特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』 遼州の闇

突如変わった世界

第37話 要するに『誠死ね』と言うことらしい

　アメリアは高らかに言い放つ。

「歌います！『さっき作ったアレ』！」

　目の前のアメリア・クラウゼ少佐と名乗った、見た目は『糸目』の美女の姿をした女の意味不明な叫びに誠は絶句した。

『『さっき作ったアレ』ってなんだ！馬鹿だ！こいつ馬鹿だ！『特殊』すぎるぞ！』

　この三人のギラギラした目を見て、誠はそんな頭の中を悟られると『死』が待っていると直感した。誠は脳内を悟られまいとただ黙って立ち尽くしていた。

「さて皆さん！この『レコード』が百万枚突破しますと……」

　やはり、誠の前では意味不明な珍妙な鳴き声を出すのが、実働部隊のお約束らしい。

「『レコード』ってなんだよ……『大正ロマンあふれる国』の『甲武国』じゃあ、今でも主要音楽メディアらしいな……東和共和国では普通『CD』だろ！このでかい女壊れてんぞ』」

　表情は一切変えずに誠はそう思った。目の前の『社会の不条理』の権化、島田がタバコを押し付けるのをやめた。

　そのことから、誠のツッコミは一定の効果はあるらしい。

　糸目のでかい『女芸人』の少佐は何か言っている。

　自分に『死亡フラグ』が立ちまくっている自覚は、誠にもあった。

　一歩間違えば『特殊な部隊』で同僚の『いじめ』を苦にした『殉職』の運命が待ち受けている。

　誠の思考はそこまで追い詰められていた。

　アメリアはそのまま何かしゃべっている。

「……プレゼントは色々ですが、外国の繊維企業と『ほんがんじ』が技術提携して作りました『オールコットン』または『純毛』、『三角巾』を……『三角巾』は当然、幽霊が頭につけてる奴よ！」

　デカい『女芸人』は『特殊な部隊』では面白いらしい珍奇な言葉をしゃべりを続けた。

　先ほどから、レコードが売れると『葬式無料券』をプレゼントするとか、『白木の棺桶かんおけ」を希望者に格安でお譲りするとかの『特殊』な言語をアメリアはギターで弾き語っている。

　アメリアが言いたいことは、つまりは『誠死ね』と言う事だと、誠は理解した。

　突然、アメリアと名乗った『芸人』は誠に顔を寄せてくる。

　彼女の顔には子供がいじり殺す『昆虫』を見つけた時のような笑顔が浮かんでいた。

「いいじゃない！似合うわよ！誠ちゃん！額のやけどの跡を隠すのに最適！よくイラストの幽霊が額につけてる三角形の白いアレ」

　二人の『女芸人』と島田は、自分にとって『敵エネミー』だと誠は確信した。『社会人生活』もなにも死んだらおしまいである。

　彼等三人の誠に浴びせる視線は、非常に『生暖かい』ものだった。彼等は黙り込む誠を見つめつつ、顔を寄せ合って密談を始めた。

『うわあ。こいつ等、俺が死ぬこと前提で何か話してやがる……いつか死ぬけど。絶対、こいつ等に知られたくねえな。まあ、こいつ等から逃げ切って生きてりゃ、こいつ等に弄られることもねえわけだ……壊れてる……こんなふざけたいじめのネタ元は……地球か？あそこ、滅ぼした方がいいぞ。本当に！』

　誠の表情に地球人しんりゃくしゃへの怒りが自然に満ち満ちてきた。