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第11章 バーベキュー

浜辺の風物詩

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「酷いよー!かなめちゃん」 

 着替えて来た誠がパラソルの下で海を見ているかなめ達のところで目にしたのは、首から下を砂に埋められてわめいているシャムと小夏の姿だった。

「西園寺さんあれはちょっと……」 

 誠は頭を掻きながら首を振って助けを求めている二人を指差す。

「なにか?神前。お前が代わるか?」 

 そう言うとにやりと笑ってかなめはサングラスを下ろす。誠は照れ笑いを浮かべながら視線を波打ち際に転じる。自分でも地味とわかるトランクスの水着をかなめが一瞥して舌打ちをするのが非常にシュールだった。島田、サラ、パーラ、キム、エダ。波打ち際で海水を掛け合うといういかにもほほえましい光景が展開している。

「そういえば他の面子は……」 

「カウラが先頭になって……ほら、沖のここからも見えるブイがあるだろ?」

 かなめが沖合いを指差す。誠は目を凝らした。 

「もしかしてあそこまで泳いでるんですか?」 

 確かに視線の先に赤いブイが浮いている。三百メートルは離れていることだろう。

「でもよくアイシャさんが付き合いましたね」

 そんな誠の言葉にかなへは静かに首を横に振る。 

「ああ、アイシャなら女将とお姉さん夫妻、それにあのレベッカとかいう奴と一緒に昼飯の準備してるよ」 

「なるほど」 

 いかにもアイシャらしいと相打ちを打つ誠はぼんやり波打ち際で戯れる島田達を見ていた。

「誠ちゃん助けてー」 

 またシャムが叫ぶ。隣の小夏は顔色が変わり始めているが、意地でもかなめには助けを求めまいと頬を膨らませて黙り込んでいる。

「西園寺さん、いくらなんでも……」

 確かにかなめを怒らせるとどうなるかと言う見本には違いなかったが、小夏の変わっていく顔を見ていると誠も二人を解放するようにと頼みたい気持ちになってきた。 

「そうだな。ここでいつまでも見られてちゃたまらねえや。誠、そこにスコップあるから掘り出してやれ」 

 そこにはどう考えてもこのことをする予定で持ってきたとしか思えない大きなスコップが立てかけてある。誠はとりあえず小夏から掘り出しにかかる。

「兄貴、すまねえ」 

 小夏はそう言いながらもぞもぞと動いて砂から出ようとする。

「苦しくない?」 

 かなり徹底して踏み固められている砂の様子を見て誠が話しかけた。

「余裕っすよ」 

 砂で押しつぶされていた血管が生気を取り戻していく。そして膝まで掘り進んだところで小夏はふらふらと砂の中から立ち上がる。

「ジャリ。強がっても何にもならねえぞ」 

 サングラスをかけて日向で横になっているかなめがつぶやく。

「早くこっちもお願い!」 

 隣のシャムが叫んでいる。仕方なく誠は小夏が寄りかかっていたスコップを手に取る。

「じゃあ行きますよ」 

 誠はそう言うとシャムを掘り出し始めた。明らかに小夏よりは元気だが圧迫されて血流が悪いようで顔色が悪い。それでも頬を膨らませてシャムはかなめをにらみつけている。

「どうだ?気分は」 

 にやけた笑いを浮かべてかなめはその様子を眺める。

「苦しい……苦しいよう」 

 シャムはわざとらしくそう言う。明らかに顔色が変わりかけてまた砂の上に座り込んでしまった小夏に比べればシャムはかなり元気に見えた。

「師匠!もう少しですよ」 

 そう言いながら小夏は座ったまま応援する。ぎらぎらと夏の日差しが日差しが照りつけている。海に来て最初にしたことが穴掘りとは……そう思いながらも誠は掘り続ける。

「大丈夫!あとは……」 

 膝の辺りまで掘り進んだところでシャムが砂から飛び出す。そして手にした砂の玉をかなめに投げつけた。

「何しやがる!」 

 そう言ってかなめが飛び起きる。それを見るとシャムと小夏は浮き輪をつかんで海のほうに駆け出した。

「あの馬鹿、いつかシメる」 

 そう吐き捨てるように言うと、かなめは再び砂浜に横になった。
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