特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』 遼州の闇

橋本 直

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『女王様』と『正義のヒロイン』と『偉大なる中佐殿』

第141話 『特殊な部隊』のスキンシップと出撃

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『ふざけたことを言うな!西園寺!貴様の野望は私が砕く!』

 鋭い声が誠の耳に響いた。かなめの画面の隣に、激高する表情のカウラがヘルメットをかぶっている姿が見える。

『なんだ?戦闘用人造人間の『お人形さん』?』

 かなめのバイザーの下の目の色が『ゴミ』を見るような色をしていると誠は確信した。

『神前は理工系の大学出身者だ。いずれ『博士』と呼ばれるようになる!』

 カウラは力を込めて間違った大学教育知識を披露した。誠の学力でが『大学院』には受かりっこないので『修士』にすらなれない。

『神前。貴様はこの戦いが終わったら大学院受験をするんだ。そして『人間工学』を専攻して、私を『正義の変身ヒロイン』に改造しろ!どうせ私は親も兄弟もいない、戦闘用人造人間『ラストバタリオン』だ。今更一つや二つの試練などどうと言うことは無い』

「どう考えてもサイボーグを作るには『医学部』の知識がいると思うんですが……僕は『理工学部』ですから『医学部』なんて私立の下位大学大学の学費が『異常な金額』のところしか受かりませんよ……」

 カウラの妄言に誠は仕方なく言い訳をしたところで、誠の05式の全店周囲モニターに『偉大なる中佐殿』ことクバルカ・ランのあきれ果てた顔が大写しになった。

『歴史談義も妄想を語るのもいーんだがよー。アタシ等これから仕事なんだわ。遊んでる暇ねーの』

 頭でっかちな幼女の一喝にかなめもカウラも黙り込む。

『西園寺。オメーが『悪女』なのはわかってんだ。カウラも正義のどっかおかしい奴なのもわかってる。神前が使えねーのも十分承知。でも、オメー等は『最強』部隊長のアタシの部隊の一員なんだ。仲よくしろとは言わねーよ。でも、ちゃんと仕事をしろ』

 あまりにもまともに聞こえるが、『特殊な部隊』の看板エースの言葉は誠にはあまりに『特殊』に聞こえた。

『しゃあねえなあ。とりあえず庶民は『愛玩動物並み』に格上げしてやる』

『西園寺、貴様。どこが『格上げ』なんだ?』

 かなめとカウラが『特殊』な漫才を始める。

『褒めてんじゃん。庶民に愛は感じねえが『愛玩動物ぺっと』は家族だぞ』

『私は貴様の『ペット』になるいわれはない!」

 二人の漫才は続く。戦場を前に漫才を始める二人の姿を見ながら誠はつい吹き出してしまった。

『レールガン全弾装着済みましたよ!』

 通信に珍しくまじめな顔をした整備班長『ヤンキー』島田正人曹長のつなぎ姿が入り込んできた。 

『待ってました!』 

 巨大なアサルト・モジュール用230mmロングレンジレールガンがクレーンで持ち上げられ、かなめの機体に装備される。

『カタパルトデッキの状況は!』 

 ランが叫んだ。

『いつでも行けます!』 

 島田が叫ぶ。

『西園寺、神前、アタシが出て、最後がカウラで出るわ。西園寺!230mmレールガンの設定終了後、すぐに移動開始』 

『人使いが荒いねえ。まあアタシは『罪人』が食えりゃあどうでも良いんだけどな』 

 凶暴そうな笑みが口元からこぼれるかなめに誠は心が寒くなる。

『びびんなって。ちゃんと腕のいい『羊飼い』として『家畜狼』から守ってやんよ』 

 かなめは口元だけが見えるサイボーグ用ヘルメットの下の口で誠に話しかける。

「了解しました」

『それより時間だ。島田!第二小隊二番機、αツー西園寺かなめ、出んぞ!』 

 かなめはそう叫ぶと機体固定部分をパージしてカタパルトデッキへ機体を動かす。その振動で誠はこれがシミュレーションではなく実戦だと言うことを肌で感じていた。
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