大好きな乙女ゲームの世界に転生したぞ!……ってあれ?俺、モブキャラなのに随分シナリオに絡んでませんか!?

あるのーる

文字の大きさ
4 / 38
1.ドキドキ!異世界転生しちゃったぞ!

『両親』の到来

しおりを挟む
 それから数日の間は俺の覚えていることを確認しながら、リハビリがてら屋敷の中を連れ回されることになった。
 事故というのがどんなものだったのか、聞こうとしてもはぐらかされるため詳細は知らないが、かなり体にダメージをくらっていたらしい。ベッドの上にいたときは気にならなかった体の重さが立ち上がると途端に襲い掛かってきて、初日はろくに歩けもしなかった。
 大人から子供に変わったが為に距離感も微妙におかしく、リハビリついでにその辺りの感覚に慣れていく俺。
 そうしていると時間はあっという間に過ぎ、ようやく『カノン』の体に馴染んだ時には目覚めてから2週間は経っていた。

「え? 両親が帰ってくる?」
「はしたないですよカノン様」

 リハビリは俺が忘れたとされている礼儀作法にも及び、全く知らないテーブルマナーを一から叩き込まれている最中語られた話につい顔を上げる。ポロリとフォークから落ちたブロッコリーに冷ややかな視線を送りつつ、話を続けたのはあの時部屋にいたメイドさん。遠縁の伯爵家から預っているというメイミさんは、ちょっと厳しい俺の先生でもある。

「早馬からの知らせですと、旦那様と奥様は遅くても明日の夜にはこちらにご到着する予定だそうです」
「明日……いや、随分いきなり……」

 身内が相手だと中身が違うことに気づかれるんじゃないかという懸念も多少あるが、それよりも俺には気にかかっていることがあった。目覚めてからの間、『両親』に俺は顔を合わせていない。それはつまり2週間はこの屋敷に『両親』が居らず、さらに言うならそれより以前から、さらにさらに言うなら基本は王都のタウンハウスで過ごしており、領地の本邸には年に数回しか帰ってこないのだという。

 これはもしや、『両親』は『カノン』に興味がないのでは……。恐らく『カノン』自らが引き起こしたのであろう事故の理由を垣間見て、ほんの少し胸が痛む。

「あぁ! カノン!! 大丈夫なの? 起きていて平気なの?」
「落ち着けシャミア。まずはカノンを横たわらせるのが先だろう。カノン、無理はしなくていいからな」

 ……いや思ってたのと違う!
 部屋に入って早々、俺の姿を見て泣き出す『母』に、母を宥めつつ俺を気にかける『父』。どう勘ぐっても普段から息子を放置していた人たちの反応ではなく、むしろ溺愛していたかのような素振りである。だったらなんでこんなにも放置されていたんだという話だが、もちろんちゃんと理由があった。

 宰相補佐をやっている父は王宮に顔を出す必要があり、侯爵夫人である母は俺が領地に引っ込んでいる分を補うためにも茶会に顔を出す必要がある。
 領地から王都までは片道2週間。つまりはこの屋敷に住んでいたら仕事も社交もできないって訳で、様子を見にちょくちょく帰りはするものの管理はもっぱら家令任せなんだそうだ。

 だったら『カノン』も王都に連れて行くべきじゃないかって話だが、どうも俺は体が弱かったみたいである。
 ちょっとしたことで魔力流れが乱れる体質。特に人が多いと症状が悪化するとのことで、とても王都じゃ過ごせない状態だったのだという。

 あ、そう。魔力があるんだよな、この世界。当然、魔法も。

 ただ最近じゃ滅多なことで体調は崩さないようになってたらしいし、成長するにつれ治るものだからか中身が変わったからか、俺としては目覚めてから今まで何か不調を感じることもなかった。そろそろカノンも王都に住むか、ってな話も出ていたようだが、とにかくまぁ、そんな感じで緑豊かな辺境で養生する俺と王都の家族、みたいな形で生活が続いていたんだそうな。

 危惧していた冷たい家族関係だったのでは? という不安はどこへやら、なんなら現在うざったいほどに甲斐甲斐しく世話を焼かれている。『カノン』はけっこう優秀だったようで、細かいやらかしにも大げさに狼狽する両親にバレたら不味いよな、と思うも息子に関心のあり過ぎる両親はすぐに違和感を覚えたらしい。

 そうして誤魔化せば誤魔化すほど気まずくなるだろうと腹をくくって記憶喪失だと告げた俺の目の前には、ついに気絶し倒れた母と、俺と母両方にあわあわと声をかける混乱した父という光景が広がったのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

処理中です...