834 / 1,557
第35章 政治家の慧眼
臆病者と政治屋
しおりを挟む
「あのな、かなめ。お前も何度か地下佐賀の大将にはあったろ?どう見る」
「どう見ると言われても……」
曖昧なかなめの返事に父親の顔は厳しくなる。ようやく頭のデータから髭面の小男の姿を思い出してみた。
「小さかったような……」
「そんな外見の話じゃ点はあげられないな」
普段は家族の前ではいい加減でだらしの無い父だが、政敵を目の前にして論破する際の気合を何度か見たことのあるかなめの表情は硬くなる。
「俺は正直お前にはこれまでの西園寺家は譲るつもりは無いんだ。爺さんも俺も反骨で鳴らした一門だ。お前は度胸は据わっているがそれだけじゃ世間を渡っていくのは無理だ。軍人になるのを最後は許したのもお前の人を見る目が甘いからだ。その目つきや言動で一度会った人間の特徴をすぐに捉えることができるかどうか。四大公家なんぞに生まれるとそれくらいの芸当は求められるんだぞ。良く覚えて置け」
珍しい父親の説教にかなめは頭を掻きながらどう答えるか迷っていた。
「分かったの?かなめちゃん」
猫なで声の康子。ここで逆らえばどうなるか分からないと言うことでかなめは仕方なく頷く。
「じゃあ、佐賀高家。どういう人物だと見る」
再びの父親の問いかけにしばらく要は考えていた。
「気が強いような……」
「まさか……あいつは小心者だよ。さも無きゃ嵯峨本家相続のごたごたの時に新三郎の首と胴体が離れているはずだ」
あっさりと自説を覆す父に短気な要の視線は鋭くとがった。
「実際命を賭けてまで貴族制を守ろうと言う人間がどれだけいるか……とりあえず利益だけを見て動いている人間は御しやすいものさ」
父の笑いにどうにも納得できないような表情を浮かべる要。母、康子は親子でそっくりなたれ目を見て面白そうに微笑んでいる。
「じゃあ佐賀さんが寝返ってくるわけですね」
「あのなあ、すぐに結論を出そうとするのは良くない癖だ。止めたほうがいい」
「裏切るって言ったのは親父じゃないか」
そう言ってかなめは康子を見た。父を『親父』と呼んだことで明らかに康子は不機嫌そうな顔をしている。冷や汗を流しながらかなめは父に向き直った。
「寝返るって言うのはそれなりの勇気がいることだ。そこまでの器量は佐賀君には無いよ。ただ、いくつかの烏丸派ということで宇宙に上がった人達には色々粉はかけてみたよ。結果はかなりいい具合だ。確かに清原君は切れ者だ。仕事も速く決断力もある。だが人徳は……」
「まるで自分は人徳があるみたいじゃないか」
「かなめさん!」
「すいません!お母様!」
康子に謝りながらもかなめは納得できないでいた。父もようやく娘の人生経験が足りないことを悟って大きなため息をついた。
「ともかく戦場は入り乱れての乱戦になるだろう。そうなれば実戦経験の豊富な赤松君に分がある。清原君も懐刀の安東君の使い方次第で勝機は見出せるだろうが……」
「まるで人事だな。清原准将が勝ったら親父は斬首だと思うぞ」
あくまで楽しんでいるような父に釘を刺してみた。
「なあに、人の上に立つと言うのはそれなりのリスクを負うものさ。俺は四大公の筆頭に生まれちまった。兄貴は遼南で新三郎の皇位継承権に絡んで好き勝手やって戦死。そんな弟もそのまま遼南王家に魅入られて今じゃあ遼南皇帝だ。俺が責務を果たさないわけに行かないだろ?まったく因果な生まれだよ」
西園寺はそう言うと妻子を見ながら満足げに頷いた。
「どう見ると言われても……」
曖昧なかなめの返事に父親の顔は厳しくなる。ようやく頭のデータから髭面の小男の姿を思い出してみた。
「小さかったような……」
「そんな外見の話じゃ点はあげられないな」
普段は家族の前ではいい加減でだらしの無い父だが、政敵を目の前にして論破する際の気合を何度か見たことのあるかなめの表情は硬くなる。
「俺は正直お前にはこれまでの西園寺家は譲るつもりは無いんだ。爺さんも俺も反骨で鳴らした一門だ。お前は度胸は据わっているがそれだけじゃ世間を渡っていくのは無理だ。軍人になるのを最後は許したのもお前の人を見る目が甘いからだ。その目つきや言動で一度会った人間の特徴をすぐに捉えることができるかどうか。四大公家なんぞに生まれるとそれくらいの芸当は求められるんだぞ。良く覚えて置け」
珍しい父親の説教にかなめは頭を掻きながらどう答えるか迷っていた。
「分かったの?かなめちゃん」
猫なで声の康子。ここで逆らえばどうなるか分からないと言うことでかなめは仕方なく頷く。
「じゃあ、佐賀高家。どういう人物だと見る」
再びの父親の問いかけにしばらく要は考えていた。
「気が強いような……」
「まさか……あいつは小心者だよ。さも無きゃ嵯峨本家相続のごたごたの時に新三郎の首と胴体が離れているはずだ」
あっさりと自説を覆す父に短気な要の視線は鋭くとがった。
「実際命を賭けてまで貴族制を守ろうと言う人間がどれだけいるか……とりあえず利益だけを見て動いている人間は御しやすいものさ」
父の笑いにどうにも納得できないような表情を浮かべる要。母、康子は親子でそっくりなたれ目を見て面白そうに微笑んでいる。
「じゃあ佐賀さんが寝返ってくるわけですね」
「あのなあ、すぐに結論を出そうとするのは良くない癖だ。止めたほうがいい」
「裏切るって言ったのは親父じゃないか」
そう言ってかなめは康子を見た。父を『親父』と呼んだことで明らかに康子は不機嫌そうな顔をしている。冷や汗を流しながらかなめは父に向き直った。
「寝返るって言うのはそれなりの勇気がいることだ。そこまでの器量は佐賀君には無いよ。ただ、いくつかの烏丸派ということで宇宙に上がった人達には色々粉はかけてみたよ。結果はかなりいい具合だ。確かに清原君は切れ者だ。仕事も速く決断力もある。だが人徳は……」
「まるで自分は人徳があるみたいじゃないか」
「かなめさん!」
「すいません!お母様!」
康子に謝りながらもかなめは納得できないでいた。父もようやく娘の人生経験が足りないことを悟って大きなため息をついた。
「ともかく戦場は入り乱れての乱戦になるだろう。そうなれば実戦経験の豊富な赤松君に分がある。清原君も懐刀の安東君の使い方次第で勝機は見出せるだろうが……」
「まるで人事だな。清原准将が勝ったら親父は斬首だと思うぞ」
あくまで楽しんでいるような父に釘を刺してみた。
「なあに、人の上に立つと言うのはそれなりのリスクを負うものさ。俺は四大公の筆頭に生まれちまった。兄貴は遼南で新三郎の皇位継承権に絡んで好き勝手やって戦死。そんな弟もそのまま遼南王家に魅入られて今じゃあ遼南皇帝だ。俺が責務を果たさないわけに行かないだろ?まったく因果な生まれだよ」
西園寺はそう言うと妻子を見ながら満足げに頷いた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
女神の白刃
玉椿 沢
ファンタジー
どこかの世界の、いつかの時代。
その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。
女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。
剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。
大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。
魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。
*表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる