レジェンド・オブ・ダーク遼州司法局異聞 2 「新たな敵」

橋本 直

文字の大きさ
39 / 105
いざ海へ

モテ要素

しおりを挟む
「神前君!」 

 名前を呼ばれて振り向けば、そこにはカキ氷を食べているリアナの姿があった。隣では健一がリアナと同じ苺金時を、カウラはメロン、アイシャはブルーハワイを食べていた。

「見てました?」 

「人気者だな」 

「これなんてエロゲ?」 

 カウラ、アイシャは冷たく誠を一瞥すると、カキ氷を食べ続ける。

「違うんです!」 

 誠は叫ぶ。

『何が?』 

 夫婦でシンクロして鈴木夫妻が誠を見つめてくる。

「言い訳はいい」 

 冷静に答えるカウラ。こめかみの辺りに青い筋が浮かんでいてもおかしくないような形相だった。 

「誠ちゃんはこれからフラグクラッシャーと呼びましょうよ」 

 アイシャが明るく話す分だけ恐ろしさが増す。 

「だから!」 

「だからなんだよ」 

 背中からの声に誠が振り向くとその先には誠が選んだことになっているきわどいピンク色の水着を着たかなめが立っていた。

「西園寺さん、いつからいました?」 

 自分で言葉を確かめながら誠が言葉を発する。額を走る汗は暑さがもたらすものでは無かった。

「オメエがあのおっぱいお化けと腕組んで歩いてる所くらいからか」 

 誠は助けを求めるような視線をカウラ達に投げる。四人とも誠がそこにいることを無視してカキ氷を食べている。

「怒ってますか?」 

 誠は恐る恐るたずねる。

「いや、別に怒る必要のあることなのか?所詮お前はアタシの部下の一人に過ぎないし」 

 明らかに感情のこもっていない言葉に誠はうなだれた。そんなかなめを見つめる誠は手のひらに汗がにじんでくるのを感じていた。

「言っちゃったー。ご愁傷様ねえ誠ちゃん」 

 わざと誠達に聞こえるようにアイシャが大声で話す。かなめがそのまま無視して誠から離れようとしたところで、突然誠の視界からかなめが消えた。

「スーパーキックだ!見たか!悪者め!」 

 代わってそこにはシャムがいた。誠が視線を落とすと、顔面から砂に突っ込んだかなめの姿が見える。

「外道!参ったか!」 

 小夏の叫び声。しかし、誠にとってはシャムと小夏の着ている水着が衝撃的であった。

「シャム先輩。その水着は……」 

 思考停止。予想はしていたが二人を見て誠の頭は完全に止まっていた。

「そう!海と言えば、スクール水着!当然胸には白い名前コーナーをつけて、当然黄色いキャップは忘れずに!」 

 そう言って倒れているかなめの上で胸を張るポーズのシャム。

「神前の兄貴!アタシもおそろいですよ!」 

 元気に小夏はシャムの言葉を引き継ぐ。

『3-2 なんばるげにあ』、『2-3 家村』。胸に踊る手書きのネーム。

「やっぱりシャム先輩が年上の設定なんですね」 

 あきれ果てていた誠だが、とりあえずそう言ってみる。

「違うよ!誠ちゃん。アタシは小学生の……」 

 シャムの姿がまた消えた。そこに立っていたのは砂にまみれたかなめだった。

「いつまで乗ってんだ!このアホ餓鬼が!」 

 跳ね飛ばされたシャムだが、受身を取ってすばやく体勢を整える。かなめは顔から胸にかけて付いた砂を払いながら、シャムをにらみつけた。

「人に砂浜とキスさせたんだ!ただで帰れると思うなよ」 

 そう言ってかなめは指を鳴らしてじりじりとシャム達に歩み寄る。

「師匠!どうしましょう。外道はまだ健在ですよ」 

「そう言う時はね!小夏」 

 シャムは浮き輪を手にじっとかなめと相対する。

「逃げるのよ!」 

 ちょこまかと人ごみの中に逃げ込んでいく二人。

「待てよ!こら!」 

 条件反射のようにかなめはそれを追い始める。誠はとりあえずかなめの関心が自分からそれたことに胸をなでおろすと、海の家の更衣室に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

処理中です...