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1.ドキドキ!異世界転生しちゃったぞ!
とりあえず記憶喪失になっておこう
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それなりに漫画も小説もゲームだって、嗜んでいた俺。異世界転生モノももちろん読んだことがあり、今の俺の状況はまさにその導入と酷似していた。
だがしかし、まさか自分がそんなことに巻き込まれるとは。しかも部屋の内装から察するに、かなり身分の高い家の子供に入り込んだようである。一般会社員俺が適応できるか不安しかなく、咄嗟に希望を探してみた。
いわゆる、転生チートだ。俺が目覚めるまでのこの体の記憶だったり、勝手に行動が相応しいものになったり。
お約束ともいえるものが、なにかしらはあるかもしれない……!
「カノンぼっちゃま、何かおかしなところはございませんか? 少々お待ちください、只今医師を呼んでまいります」
「うぇっ!? お、お気になさらず!?」
はい、これは駄目みたいです!
特に変換されたりもせず、慌てた俺の行動がそのまま現れる。恐らく言葉も適したものではなかったのだろう、「おきに……?」とメイドさんが困惑していた。
となると、いよいよ困ったことになった。なにせ俺はこの世界の事を何も知らないどころか、"自分"のことすら分からないのだ。
下手をしたら体を乗っ取った悪魔として再び眠りにつかされることもあり得るし、とにかく危機的状況なのは間違いない。
「えっと……あの、ここは何処ですか……?」
少し悩んだ末俺が取ったのは、正直に何も知らないと告げること。もちろん中身が俺な事は言わないが、こんな場合この体は記憶喪失になりかねないような事態に巻き込まれていた可能性が高い。
記憶が無いとなれば、多少言動がおかしかろうが変にそれっぽく振る舞うよりもまだ偽者! 消え去れ! ルートからは外れる……気がする。
そんな俺の運命の選択は取り敢えず上手くいったようで、即糾弾はされていない。というか、俺の言葉にメイドさんは一瞬にして顔色を悪くした。
挨拶もそこそこに弾かれたようにして部屋から出ていき、数分もしないうちに戻ってきたメイドさんの傍らにはまたしても見慣れない配色の男性。医師なのだろう白衣を着た紫髪の壮年はにこやかに俺の近くまで歩み寄り、恭しく頭を下げる。
「ご気分はいかがでしょうか」
「あ、はい。大丈夫です。ただちょっと、記憶の方が……」
「……記憶が。何か、覚えておられることは?」
「……すみません、全く何も分からなくて」
しょんぼりと項垂れたところを見せれば、医師とメイドさんが顔を見合わせる。
これはどうだ、あれはわかるか、と色々聞かれたものの、やはり頭の奥に何かが浮かんでくることはない。流石というか、笑顔のまま俺の答えを受け止めている医者に対し、だんだんと悲しみの色を濃くしていくメイドさんには申し訳なく思う。
ただ、おかげでなんとなく今の状況を掴むことができた。
ここはアルベント侯爵家の所有する屋敷で、俺はその長男。ちょっとした事故によって数日間意識を失っており、ついさっきようやく目覚めた、ということらしい。
ちなみにすでに呼ばれていた為なんとなくそうだと思っていたが、この体の名前はカノン・アルベントという。馴染みのあり過ぎる響きに意図的なものを感じているが、やはり心の裡に俺以外の存在は見当たらなかった。
俺が追い出してしまったのか、それとも空になった体に俺がたまたま入ったのか……。
理由はどうであれ、こうなった以上俺は『カノン』として生きていくしかない。
成人男性が年齢が二桁にもなっていないような幼子になってしまうなんて質の悪い冗談だが、それでもやるしかないのだ。
だがしかし、まさか自分がそんなことに巻き込まれるとは。しかも部屋の内装から察するに、かなり身分の高い家の子供に入り込んだようである。一般会社員俺が適応できるか不安しかなく、咄嗟に希望を探してみた。
いわゆる、転生チートだ。俺が目覚めるまでのこの体の記憶だったり、勝手に行動が相応しいものになったり。
お約束ともいえるものが、なにかしらはあるかもしれない……!
「カノンぼっちゃま、何かおかしなところはございませんか? 少々お待ちください、只今医師を呼んでまいります」
「うぇっ!? お、お気になさらず!?」
はい、これは駄目みたいです!
特に変換されたりもせず、慌てた俺の行動がそのまま現れる。恐らく言葉も適したものではなかったのだろう、「おきに……?」とメイドさんが困惑していた。
となると、いよいよ困ったことになった。なにせ俺はこの世界の事を何も知らないどころか、"自分"のことすら分からないのだ。
下手をしたら体を乗っ取った悪魔として再び眠りにつかされることもあり得るし、とにかく危機的状況なのは間違いない。
「えっと……あの、ここは何処ですか……?」
少し悩んだ末俺が取ったのは、正直に何も知らないと告げること。もちろん中身が俺な事は言わないが、こんな場合この体は記憶喪失になりかねないような事態に巻き込まれていた可能性が高い。
記憶が無いとなれば、多少言動がおかしかろうが変にそれっぽく振る舞うよりもまだ偽者! 消え去れ! ルートからは外れる……気がする。
そんな俺の運命の選択は取り敢えず上手くいったようで、即糾弾はされていない。というか、俺の言葉にメイドさんは一瞬にして顔色を悪くした。
挨拶もそこそこに弾かれたようにして部屋から出ていき、数分もしないうちに戻ってきたメイドさんの傍らにはまたしても見慣れない配色の男性。医師なのだろう白衣を着た紫髪の壮年はにこやかに俺の近くまで歩み寄り、恭しく頭を下げる。
「ご気分はいかがでしょうか」
「あ、はい。大丈夫です。ただちょっと、記憶の方が……」
「……記憶が。何か、覚えておられることは?」
「……すみません、全く何も分からなくて」
しょんぼりと項垂れたところを見せれば、医師とメイドさんが顔を見合わせる。
これはどうだ、あれはわかるか、と色々聞かれたものの、やはり頭の奥に何かが浮かんでくることはない。流石というか、笑顔のまま俺の答えを受け止めている医者に対し、だんだんと悲しみの色を濃くしていくメイドさんには申し訳なく思う。
ただ、おかげでなんとなく今の状況を掴むことができた。
ここはアルベント侯爵家の所有する屋敷で、俺はその長男。ちょっとした事故によって数日間意識を失っており、ついさっきようやく目覚めた、ということらしい。
ちなみにすでに呼ばれていた為なんとなくそうだと思っていたが、この体の名前はカノン・アルベントという。馴染みのあり過ぎる響きに意図的なものを感じているが、やはり心の裡に俺以外の存在は見当たらなかった。
俺が追い出してしまったのか、それとも空になった体に俺がたまたま入ったのか……。
理由はどうであれ、こうなった以上俺は『カノン』として生きていくしかない。
成人男性が年齢が二桁にもなっていないような幼子になってしまうなんて質の悪い冗談だが、それでもやるしかないのだ。
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