4 / 7
その都市は、私の都市
しおりを挟む
魔王から聞いた話では、魔物の国・ミュトランは山の中にあるみたい。
丸ごと中身をくり抜いて、そこに様々な魔物が住み着いた国。入口は魔法で隠されている。
『問題は、その入口に掛けた魔法がそこまで強力でないという事だ。
人間に見つからない為、なるべく目立たない場所に入口を建てたがな。』
そう話す魔王は霧に変身してるから表情が見えないけど、声は悩んでいるみたいに聞こえた。
「もしかして、隠匿とかそういう系統の魔法が苦手なの?」『残念ながら、そうだ。
攻撃魔法なら国を一つ滅ぼせるほどだが、今の時代、誰も戦争など望まんからな。』
「前々から思っていたけど、魔王ってやっぱり優しいのね。」『なっ、何だと!』
「だって、本当ならキシュタン王国を滅ぼして、魔物の国に変えちゃうとかも出来たよね。
だけどそんな事しなくて、人間と優しく協力していこうとしてたし…まぁ、裏切られたけど。」
私の言葉に魔王は答えず、結局、門に着くまで話せなかった。
山のふもとに舞い降りて、変身を解いた場所には崖がある。よく見ると、崖じゃないけど。
『見えるか?』「うん、見えるわ。中々、ちゃんと、隠されている、かな?」
まるでバレバレな保護魔法。言うのも失礼かなと思って褒めたけど、どう見てもバレバレね。
『無理に褒めずとも分かっている。そもそも、この門は人間に見れない様にした筈だがな。』
「あっ、うん。」今度、暇な時にでも保護や隠匿の魔法を掛けてあげようかな。
『とにかくだ、今は門に入るとしよう。』そう言って、魔王は門を開け広げる。
そこから見えたのは、巨大な都市。キシュタン王国では見なかった、珍しい建物がいっぱいある。
門の外はただの山、門の中は巨大な都市。そんな光景、当然、見とれちゃうよね。
魔王から、『どうした?中に入るぞ。』と言われるまで、私はその不思議で美しい光景をずっと見ていた。
「あっ、ごめん。見とれちゃってた。」『いや、いい。それに謝る事ではない。
私の国の建物がこうまで発展したのは、長年の平和があったからだ。』
魔王は門の中へ進みながら、私に向かって話しかけてる。まるで、平和の理由が私のお陰みたいな口調で。
『もしお前がキシュタン王国にいないなら、人と関わる魔物も王国に入れなかっただろう。
そうなったら、私は戦争をしてでも王国の門を開けたであろう。感謝する、スヨミルよ。』
聖女の仕事を任されて、初めて心から感謝されちゃった。その事に、私は涙が流れそうになった。
丸ごと中身をくり抜いて、そこに様々な魔物が住み着いた国。入口は魔法で隠されている。
『問題は、その入口に掛けた魔法がそこまで強力でないという事だ。
人間に見つからない為、なるべく目立たない場所に入口を建てたがな。』
そう話す魔王は霧に変身してるから表情が見えないけど、声は悩んでいるみたいに聞こえた。
「もしかして、隠匿とかそういう系統の魔法が苦手なの?」『残念ながら、そうだ。
攻撃魔法なら国を一つ滅ぼせるほどだが、今の時代、誰も戦争など望まんからな。』
「前々から思っていたけど、魔王ってやっぱり優しいのね。」『なっ、何だと!』
「だって、本当ならキシュタン王国を滅ぼして、魔物の国に変えちゃうとかも出来たよね。
だけどそんな事しなくて、人間と優しく協力していこうとしてたし…まぁ、裏切られたけど。」
私の言葉に魔王は答えず、結局、門に着くまで話せなかった。
山のふもとに舞い降りて、変身を解いた場所には崖がある。よく見ると、崖じゃないけど。
『見えるか?』「うん、見えるわ。中々、ちゃんと、隠されている、かな?」
まるでバレバレな保護魔法。言うのも失礼かなと思って褒めたけど、どう見てもバレバレね。
『無理に褒めずとも分かっている。そもそも、この門は人間に見れない様にした筈だがな。』
「あっ、うん。」今度、暇な時にでも保護や隠匿の魔法を掛けてあげようかな。
『とにかくだ、今は門に入るとしよう。』そう言って、魔王は門を開け広げる。
そこから見えたのは、巨大な都市。キシュタン王国では見なかった、珍しい建物がいっぱいある。
門の外はただの山、門の中は巨大な都市。そんな光景、当然、見とれちゃうよね。
魔王から、『どうした?中に入るぞ。』と言われるまで、私はその不思議で美しい光景をずっと見ていた。
「あっ、ごめん。見とれちゃってた。」『いや、いい。それに謝る事ではない。
私の国の建物がこうまで発展したのは、長年の平和があったからだ。』
魔王は門の中へ進みながら、私に向かって話しかけてる。まるで、平和の理由が私のお陰みたいな口調で。
『もしお前がキシュタン王国にいないなら、人と関わる魔物も王国に入れなかっただろう。
そうなったら、私は戦争をしてでも王国の門を開けたであろう。感謝する、スヨミルよ。』
聖女の仕事を任されて、初めて心から感謝されちゃった。その事に、私は涙が流れそうになった。
11
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。
吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか
あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。
「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」
突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。
すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。
オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……?
最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意!
「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」
さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は?
◆小説家になろう様でも掲載中◆
→短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
聖女の力に目覚めた私の、八年越しのただいま
藤 ゆみ子
恋愛
ある日、聖女の力に目覚めたローズは、勇者パーティーの一員として魔王討伐に行くことが決まる。
婚約者のエリオットからお守りにとペンダントを貰い、待っているからと言われるが、出発の前日に婚約を破棄するという書簡が届く。
エリオットへの想いに蓋をして魔王討伐へ行くが、ペンダントには秘密があった。
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる