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仕事も終わり
第29話 出発
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「遅かったじゃないの」
そこにはカウラの『ハコスカ』とパーラのワンボックスカーが停まっていた。
「いつもすみませんね……」
「神前君気にしないでよ。アメリアの部隊に配属になった時からこうなる運命だったんだから」
サラと島田がじゃれあう風景を見ながら水色のショートカットの髪をなびかせてパーラが力ない笑みを浮かべて見せた。
「どちらに乗ればよろしくて?」
制服姿の麗子が戸惑ったような表情でスタジアムジャンパーを着たかなめに声をかける。
「オメエはパーラのワンボックスカーだ……心配だったらアタシも一緒に乗ってやろうか?」
「子供じゃありませんことよ!知らない人の車だろうが平気ですわ!」
冷やかし半分のかなめの態度にいらだったような口調で麗子が返す。
「そうか、じゃあ行くぞ」
かなめはそう言ってカウラの『ハコスカ』の後部座席に滑り込んだ。誠もまたそのまま後部座席に座る。
「パーラさん達と田安中佐って……会話とか有るんですかね?」
誠は心配そうに運転席に座るカウラに声をかけた。
「話すことがあれば話すだろ。なければ静かで良いじゃないか」
カウラはそう言うと車を出す。
「あれよ……麗子さんの自慢話に上手いことパーラが合わせてくれるから……まあ島田君とかは腰を折りそうなんだけど」
「まあ島田先輩ですからね」
助手席のアメリアの身もふたもない一言に誠はただ苦笑いを浮かべるだけだった。
「でも……あの二人に共通点って無いですよね。田安中佐はメカとか興味なさそうですし」
「島田が興味があるのはメカじゃなくてバイクだ。それに実は麗子はバイクの大型免許持ってるんだぜ」
かなめはそう言いながらにやりと笑う。
「それは良いですね。話題があるじゃないですか」
「まあ持ってるだけなんだなこれが。アイツは免許の類は苦労せずにとれる免許は大体持ってる。フグ調理師とかカラーコーディネーターとか生け花師範だとか……全く訳が分からねえ」
「あれじゃない……売れなくなったアイドルがよくやるじゃないの。珍妙な資格を取って報道される行動」
アメリアは呆れながらそうつぶやいた。
「まあな……アイツは興味の幅は広いが極端に飽きっぽいからな。大型免許を取る時もアタシに参考書を教えてくれって言ってきた次の週には路上が面倒だとかごねてたから」
「西園寺より飽きっぽいとは珍しい人物もいるもんだな」
工場の連絡道路に車を走らせながらカウラがつぶやく。
「良いんだよ。アイツの話なんて聞かなくっても……どうせ月島屋でさんざんアイツの意味不明の自慢話に付き合わされる予定なんだから」
吐き捨てるようにそう言うとかなめは助手席からコンソールのオーディオをいじっていつもの女性ボーカルの曲を流し始めた。
そこにはカウラの『ハコスカ』とパーラのワンボックスカーが停まっていた。
「いつもすみませんね……」
「神前君気にしないでよ。アメリアの部隊に配属になった時からこうなる運命だったんだから」
サラと島田がじゃれあう風景を見ながら水色のショートカットの髪をなびかせてパーラが力ない笑みを浮かべて見せた。
「どちらに乗ればよろしくて?」
制服姿の麗子が戸惑ったような表情でスタジアムジャンパーを着たかなめに声をかける。
「オメエはパーラのワンボックスカーだ……心配だったらアタシも一緒に乗ってやろうか?」
「子供じゃありませんことよ!知らない人の車だろうが平気ですわ!」
冷やかし半分のかなめの態度にいらだったような口調で麗子が返す。
「そうか、じゃあ行くぞ」
かなめはそう言ってカウラの『ハコスカ』の後部座席に滑り込んだ。誠もまたそのまま後部座席に座る。
「パーラさん達と田安中佐って……会話とか有るんですかね?」
誠は心配そうに運転席に座るカウラに声をかけた。
「話すことがあれば話すだろ。なければ静かで良いじゃないか」
カウラはそう言うと車を出す。
「あれよ……麗子さんの自慢話に上手いことパーラが合わせてくれるから……まあ島田君とかは腰を折りそうなんだけど」
「まあ島田先輩ですからね」
助手席のアメリアの身もふたもない一言に誠はただ苦笑いを浮かべるだけだった。
「でも……あの二人に共通点って無いですよね。田安中佐はメカとか興味なさそうですし」
「島田が興味があるのはメカじゃなくてバイクだ。それに実は麗子はバイクの大型免許持ってるんだぜ」
かなめはそう言いながらにやりと笑う。
「それは良いですね。話題があるじゃないですか」
「まあ持ってるだけなんだなこれが。アイツは免許の類は苦労せずにとれる免許は大体持ってる。フグ調理師とかカラーコーディネーターとか生け花師範だとか……全く訳が分からねえ」
「あれじゃない……売れなくなったアイドルがよくやるじゃないの。珍妙な資格を取って報道される行動」
アメリアは呆れながらそうつぶやいた。
「まあな……アイツは興味の幅は広いが極端に飽きっぽいからな。大型免許を取る時もアタシに参考書を教えてくれって言ってきた次の週には路上が面倒だとかごねてたから」
「西園寺より飽きっぽいとは珍しい人物もいるもんだな」
工場の連絡道路に車を走らせながらカウラがつぶやく。
「良いんだよ。アイツの話なんて聞かなくっても……どうせ月島屋でさんざんアイツの意味不明の自慢話に付き合わされる予定なんだから」
吐き捨てるようにそう言うとかなめは助手席からコンソールのオーディオをいじっていつもの女性ボーカルの曲を流し始めた。
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