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西園寺かなめ
部屋とプレゼント
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立ったままかなめは口にスモークチーズを放り込んで外の景色を眺める。窓には吹き付ける風に混じって張り付いたのであろう砂埃が、波紋のような形を描いている。部屋の中も足元を見れば埃の塊がいくつも転がっていた。
「西園寺さん。掃除したことあります?」
そんな誠の言葉に、口にしたウォッカを吐きかけるかなめ。
「……一応、三回くらいは……」
「ここにはいつから住んでるんですか?」
かなめの顔がうつむき加減になる。たぶん部隊創設以来彼女はこの部屋に住み着いているのだろう。寮での掃除の仕方、それ以前に実働部隊の詰め所の彼女の机の上を見ればその三回目の掃除から半年以上は経っていることは楽に想像できた。
「掃除機ありますか?」
「馬鹿にするなよ!一応、ベランダに……」
「ベランダですか?雨ざらしにしたら壊れますよ!」
「そう言えば昨日の夜、電源入れたけど動かなかったな」
誠は絶句する。しかし、考えてみれば胡州の四大公の筆頭である西園寺家の跡取りである。そんな彼女に家事などが出来るはずも無い。そう言うところだけはかなめはきっちりと御令嬢らしい姿を示して見せる。
「じゃあ、荷物を運び出したら。掃除機借りてきますんで掃除しましょう」
「やってくれるか!」
「いえ!僕が監督しますから西園寺さんの手でやってください!」
誠の宣言にかなめは急にしょげ返った。彼女は気分を変えようと今度はタバコに手を伸ばした。
「それとこの匂い。入った時から凄かったですよ。寮では室内のタバコは厳禁です」
「それ嘘だろ!オメエの部屋でミーティングしてた時アタシ吸ってたぞ!」
「あれは来客の場合には、島田先輩の許可があれば吸わせても良いことになっているんです!寮の住人は必ず喫煙所でタバコを吸うことに決まっています!」
「マジかよ!ったく!失敗したー!」
そう言うとかなめは天井を仰いでみせた。
「そうだ……神前。ついて来い」
かなめはそう言って急に立ち上がる。誠は半分くらい残っていたビールを飲み下してかなめの後に続く。誠が見ていると言うのに、かなめはぞんざいに寝室のドアを開ける。
ベッドの上になぜか寝袋が置かれているという奇妙な光景を見て誠の意識が固まる。
「あれ、何なんですか?」
「なんだ。文句あるのか?」
そのままかなめはそそくさと部屋に入る。ベッドとテレビモニターと緑色の石で出来た大きな灰皿が目を引く。机の上にはスポーツ新聞が乱雑に積まれ、その脇にはキーボードと通信端末用モニターとコードが並んでいる。
「なんですか?これは」
誠はこれが女性の部屋とは思えなかった。『高雄』のカウラの無愛想な私室の方が数段人間の暮らしている部屋らしいくらいだ。
「持っていくのは寝袋とそこの端末くらいかな」
「あの、西園寺さん。僕は何を手伝えば良いんですか?」
机の脇には通信端末を入れていた箱が出荷時の状態で残っている。その前にはまた酒瓶が三本置いてあった。
「そう言えばそうだな」
かなめは今気がついたとでも言うように誠の顔を見つめる。
「ちょっと待ってろ。テメエに見せたいモノがあるから」
そう言うと壁の一隅にかなめが手を触れる。スライドしてくる書庫のようなものの中から、かなめは小型の通信端末を取り出した。明らかに買ったばかりとわかるような黒い筐体をかなめは手渡す。さらに未開封のゲームソフトらしいモノをあわせて取り出す。
「誠はこう言うのが好きだろ?やるよ」
誠はかなめの顔を見つめた。かなめはすぐに視線を落とす。
「もしかしてこれを渡すために……」
「勘違いすんなよ!アタシはもう少しなんか運ぶものがあったような気がしたから呼んだだけだ!これだってたまたまゲーム屋に行ったら置いてあったから……」
そのまま口ごもるかなめ。誠はゲームソフトを見てみる。どう考えてもかなめが買うコーナーには無いギャルゲーである。
「『こころ物語』ですか。主人公キャラが男女二人になって、どちらからでも攻略できるんですよね。確かアイシャさんが18禁バージョンの限定版を三つ確保したとか自慢してましたけど」
「アイシャの奴買ってたのか?」
「まあこういうゲームの収集はアイシャさんの守備範囲ですから」
「そうか……」
誠の言葉にかなめはそう言ってがっくりとうなだれた。
「西園寺さん。掃除したことあります?」
そんな誠の言葉に、口にしたウォッカを吐きかけるかなめ。
「……一応、三回くらいは……」
「ここにはいつから住んでるんですか?」
かなめの顔がうつむき加減になる。たぶん部隊創設以来彼女はこの部屋に住み着いているのだろう。寮での掃除の仕方、それ以前に実働部隊の詰め所の彼女の机の上を見ればその三回目の掃除から半年以上は経っていることは楽に想像できた。
「掃除機ありますか?」
「馬鹿にするなよ!一応、ベランダに……」
「ベランダですか?雨ざらしにしたら壊れますよ!」
「そう言えば昨日の夜、電源入れたけど動かなかったな」
誠は絶句する。しかし、考えてみれば胡州の四大公の筆頭である西園寺家の跡取りである。そんな彼女に家事などが出来るはずも無い。そう言うところだけはかなめはきっちりと御令嬢らしい姿を示して見せる。
「じゃあ、荷物を運び出したら。掃除機借りてきますんで掃除しましょう」
「やってくれるか!」
「いえ!僕が監督しますから西園寺さんの手でやってください!」
誠の宣言にかなめは急にしょげ返った。彼女は気分を変えようと今度はタバコに手を伸ばした。
「それとこの匂い。入った時から凄かったですよ。寮では室内のタバコは厳禁です」
「それ嘘だろ!オメエの部屋でミーティングしてた時アタシ吸ってたぞ!」
「あれは来客の場合には、島田先輩の許可があれば吸わせても良いことになっているんです!寮の住人は必ず喫煙所でタバコを吸うことに決まっています!」
「マジかよ!ったく!失敗したー!」
そう言うとかなめは天井を仰いでみせた。
「そうだ……神前。ついて来い」
かなめはそう言って急に立ち上がる。誠は半分くらい残っていたビールを飲み下してかなめの後に続く。誠が見ていると言うのに、かなめはぞんざいに寝室のドアを開ける。
ベッドの上になぜか寝袋が置かれているという奇妙な光景を見て誠の意識が固まる。
「あれ、何なんですか?」
「なんだ。文句あるのか?」
そのままかなめはそそくさと部屋に入る。ベッドとテレビモニターと緑色の石で出来た大きな灰皿が目を引く。机の上にはスポーツ新聞が乱雑に積まれ、その脇にはキーボードと通信端末用モニターとコードが並んでいる。
「なんですか?これは」
誠はこれが女性の部屋とは思えなかった。『高雄』のカウラの無愛想な私室の方が数段人間の暮らしている部屋らしいくらいだ。
「持っていくのは寝袋とそこの端末くらいかな」
「あの、西園寺さん。僕は何を手伝えば良いんですか?」
机の脇には通信端末を入れていた箱が出荷時の状態で残っている。その前にはまた酒瓶が三本置いてあった。
「そう言えばそうだな」
かなめは今気がついたとでも言うように誠の顔を見つめる。
「ちょっと待ってろ。テメエに見せたいモノがあるから」
そう言うと壁の一隅にかなめが手を触れる。スライドしてくる書庫のようなものの中から、かなめは小型の通信端末を取り出した。明らかに買ったばかりとわかるような黒い筐体をかなめは手渡す。さらに未開封のゲームソフトらしいモノをあわせて取り出す。
「誠はこう言うのが好きだろ?やるよ」
誠はかなめの顔を見つめた。かなめはすぐに視線を落とす。
「もしかしてこれを渡すために……」
「勘違いすんなよ!アタシはもう少しなんか運ぶものがあったような気がしたから呼んだだけだ!これだってたまたまゲーム屋に行ったら置いてあったから……」
そのまま口ごもるかなめ。誠はゲームソフトを見てみる。どう考えてもかなめが買うコーナーには無いギャルゲーである。
「『こころ物語』ですか。主人公キャラが男女二人になって、どちらからでも攻略できるんですよね。確かアイシャさんが18禁バージョンの限定版を三つ確保したとか自慢してましたけど」
「アイシャの奴買ってたのか?」
「まあこういうゲームの収集はアイシャさんの守備範囲ですから」
「そうか……」
誠の言葉にかなめはそう言ってがっくりとうなだれた。
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