1,436 / 1,557
結末
武者
しおりを挟む
「なんだ、ありゃ?」
駆け出していくかなめとアメリア、そして入れ替わりに嵯峨が顔を出す。それまでアメリアに何かを吹き込まれてニヤニヤしていたサラとパーラが突然の闖入者に思わず目をそらす。
「隊長、何か用が?」
立ち上がったラン、それを見ると思い出したように嵯峨が誠に手招きする。
「神前も来いや」
「僕がですか?」
不思議に思いながら誠も立ち上がる。それを見てマリアは手を打った。
「ああ、今回のイベントの本題の方だな」
「本題?」
カウラは尋ねてくる誠ににんまりと笑って見せた。
「この映画を上映するのは今度の節分だ。呼び物は隊長の提案で始まった時代行列。そこで着る鎧兜を選ぶんだ」
「ああ、そういうこったな」
嵯峨の言葉に元々目つきの悪いランの目つきがさらに悪くなる。
「士官は大鎧、下士官は胴丸を作るんだ」
「え!鎧兜を作る?」
嵯峨の言葉に誠は驚く。彼の肩にカウラが手を伸ばす。
「時代行列でうちは源平絵巻の担当だからな。当然甲冑を着て行進することになる」
「目玉は隊長の流鏑馬だ。期待してろよ」
自慢げにランはそう言った。誠は嵯峨なら乗馬くらいはできるだろうとは思っていたが弓まで使えることははじめて知った。
「ちょっと会議しようや。お前等も見るか?」
嵯峨にそう言われて一同がぞろぞろとついてくる。
「源平絵巻ですか……写真の資料しか見たことありませんよ、僕」
そう言いながら嵯峨に続いて電算室に入る。嵯峨は素早く端末の前に腰掛けると画面を開いて甲武のネットに接続した。
「やっぱり甲武ですか製作は」
「そりゃあな。甲武の時代趣味はすげえからな。東和だと何時代の鎧……と言うかそもそもこれ日本の甲冑と違うじゃんと言う奴ができちまうからな」
嵯峨がそう言いながら甲武国立文化センターのセキュリティーコードを打ち込んでいるのを眺めていた。
「変わったところに頼むんですね」
「平安末期仕様の鎧兜って限定して作らせるとなると、俺の領地のコロニーしか無くてな。まあこのこだわりがどれだけ客に受けるかは別なんだけどっと!」
そう言いながら嵯峨は歴史物品複製製作のサイトにたどり着いた。
「とりあえず胴丸で……サイズからか……神前!身長は?」
嵯峨が突然振り返る興味深げに覗きこんだ端末には徒歩侍の姿が映っている。明らかに雑兵と言う姿に少し誠はがっかりした。
「一応186センチですけど……雑兵役……武将じゃないんですね」
「ああ、将校クラスは大鎧だが下士官はすべて雑兵の格好になるんだ」
カウラの言葉にサラが乗っかって誠に笑いかける。
「神前、でかすぎだ。特別注文になるな」
そう言いながら端末に入力を続ける嵯峨。キーボードを打つ嵯峨をはじめてみる誠だが、それは驚異的なスピードだった。すぐさま鎧の各部分の設定などを入力して完成予想画面が映し出される。
「へえ、様になるわね」
「良かったなカウラ」
パーラがカウラに声をかける。それまで画面を見つめていたカウラは突然の言葉に頬を赤らめて下を向いた。
嵯峨が体を引いてランからも画面が見えるようにする。ランはしばらく頭を掻いた後、仕方が無いというように画面を見つめた。そこには様々な文様の鎧の胴や盾が映っている。
「兜は……下士官は雑兵だから烏帽子ですよね?」
「まあな、女武者は鉢巻とかが普通だぞ」
「ああ、アタシは赤糸縅の大鎧に鉢巻だ。まあ私は去年も今年も警備に駆り出されるだろうからな」
かなめの言葉で凛々しく騎馬で疾走する姿を想像して誠は納得する。カウラやかなめ、アメリアも将校であるところから考えれば、彼女達も恐らく源平の女豪傑の巴御前のような姿になるだろうと思って心が躍るのを感じた。
「やっぱり兜がねーと格好がつかねーよ」
「贅沢言いやがって」
ごねるランに苦笑いを浮かべると嵯峨は再び端末のキーボードを叩く。
「納期を考えると……緋縅の甲冑の部品が余ってるみたいだからこれで行くか?」
「仕方がないんじゃないっすか?」
ランの一言でようやく落ち着く。
「ああ、そうだ。島田も今回は将校扱いだな……」
「私が連れてきます!」
嵯峨の言葉にサラが飛び出していく。誠は嵯峨の横から手を出して自分の鎧の完成予想図を見た。
「やっぱり雑兵だな」
カウラの一言。誠は大きく落ち込んだ。
「良いじゃないか。乗馬の練習とかしなくて良いし、それに大鎧は結構動きにくいからな」
カウラのフォローだが、所詮は祭りのコスプレである。格好が良い方を選びたくなるのが人情だった。
「まあ、がんばれ」
肩を叩く嵯峨。そこで再びドアのロックが解除された。
「どこに隠れた!アメリア!」
そう言ってかなめがずかずかと部屋に乱入する。だが、その視線が誠の目の前の画面に落ち着くとにんまりと笑って誠の頭をぽかぽか叩き始めた。
「おう、立派な雑兵じゃねえか!」
かなめはそのまま誠の頭をぺたぺた叩き続ける。誠は苦々しい笑顔を浮かべながら見つめてくるかなめのタレ目に答えた。
「武将は将校だけなんですよね。じゃあ西園寺さんも馬に乗るんですか?」
逆襲のつもりで誠が話をそちらに向けるがかなめは平然としている。
「アタシは一応甲武の公家の出なんだよ。当然乗馬なんざ必須科目だね。そして……」
にやけたかなめのタレ目がカウラに向かう。カウラは思い出したように顔を赤らめるとうつむいてしまった。
「馬と相性の悪い将校さんもいるからさ、ちゃんと二人で歩いてついて来いよ」
嫌味たっぷりにかなめが言うとカウラはそのままじっと話題が変わるのを待つことにしたように黙り込んだ。
「なんだ、馬?簡単だよあんなの」
そう言うと目をきらきらさせてランがカウラの手を握る。
「そうは行かないんだな。カウラの場合本当に不思議なくらい馬に嫌われてるからな」
嵯峨にそう言われてカウラが困ったような顔をしている。そう言われてランは腕組みをして考え込む。
「普通なら馬なんてくつわを取る人さえいればじっとしていれば済むんだけどな」
「俺もあんなに馬に嫌われる奴は見たことが無いな」
嵯峨の言葉が止めを刺したようにカウラは深刻な顔をする。
「おい、追い詰めてどーすんだよ!」
自分の言葉で部下が落ち込むのを見て慌ててランが全員に顔を向ける。
「確か去年はアメリアが乗馬クラブに通ってたわよね」
サラが首をひねりながら答える。こういうイベントには異常な情熱を注ぐアメリアが乗馬の特訓くらいならやりかねないと思って誠は笑みを浮かべた。
「じゃあやっぱりアイツが必要に……」
そう言った時にドアのロックが開いて入ってきたのはアメリア本人だった。かなめの顔を見ると逃げようとするアメリアだが、素早く飛びついたランがアメリアを押さえ込む。
「ごめんなさい!」
「おい、そっちの話は終わりだ。それよりこいつに乗馬を教えるところはねえのか?」
ころころ機嫌の変わるかなめを知っているアメリアがおびえた表情から素に戻る。話題がかなめが何をしていたか言うことから変わっていると知るとそのまま部屋に入ってくる。
「三つあるけど……節分の時代行列で乗るためでしょ?そうするとここかしらね」
そう言うとアメリアはすぐに端末を操作して豊川市の企業情報のサイトを検索する。そこには小さな牧場の写真が映っていた。
「おい、これは誰だ?」
左端に鎧兜の女武者の写真が見て取れた。
誠は首をかしげた。写真に写っているアメリアだがどうも不自然に見える。
身に着けているのが先ほどまで見ていた源平絵巻に登場する甲冑とは明らかに違う。茶色い漆のようなもので塗られて輝く兜には鹿の角のような飾りがあり、胴は丸く金属でできているように見えた。アメリアの顔には仮面のようなものがついて、そこから髭のようなものまで生えている。
「当世具足って言うんですって!本当は六文銭に赤備えで真田信繁をやろうとしたんだけど……」
「時代が全然違うじゃないか」
カウラの一言にアメリアは気に障ったかのようにうつむく。確かにこのような甲冑を飾っている剣術道場もあることは知っていた。
「でも大丈夫か?カウラは動物と相性最悪だぞ。馬なんて……」
そう言ってかなめはタレ目でカウラを見上げる。アメリアもそこまで言われるとただ首をひねるしかなかった。
「それに怪我をされたらな……一応仕事に支障があるのは勘弁して欲しいな」
「隊長!私のときは何も言わないで!」
アメリアが目を向けたので嵯峨が首をすくめる。
「お前は止めても行ったろ?しかも去年とはうちをめぐる状況がかなり違うんだ」
そう言い訳するとなんとかアメリアは納得する。
「つまり歩けば良いんだよ。いっそのことアタシの馬のくつわでも取るか?神前と一緒に」
ニヤニヤ笑うかなめだが、先ほどの嵯峨の言葉に少しばかり落胆していた。
「そうですね。今年も歩きますよ。甲冑はこの前ので良いです」
残念そうな口ぶりでそう言い切ったあと、カウラはかなめをにらみ返す。
「でもこれって誰が金だしてんだ?」
至極もっともなランの言葉に嵯峨が手を上げる。
「生産的な出費だろ?これで甲武の学者さん達は研究費用が稼げて技術の研鑽につながる。東和は伝統的な資料を見ることで歴史を学べて観光客も呼べる。俺は価値のある美術品を購入して資金の投資を行ったことになる。三方丸くおさまって良いことじゃねえの」
そう言うと嵯峨は立ち上がる。
「定時だぜ、どうする?飲みに行くか?」
嵯峨の言葉にランが当然というようにうなづいた。
「叔父貴のおごりってわけじゃ……ねえよな」
「無茶言うなよ。俺は今月はおとといオートレースで負けてやばいんだから……金貸してくれるの?」
そう言って嵯峨は端末を閉じた。
「じゃあ、クバルカ中佐とかなめちゃんとカウラちゃん、私と誠ちゃん……」
アメリアが視線をパーラに向ける。パーラはそのままサラを見つめる。
「じゃあパーラの車は……あと島田でも呼ぶか?」
そんなかなめの方を見ながら決して潰れるまいと誠は心に誓った。
駆け出していくかなめとアメリア、そして入れ替わりに嵯峨が顔を出す。それまでアメリアに何かを吹き込まれてニヤニヤしていたサラとパーラが突然の闖入者に思わず目をそらす。
「隊長、何か用が?」
立ち上がったラン、それを見ると思い出したように嵯峨が誠に手招きする。
「神前も来いや」
「僕がですか?」
不思議に思いながら誠も立ち上がる。それを見てマリアは手を打った。
「ああ、今回のイベントの本題の方だな」
「本題?」
カウラは尋ねてくる誠ににんまりと笑って見せた。
「この映画を上映するのは今度の節分だ。呼び物は隊長の提案で始まった時代行列。そこで着る鎧兜を選ぶんだ」
「ああ、そういうこったな」
嵯峨の言葉に元々目つきの悪いランの目つきがさらに悪くなる。
「士官は大鎧、下士官は胴丸を作るんだ」
「え!鎧兜を作る?」
嵯峨の言葉に誠は驚く。彼の肩にカウラが手を伸ばす。
「時代行列でうちは源平絵巻の担当だからな。当然甲冑を着て行進することになる」
「目玉は隊長の流鏑馬だ。期待してろよ」
自慢げにランはそう言った。誠は嵯峨なら乗馬くらいはできるだろうとは思っていたが弓まで使えることははじめて知った。
「ちょっと会議しようや。お前等も見るか?」
嵯峨にそう言われて一同がぞろぞろとついてくる。
「源平絵巻ですか……写真の資料しか見たことありませんよ、僕」
そう言いながら嵯峨に続いて電算室に入る。嵯峨は素早く端末の前に腰掛けると画面を開いて甲武のネットに接続した。
「やっぱり甲武ですか製作は」
「そりゃあな。甲武の時代趣味はすげえからな。東和だと何時代の鎧……と言うかそもそもこれ日本の甲冑と違うじゃんと言う奴ができちまうからな」
嵯峨がそう言いながら甲武国立文化センターのセキュリティーコードを打ち込んでいるのを眺めていた。
「変わったところに頼むんですね」
「平安末期仕様の鎧兜って限定して作らせるとなると、俺の領地のコロニーしか無くてな。まあこのこだわりがどれだけ客に受けるかは別なんだけどっと!」
そう言いながら嵯峨は歴史物品複製製作のサイトにたどり着いた。
「とりあえず胴丸で……サイズからか……神前!身長は?」
嵯峨が突然振り返る興味深げに覗きこんだ端末には徒歩侍の姿が映っている。明らかに雑兵と言う姿に少し誠はがっかりした。
「一応186センチですけど……雑兵役……武将じゃないんですね」
「ああ、将校クラスは大鎧だが下士官はすべて雑兵の格好になるんだ」
カウラの言葉にサラが乗っかって誠に笑いかける。
「神前、でかすぎだ。特別注文になるな」
そう言いながら端末に入力を続ける嵯峨。キーボードを打つ嵯峨をはじめてみる誠だが、それは驚異的なスピードだった。すぐさま鎧の各部分の設定などを入力して完成予想画面が映し出される。
「へえ、様になるわね」
「良かったなカウラ」
パーラがカウラに声をかける。それまで画面を見つめていたカウラは突然の言葉に頬を赤らめて下を向いた。
嵯峨が体を引いてランからも画面が見えるようにする。ランはしばらく頭を掻いた後、仕方が無いというように画面を見つめた。そこには様々な文様の鎧の胴や盾が映っている。
「兜は……下士官は雑兵だから烏帽子ですよね?」
「まあな、女武者は鉢巻とかが普通だぞ」
「ああ、アタシは赤糸縅の大鎧に鉢巻だ。まあ私は去年も今年も警備に駆り出されるだろうからな」
かなめの言葉で凛々しく騎馬で疾走する姿を想像して誠は納得する。カウラやかなめ、アメリアも将校であるところから考えれば、彼女達も恐らく源平の女豪傑の巴御前のような姿になるだろうと思って心が躍るのを感じた。
「やっぱり兜がねーと格好がつかねーよ」
「贅沢言いやがって」
ごねるランに苦笑いを浮かべると嵯峨は再び端末のキーボードを叩く。
「納期を考えると……緋縅の甲冑の部品が余ってるみたいだからこれで行くか?」
「仕方がないんじゃないっすか?」
ランの一言でようやく落ち着く。
「ああ、そうだ。島田も今回は将校扱いだな……」
「私が連れてきます!」
嵯峨の言葉にサラが飛び出していく。誠は嵯峨の横から手を出して自分の鎧の完成予想図を見た。
「やっぱり雑兵だな」
カウラの一言。誠は大きく落ち込んだ。
「良いじゃないか。乗馬の練習とかしなくて良いし、それに大鎧は結構動きにくいからな」
カウラのフォローだが、所詮は祭りのコスプレである。格好が良い方を選びたくなるのが人情だった。
「まあ、がんばれ」
肩を叩く嵯峨。そこで再びドアのロックが解除された。
「どこに隠れた!アメリア!」
そう言ってかなめがずかずかと部屋に乱入する。だが、その視線が誠の目の前の画面に落ち着くとにんまりと笑って誠の頭をぽかぽか叩き始めた。
「おう、立派な雑兵じゃねえか!」
かなめはそのまま誠の頭をぺたぺた叩き続ける。誠は苦々しい笑顔を浮かべながら見つめてくるかなめのタレ目に答えた。
「武将は将校だけなんですよね。じゃあ西園寺さんも馬に乗るんですか?」
逆襲のつもりで誠が話をそちらに向けるがかなめは平然としている。
「アタシは一応甲武の公家の出なんだよ。当然乗馬なんざ必須科目だね。そして……」
にやけたかなめのタレ目がカウラに向かう。カウラは思い出したように顔を赤らめるとうつむいてしまった。
「馬と相性の悪い将校さんもいるからさ、ちゃんと二人で歩いてついて来いよ」
嫌味たっぷりにかなめが言うとカウラはそのままじっと話題が変わるのを待つことにしたように黙り込んだ。
「なんだ、馬?簡単だよあんなの」
そう言うと目をきらきらさせてランがカウラの手を握る。
「そうは行かないんだな。カウラの場合本当に不思議なくらい馬に嫌われてるからな」
嵯峨にそう言われてカウラが困ったような顔をしている。そう言われてランは腕組みをして考え込む。
「普通なら馬なんてくつわを取る人さえいればじっとしていれば済むんだけどな」
「俺もあんなに馬に嫌われる奴は見たことが無いな」
嵯峨の言葉が止めを刺したようにカウラは深刻な顔をする。
「おい、追い詰めてどーすんだよ!」
自分の言葉で部下が落ち込むのを見て慌ててランが全員に顔を向ける。
「確か去年はアメリアが乗馬クラブに通ってたわよね」
サラが首をひねりながら答える。こういうイベントには異常な情熱を注ぐアメリアが乗馬の特訓くらいならやりかねないと思って誠は笑みを浮かべた。
「じゃあやっぱりアイツが必要に……」
そう言った時にドアのロックが開いて入ってきたのはアメリア本人だった。かなめの顔を見ると逃げようとするアメリアだが、素早く飛びついたランがアメリアを押さえ込む。
「ごめんなさい!」
「おい、そっちの話は終わりだ。それよりこいつに乗馬を教えるところはねえのか?」
ころころ機嫌の変わるかなめを知っているアメリアがおびえた表情から素に戻る。話題がかなめが何をしていたか言うことから変わっていると知るとそのまま部屋に入ってくる。
「三つあるけど……節分の時代行列で乗るためでしょ?そうするとここかしらね」
そう言うとアメリアはすぐに端末を操作して豊川市の企業情報のサイトを検索する。そこには小さな牧場の写真が映っていた。
「おい、これは誰だ?」
左端に鎧兜の女武者の写真が見て取れた。
誠は首をかしげた。写真に写っているアメリアだがどうも不自然に見える。
身に着けているのが先ほどまで見ていた源平絵巻に登場する甲冑とは明らかに違う。茶色い漆のようなもので塗られて輝く兜には鹿の角のような飾りがあり、胴は丸く金属でできているように見えた。アメリアの顔には仮面のようなものがついて、そこから髭のようなものまで生えている。
「当世具足って言うんですって!本当は六文銭に赤備えで真田信繁をやろうとしたんだけど……」
「時代が全然違うじゃないか」
カウラの一言にアメリアは気に障ったかのようにうつむく。確かにこのような甲冑を飾っている剣術道場もあることは知っていた。
「でも大丈夫か?カウラは動物と相性最悪だぞ。馬なんて……」
そう言ってかなめはタレ目でカウラを見上げる。アメリアもそこまで言われるとただ首をひねるしかなかった。
「それに怪我をされたらな……一応仕事に支障があるのは勘弁して欲しいな」
「隊長!私のときは何も言わないで!」
アメリアが目を向けたので嵯峨が首をすくめる。
「お前は止めても行ったろ?しかも去年とはうちをめぐる状況がかなり違うんだ」
そう言い訳するとなんとかアメリアは納得する。
「つまり歩けば良いんだよ。いっそのことアタシの馬のくつわでも取るか?神前と一緒に」
ニヤニヤ笑うかなめだが、先ほどの嵯峨の言葉に少しばかり落胆していた。
「そうですね。今年も歩きますよ。甲冑はこの前ので良いです」
残念そうな口ぶりでそう言い切ったあと、カウラはかなめをにらみ返す。
「でもこれって誰が金だしてんだ?」
至極もっともなランの言葉に嵯峨が手を上げる。
「生産的な出費だろ?これで甲武の学者さん達は研究費用が稼げて技術の研鑽につながる。東和は伝統的な資料を見ることで歴史を学べて観光客も呼べる。俺は価値のある美術品を購入して資金の投資を行ったことになる。三方丸くおさまって良いことじゃねえの」
そう言うと嵯峨は立ち上がる。
「定時だぜ、どうする?飲みに行くか?」
嵯峨の言葉にランが当然というようにうなづいた。
「叔父貴のおごりってわけじゃ……ねえよな」
「無茶言うなよ。俺は今月はおとといオートレースで負けてやばいんだから……金貸してくれるの?」
そう言って嵯峨は端末を閉じた。
「じゃあ、クバルカ中佐とかなめちゃんとカウラちゃん、私と誠ちゃん……」
アメリアが視線をパーラに向ける。パーラはそのままサラを見つめる。
「じゃあパーラの車は……あと島田でも呼ぶか?」
そんなかなめの方を見ながら決して潰れるまいと誠は心に誓った。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
女神の白刃
玉椿 沢
ファンタジー
どこかの世界の、いつかの時代。
その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。
女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。
剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。
大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。
魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。
*表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる