造は常に成功している。
……確かに気になるな、その本。
「前永君の言う通り、やっぱり無理だと思うの。否定。考えたりネットで調べたりしたけど、そんな考えを受け入れた理由が理解出来なくて」
「成る程な。だから実際に試して、確かめてみるって訳か。……まぁ、俺も気になってはいるが」
「でしょう? だからね、何とか説得が出来ないかなって思うのだけど……」
気にはなるが、報道部へ捏造して下さいと頼むのは無理で。
けれど、このまま本の事をそういう物だと納得するのも無理だ。
でもなぁ……上手く説得出来る方法なんて……
本の内容を向こうが理解してない限り、そもそも変な人だと思われるのが先で。
……だったら、最初に本の話をすればいいんじゃないか?
「本町、そもそもの話だが、その本は有名なのか?」
「えっ? ……えっとね、割と昔の小説だけど有名なのは有名だよ。世界的。古典的名作と言ってもいい位には」
「だったらさ、最初に九八四を報道部の人に読ませればいいんじゃね? 結局はさ、本の中にいる人の考えを知りたいって事だろ? だったら、聞いてみるのが一番じゃないか?」
「確かに……それだったら頼みやすいし」
結局の所、本の内容を知らないから話がややこしくなるだけで。
事前に報道部の人へ話しておけば、捏造の事についても聞き出せる。
それで登場人物に共感が出来るかって言われたら微妙だけど……
少なくとも、捏造を頼むよりかは楽だ。
「決まりだな。本町、九八四は持ってるか? 報道部の人に貸す為に」
「あるよ、勿論。完璧。それに、既に著作権が切れてるから、話す時はスマホで該当の部分を見ながらとか出来るし」
「なら、行くとするか」
こうして大井町高校の中にある、報道部の部室へと向かい。
事情を説明してみると、思ったよりすんなりと通してくれた。
「これで二度目ね、二人と合うのは。一ヶ月ぶりかしら?」
「そんな所です。その、今日はお願いがありまして……」
「記事の訂正とか、そんな話は駄目だから。最近、随分と本町との仲がいいみたいだけど。相手が恋人だろうと駄目だからね」
「いや、付き合ってませんから」
出迎えてくれたのは、報道部の部長である上口文。
ポニーテールが特徴の、真面目で堅物、言葉もキツいと評判で。
生徒会の会長も担っている、とても厳しく忙しい人だ
わざわざ、話だけでも聞いてくれる事に感謝しないと。
「それで? 記事の事じゃないなら何?」
「えっとですね、上口さんは九八四って小説、読んだ事ありますか? 私、最近読んで実際に体験してみたいなと思いまして」
「……そういう事ね。私も教養として読んだ事はあるわ」
「本当ですか!? 良かったぁ~、話の出来る人がいるといいなって、ずっと思ってたんですよ」
「話の出来る人? 貴女、毎日の様に前永と話してるじゃない」
「現場の人間で、ですよ。小説。舞台となりそうな場所で、題材となる本を読んでる人はまるでいなくて……」
「……あんなディストピアの世界、私の報道部とは違うから。勘違いしないで」
多少、刺々しくはあるけど、何とか本町の話を聞いてくれて。
そのまま主人公の話とか、独裁者の作った制度の話になった。
何だかんだ、楽しく話せるのはいい感じだし喜ぶべきだと思うけど。
ほんの、ほんの少しだけ、他に本町と話せる人がいると思うと嫉妬してしまう。
……別に付き合ってる訳じゃないのに。
「という訳で、試しに私が工場に突撃した時の新聞を捏造してくれませんか? どこか外に出すって訳ではありませんから。秘蔵」
「あのねぇ……本が好きだという事は理解出来たけど、捏造は駄目に決まってるじゃない。それに……あの本、捏造が本質じゃないと思うの?」
「本質、じゃない?」
「考えてみなさいよ、おかしいじゃないの。主人公の様な人達が捏造してるの、何だと思う? 過去よ、過去を書き換えてるの」
「それは知ってますけど……どうして過去に注目したのですか?」
「書き換えるなら、最初から嘘を作ればいいの。党の歴史を書き換えるのではなく、歴史を作れば。でも、そうしなかった。……どうして過去に拘るの?」
上口の言葉に、俺達二人は黙ってしまい。
頭の中に浮かんだ疑問を、何とか解決しようと必死にもがく。
そうこうしている内に、彼女は時計を確認し。
「……そろそろ時間ね。もう少し話したかったけど、部活を優先させなくちゃいけないし」
「いえ、お時間頂きありがとうございました。……前永君、頼みがあるけど」
「何だ?」
「今日、泊まっていい? 二人でジックリ考えたいから」
見つめる目は真剣で、隣にいる上口が呆れる程に。
「不純異性交遊は駄目だからね、分かってる?」と横から口出しするが、別に付き合ってる訳じゃない。
何だかんだ、本町が一番、本の話が出来るのは俺ってだけだ。
「分かった、泊まりだな。……それじゃ、失礼しますね」
なのに命令が上手くいき、捏造は常に成功している。
……確かに気になるな、その本。
「前永君の言う通り、やっぱり無理だと思うの。否定。考えたりネットで調べたりしたけど、そんな考えを受け入れた理由が理解出来なくて」
「成る程な。だから実際に試して、確かめてみるって訳か。……まぁ、俺も気になってはいるが」
「でしょう? だからね、何とか説得が出来ないかなって思うのだけど……」
気にはなるが、報道部へ捏造して下さいと頼むのは無理で。
けれど、このまま本の事をそういう物だと納得するのも無理だ。
でもなぁ……上手く説得出来る方法なんて……
本の内容を向こうが理解してない限り、そもそも変な人だと思われるのが先で。
……だったら、最初に本の話をすればいいんじゃないか?
「本町、そもそもの話だが、その本は有名なのか?」
「えっ? ……えっとね、割と昔の小説だけど有名なのは有名だよ。世界的。古典的名作と言ってもいい位には」
「だったらさ、最初に九八四を報道部の人に読ませればいいんじゃね? 結局はさ、本の中にいる人の考えを知りたいって事だろ? だったら、聞いてみるのが一番じゃないか?」
「確かに……それだったら頼みやすいし」
結局の所、本の内容を知らないから話がややこしくなるだけで。
事前に報道部の人へ話しておけば、捏造の事についても聞き出せる。
それで登場人物に共感が出来るかって言われたら微妙だけど……
少なくとも、捏造を頼むよりかは楽だ。
「決まりだな。本町、九八四は持ってるか? 報道部の人に貸す為に」
「あるよ、勿論。完璧。それに、既に著作権が切れてるから、話す時はスマホで該当の部分を見ながらとか出来るし」
「なら、行くとするか」
こうして大井町高校の中にある、報道部の部室へと向かい。
事情を説明してみると、思ったよりすんなりと通してくれた。
「これで二度目ね、二人と合うのは。一ヶ月ぶりかしら?」
「そんな所です。その、今日はお願いがありまして……」
「記事の訂正とか、そんな話は駄目だから。最近、随分と本町との仲がいいみたいだけど。相手が恋人だろうと駄目だからね」
「いや、付き合ってませんから」
出迎えてくれたのは、報道部の部長である上口文。
ポニーテールが特徴の、真面目で堅物、言葉もキツいと評判で。
生徒会の会長も担っている、とても厳しく忙しい人だ
わざわざ、話だけでも聞いてくれる事に感謝しないと。
「それで? 記事の事じゃないなら何?」
「えっとですね、上口さんは九八四って小説、読んだ事ありますか? 私、最近読んで実際に体験してみたいなと思いまして」
「……そういう事ね。私も教養として読んだ事はあるわ」
「本当ですか!? 良かったぁ~、話の出来る人がいるといいなって、ずっと思ってたんですよ」
「話の出来る人? 貴女、毎日の様に前永と話してるじゃない」
「現場の人間で、ですよ。小説。舞台となりそうな場所で、題材となる本を読んでる人はまるでいなくて……」
「……あんなディストピアの世界、私の報道部とは違うから。勘違いしないで」
多少、刺々しくはあるけど、何とか本町の話を聞いてくれて。
そのまま主人公の話とか、独裁者の作った制度の話になった。
何だかんだ、楽しく話せるのはいい感じだし喜ぶべきだと思うけど。
ほんの、ほんの少しだけ、他に本町と話せる人がいると思うと嫉妬してしまう。
……別に付き合ってる訳じゃないのに。
「という訳で、試しに私が工場に突撃した時の新聞を捏造してくれませんか? どこか外に出すって訳ではありませんから。秘蔵」
「あのねぇ……本が好きだという事は理解出来たけど、捏造は駄目に決まってるじゃない。それに……あの本、捏造が本質じゃないと思うの?」
「本質、じゃない?」
「考えてみなさいよ、おかしいじゃないの。主人公の様な人達が捏造してるの、何だと思う? 過去よ、過去を書き換えてるの」
「それは知ってますけど……どうして過去に注目したのですか?」
「書き換えるなら、最初から嘘を作ればいいの。党の歴史を書き換えるのではなく、歴史を作れば。でも、そうしなかった。……どうして過去に拘るの?」
上口の言葉に、俺達二人は黙ってしまい。
頭の中に浮かんだ疑問を、何とか解決しようと必死にもがく。
そうこうしている内に、彼女は時計を確認し。
「……そろそろ時間ね。もう少し話したかったけど、部活を優先させなくちゃいけないし」
「いえ、お時間頂きありがとうございました。……前永君、頼みがあるけど」
「何だ?」
「今日、泊まっていい? 二人でジックリ考えたいから」
見つめる目は真剣で、隣にいる上口が呆れる程に。
「不純異性交遊は駄目だからね、分かってる?」と横から口出しするが、別に付き合ってる訳じゃない。
何だかんだ、本町が一番、本の話が出来るのは俺ってだけだ。
「分かった、泊まりだな。……それじゃ、失礼しますね」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2026.2.22)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる