1,263 / 1,557
第5章 捜査開始
東和遼南人協会
しおりを挟む
端末に集中しようとした誠の視界に、島田が久しぶりに見る整備班員のつなぎ姿で廊下を見ながら部屋に入ってきたのが見えた。隣にはサラがニヤニヤ笑いながら廊下の騒動を眺めているのが見える。
「ベルガー大尉。あれ、何とかした方が良いですよ」
そう言って島田は隊長室の辺りを指差す。誠が島田が開けたドアの向こうをのぞき見るとそこにはかなめとかえでがいた。かえではかなめにしがみつきながら泣いている。ドサクサ紛れに胸を揉む彼女の手をかなめは思い切りつねり上げている。
「お姉さまー!お姉さまが解雇なら僕もー!」
「だから違うって言ってるだろ!人の話を聞けよ!」
叫ぶかえでをかなめはなんとかたしなめようとする。その隣ではその様をかえでの補佐役である渡辺リン大尉が黙って見つめている。その異常な光景に誠達はただ唖然としていた。
「まあ……あれは一つのレクリエーションだからな」
カウラは自分に言い聞かせるようにそう言って冷ややかな目を騒動の本人達に向けていた。
「どうなんだ、そっちは?」
ひとたび呆れたようにそのまま席に戻ったランが島田に声をかける。頭を掻きながらかなめ達の騒動を見つめているサラを振り返ると諦めたような笑みを浮かべる。
「どうもねえ。口が堅い人が多いのか、それとも本当に何も知らないのか微妙なところでしてね。とりあえず今日は独自のルートで捜査するからって茜お嬢さん達は出かけたわけですが……」
明らかに煮詰まっているのがわかって誠も島田に同情した。
「アタシ等も第三者に監視されている状態だしな。どこかの馬鹿がかなめみたいに状況にいらだって動いてくれると楽なんだけどなー」
「不謹慎な発言は慎んでください」
ランの言葉にカウラが慎重にそう突っ込む。それを見て舌を出すランを見て誠は萌えを感じていた。
「でもこの監視している画像を撮った人は何者なんですかね」
誠の言葉にランは首をひねる。実働部隊の詰め所のドアにはようやくかえでを引き剥がしたかなめが息を荒げて部屋に入ってくる。
「それか?出所は在東和遼南人協会のサーバーからのアクセスだそうだ」
そう言ってかなめは詰め所に押し入った。誠達もそれに続く。かなめに逃げられたかえでは廊下で指をくわえてかなめに熱い視線を送っている。
「在東和遼南人協会。初めて聞く名前ですね。それってどう言う組織ですか?」
誠の何気ない発言にカウラが失望したようにため息をつく。
「遼南内戦で敗北した共和軍の亡命者が作った団体だ。主に構成員は前政権の官僚や軍の関係者が多かったが、最近では遼南皇帝即位後に叩き潰した遼南東海州の花山院軍閥の関係者が多いな。一時期の人民党の圧政や経済の混乱で発生した難民の相互利益の確保を目的としていると言うのが建前だが実際のところは現政権の悪口を喧伝して回っている暇人の集団だ」
カウラの言葉にかなめが苦々しげにさらに話を続けた。
「表向きはそうだが実際には裏ルートでの租界の物資の流通を管理していると言う話もある……まあ胡散臭い団体だな。近藤事件でも非合法物資の売却で得た資金のロンダリングを一部を近藤中佐に頼んでいた資料はお前も見てるはずだから覚えておけよ」
その言葉でようやく誠も親甲武系のシンジケートの中にその名前があったのを思い出した。
「でもなんでそこの関係者がこんな画像を撮れたんですか?」
「サーバーを使ったからってこのビデオの撮影をした人間が在東和遼南人協会の関係者とは限らねーだろうが」
キーボードを叩きながらランが突っ込む。
「無関係では無いとは思うが少なくとも技術部の士官にそのサーバーを介して情報を流す意図を持った人物が、アタシ等の監視をしていることを印象付けたかったと言うことは間違いないだろうな」
かなめはそう言って自分の端末の画面を開いた。
「でも……僕達を監視しているって宣言してみせる意味が分からないんですけど」
そんな誠の言葉に一番に落胆した表情を浮かべたのはかなめだった。
「あのなあ、アタシ等の監視をしていると言うことはだ。いずれこの監視をしている連中の利害の範囲にアタシ等が関わればただじゃすまないぞ、と言う脅しの意味があるんだと思うぞ。実際、物理干渉型の空間展開なんかを見せ付けているわけだからな。どんな強力な法術師を擁しているか分かったもんじゃねえよ……本命の違法法術研究集団とは別の法術師をすでに保有している勢力があるってこった」
モニターを見ながら首筋のジャックにコードをつなげながらかなめがそう言って苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「なんでこんなことしたんでしょう」
純粋に疑問を持った誠がそうつぶやいた。
「アホか?今の話聞いてただろ?脅しだよ脅し」
かえでを引き離すことに成功したかなめはそう言うと始末書の作成に取り掛かる。だが、誠は相変わらず首をひねっている。
「だって、ただ邪魔をしたいとか監視していることを知ってほしいなら、直接クバルカ中佐達に攻撃を仕掛ければ良いじゃないですか」
誠の何気ない一言にランが顔を上げた。
「そうか!カウラ、車は出せるか?」
「ええ、良いですけど……始末書は?」
「そんなものはどーでもいーんだよ!」
ランはすぐに立ち上がって背もたれにかけてあったコートを羽織る。カウラも呆然と様子を見ているかなめを無視して立ち上がった。
「どうしたんですか?」
心配そうな誠の声にランは満面の笑みを返す。
「そうなんだよ!アタシ等に直接攻撃を出来ない理由がある連中を当たれば良いんだ」
そう言ってドアにしがみついているかえでの肩を叩いてランは出て行く。それをカウラは慌てて追った。
「僕……何か言いました?」
誠は呆然と立ち尽くす。そしてランのひらめきの中身が何かと思いながら仕事に戻ろうとした。
「知りたいか?」
「うわ!」
誠は耳元に突然囁きかけてきたカウラに驚いて飛び上がる。それを見てカウラはしてやったりの笑みを浮かべる。
「何か知ってるのか?」
かなめのいぶかしげな顔にカウラは机の上の端末を起動した。いじけていたかえでと彼女に寄り添うようにして立つリンと一緒にカウラの操作している誠の端末の画面をのぞきこんだ。
「つまりだ、司法局に介入されるといろいろと困る人が悪趣味な人体実験の片棒を担いでいると言うことはだ。司法局が嫌いで嫌いでたまらない連中と考えが行くわけで……」
そう言うカウラが画面に表示させたのは同盟の軍事機構の最高意思決定機関の組織図だった。
「同盟の軍事機構か。そりゃあ虎を引きずり出したようなもんだな。それにこの面子。全員軍籍は東和陸軍か……」
かなめのタレ目は笑っていなかった。カウラはその組織図にいくつかのしるしをつけていく。その数に誠は圧倒された。
「近藤事件で押収した資料に名前の載っている人間がこんだけ。隊長も目をつけている人物達だ。当然これまで近藤事件の裏帳簿を隊長が握りつぶしたことで弾劾を切り抜けてはいるが近藤中佐の帳簿が表ざたになればどういう処分が出るか……まあこんな裏事情を相手さんも分かってるだろうからな。そりゃあ司法局が嫌いでたまらないだろ」
そこまで言うとカウラは笑みを浮かべる。
「あの帳簿の公表は最後の手段だからな。表に出れば同盟内で要職についてる連中の総入れ替えが始まるわけだ。そうなりゃ同盟の政治的均衡は完全に崩れ去るってわけだ。まあできるなら避けて通りたい道だな」
かなめはそう言ってそのまま自分の端末に目を向ける。
「どおりで情報が集まらないわけだ」
そう言ったのはサラと一緒に画面をのぞき込んでいた島田だった。頭を掻きながら天を仰ぐ。
「東和陸軍には昔から遼州人至上主義を標榜する連中がうようよいますから。その相手にするのは研究を仕切っている組織の面々も避けたいでしょうからね。でもそうなると同盟軍事機構の情報機関がこの事件の調査を始めるんじゃないですか?」
島田の意見に誠もうなづいた。そんな二人とサラを見てカウラは呆れたような顔をする。
「同盟軍事機構の連中が調査を始めて今回の事件の肝である法術師の能力強制開発の技術を手に入れたらどうなると思う?あの連中は本音では地球ともう一回ガチで喧嘩したい連中だ。一騎当千の法術師を大量生産して一気に地球に派遣して大混乱を起こす。そして軍の侵攻」
「勝敗は別としてもかなり見るに耐えない光景が展開されるのは確実だな」
かなめの言葉を聞くまでも無く誠は状況を理解した。
「でもそうすると研究施設を発見しても軍にばれたらエンドじゃないですか!」
「そうでもないぜ」
慌てた誠の言葉をかなめがさえぎる。そして端末を操作して誠の画面を切り替えた。そこに映るのは近藤事件に関与が疑われている同盟軍事機構の上層部の将官達の名前だった。
「こちらも手札はあるんだ。おそらくこの近藤事件関係者の名簿をうちが握っていることは東和軍の連中も知っているはずだ。アタシ等が先に施設を発見できれば連中も無茶な介入はできない。連中も無茶をすれば自棄になったうち等が名簿の公表に踏み切ることも考えてるだろうからな。誰もが自分がかわいいもんだよ」
こう言うときのかなめは晴れやかな顔になる。常に軍上層部から嫌がらせに近い扱いを受けてきただけに彼女のそのサディスティックな笑顔にも誠は慣れてきていた。
「それでも調査は一刻を争う状況だな。西園寺。コイツと行ってこい」
そう言ってカウラは誠の肩を叩く。
「始末書、作ってくれよな」
かなめの言葉にかえでがしぶしぶうなづく。誠は迷いが消えたようなかなめの顔を見て笑顔を浮かべていた。
「俺達は?」
取残された島田。カウラは何も言わずにいつもの軽い笑みを浮かべるとそのまま自分の席へと島田を無視して立ち去ってしまった。すがるような視線を島田は誠に投げるが、彼も目をそらしてそのまま自分の席へと向かう。
「神前!ちゃんと私服に着替えろよな」
助けを求めるような島田を無視してかなめはそう言うと立ち上がって端末を停止させている誠を見下ろした。
「分かりました……」
そういう誠にも島田は涙目を向けてくるが周りの空気を読んで誠は無言で立ち上がって実働部隊の詰め所から更衣室へと向かった。
「ベルガー大尉。あれ、何とかした方が良いですよ」
そう言って島田は隊長室の辺りを指差す。誠が島田が開けたドアの向こうをのぞき見るとそこにはかなめとかえでがいた。かえではかなめにしがみつきながら泣いている。ドサクサ紛れに胸を揉む彼女の手をかなめは思い切りつねり上げている。
「お姉さまー!お姉さまが解雇なら僕もー!」
「だから違うって言ってるだろ!人の話を聞けよ!」
叫ぶかえでをかなめはなんとかたしなめようとする。その隣ではその様をかえでの補佐役である渡辺リン大尉が黙って見つめている。その異常な光景に誠達はただ唖然としていた。
「まあ……あれは一つのレクリエーションだからな」
カウラは自分に言い聞かせるようにそう言って冷ややかな目を騒動の本人達に向けていた。
「どうなんだ、そっちは?」
ひとたび呆れたようにそのまま席に戻ったランが島田に声をかける。頭を掻きながらかなめ達の騒動を見つめているサラを振り返ると諦めたような笑みを浮かべる。
「どうもねえ。口が堅い人が多いのか、それとも本当に何も知らないのか微妙なところでしてね。とりあえず今日は独自のルートで捜査するからって茜お嬢さん達は出かけたわけですが……」
明らかに煮詰まっているのがわかって誠も島田に同情した。
「アタシ等も第三者に監視されている状態だしな。どこかの馬鹿がかなめみたいに状況にいらだって動いてくれると楽なんだけどなー」
「不謹慎な発言は慎んでください」
ランの言葉にカウラが慎重にそう突っ込む。それを見て舌を出すランを見て誠は萌えを感じていた。
「でもこの監視している画像を撮った人は何者なんですかね」
誠の言葉にランは首をひねる。実働部隊の詰め所のドアにはようやくかえでを引き剥がしたかなめが息を荒げて部屋に入ってくる。
「それか?出所は在東和遼南人協会のサーバーからのアクセスだそうだ」
そう言ってかなめは詰め所に押し入った。誠達もそれに続く。かなめに逃げられたかえでは廊下で指をくわえてかなめに熱い視線を送っている。
「在東和遼南人協会。初めて聞く名前ですね。それってどう言う組織ですか?」
誠の何気ない発言にカウラが失望したようにため息をつく。
「遼南内戦で敗北した共和軍の亡命者が作った団体だ。主に構成員は前政権の官僚や軍の関係者が多かったが、最近では遼南皇帝即位後に叩き潰した遼南東海州の花山院軍閥の関係者が多いな。一時期の人民党の圧政や経済の混乱で発生した難民の相互利益の確保を目的としていると言うのが建前だが実際のところは現政権の悪口を喧伝して回っている暇人の集団だ」
カウラの言葉にかなめが苦々しげにさらに話を続けた。
「表向きはそうだが実際には裏ルートでの租界の物資の流通を管理していると言う話もある……まあ胡散臭い団体だな。近藤事件でも非合法物資の売却で得た資金のロンダリングを一部を近藤中佐に頼んでいた資料はお前も見てるはずだから覚えておけよ」
その言葉でようやく誠も親甲武系のシンジケートの中にその名前があったのを思い出した。
「でもなんでそこの関係者がこんな画像を撮れたんですか?」
「サーバーを使ったからってこのビデオの撮影をした人間が在東和遼南人協会の関係者とは限らねーだろうが」
キーボードを叩きながらランが突っ込む。
「無関係では無いとは思うが少なくとも技術部の士官にそのサーバーを介して情報を流す意図を持った人物が、アタシ等の監視をしていることを印象付けたかったと言うことは間違いないだろうな」
かなめはそう言って自分の端末の画面を開いた。
「でも……僕達を監視しているって宣言してみせる意味が分からないんですけど」
そんな誠の言葉に一番に落胆した表情を浮かべたのはかなめだった。
「あのなあ、アタシ等の監視をしていると言うことはだ。いずれこの監視をしている連中の利害の範囲にアタシ等が関わればただじゃすまないぞ、と言う脅しの意味があるんだと思うぞ。実際、物理干渉型の空間展開なんかを見せ付けているわけだからな。どんな強力な法術師を擁しているか分かったもんじゃねえよ……本命の違法法術研究集団とは別の法術師をすでに保有している勢力があるってこった」
モニターを見ながら首筋のジャックにコードをつなげながらかなめがそう言って苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「なんでこんなことしたんでしょう」
純粋に疑問を持った誠がそうつぶやいた。
「アホか?今の話聞いてただろ?脅しだよ脅し」
かえでを引き離すことに成功したかなめはそう言うと始末書の作成に取り掛かる。だが、誠は相変わらず首をひねっている。
「だって、ただ邪魔をしたいとか監視していることを知ってほしいなら、直接クバルカ中佐達に攻撃を仕掛ければ良いじゃないですか」
誠の何気ない一言にランが顔を上げた。
「そうか!カウラ、車は出せるか?」
「ええ、良いですけど……始末書は?」
「そんなものはどーでもいーんだよ!」
ランはすぐに立ち上がって背もたれにかけてあったコートを羽織る。カウラも呆然と様子を見ているかなめを無視して立ち上がった。
「どうしたんですか?」
心配そうな誠の声にランは満面の笑みを返す。
「そうなんだよ!アタシ等に直接攻撃を出来ない理由がある連中を当たれば良いんだ」
そう言ってドアにしがみついているかえでの肩を叩いてランは出て行く。それをカウラは慌てて追った。
「僕……何か言いました?」
誠は呆然と立ち尽くす。そしてランのひらめきの中身が何かと思いながら仕事に戻ろうとした。
「知りたいか?」
「うわ!」
誠は耳元に突然囁きかけてきたカウラに驚いて飛び上がる。それを見てカウラはしてやったりの笑みを浮かべる。
「何か知ってるのか?」
かなめのいぶかしげな顔にカウラは机の上の端末を起動した。いじけていたかえでと彼女に寄り添うようにして立つリンと一緒にカウラの操作している誠の端末の画面をのぞきこんだ。
「つまりだ、司法局に介入されるといろいろと困る人が悪趣味な人体実験の片棒を担いでいると言うことはだ。司法局が嫌いで嫌いでたまらない連中と考えが行くわけで……」
そう言うカウラが画面に表示させたのは同盟の軍事機構の最高意思決定機関の組織図だった。
「同盟の軍事機構か。そりゃあ虎を引きずり出したようなもんだな。それにこの面子。全員軍籍は東和陸軍か……」
かなめのタレ目は笑っていなかった。カウラはその組織図にいくつかのしるしをつけていく。その数に誠は圧倒された。
「近藤事件で押収した資料に名前の載っている人間がこんだけ。隊長も目をつけている人物達だ。当然これまで近藤事件の裏帳簿を隊長が握りつぶしたことで弾劾を切り抜けてはいるが近藤中佐の帳簿が表ざたになればどういう処分が出るか……まあこんな裏事情を相手さんも分かってるだろうからな。そりゃあ司法局が嫌いでたまらないだろ」
そこまで言うとカウラは笑みを浮かべる。
「あの帳簿の公表は最後の手段だからな。表に出れば同盟内で要職についてる連中の総入れ替えが始まるわけだ。そうなりゃ同盟の政治的均衡は完全に崩れ去るってわけだ。まあできるなら避けて通りたい道だな」
かなめはそう言ってそのまま自分の端末に目を向ける。
「どおりで情報が集まらないわけだ」
そう言ったのはサラと一緒に画面をのぞき込んでいた島田だった。頭を掻きながら天を仰ぐ。
「東和陸軍には昔から遼州人至上主義を標榜する連中がうようよいますから。その相手にするのは研究を仕切っている組織の面々も避けたいでしょうからね。でもそうなると同盟軍事機構の情報機関がこの事件の調査を始めるんじゃないですか?」
島田の意見に誠もうなづいた。そんな二人とサラを見てカウラは呆れたような顔をする。
「同盟軍事機構の連中が調査を始めて今回の事件の肝である法術師の能力強制開発の技術を手に入れたらどうなると思う?あの連中は本音では地球ともう一回ガチで喧嘩したい連中だ。一騎当千の法術師を大量生産して一気に地球に派遣して大混乱を起こす。そして軍の侵攻」
「勝敗は別としてもかなり見るに耐えない光景が展開されるのは確実だな」
かなめの言葉を聞くまでも無く誠は状況を理解した。
「でもそうすると研究施設を発見しても軍にばれたらエンドじゃないですか!」
「そうでもないぜ」
慌てた誠の言葉をかなめがさえぎる。そして端末を操作して誠の画面を切り替えた。そこに映るのは近藤事件に関与が疑われている同盟軍事機構の上層部の将官達の名前だった。
「こちらも手札はあるんだ。おそらくこの近藤事件関係者の名簿をうちが握っていることは東和軍の連中も知っているはずだ。アタシ等が先に施設を発見できれば連中も無茶な介入はできない。連中も無茶をすれば自棄になったうち等が名簿の公表に踏み切ることも考えてるだろうからな。誰もが自分がかわいいもんだよ」
こう言うときのかなめは晴れやかな顔になる。常に軍上層部から嫌がらせに近い扱いを受けてきただけに彼女のそのサディスティックな笑顔にも誠は慣れてきていた。
「それでも調査は一刻を争う状況だな。西園寺。コイツと行ってこい」
そう言ってカウラは誠の肩を叩く。
「始末書、作ってくれよな」
かなめの言葉にかえでがしぶしぶうなづく。誠は迷いが消えたようなかなめの顔を見て笑顔を浮かべていた。
「俺達は?」
取残された島田。カウラは何も言わずにいつもの軽い笑みを浮かべるとそのまま自分の席へと島田を無視して立ち去ってしまった。すがるような視線を島田は誠に投げるが、彼も目をそらしてそのまま自分の席へと向かう。
「神前!ちゃんと私服に着替えろよな」
助けを求めるような島田を無視してかなめはそう言うと立ち上がって端末を停止させている誠を見下ろした。
「分かりました……」
そういう誠にも島田は涙目を向けてくるが周りの空気を読んで誠は無言で立ち上がって実働部隊の詰め所から更衣室へと向かった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――
黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。
ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。
この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。
未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。
そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる