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出発
うみのしおり
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「はいこれ!」
突然パーラとサラの後ろから現われたアイシャがガリ版刷りの小冊子を誠、かなめ、カウラの三人に手渡す。手にした冊子にかなめは明らかに不審そうな表情を浮かべた。
「今時わら半紙で、ガリ版刷りって……これ!僕の描いた『魔法少女エリーS』のミルキーじゃないですか!」
「なんだそりゃ?」
かなめは誠の描いたイラストが表紙にある冊子を眺めている。そしてすぐにサングラスの上の眉をぴくぴくと振るわせ始めた。真面目な顔をしているアイシャを一瞥するとかなめは一生懸命爆笑を堪えているというように震え始めた。そんなかなめの様子に誠は苦笑いを浮かべる。
「そうよ。あえて空気キャラを表紙に使う事で内容への関心を呼び起こすと言う……」
「暇だな貴様は」
カウラがあきれ果てたというようにつぶやいた。誠もその絵の上に踊る『うみのしおり』と言う文字を放心したように見つめていた。
「そう言や、アメちゃんの何軍だ?陸軍は叔父貴に遺恨が残っとるし、海兵隊はM10グラント配備してねえだろ?空軍?海軍?宇宙軍?」
出来るだけ冊子のことには触れたくないと言うようにかなめが話題を変えてアイシャに顔を向ける。自分の自信作が無視されているのに気が触ったようでアイシャは頬を引きつらせている。
「ああ、海軍だって話みたいよ。遼南の南都州の基地と言えばアメリカ海軍の遼州最大の拠点だから当然じゃないの?それよりかなめちゃん!」
三人の中で一番『美人』と言う言葉が似合うと誠自身は思っているアイシャの瞳が鋭くかなめを見つめる。
「なんだよ、おっかねえ顔して」
さすがのかなめもびっくりして携帯灰皿に吸殻を押し込んでいた手を止める。
「あなたはちゃんとこの冊子を読んで、理解してからバスに乗るのよ。これは上官からの命令よ!わかった?」
「なんだよ!この前の件で佐官に昇格したからって……」
愚痴るかなめをアイシャが一睨みした。だがじりじりとアイシャはかなめに顔を近づけてくる。
「わあったよ!読めばいいんだろ!読めば!」
根負けしたかなめは一人で先にバスの入り口に向かった。手荷物がやけに少なく、他の隊員が荷物の積み込みの順番を待っているのを横目に見ながら歩いていく。
「よろしい。じゃあちょっと他のみんなにも配ってくるわ」
アイシャが背を向ける。かなめはそれを見てすばやく誠達のところに戻ってきた。そして子供みたいに石を投げる振りをする。
「餓鬼か?お前は?」
カウラが呆れてそうつぶやいた。
「ったく!あの馬鹿!腹が立つぜ。これ、絵を描いたの神前か?」
表紙を眺めながらかなめが呟く。
「ええ、そうですけど……何か?」
サングラスを少しずらしてタレ目で誠を見上げてくるかなめの視線に誠は少したじろいだ。
「っ、別にな。じゃあ読むか」
かなめはそうポツリとつぶやくと手の中の冊子を開く。それを横目で見ながらカウラはかなめの手にあわせるように冊子を開いた。冊子を開くと、そこにはあまり上手くないアイシャの挿絵が踊っている。しばらく荷物の積み込み口でサラと雑談していたアイシャが戻ってきたのが誠にも見えた。手に冊子を握っていたかなめだがそれを察してアイシャを一瞥する。
「なに?」
「いや別に……」
再び冊子のページをめくったかなめの表情が曇る。
「何々?バスでの飲酒は禁止?これパス。運転中のバスでは立ち歩かない?これもパス。休憩中のパーキングでは必ず早めにトイレに行くこと?まあこれはいいんじゃねえの?」
苦笑いを浮かべながらかなめは冊子のページをめくる。
「アンケートじゃないのよ!それは絶対遵守事項!」
腰に両手をあててアイシャが怒鳴りつける。思わずサングラスを落としそうになりながらかなめが冊子を地面に叩きつけた。
「やってられるか!ったくつまんねえことばかりはりきりやがって!」
そんなかなめを見ながらカウラが冊子を拾った。にらみつけてくるアイシャと関わるのが面倒だと言うよな表情のかなめはそれを受け取ると抱えていたポーチにねじこんだ。
突然パーラとサラの後ろから現われたアイシャがガリ版刷りの小冊子を誠、かなめ、カウラの三人に手渡す。手にした冊子にかなめは明らかに不審そうな表情を浮かべた。
「今時わら半紙で、ガリ版刷りって……これ!僕の描いた『魔法少女エリーS』のミルキーじゃないですか!」
「なんだそりゃ?」
かなめは誠の描いたイラストが表紙にある冊子を眺めている。そしてすぐにサングラスの上の眉をぴくぴくと振るわせ始めた。真面目な顔をしているアイシャを一瞥するとかなめは一生懸命爆笑を堪えているというように震え始めた。そんなかなめの様子に誠は苦笑いを浮かべる。
「そうよ。あえて空気キャラを表紙に使う事で内容への関心を呼び起こすと言う……」
「暇だな貴様は」
カウラがあきれ果てたというようにつぶやいた。誠もその絵の上に踊る『うみのしおり』と言う文字を放心したように見つめていた。
「そう言や、アメちゃんの何軍だ?陸軍は叔父貴に遺恨が残っとるし、海兵隊はM10グラント配備してねえだろ?空軍?海軍?宇宙軍?」
出来るだけ冊子のことには触れたくないと言うようにかなめが話題を変えてアイシャに顔を向ける。自分の自信作が無視されているのに気が触ったようでアイシャは頬を引きつらせている。
「ああ、海軍だって話みたいよ。遼南の南都州の基地と言えばアメリカ海軍の遼州最大の拠点だから当然じゃないの?それよりかなめちゃん!」
三人の中で一番『美人』と言う言葉が似合うと誠自身は思っているアイシャの瞳が鋭くかなめを見つめる。
「なんだよ、おっかねえ顔して」
さすがのかなめもびっくりして携帯灰皿に吸殻を押し込んでいた手を止める。
「あなたはちゃんとこの冊子を読んで、理解してからバスに乗るのよ。これは上官からの命令よ!わかった?」
「なんだよ!この前の件で佐官に昇格したからって……」
愚痴るかなめをアイシャが一睨みした。だがじりじりとアイシャはかなめに顔を近づけてくる。
「わあったよ!読めばいいんだろ!読めば!」
根負けしたかなめは一人で先にバスの入り口に向かった。手荷物がやけに少なく、他の隊員が荷物の積み込みの順番を待っているのを横目に見ながら歩いていく。
「よろしい。じゃあちょっと他のみんなにも配ってくるわ」
アイシャが背を向ける。かなめはそれを見てすばやく誠達のところに戻ってきた。そして子供みたいに石を投げる振りをする。
「餓鬼か?お前は?」
カウラが呆れてそうつぶやいた。
「ったく!あの馬鹿!腹が立つぜ。これ、絵を描いたの神前か?」
表紙を眺めながらかなめが呟く。
「ええ、そうですけど……何か?」
サングラスを少しずらしてタレ目で誠を見上げてくるかなめの視線に誠は少したじろいだ。
「っ、別にな。じゃあ読むか」
かなめはそうポツリとつぶやくと手の中の冊子を開く。それを横目で見ながらカウラはかなめの手にあわせるように冊子を開いた。冊子を開くと、そこにはあまり上手くないアイシャの挿絵が踊っている。しばらく荷物の積み込み口でサラと雑談していたアイシャが戻ってきたのが誠にも見えた。手に冊子を握っていたかなめだがそれを察してアイシャを一瞥する。
「なに?」
「いや別に……」
再び冊子のページをめくったかなめの表情が曇る。
「何々?バスでの飲酒は禁止?これパス。運転中のバスでは立ち歩かない?これもパス。休憩中のパーキングでは必ず早めにトイレに行くこと?まあこれはいいんじゃねえの?」
苦笑いを浮かべながらかなめは冊子のページをめくる。
「アンケートじゃないのよ!それは絶対遵守事項!」
腰に両手をあててアイシャが怒鳴りつける。思わずサングラスを落としそうになりながらかなめが冊子を地面に叩きつけた。
「やってられるか!ったくつまんねえことばかりはりきりやがって!」
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