68 / 105
引っ越し
掃除の時間
しおりを挟む
携帯をしまうアイシャの隣でかなめは含み笑いを浮かべていた。
「すいませんねえ、待っていただいちゃって」
島田、サラ、パーラが出勤しようとする当番隊員を押しのけて入ってくる。
「別に待ってなんかいねえよ」
そう言いながらトレーの隅に残ったリゾットをかなめはかき集める。カウラは散々文句を言いながら旨そうにリゾットを食べるかなめをいつものような冷めた目で見ていた。
「ちゃんとおやつも買ってきたよ」
サラが机の上にポテトチップスの袋を置いた。さらに島田、パーラも手一杯の菓子やジュースをテーブルに広げる。
「ちょっと弁当食いますから。ジュン!後のことは頼むわ」
島田はコンビニ弁当を広げる。愛称のジュンと呼ばれたキムはやかんから注いだ番茶を飲み干すと立ち上がった。
「じゃあ自分等は掃除の準備にかかります」
キムはエダ、そして食堂の入り口で待っている西をつれて消えた。
「神前、食い終わったか?」
番茶をすするかなめの視線が誠を捕らえる。
「まあどうにか。それじゃあ島田先輩、僕達も行きますよ」
「頼むわ。すぐ追いつくと思うけど」
誠は島田の弁当を見て驚いた。島田はもう半分以上食べ終わっている。
「島田先輩、よくそんな速度で食えますね」
「まあな。俺等の仕事は時間との戦いだからな。神前もやる気になれば出来ると思うぞ」
島田は一口でメンチカツをかみ砕いて飲み込んだ。
「そんなことはどうでも良いんだ。サラとパーラ。ヨハン達を手伝ってやれよ。それじゃあ行くぜ」
立ち上がったかなめは、トレーをカウンターに持っていく。
「私達の分も持ってってくれたら良かったのに」
そう言いながらカウラと誠のトレーを自分の上に乗せ、アイシャはそれをカウンターまで運ぶ。
「別にそれくらいで文句言われることじゃねえよ」
かなめは頭を掻いた。
「それじゃあ行くか」
カウラと誠も立ち上がった。ようやく決心がついたとでも言うように、菰田とヒンヌー教徒もその後に続く。
「菰田達!バケツと雑巾もう少し物置にあるはずだから持ってきてくれ」
食堂の入り口から覗き込んでいるキムがそう叫んだ。仕方が無いという表情で菰田、ヤコブ、ソンが物置へ歩き始める。
「ほんじゃあ行くぞー」
投げやりにそう言うとかなめは歩き出した。アイシャ、カウラもその後に続く。誠も仕方なく通路に出た。当番の隊員はすでに寮を出た後で、人気の無い通路を西館に向けて歩き続ける。
「しかし、ずいぶん使いかけの洗剤があるのね」
エダが持っている洗剤の瓶を入れたバケツにアイシャが目をやる。
「ああ、これはいつも島田先輩が掃除と言うと洗剤を買ってこさせるから……毎回掃除のたびにあまりが溜まっていってしまうんですよ」
誠は仕方がないというように理由を説明した。
「ああ、あいつ。そう言うところはいい加減だもんな」
かなめは窓から外を眺めながらつぶやいた。マンションが立ち並んでいることもあり、ビルの壁くらいしか見ることが出来ない。とりあえず彼らは西館一階の目的地へとたどり着いた。奥の部屋にカウラが、その隣の部屋にアイシャが、そして一番手前の部屋にかなめが入った。
「なんやかんや言いながら気があってるんじゃないか」
ポツリとキムがつぶやく。
「エダ、ベルガー大尉を手伝ってくれ、俺はクラウゼ少佐の手伝いをする」
「私は誠ちゃんの方が良いなあ」
入り口から顔を出すアイシャをキムとかなめがにらみつける。
「お前と誠を一緒にすると仕事しねえからな。アニメの話とか一日中してたら明日の引越しの手伝いしてやらねえぞ」
「わかりました、がんばりまーす」
アイシャはすごすごと引っ込んでいく。誠は左腕を引っ張られてかなめの部屋に入り込む。
「すいませんねえ、待っていただいちゃって」
島田、サラ、パーラが出勤しようとする当番隊員を押しのけて入ってくる。
「別に待ってなんかいねえよ」
そう言いながらトレーの隅に残ったリゾットをかなめはかき集める。カウラは散々文句を言いながら旨そうにリゾットを食べるかなめをいつものような冷めた目で見ていた。
「ちゃんとおやつも買ってきたよ」
サラが机の上にポテトチップスの袋を置いた。さらに島田、パーラも手一杯の菓子やジュースをテーブルに広げる。
「ちょっと弁当食いますから。ジュン!後のことは頼むわ」
島田はコンビニ弁当を広げる。愛称のジュンと呼ばれたキムはやかんから注いだ番茶を飲み干すと立ち上がった。
「じゃあ自分等は掃除の準備にかかります」
キムはエダ、そして食堂の入り口で待っている西をつれて消えた。
「神前、食い終わったか?」
番茶をすするかなめの視線が誠を捕らえる。
「まあどうにか。それじゃあ島田先輩、僕達も行きますよ」
「頼むわ。すぐ追いつくと思うけど」
誠は島田の弁当を見て驚いた。島田はもう半分以上食べ終わっている。
「島田先輩、よくそんな速度で食えますね」
「まあな。俺等の仕事は時間との戦いだからな。神前もやる気になれば出来ると思うぞ」
島田は一口でメンチカツをかみ砕いて飲み込んだ。
「そんなことはどうでも良いんだ。サラとパーラ。ヨハン達を手伝ってやれよ。それじゃあ行くぜ」
立ち上がったかなめは、トレーをカウンターに持っていく。
「私達の分も持ってってくれたら良かったのに」
そう言いながらカウラと誠のトレーを自分の上に乗せ、アイシャはそれをカウンターまで運ぶ。
「別にそれくらいで文句言われることじゃねえよ」
かなめは頭を掻いた。
「それじゃあ行くか」
カウラと誠も立ち上がった。ようやく決心がついたとでも言うように、菰田とヒンヌー教徒もその後に続く。
「菰田達!バケツと雑巾もう少し物置にあるはずだから持ってきてくれ」
食堂の入り口から覗き込んでいるキムがそう叫んだ。仕方が無いという表情で菰田、ヤコブ、ソンが物置へ歩き始める。
「ほんじゃあ行くぞー」
投げやりにそう言うとかなめは歩き出した。アイシャ、カウラもその後に続く。誠も仕方なく通路に出た。当番の隊員はすでに寮を出た後で、人気の無い通路を西館に向けて歩き続ける。
「しかし、ずいぶん使いかけの洗剤があるのね」
エダが持っている洗剤の瓶を入れたバケツにアイシャが目をやる。
「ああ、これはいつも島田先輩が掃除と言うと洗剤を買ってこさせるから……毎回掃除のたびにあまりが溜まっていってしまうんですよ」
誠は仕方がないというように理由を説明した。
「ああ、あいつ。そう言うところはいい加減だもんな」
かなめは窓から外を眺めながらつぶやいた。マンションが立ち並んでいることもあり、ビルの壁くらいしか見ることが出来ない。とりあえず彼らは西館一階の目的地へとたどり着いた。奥の部屋にカウラが、その隣の部屋にアイシャが、そして一番手前の部屋にかなめが入った。
「なんやかんや言いながら気があってるんじゃないか」
ポツリとキムがつぶやく。
「エダ、ベルガー大尉を手伝ってくれ、俺はクラウゼ少佐の手伝いをする」
「私は誠ちゃんの方が良いなあ」
入り口から顔を出すアイシャをキムとかなめがにらみつける。
「お前と誠を一緒にすると仕事しねえからな。アニメの話とか一日中してたら明日の引越しの手伝いしてやらねえぞ」
「わかりました、がんばりまーす」
アイシャはすごすごと引っ込んでいく。誠は左腕を引っ張られてかなめの部屋に入り込む。
0
あなたにおすすめの小説
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる